饅頭体形の頭部だけの生き物がカエルのように跳び跳ねて移動、一ヶ所に集まり始めている。
その謎生物たちを目で追うと田楽マンを取り囲んで集団で暴行を加えていた。
ビュティはその一部始終を見て、隣にいる慧音に尋ねる。
「なんかボーボボのお父さんみたいのがいるんだけど…」
「ああ、あれはボーボボが連れてきた『ゆっくり』という妖怪だ。
ボーボボの父親というと想像がつかんのだが、どんな奴なんだ?」
「毛です」
「え、毛?」
「はい、毛です」
「そ、そうか…」
【 少女回想中 】
私の名は上白沢慧音(かみしらさわけいね)。
人里の寺子屋で教師をしているものだ。
数日前に自称「みんなのアイドル兼ヒロイン」を名乗る首領パッチに遭遇してから今度は……
「あー! アフロ屋さんの人だ――!」
子供たちが同じ方向へ走り出す。その先にあるのは荷車を引いた長身の男。
だが一番に目につく特徴はその黄色いアフロだろう。彼の名は「ボボボーボ・ボーボボ」
首領パッチ同様に幻想郷にやって来た外来人の一人だ。
時折こうして荷車にアフロを乗せて売っている。
物珍しさもあってか買っていく人が多い。
もっとも今回はアフロではなく、幻想郷で名の知れた人物を模したカツラを売っているようで、やや可愛くデフォルメされた作り物の頭にカツラを乗せて売っている。
「良かったら触ってね」
ボーボボの一声で「わーい」と無邪気に群がる子供たち。
小さな女の子が神社の巫女である霊夢を象った頭を手に取ると…
「汚い手で触ってんじゃねぇ!」
鬼の形相で女の子から引ったくるように奪い返して、罵倒を浴びせる。
「おいっ!? さっき言ってる事と違うぞ!?」
「買う気が微塵もない貧乏人が手垢をベタベタつけやがって、ヘドが出るぜ」
「お前はもう店をたたんでしまえ!」
いそいそと生首を荷台に戻すボーボボ。
「ゆっくりしていってね!!!」
その生首の口が滑らかに動いて喋った。
「なんか喋っとる――――っ!!!?」
作り物だと思ってたモノは生物の一種だった。
私は荷台に積まれてる、それらを指差して問い詰める。
「おい、ボーボボ! これは何なんだ!?」
「なんだって、ただの『ゆっくり妖怪』だが? 知らないのか?」
「さも当然のように!? 知らないから、こうして聞いているんだが!?」
「子供たちの間で流行ってるハズなんだがな、これ」
「初耳だぞ!?」
「他にも『マッスルインフェルノレース』『キョンシーレース』とかもあるんだが?」
「何だその物騒な名前のレースは!? いや、それよりも先ずはゆっくり妖怪の説明をしろ!」
彼はサングラスを中指で上げて「フッ」と小さく笑うと、糸が切れたように膝から崩れ落ち地面に両手をつけて、サングラスの隙間から涙を流す。
「何この生き物!? 俺も知らないんですけど!?」
「自分でもわからん得たいの知れないモノを人様に売るなぁぁぁっ!!!!」
アフロを両手で掴んでボーボボの額に頭突きをかます。
痛そうな鈍い音を響かせて、ボーボボは地面に突っ伏した。
「それは『まんじゅう族ゆっくり妖怪』よ」
ボーボボの代わりに答えたのは紫のドレスの女性――八雲紫(やくもゆかり)
幻想郷を管理してる妖怪。
「知ってるのか!? ゆかりん!?」
ガバッと顔を上げて、紫に尋ねるボーボボ。
アダ名で呼んでるところを見ると親しい間柄なのだろうか…? でも「ゆかりん」って…
[ まんじゅう族:ゆっくり妖怪 ]
☆元々は頭部だけの妖怪が変化、進化したモノ。
元となる人物が存在して、その人物と似た能力を持っていることもある。
人語は理解しているようだが会話をすることはできない。
性格は穏やかで人に危害を加えることは殆どない。 by 永遠の17才 ゆかりん
説明を聞き終えると「へぇ~」と感心するボーボボ。
売り主が真っ先に知るべき事柄だと思うのだが…?
「この『ゆっくり霊夢』をくださいな」
「買うんかい!?」
「30万円になります」
「高っ!?」
「現金一括払いで」
「なにぃっ!?」
「毎度ありぃ、ぐへへへへへ……」
受け取った札束を一枚一枚、指で捲って数え始める。
どうでもいいが表情が小悪党っぽい。
ゆっくり妖怪たちの中には私の知っている人物のもいた。
白髪にリボンをつけたゆっくり妖怪。
「ん? 慧音はゆっくりもこたんが欲しいのか?」
「もこたんって何だ? もこたんは?」
――と言いつつ財布の中身を確認。
3160円
くしゃくしゃのレシート
コーラが入ったビンのフタ
コーカサスオオカブトのオス
「すまないが、これで足りるか?」
「お前はそれで買えると本気で思っているのか?」
「分割払いは可能か?」
私は至極真面目に交渉を試みることにした。
その横にウサギ妖怪の従者を連れた黒髪の少女が現れる。
「姫様、あの女のゆっくりが売ってますね」
「あら本当だわ。それじゃあ頂きましょうか」
「30万円になります」
「高っ! 姫様、やめましょう! 生首に30万円は高過ぎます!」
「現金一括払いで」
「姫様!?」
「毎度ありぃ、ぐへへへへへ……」
黒髪の少女がゆっくりもこたんを抱き締めて、いずこへと去る。
その背中を黙って眺めることしかできない私…
ここは幻想郷、それはそれは美しくも残酷な世界。
(´・ω・)にゃもし。
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