英雄の剣聖譚≪ブレイブ・オラトリア≫   作:朱雀

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 リアル多忙で予定より遅れました。
 間に合わせの第三話。原作では、第一班視点ということで、今回は想像で第二班のフィン達の視点です。


第三話 異常

 ―――五十一階層。『カドモスの泉』が存在する階層。四十九階層に出てくるフォモール達より更に強くなったモンスターが存在する階層だ。

 安全面を考慮した適正Lvは5。―――第一級冒険者と称される者達でないと攻略不可とされる。更にこの階層は、()()()()。必ず一体しか現れない階層主と呼ばれる巨大なモンスターが存在する。

 『迷宮の孤王(モンスターレックス)』。五十一階層の主とも呼べるモンスターの名を―――『強竜(カドモス)』。全体的なステイタスを考えれば、Lv6相当のウダイオスに劣る。しかし、力に置いてはウダイオスを超える。即ち一撃食らえば並大抵の冒険者の体はひしゃげる程だ。

 危険性の高い五十一階層で、金色の髪を揺らす小人族(パルゥム)の団長フィンは、その碧眼で戦況を把握し指示を送り出していた。

「―――ベートっ! 右からブラックライノスが二体!」

「わかってるっつぅの!」

 銀色の髪を靡かして狼人(ウェアウルフ)の青年ベートは、疾走する。特殊武装(スペリオルズ)銀靴(フロスヴィルト)の爪先が、大地をえぐる様に食い込み踏み込む度に加速する。

 ベートの狙いは―――ブラックライノス。ごつごつとした黒光りする皮膚を持つ前傾二足歩行のサイ型モンスター。二メドルには及ばないが、全身を覆う筋肉は自然の鎧の様に硬質。大型と言っても差し支えない体躯、先の戦いで蹴散らしたフォモールさえも遥かに超える硬度を誇っている。

 そんな二頭のブラックライノスが、その脚力をもって駆ければ、頭部に生やした長短の角で岩盤すら破砕する。

『ォォォォオオオオオオオ―――――ッッ!!』

 二頭の咆哮が鳴り響く。同時に突進、二本の角を振りかざしベートを串刺しにしようと前方が迎え撃つ。

「はっ、鈍いんだよクソサイがぁっ!!」

 跳躍。前方への推進力を上方へと変換する。ブラックライノス二頭がベートの下を駆けていく。瞬間、一気に重心を落とし込み急降下を行う。

「おっ―――らぁぁぁ!!」

 捻りを加えた、全力の回し蹴りが一頭の横面に突き刺さりもう片方を巻き添えに吹き飛んだ。着地と同時に、爆ぜる様に進撃。【ロキ・ファミリア】随一の敏捷を誇るベートは、吹き飛んだブラックライノスへと並走し、加速の勢いのまま長角を蹴り飛ばす。

 折り飛ばした角を追い、跳んで掴み取る。ベートの眼下では、巻き込み吹き飛んだ二体のブラックライノスが重なる様に地面に倒れ込んでいる姿。

「これで―――」

 投擲。黒光りする角が、ベートの手から放たれ一気に二匹へと突き刺さる。

「―――止めだぁぁっ!」

 急降下、杭の様に突き刺さり身動きが出来ないブラックライノス達へと向かう。前方へと重心を移動させることで、急速に前へと回転する。右足を突き出し、重力と回転力を上乗せし刺さった角へと踵落としをぶち込むっ!

『ぶぼぉぉぉ!!!』

 甲高い断末魔の声を上げるブラックライノス、更に押し込む様に力を更に加え、さながら断頭台から落ちたギロチンの如く蹴撃が角で穿った腹部へと差し込み、二頭諸共両断し、魔石へと姿を変えた。

「よくやったベート! ガレス、そっちは大丈夫かい?」

「―――ふんっ、誰に物を言っとるんじゃフィン」

 長く蓄えた髭を左手で触り、ドワーフの老兵ガレスは、右手に持った戦斧を振り血糊を飛ばす。ガレスの周囲に散らばった魔石の数々は、先ほど大群に一人で突貫し殲滅した証拠だった。

