宇宙に溺れる、という感覚はひどく恐ろしい。
想像してみるといい。鋼鉄で覆われているコクピットのすぐ外、多重装甲の向こう側には無限の暗闇が広がっている。
星々が放つ赤や緑の閃光はドラマティックな色彩を与え、ただ静かなだけの空間も暴力的な赤と靄のかかった青白い恐怖に侵される。
正面にあるメインモニターにはそれら空の背景が映し出されている。
まるで真っ黒なキャンバスの上に、無造作に白の絵の具をまき散らしたような星々の光。
静寂を湛える空気に呼吸音が響く。耳に届く音はそれだけだ。宇宙の真空。世界中で自分がひとりぼっちになったような感覚。
誰が信じるだろう?ほんの二、三百年前から人類は宇宙に飛び立った。たったそれだけの間に宇宙に居住区を作るようになり、やがては生活圏を開き国をも作り出した。今となっては生まれてから死ぬまで星の重力を知らない人間までたくさんいる――――勿論、自分もその中の一人だという自覚は大いにある。
だからこそ俺は宇宙を見るときに頭蓋を揺り動かすような金切り声となんとも表現しがたい息苦しさを感じるのだ。
今着ている厚手のノーマルスーツといえど宇宙に吸い出されたら一貫の終わりだ。死というやつはいつだって唐突で、容赦を知らない。
パイロットだった叔父さんはルウムで撃墜された。
コクピットから吹き飛ばされたその体は無数の漂流物の一つとなって戦闘区域を漂い続け、数時間の宇宙遊泳の末に酸素欠乏症になって死んだらしい。ただ必死に空気を求めたその形相はまるで悪鬼羅刹の様で、回収された死に目はとてもじゃないが見られたものじゃなかったと聞いた。
人間は宇宙で生きていけるように作られていない。テクノロジーとは生命体それぞれに備わった感覚器に基づいて発展していくべきだ。少なくとも俺はそう思う。それを追い越してしまった人間は何処かに無理が出るのだ。スペースノイドとしてはあるまじき考えかもしれない。
それでも、俺はこの宇宙が怖い。コロニーで慣れ親しんだ0.8Gの疑似重力から解放されると余計に。
――――ああ、こんなこと考えてるのがばれたらまた教官に怒られる。
そんなことを思い浮かべたのとほぼ同時に俺は宙域の変調を察知した。
レーダーに僅かなノイズが走った。コクピットに警告音が鳴り響く。正面のモニターにはCAUTIONの赤文字が明滅する。
「なんだ?ミノフスキー粒子の干渉波……?」
過去、戦場となったことがあるこの暗礁宙域ではそれほど珍しくないノイズだった。
些細なアクシデントとしてはそこまでおかしいことではない。だが視界の端で膨れあがった今の波は不自然に大きすぎた。まるで”そう”設定されているかのような干渉波。
慌てて僚機に向けてレーザー回線を開きかけ、手が止まる。不必要な通信会話は禁じられていた。どうする?
いや構うもんか。そもそも、これがもしそうだとしたら通信が繋がるかすらわからないのだ。やってみる価値は大いにある。
それに。ジョンはご禁制の寮の中なのに何処からか質のいいペーパーバックを手に入れて分けてくれるいい奴だが、いかんせん間抜けだ。
「ジョニィ、こっちのセンサーが妙な波形を拾った。そっちも確認出来るか?」
『――あ?なに言っ―――のか――聞こえ――』
通信ウインドに顔を寄せると雑音混じりの返答が響いた。この距離でレーザー回線が通じない?
