ガーディアン・フリート❮はいふり×GAMERA❯   作:濁酒三十六

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八話・岬明乃は思う

 横須賀女子海洋学校学校長である宗谷真雪と教頭先生に見送られて二人の黒服の男は不快な表情を隠す様にサングラスをして校長室を出て行った。教頭が彼等が出たドアを僅かに開けて確認…黒服の後ろ姿を確かめた。

 

「一応、学校区域を出るまで監視を付けます。」

 

 教頭の提案に真雪は頷く。彼等黒服は海上安全委員会の遣いであった。話の内容は委員会による晴風クラス全員の拘束…、そして岬明乃と宗谷ましろへの尋問願いであった。当然真雪は横須賀女子校の校長としてキッパリと彼等の申し出を拒絶…決裂となった。問題はあの黒服が大人しくこの学校区域より出て行ってくれるかどうかだ。

 

「教頭先生、当分晴風クラスは放課後の外出禁止を言い渡して下さい。

それと海洋実習の日にちを早める様に古庄教官に伝えて。」

 

 教頭は校長に敬礼し、「了解。」と返事をして校長室を出た。真雪は室内にあるノートパソコンに晴風クラスの副艦長であり実の娘…三人姉妹の末っ子である宗谷ましろのプロフィールを出した。ましろは本来ならば戦艦武蔵のクラスにしてもおかしくない優秀な生徒…の…筈だったのだが、入学試験にて全問正解の筈が解答欄を一つずらしてしまい全問“不”正解となってしまったのである。本来であれば落第なのだが解答欄のズレに対して教官全員が理解を示してくれ、最低枠の晴風クラスに入学したのである。

 そして晴風艦長である岬明乃は片寄ってはいるが及第点ギリギリの点数で合格していた。恐らく山勘による勉強が功を奏したのであろうか。だが真雪は明乃の両親の欄に目が行き、表情を沈ませた。両親は明乃が幼い頃に旅客船の沈没事故により二人共死亡…彼女の後見人には同じく横須賀女子の入学生にして入学試験で主席を取った知名もえかの両親の名前があった。

 

「何でかしら、ましろと岬明乃さんの出会いには運命的なものを感じるわね…。」

 

 別に今の言葉に何の意味もない。何の根拠もなくそう思い、口に出てしまっただけである。真雪は小さく微笑み、席を立った。…そしてその日は何事もなく過ぎ去ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の放課後、晴風クラスの面々は項垂れに項垂れ…ダラダラと重い足取りで寮への帰路に着いていた。明乃もかなりガッカリした表情で一人歩いていた。今日はましろが校長室に呼ばれて一緒ではなく、もえかも海洋実習の日が近付くに連れ武蔵クラスの艦長として放課後も多忙になっていた。明乃も航洋艦晴風の艦長なのだが晴風は修理中で噂では晴風クラスは実習はなし、艦長としては暇な状況ではあった。明乃は溜め息を吐き考え込む。

 

(いいのかな~、私も何かしないといけないのに…やる事が見つからない。

晴風クラスが海洋実習に出れないのは仕方ないにしても、やっぱり実習行きたいし、何かしないと…あの時の事を考えてしまう。

人の死…ギャオス…そしてガメラ…。)

「ガメラはどうやって…、私を助けたのかな…?」

 

 実は岬明乃はガメラによって助けられた時の記憶が曖昧なのである。ギャオスに食われかけ、身体を噛み砕かれた事に自覚があった。右胸から左脇にかけて鋭い牙が彼女の小さな身体を突き破り肋骨を背骨を砕き、肺を潰し、臟腑を引き裂いた。そしてギャオスより放り出された際に…黒く大きな異形の掌が優しく受け止めてくれたのは何となく朧気に覚えてはいるのだが、其処で意識は途切れて次に目覚めたのは病院のベッドの上であった。その大きな手がガメラであった事はましろによって知らされたのだ。しかし即死していたかも知れない致命傷をガメラが治癒してくれたのかと聞いたがましろはおろか皆が首を傾げてしまった。ましろ達にも何故明乃の致命傷が完全に治癒してしまったのかは解らない様であった。…ふと明乃はあの時不思議なポカポカと温かい感覚を感じていた事を思い出した。そしてそれはつい先日にも同じ感覚を感じた記憶があった。

 

「そうだ、確か“トト”と初めて出会って目が合った時だ。」

 

 そう一人ごちをした時、“ププーッ”と自動車のクラクションが鳴り、明乃の横に二人乗りの電動車両が停まった。パワーウインドウが降り、顔を出したのは横須賀女子の一年担当の教官である古庄薫であった。

 

「良かったわ、追い付いて。

悪いけど岬明乃さん、海洋実習の件で手伝ってもらいたいの。車に乗ってくれないかしら?」

「はい、構いませんが…、私晴風の艦長です。」

 

 明乃は晴風クラスが海洋実習に行けないのに手伝いに晴風艦長の自分を誘うのは他のクラスより手が空いていると思われたかと思い、ちょっと腑に落ちなかった。

 

「そうよ、晴風艦長の貴女に晴風クラスの“班分け”をお願いしたいのよ。」

「…?…はん…わけ??」

「えぇ、そう。貴女達の船の修理は間に合わないから他の船へ乗船させて晴風クラスは海洋実習をするのよ。」

 

 古庄教官は運転しながら笑顔で明乃に伝える。それを聞いた明乃は先程までのガメラへの疑問を忘れたかの様に顔を綻ばせ狭い車両の中で万歳をして古庄に怒られたのであった。

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