「ガッハッハ、儂が今更こんなモンスターに後れをとる訳がないじゃろう」

「ははっ、余計な心配だったみたいだ―――ねっ!」

 短い呼気と共に、フィンは携帯していた投げナイフを投擲する。

『キシャァ……ァァ』

 赤と紫が混色した巨大蜘蛛、八本の脚と複眼を持つデフォルミス・スパイダーが、フィンの投げたナイフに穿たれ絶命する。

「―――ラウル、いつも言ってるよね。周囲に気を配らなきゃダメだって、ここはダンジョンだ。いくら僕達がいるからって、いつだって何が起こるかわからないんだよ」

「すっ、すみませんっ!! 以後気をつけるッス」

「なら、いいんだけどね」

 フィンの言葉に、黒いツンツンした髪を持つ人間(ヒューマン)ラウルは、背筋を伸ばし頭を下げる。先ほどのデフォルミス・スパイダーがラウルを狙っていたのを今確認し、フィンが気づいて殺していなければ自身の身が危なかったことに気付いたからだ。

 冷や汗を垂らし、どんよりとした空気を醸し出すラウルにため息を吐き出すとフィンは周囲を確認し、肩の力を抜いた。

「もう、いないみたいだね」

 周囲にはモンスターの影もなし、気配も感じない。

「向こうは大丈夫かな、何事もなく進んでいればいいんだけど」

「それは、大丈夫じゃろう。アイズもいることだしのう」

「そのアイズが無茶しないかが、心配なんだけどね」

 ガレスの言葉に、ははっと力なく笑う。アイズの戦闘は如何せん心臓に悪い、その強さは確かに凄まじいがそれに比例した無茶にはいつも肝を冷やす。

「バカゾネス二人がいるんだ、何もなきゃ大丈夫だろ」

「おやっ? 珍しいねベートがそんな事言うなんて」

「あぁ!? 何がおかしいんだよ?!」

「いやぁ、別に……ねぇ、ガレス?」

「そうじゃのう」

 最古参の二人組が視線をかわし、くつくつと含み笑いする。失言した、とばかりにベートは顔を赤くして吼えるも逆効果とばかりにあたたかい視線を浴びた。

「なんだっつぅんだよクソジジイ共ォっ!!」

「ベートさん」

「あぁんっ!? なんだよラウル!」

「―――デレっすか」

 ここぞとばかりにニヤニヤ笑い爆弾を投下したラウル。その発言に、ベートの限界がきた。ぶつんっ、という音と共に頬の赤らみが消え、その目は鋭く細められていた。

「……ブチ、殺す」

「あ、あぎゃぁぁぁぁぁ!!? ごめんなさいっスぅぅぅ!!!?」

 ―――――団長ォォォ!! ガレスさぁぁぁぁん!!

 助けてください、という悲鳴にフィンとガレスは苦笑を漏らす。一時の光景に、先ほどまでの緊張感で削れた精神力が戻っていく。

 ―――――ピリッ。

「ッッ! ベート、ガレス、ラウル! 茶番はこれまでだよ、()()()()

 唐突だった。フィンの()()がビクビクと疼く。第六感(シックスセンス)を凝縮した様に、未来予知さながら先に起きる事を教えてくれる親指(コイツ)は侮れるものではない。

 他人を卑下し、下らないと一蹴するベートですら一瞬で緊張感をその凶悪な表情に張り付けた。

 ボゴォッ、とダンジョンの壁が()()()()()。モンスターの排出、言うなれば(ダンジョン)による産卵現象。そこから産まれるのは―――

 

「新、種……ッ!?」

 

 ―――見たこともない()()()()()

 不気味な程鮮やかな緑色をした、まるで溶かしこんだゴムかの様にぶよぶよとした被膜。所々にぶちまけられた極彩色は毒々しく、その体躯は先ほど倒したブラックライノスの倍ほどある巨躯。

