「見れば見るほど、謎だな」
今日、『神の子のを見張る者』の総督のアザゼルは一枚のカードを見ていた。アザゼルが持っているのは一誠から借りた『ボーン・カード』の『シャーク・ボーン』だ。
アザゼルは一誠の使う鎧について非常に興味を持っていた。生物を模した『神器』はそれなりの数があるが『ボーン・カード』は『神器』や神々の武具のそのどれにも当てはまらない。
その事が一番気になっていた。
(さて、何から調べるか……)
「アザゼル!!」
「げっ!?……シェムハザ……」
アザゼルが歩いていると前から一人の男性堕天使―――副総督のシェムハザがいかにも不機嫌な顔をして近づいてきた。
「貴方は何を考えているのですか!?リアス・グレモリーやソーナ・シトリーが通う学園に部活の顧問として入るなど私は聞いていませんよ!!」
「ああ。言ったら止められるからな」
「っ!!?……はぁ……本当に貴方は昔から不真面目なのですから……」
「その分、お前が真面目だからいいバランスが取れているだろ?」
いつもの二人のやり取りだ。堕天してから付き合いの長い二人だから信頼しているし信用している。それだから『神器』の研究の資料などの重要な部分はアザゼルとシェムハザしかしらない。
だから『禍の団』にも重要な資料は渡らなかった。
「まあ、顧問についてはきっちり説教させてもらうとして。その手に持っているカードは何ですか?」
「ああ。これか?これは一誠が使っていた『ボーン・カード』ってやつだ。一枚借りてきたんだ。早速、調べるぞ!手伝えシェムハザ!!」
「ま、待ちなさい!アザゼル!!!」
アザゼルはシェムハザの説教を聞かずに『神の子を見張る者』の研究チームで調べ始めた。様々な機材を使いありとあらえる角度で検査を始めた。
その過程で色々と分かってきた。だが、アザゼルとシェムハザはどこかぐったりしていた。
「……シェムハザ。お前、どう思う?このカードを……」
「ありえない。その一言に尽きますね。このカードは製作不可能です。こんなのまず誰にも作れない……」
「ああ。そうだような……まったく凄すぎて頭が痛くなるぜ……」
アザゼルもシェムハザも他の研究員も頭を悩ましていた。分かった事は確かにあるがそれは『分からない事が分かった』というやつだ。
だから根本的に何も分かっていない。だから悩んでいた。『ボーン・カード』は何で何で出来ているかさっぱりなのだ。
これは長年、『神器』を研究してきたアザゼルにもお手上げ状態に陥っていた。
「ああっ!?どうしたらいいんだ!!」
「少し落ち着きなさいアザゼル。……私です―――入ってもらいなさい」
シェムハザは部下から来客の知らせを受けて入ってもらうように指示した。
「……来たのか?」
「ええ、もうすぐ着ますよ」
するとシェムハザの言うとおりに来客達は研究室に入ってきた。男女二人ずつの悪魔が二人と天使が二人が入ってきた。
「やあ、アザゼル」
「シェムハザ。久しぶりですね」
入ってきたのは魔王サーゼクス・ルシファーと四大熾天使の天使長のミカエルだ。後ろにはサーゼクスの眷属のグレイフィアとミカエルと同じく四大熾天使のガブリエルが居た。
「よく着てくれたな、お前ら……」
「随分、疲れているようだね?アザゼル」
「まあ、な……」
ミカエルは不思議だった。アザゼルがこれほどまでに疲れているのを見るからだ。研究している彼なら疲れなど知らないと言わんばかりに研究しそうだからだ。
なのにアザゼルは疲れてきっている。それがミカエルは不思議が顔で見ていた。
「ミカエル。早速、悪いがこのカードに攻撃してみてくれ……」
「……はぁ?いや、流石にそれは不味いのではないのですか?」
「大丈夫だ。どうせ無駄だからな」
「まあ、そこまで言うなら……」
ミカエルはアザゼルに言われるがまま『ボーン・カード』に光の槍で突いた。本来ならこんな薄いカードなど貫通するはずだったが、まったく刺さっていなかった。
「これは……!!アザゼル、これはどういう事ですか!?」
「……ああ。ミカエルでも無理か。ならサーゼクス、お前も試してみてくれ」
「ああ……」
ミカエルの驚きを無視してアザゼルはサーゼクスにも『ボーン・カード』を渡した。サーゼクスはカードを受け取るとアザゼルを見た。
「……消滅の魔力でしてくれ。念のため全力で」
「だ、大丈夫なのかい?もしかしたら……」
「その心配はいらない。だから全力でしてくれ」
「わ、分かった。はっ……!!!」
サーゼクスは自身の魔力の『消滅』を全力で出してカードを消しにかかった。本来ならすぐに消えてなくなるほど薄いカードだ。
だが、サーゼクスは指で摘んだカードの感触がいつまでも感じるのに違和感を覚えた。
「アザゼル。どうしてこのカードは……」
「消えないのか?って事だよな。そのカードは守られているんだ。物理的だろうと魔力を使ってもどうしても傷一つ付けつ事が出来ない。お前らが来る前に色々と試したんだ」
アザゼルとシェムハザがした実験はまずカードの耐久値を調べる事にした。手で曲げたがある程度までしか曲がらなかったので機械を使って曲げようとしたが、機械が駄目になってしまった。
次に表面を火で炙ったが焦げすら付かなかった。そして水の中に入れたが一切濡れなかった。
だからアザゼルとシェムハザは材質を調べたがこちらもまったく分からなかった。それ故にいきず待っているのだ。
「しかしアザゼル。このカードは確かにここにあります。なら材質が分からないという事はないんじゃないですか?」