怖気が背中を一気に駆け上っていった。これはミノフスキー粒子が戦闘濃度になっている証だ。
「やっぱりだ、くそったれっ!」
悪態を吐き捨てつつ、強張った指先が姿勢制御バーニアを大きく噴かした。
戸惑っている余裕はない。同時にフットペダルをいっぱいに踏み込んで操縦桿を一気に右に引き倒す。ジョンの機体を背後に、俺の乗ったMS-06FザクⅡが体勢を大きく捻るようにして右に加速した。
がくん、と一気に加速したせいで衝撃がもろに伝ってきた。全身の血が足元に集まっていく。酸素不足を訴えた視界が赤く明滅する。
しかしモニターの隅にちらりと映った火線を見るに咄嗟の判断としてはそれほど間違ってはいなかったようだ。
オートバランサーが作動して機体の体勢を整える。不自然な体勢のまま加速したせいで真空に囚われていた四肢がようやく自由になる。
「はっ」
ヘルメットのせいで息苦しい。跳ね上がった心臓。塞がれた肺に意識して空気を送り込んでやる。
鼻につく焼き付いたフィルタの臭い。嫌な臭いだ。
焦るな。普段から言われている通りに動かせばいい。体に叩き込まれた教習マニュアル通りの動きだ。レバーを引く。
巨大なザクの右手が腰溜めに120mmマシンガンを構える。ばらまく。大袈裟なキックバックが体に伝わる。視線は遠くに。ターゲットを眼で追うな。
銃口から溢れるように吹き出したマズルフラッシュが視界の端に映った火線の元を追っていく。
それは腹を揺り動かす乾いた音だ。真空状態で聞こえる筈のない衝撃音。しかし腕を伝ってくるそれらは容易く耳に届く。
「聞こえるか!ジョニィ、左上方80度から敵だ!」
暢気にもようやくセンサーが敵機接近の報を知らせてきた。
遅すぎる。俺は更にトリガを引いた。トリガを引けば弾を吐き出す。誰がやろうと同じだ。
赤いレーダーが敵機をロックする。
視界にようやく敵の姿が映り出す。白色にマークされたザクⅡが二機。こちらと同じ編成。120mmマシンガン持ちが一機と280mmバズーカが一機。
ジョンが撃たれた。だが、ザクの前方装甲はジオニック社が誇るカーボンセラミックと超硬スチール合金で出来ている。少しの運と当たり所さえ良ければマシンガンの直撃にも耐えうるはずだ。きっと。だからジョンはまだ生きている。僚機の撃墜判定は出ていない。きっと。ああきっとだ。
「おい、大丈夫なのか駄目なのかなんとか言ってくれ、ジョニィ!」
通信は途絶している。警告音。また銃弾が機体のすぐ隣りを駆け抜けた。
そして真空を引き裂いて真一文字に伸びていく大物―――機体の背後でバズーカ弾が爆発する。モニターが膨れあがった爆発の光に染まる。沈み込むような衝撃が突き抜け、鋼鉄の巨人が爆風で揺れる。空気はないというのに衝撃波がダイレクトに伝わってくる。
一気に血の気が引いた。あんなもの受けたら一発でやられる。
歯を食いしばりながらフットペダルを踏む。俺の意志を受けたザクはやや大袈裟に回避運動を起こす。周囲に推進剤を派手にまき散らして移動する。
スラスターの噴射光が明滅する。無理な体勢をとったせいですぐさまバランサーが働く。
鋼鉄の巨人はとても優雅とは言い難い鈍重な動きをする。がしゃんがしゃん。実際には一瞬なのだろうが俺には気が遠くなるほど遅く感じた。
膝を曲げ体勢を低くした巨人がマシンガンを構えて即座に反撃をする。
不意打ちを受けている。体勢を立て直さなければ。
ジョンがいないとなれば二対一の戦いを余儀なくされる。圧倒的不利な状況。
呼吸が苦しい。思考がうまく働かない。
そんなことを思いながら牽制のためにただひたすらに弾をばらまき続ける。灼けた薬莢が視界の端を飛んでいく。くそったれ。