「くそ気持ち悪ィ、芋虫野郎がァ……ッ!」

 無数の短い多足のある下半身は、ベートの言った通り芋虫の形状にこそ似ている。長い下半身の上に乗っかる様にある上半身は、小山が盛り上がったかの様に膨れ上がり、厚みのない扁平状の腕の様な器官が左右から飛び出す様に生えている。器官の先端には四本の切れ込みが入っていて、指がある様に錯覚させる。

 明らかな()()だった。その不気味さも、気色の悪さも何度もこの五十一階層へ潜ってきたフィン達ですら見たことないモンスター。文献にすら乗っていない。

(くそっ、どうする!? 攻撃パターンは、なんだ?!)

 持ち前の洞察力をフルに回転させ、戦況を把握しようと務める。

「おい、どうすんだフィンッ!?」

「落ち着くんだベートっ、一旦様子を見てからじゃないと打開策が」

「……そうこうも言ってられん様になってきたみたいじゃ」

「だだだ、団長ぉっ!? 後ろからも!」

 ギリィッ、と歯を食いしばる。

 ―――――囲まれた。

 目算でも、凡そその数五十に及ぶ。実際突破しようとすれば、簡単はハズである。モンスターの構造というのは比較的単純なもので、例外さえ除けば見た目から推測できる。

 例えばブラックライノス。被膜から見当がつくように、その耐久力に優れたモンスター。即ち前方の芋虫型のモンスターは、耐久力が軟なものであると簡単に見当がいく。

(一か八か、かけてみるか……ッ?)

 一点突破すれば、この窮地から逃れるかも知れない。ただその分の危険性(リスク)はそれ相応に高い。

 その時だった。

『――――――――――』

 カパァ―――ッ、人に当たる顔面と思わしき箇所。粘着質な音を立てて一匹のモンスターが口腔を開いた。途端に、ゴポォッという液状の音が聞こえて「―――全員、避けろォ!」フィンの指示と同時に、芋虫の口から液体が噴き出した。

 流石は探索系ファミリアトップクラスに位置するだけあり、指示に迅速な動きで対応することが出来た。各々が避けて、液体が先ほどフィン達がいた大地へと付着して()()した。

「溶けた、じゃと……ッ」

 その光景は容易に四人の脳内に、最悪の結末を連想させる。音をあげて、煙を立ち上げる地面。あれが少しでも当たりさえすれば、重症は免れないであろう。

「てっ、撤退―――――ッッ!!」

 フィンが声を張り上げる。下した命は、退却。

「撤退っつったって、この状況どうすりゃぁ!」

「分かってる! ラウル、予備の槍はあるか!?」

「は、はいっす!」

 この四人の中で最も、Lvの低くサポーターを務めていたラウルが、予備である簡素な槍をフィンへと手渡す。その槍は、軽く百八十メドルはある長さ。小人族(パルゥム)であるフィンの身長を超えるそれを、軽々と持ち上げる。

 ぐぐっ、と肩へと力を込める。肘をまるでバネが縮んだかの様に折り畳み、全力で―――投擲。

「ハァ―――ッ!」

 鋭い呼気と共に放たれた槍は、軽々と十数体の直列に並んでいたモンスターを貫いた。同時に貫かれたモンスター達が破鐘の様な啼き声を上げて()()する。

 たちまち飛び散った液体が、同胞である芋虫達へと付着してその体を溶解する。

「いまだっ!」

 疾駆。高ステイタスの敏捷値に物を言わせて戦線から撤退を図る。一気に、芋虫達がいる場所から遠ざかっていき、「っづあぁ!」ラウルが転倒した。

 溶解し、ドロドロにぬかるんだ地面に足をとられたのだ。

「ラウルッ!?」

 振り向いて助けに行こうとするも、既に遅かった。後方から追いかけてきた芋虫がその口を開けたのだ。途端に噴出する液体がラウルへと降り注ぎ、

 

「―――ああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!?」

 

 臓腑の底から引きずり出したような絶叫がダンジョンへと木霊した。

 

 




 東京グール面白いなぁ……書きたいなぁ。
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