私の名は茨木華扇(いばらきかせん)。
ただの行者であり、仙人の端くれでもある。
あの三人組に会ってから私の周りは少々、騒がしくなった。
私が彼らの共通の知人によく似ているせいか、頼んでもいないのに彼らがやって来る。呼んでもいないのにやって来る。
でも、さすがに妖怪の山まで来れないでしょう。
それに普通の方法では入れない場所に居を構えているから連中もおいそれと……
部屋の壁が吹き飛び、奥から両腕を交差させたボーボボが飛び出してきた。
「ビュティ、大変だ!」
何の前触れもなくやって来た珍客に私は思わず「ブフォッ」とむせた。
「どうやってここに来たんですか!? 壁を破壊した意味は!? 玄関あるんだから、そこから入ってきてください! 家は土足厳禁です! 靴は脱いでください! あと、私は茨木華扇です!」
「そんなことはどうでもいい!」
「この家の主は私なんですけど!?」
私の注意を無視して彼は青色の四角い箱、未開封のプラモデルを取り出す。
品名は「DONPACH」首領パッチを模した模型なのだが、誰が買うのだろうか…
「首領パッチがバラバラになった!」
ボーボボがそのプラモデルを指差して叫ぶ。
頭の中で思考を巡らす。つまり、このプラモの箱が首領パッチという意味で…
「プラモ化しとる!? バラバラってそういう意味なの!?
これ組み立てたら首領パッチが出来ちゃうの!?」
額に汗を滲ませて頷くボーボボ。
彼は重々しい雰囲気を纏わせて首領パッチがバラバラになった経緯を語り始めた。
【 アフロ 説明中 】
「パチ美がやっくんを額に括りつけて人里を練り歩いていた時の話だ」
「あの―、さっそく意味不明で理解に苦しむ単語と行動が出てきたんですが…?」
「言葉だけではわかりにくいか… なら、これでどうだ」
ちゃぶ台で紙芝居を始めるボーボボ。
ちなみに題名は「バカ物語」ケバい化粧をした首領パッチと不気味な人形が描かれていた。
「「ゆっくりしていってね!!!」」
ボーボボが呼び出したのか、大量のゆっくりと共に紙芝居を観賞。
壮大な音楽が流れ、紅いカーテンが左右に開いていき、物語が始まる。
パチ美がやっくんという名の人形を引き摺りながら人里でデートしているとやっくんが一人の女性に心奪われてじっと見つめる。
嫉妬に狂ったパチ美。背後に炎を燃やして、ネギを片手にその女性へと飛んで行く。
風見幽香(かざみゆうか)に!
「ちょっと、なにやってんの――――――――!!!?」
憤怒の形相をしたパチ美が「真のヒロインは私よ!」と襲いかかるも、あっさり返り討ち。
あろうことか近くにいたアリスを指差して「あの人に命令されて、やらされました!」と、罪を擦り付けようとするも、あっさりバレる。
「…でしょうね」
なんやかんやで、笑顔の幽香から口の中に傘の尖端を突っ込まされて『マスタースパーク』
「えぐっ!?」
「めでたし、めでたし」と締め括って紙芝居を終わらすボーボボ。
いったいどこに感動する要素があったのか、ゆっくりたちが涙を流して嗚咽を漏らす。
「正直、コイツはウザいから無視して放置したいのだが…」
「一応、仲間だよね? あなたたち?」
「万が一、何かの間違いで復活でもしたら…」
「何かの間違いって…」
「ヤツのことだ、ねちっこく言ってくる」
「うん、そうだね」
青い箱にローマ字で書かれた首領パッチのプラモデル。
彼と思われる似てないイラストに、税抜きで「80円」の値札が張られている。
「でも組み立てるにしても、私は作った経験ありませんよ?」
「大丈夫だ、問題ない。こんなこともあろうかとプロを呼んでおいた」
自信満々で答えるボーボボ。
襖の戸が開かれ、奥から天の助が現れる。
ただし、全身を獣にでも引っ掻かれたようなキズを負っていて、立っているのが精一杯だった。
「この家の周辺にいる虎、竜、鷹に襲われた……」
そう言ってバッタリと前のめりになって倒れる天の助。
「動物を放し飼いにしてるのを忘れてたわ…」
私たちは天の助が復活するのを待った。
【 天の助 再生中 】
「組み立てるだけならば、ここじゃなくてもよいと思うのですが?」
ここは妖怪の山の近くにあり、見つけるのが困難な場所。
わざわざ組み立て作業をするためだけにここに来る必要はない。
「ああ、それはだな…」箱を逆さにひっくり返して中の部品を畳の上に落とす天の助。
滝の水のように落ちていくプラモの部品。部屋一面を埋め尽くしたところで空になる。
明らかに箱の容量を大きく上回っている。
「部品がざっと5000以上あるからな、広くて誰にも迷惑がかからない場所が必要なんだよ」
「部品、多っ!? 家だったら迷惑かかってもいいっていうの!?」
【 バカ 組み立て中 】
静かに首領パッチを組み立てる天の助。胴体の半分まで完成している。
彼の横には外科医の格好で魚の骨格標本を作り上げるボーボボの姿が…
「よし、そろそろ骨を組み込むか…」
「ああ」と短く頷いて魚の骨を手渡すボーボボ。
「それも部品だったの!? …っていうか骨が魚の骨!?」
骨を手にした天の助が首領パッチの体に入れようとしたとき「にゃ~」という複数の猫の鳴き声とともに障子を破って大きな二つの影が部屋に転がり入る。
旧地獄のお燐と九尾の式である橙。
「猫は猫でも、化け猫!?」
二体の化け猫は部屋の中の壁と天井を蹴りながら縦横無尽に跳び回り、天の助とボーボボを間に挟んだ位置にて猫のように四つ足で体を低くして着地。
『
身を屈んだ状態から螺旋を描くように高速回転、天の助とボーボボを挟み込むように上昇しながらアッパーを喰らわせた。
「なんかスゴい技、出した――――っ!!!?」
アッパーを喰らった二人は天井を突き破って空へ打ち上げられ、頭を下にして庭に落下。大の字になって倒れ、そのまま動かなくなる。
ちなみに二体の化け猫は魚の骨を根こそぎ奪って逃走。
去り行く彼女たちの背を見て私は心配する。
「首領パッチの骨を食べて大丈夫なのかしら…」
私の疑問に全身を包帯にくるまれたボーボボが世にも恐ろしい回答を述べた。
「最悪、首領パッチと同じ思考になるかもしれん」
「ええ――――――――っ!!!?」
「急いで回収した方がいいだろう。急ぐぞ、天の助!」
しかし、ボーボボの呼び掛けに反応を示さない。
彼がいる方向に振り向くと啜り泣くゆっくりたちに囲まれ、倒れたままの天の助。
【 天の助 死亡 】
「「死んどる――――っ!?」」
これが後のしょーもない小さな事件『バラバラ殺首領パッチ事件』
その事件の一部に過ぎなかった。
(´・ω・)にゃもし。
変更点が幾つかあるよ。