お世辞にも命中率はいいとは言えない。純粋に俺の腕が悪いのもあるがザクマシンガンの砲弾は初速が遅い。
ザクマシンガンは宇宙空間での使用を前提に射撃時の反動を軽減するように作られている。だからある程度の距離さえあれば回避は簡単だ。
教本に書いてあったどうでもいい文言が頭を過ぎる。知ったことか。弾を残して死ぬよりかは弾切れで死んだ方がまだマシだ。
スーツの下で汗が気持ち悪く滑り付く。レバーを押し込む手が震えている。
円盤型弾倉があっという間に弾切れになる。くそったれ。
「リロードッ!」
体に染みついたパイロットとしての条件反射が、聞こえないとわかっていても叫びをあげさせる。
バズーカの援護射撃はない。言葉が虚しく宇宙を駆けていく。
駄目だ。このままじゃジリ貧だ。
どうする?俺はどうするべきだ。考える時間は少ない。頭に様々な考えが過ぎっては消えていく。
目標を失った影が視界を過ぎった。追いすがってくる火線のせいで落ち着いて銃弾交換も出来ない。
一旦暗礁地帯に隠れる?馬鹿な。仲間を見捨てていく気か。まだジョンは死んでいない。返答がないのは通信機器が故障しているせいだ。きっと。きっと……。
ならどうする?勝ち目は薄い。このままじゃお前も撃墜される。ならいっそ、いっそ――――突っ込むか?
浮かんだ考えに悪態を吐いた。くそったれ。ヒートホークで接近戦を挑む。それこそくそったれ、だ。馬鹿を言うな。先程から向こうの動きにこちらを炙り出そうとしている意図が読み取れる。突っ込んでいったらそれこそ待っていましたと十字砲火を浴びる。ああああ、これは明らかにまずい考えだ。
あのクソッタレのライカー教官も戦地では痺れを切らした奴から死んでいくと言っていただろう。
手はない。ここは我慢するしかない。見せかけの希望は命を磨り潰す。
「本当に――――くそったれ」
だというのに一度過ぎった考えは粘着質のように張り付いて、なかなか頭を離れない。
どう考えても馬鹿な考えだ。なのに。溺れそうな宇宙の恐怖で頭がいかれちまったのか。現状ではそれしかないように思えるのだ。
あっちとこっちでそこまでの力量差はない。いまだに俺をしとめ切れていないのがその証拠だ。問題なのは二対一の状況。だからこその接近戦だ。敵機体を盾にするように機動を取れれば一対一になる。そしてそのまま一対一を二回。無茶苦茶な論理がやけに冴えた考えに思える。俺に出来るか?俺の格闘成績は悪くない。少なくともクソみたいな射撃成績よりかは。
胸から伝ってくる脈動が、一揺れするごとに思考を狭めていく。決断する間なんてなかった。既に俺のザクは左手にクラッカーを握っていた。
更に一度のマシンガンの火線が機体を掠めていった瞬間、考える間もなくペダルを目一杯踏み込んでいた。
「やってやる、」噛み合わせた歯と歯がかちりと鳴った。「やってやるぞ、畜生!」
放射状に伸びてくる火線を大回りで避け、加速すると同時に宇宙にとびだした。映り上がる二体の巨人。モニターいっぱいに二機のモノアイが光る。
待ってましたとばかりに降り注いでくる120mm弾が機体すれすれを舐めるように通り過ぎていく。
モニターに映る星々が一本の線を描くかのように、物凄い勢いで後ろに飛んでいった。
対物感知センサーが敵機体との距離を計算する。距離はまだある。このまま真っ直ぐ突っ込む阿呆はいない。宇宙に上下左右はないのだからもっと回り込むべきだ。
操縦桿を引き絞る。ザクの両腕が胸の前で交差し鉄の腕がコクピットを守る。ないよりマシだ。命を守る装甲はあればあるだけいい。
針路を変えるために急制動。機体が下から上に急制動をかけて姿勢を転換した。その拍子に120mm弾が右肩部のシールドに掠った。