「確かになミカエル。だが、分からない。可能性としてこれは俺達の理解の及ばないシロモノと言うことだ……」
アザゼルは心配いや不安な顔をしていた。ミカエルもサーゼクスもその顔が何を意味しているのか分からないでいた。
「このカードは調べれば調べるほど謎が深まっていく……分かった事はこのカードは破壊不可能でイッセー以外には使えない。例外としてイッセ-の従属神になれば使えるらしい」
アザゼルの報告にこの場にいる者達は頭を悩ませていた。ただし一人だけを除いてはだが、その人物はサーゼクスだ。
「……これは使えるな」
「何が使えるんだ?サーゼクス」
「ああ、実は冥界の子供達向け番組を考えていてね。ここは人間界に習って特撮ヒーローを考えていたんだ。そこでイッセー君の『ボーン』だったか?これを使えないかと思ってね」
「なんだ、それ!面白そうだな!!俺にも一枚噛ませろ」
「ああ、もちろんだ。色々と意見が欲しいからね」
段々話が逸れているアザゼルとサーゼクスだった。他の者は呆れていた。それで痺れを切らしたグレイフィアがサーゼクスの耳を引っ張った。
「……いい加減にしてください。サーゼクス様」
「いたたたたっ……痛いよグレイフィア!?」
グレイフィアの動きはまるで夫婦漫才をしているような動作だった。
「……アザゼル。話を戻しましょう。彼、真神一誠君が使う力は貴方―――『神の子を見張る者』の技術を以ってしても解析出来ない。そういう事ですね?」
「ああ。そうだ。そういうミカエルはどうなんだ?このカードの文字とか属性とかの模様は見覚えないのか?」
「……残念ながらありませんね。文字も模様も見た事がありません」
アザゼルとミカエルはカードに描かれている模様や文字などに注目したが二人には見覚えが無かった。『聖書に記される神』に仕えてきた二人も覚えが無かった。
「ミカエルも知らないんじゃお手上げだな……イッセー自身も分かっていない部分もあるようだし……だぁぁぁ!!こんな面白いものを解析出来ないとか研究者としてむず痒いぜ!!」
「……しかし分からない事には調べようがありませんね」
アザゼルが頭を抱えている中、ミカエルは至って冷静だった。彼はアザゼルと違い何かを調べるといった事がそれほど得意ではない。
だからなのかそれほど困ってはいなかった。どちらと困っているのはアザゼルの方だ。
「ああっ!?こんな凄いものを調べらないなんて最悪だ!!こんなおも……不思議なものを!!」
「アザゼル……今、何か言いかけましたか?」
「な、なんでもないぜ!!」
シェムハザの視線からアザゼルは逃げるように逸らした。
(危ない危ない……)
間違っても『面白い』と言えば後でシェムハザから何を言われるか分かったものではない。
なのでアザゼルは途中で言葉を飲み込んだ。
「分からないものはしょうがない。アザゼル、ここは先ほどの話を続けようではないか」
「ああ!そうだな、そっちの方が面白そうだしな!!」
サーゼクスの提案によりアザゼルは先ほどの一誠の『ボーン』をモチーフにした戦隊をどう作るかの話に切り替わった。
「サーゼクス様……」
「アザゼル……」
グレイフィアとシェムハザの『こいつら何言っているんだ?』という気持ちが乗っている視線をサーゼクスとアザゼルは受けていた。
二人の視線を受けてかサーゼクスもアザゼルもどこか申し訳なさそうな顔をしていた。
「だ、だってしかたないだろ!?これ以上、解析しても何も分からないんだからよ!!」
「そうだよ。アザゼルに無理なら我々にだって無理だ。それに最近、セラフォルーの番組だけで他にも子供向けの番組が無いと思っていたんだ」
「……確かにそうですが、だからと言って今、話すような内容ではない筈です」
「す、すまない……」
グレイフィアに正論を叩きつけられてサーゼクスは気まずそうな顔で頭を下げた。
(まったくこの人は……)
グレイフィアは知っている。自分の主にして夫たるサーゼクスの事を。冥界のために色々と考えて盛り上げようとしている事を。
誰よりも近くでそれを見て、支えてきたグレイフィアだからついついサーゼクスに甘くなってしまう。
「……その手の話は一度、戻ってからにしてください。今は真神一誠様の事を」
「あ、ああ!」
サーゼクスはキラキラした目でグレイフィアに頷いた。
その後、色々と話し合いをしたが結局、結論は出なかった。そしてこの件は一旦保留扱いになった。
だが、この時『ボーン・カード』の秘密にアザゼルもミカエルもサーゼクスも誰も気がついてはいなかった。
「な、なんだこれ…………」
一誠がアザゼルに『シャーク・ボーン』を預けてから数日後に一枚のDVDが一誠の元に届けられた。その中身を見て一誠は愕然とした。
そこに映っていたのは『ボーン』を纏った五人の悪魔達がポーズを決めていた。
『世界を!そして宇宙を守るため!我々は今!!魔神の力をこの身に纏う!我ら魔神戦隊マジン・ボーン!!我らが居る限りお前らの好きにはさせないぞ!!暗黒龍皇ジ・ドラゾ!』
『ふん!!お前達に我が野望は止められると思うなよ!!マジン・ボーン!!』
ドラゴン、シャーク、ライノス、ジャガー、レオの『ボーン』を纏った悪魔達がいかにも悪の親玉と思わしき人物に言い放っていた。
一誠もまさか『ボーン』を戦隊ものにするなど聞いていなかったのでどう反応していいか分からなかったが、真っ先にするべき事だけは分かった。
(アザゼルとサーゼクスを半殺しにする!!)
すぐさま一誠はアザゼルとサーゼクスの所に行き二人を半殺しにした。その後で一誠は番組の売り上げの7割で話をつけた。