「ぐぅう、ぁああ!」
今までで一番の衝撃がモビルスーツのコクピットを襲った。
しくじった、と思う間もなく視界が二転三転して揺れる。撃墜される、実感のわかない言葉が全身を痺れさせた。
嗚咽が口内から漏れ出る。同時にまだだと叫ぶ自分がいた。諦めていない自分がいた。瞼を開く。
発光したモニターの中には降り注いでくる120mm弾の雨とその合間からバズーカ弾が襲ってくるのが映った。一瞬で回避しようがない、と悟った。
急制動からこの状態からじゃどう加速機動したところでどちらかには当たる。なら――――、
瞬間の出来事だった。閃きのままに、右腕に持っていたマシンガンをそのコースに投げ捨てる。
爆発。ペダルを踏み込むのが早いか遅いか、再び殴りつけるような衝撃が襲い掛かってくる。
サスペンションが本当についているのかと思うくらいの揺れ。間近に迫った爆炎の塊が機体を包み込む。
機体が破損したせいかモニター画像が歪んでいた。ノイズが走る。ディスプレイのアラート表示は三分の一くらい真っ赤に染まっている。だがそれだけだ。モビルスーツとはそういうものだ。多少傷ついても堅牢に作られた複合装甲は歪みはしない。
至近距離での閃光に翻弄されつつもモノアイが炎の奥に二つの敵機を捉えた。
「ビンゴ!」
馬鹿みたいに棒立ちになっている機体目掛け、グリップを力任せに押し倒し炎の向こう側にクラッカーを投げ込んだ。74.5tの巨人が左腕をしならせ飛ばしたそれは炎を引き裂き、飛んでいく。
間もなく閃光と爆炎が周辺宙域を包み込んだ。
出来上がった一瞬の隙。もはや考える暇も考えることもなかった。
空けた右の腕にヒートホークを握り締め、280mmのバズーカを持った右の機体にただまっすぐに突進する。
息を吸う。息を吐く。ノーマルスーツ特有のフィルタを通った埃くさい臭いが今だけは気にならない。気にする余裕もない。
速度を維持したまま宇宙を駆け抜け、敵機体のザクに迫る。
数百メートルの距離は一瞬で埋まった。頭上を仰ぐ。すぐに全身が見えた。17.5mの鉄の巨人。
それに目掛けて戦斧を振り上げる。不意をついたこれ以上ない攻撃だった。
相手のザクは対応する間もなく戸惑っている。バズーカを捨てる隙すらない。
減速せずそのままぶち当たった。
装甲がひしゃげる音がする。変な角度で突っ込んだせいであっという間に左肩装甲板が吹き飛んだ。頭部が湾曲してメインモニターに砂嵐を走らせる。
加重に耐えきれず、亀裂が広がった装甲板から金属片となった欠片が吹き飛んでいく。
空間そのものを掴んで揺らすかのような振動。あまりの衝撃にベルトが外れ体がずり落ちた。歯を食いしばった。全身が二転三転し、身体がこれ以上なく打ちのめさる。
それはまさしく衝突だった。
剥き出しになった神経が焼け焦げたかのような痛みが肌を突き抜ける。コクピットの中でさえ全てが吹き飛び、一瞬で視界が吹き飛び真っ赤に染まった。もはやシートから振り落とされないようにしがみつくのに必死で、ショックアブソーバーが作動したのかもわからない。
レッドアウト。無茶な機動のつけが体に響く。上下の感覚が消失した身体に二度三度と衝撃が走る。しかし激痛に心身をゆだねているような暇はなかった。
血の色に染まった世界の中、加熱されたヒートホークが装甲板をガリガリと削り取っていく音が聞こえた。
複合装甲を無理矢理溶断している。グリップを握る手応えがあった。身体はまだ動く。それだけわかれば充分だった。
見えない目を無理矢理に見開く。一撃。まるで蛮族の武器のような形状だがヒートホークの一振りは信じられないくらい強力だ。一撃でモビルスーツはただの鉄塊と化す。
レバーを握り締める。考えている暇はない。半ば朦朧とした意識の中で身体を動かした。
辛うじて生きているらしい姿勢制御バーニアを噴かす。
掠れた視界が戻った。サブモニターに金属の欠片が宙を漂っているのが見えた。
直前に横目で確認した対物センサーの通りもう一機の敵機が自機と鉄塊の対角線上にある。
こっちにも、相手にも”それ”が見えていた。
マシンガンを撃てば大破した味方機に当たる。つまり核融合炉だ。ザクに乗っていてそれを考えないジオン兵はいない。
撃墜判定はとうに降っているだろうが120mm弾を撃ち込もうものならそれこそ運次第でミノフスキー核融合炉に当たってドカンだ。
撃てるものなら撃ってみろ。そしたらお互いに撃墜判定だ。
すべては自分の丈夫さと、機体の頑強さを担保に捧げた賭けだった。
いまや敵は目の前にいる白いザク一機だ。中破した上にほとんどの武器を失っているとはいえ先程までの絶望的状況よりもよっぽどいい。
あれほど望んだ一対一だ。上手くいきすぎるほど上手くいった。ノーマルスーツの下の肌が粟立つ。もはや夢の中にいるのだとも思えた。
敵機は泡を喰らったように距離を取ろうとする。
「距離を取る気か、させる、かよぉっ!」
満身創痍のまま相対距離を必死で詰めよった。
バーニアを炊き姿勢を転換した機体が、上体を反転させようとした相手の背後に迫る。
軋みをあげる間接機構で、ひしゃげたヒートホークを握り締める。
こいつは本当によく出来ている。モビルスーツの巨躯で生み出した慣性重量がそのまま破壊力になる。数回の使用でおしゃかになる使い捨て武器と言われるが多少ねじ曲がったり欠けたりした所でその加熱機構は停止したりなんかしない。
機体損傷のせいで操縦が乱れた。右腕のマニピュレーターががくつきながらも鉄斧を振り上げる。火器を装備させる暇なんて与えてやるものか。
この場面のアドバンテージが最後だった。離れた瞬間にこちらが負ける。
こうなってしまえば教本もクソもなかった。相対距離は十数メートルを割っている。全力でバーニア噴射しこのまま一気に距離を詰め寄ろうとした瞬間、視界が真っ白に染まり、弾けた。
コクピットに一際大きなアラート音が響く。
Virtual Operation
――――over
「…………あ?」
思わず馬鹿みたいな声がフェイスマスクの隙間から漏れた。
突然操縦が効かなくなり、壊れた筈のメインモニターには大きな白文字が躍っていた。
何が起きたかわからず呆然とした。
撃墜判定。シミュレーション状況終了。レッドアラート。MS-06Fザク3号機 大破。そこに自分の識別番号が踊っていた。
つまり自分が死んだ、ということだ。
敵機に攻撃された覚えはない。ならこちらの機体に限界が来てたのか?
冗談じゃない。わけが分からず最終状況を引っ張り出す。機体強度。損害状況。熱核反応炉は無事だ……なら、何故?
ヘルメットのバイザーを開け、受信機の周波数を変える。そしてそれをようやく見つけた。
最後の場面、アラートだらけのディスプレイにぽつんと白い光が点灯していた。味方識別信号。味方?
それにやや遅れるかぐらいに状況判定の知らせが表示された。フレンドリーファイア――――後背部からの280mmのバズーカ弾により自機撃墜。
一度読むだけでは理解出来ず、それをもう一度読み直してようやく理解した。
馬鹿馬鹿しい話だった。どうしようもない結論に何も言えなくなった。そしてつくづく思う。やっぱりあいつは間抜けだ、と。
ヘルメットの中、知らず深い溜め息をついていた。
「…………おいジョニィ、生きてたら言えっつったろうが」
こうして俺とジョンは教官に二時間ほどこってり絞られたあと、グラウンドを延々と二十週もするはめになった。