聖書に記されし異教神(更新停止)   作:カイバル峠

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本当にお久しぶりです!

長らくお待たせして申し訳ありませんm(_ _)m



別離

別離

 

sideヴァーリ・ルシファー

 

 

闇夜に湧く魔術師の群れ

 

幾度薙ぎ払っても湯水の如く湧いてくる。

 

視界に映るのは見渡す限りの黒

 

 

 

――――雑魚、雑魚、雑魚―――――

 

 

―――――雑魚ばかり。

 

 

アザゼルはいつだってそうだった。

 

先日のコカビエルの時もそう。

 

俺に強くなれと言っておきながら同時に世界を滅ぼす要因を生み出すなとも言った。

 

無理な話だ。

 

神や魔王、それにドラゴン―――――倒せば世界が滅ぶ要因となりうる存在を相手取ること、白い龍(バニシング・ドラゴン)を宿し、かつ真なる魔王ルシファーの血を引く白龍皇たる俺が強くなるためには避けては通れない。

 

中途半端であってはならない。

 

 

―――――――――アース神族と戦ってみないかい?―――――――――――

 

 

・・・感謝しなくてはな。

 

 

 

アザゼルには勿論感謝してる。

 

俺を気味悪がって捨てた実の親に代わってここまで俺を育ててくれたのだから・・・。

 

正直今回の作戦も少々気が引ける。

 

だがそれでも俺は・・・

 

 

 

ゴオッ

 

 

 

!!

 

この気配・・・オーフィスか。

 

自ら出向いてくるとは、無限の龍神様はよほどあの神にご執心らしいな。

 

おっと、カテレアの魔力が急激に増大したな。

 

オーフィスの蛇を使ったのか・・・

 

 

 

 

 

・・・ならそろそろいいだろう

 

 

 

 

俺は作り出した魔力弾を一斉掃射する―――――――

 

 

 

 

―――――――アザゼルに向かって。

 

 

 

 

フッ

 

 

 

 

?!

 

一瞬にして俺の放った全ての魔弾が消失する。

 

「あらあら、ようやく尻尾見せたのね。待ちくたびれたわ。」

 

声のした方に目を向ければそこには一人の女性

 

赤みを帯びた金の長髪に紫苑の瞳、そして他の追随を許さぬほどの圧倒的なまでの美しさ。

 

 

 

―――――――――『天后』・女神アナト。

 

 

神格の中でもトップクラスの戦闘力を誇る戦女神にしてかのバアル神の妻。

 

「ア、アンタ・・・」

 

アザゼルも驚いている。

 

確かに全く気配を感じなかった。

 

だがこのタイミングで出てくるということは・・・

 

「・・・なるほど、貴方方には全てお見通しだった、というわけか・・・」

 

「ええ。それも最初からね。」

 

それはマズいな。

 

元々今回の作戦はどう考えても勝てる公算が限りなくゼロに近かったのにも関わらず旧魔王派の連中が断行したものだからな。

 

ただでさえ失敗すると分かっていたところに最初から読まれていたとなるとますます勝ち目はない。

 

想定外の事態としてオーフィスが自ら出張ってきたわけだが生憎とオーフィスは組織にはてんで興味がない。

 

仮に今回の強襲部隊が壊滅しても眉ひとつ動かさないだろう―――――――この神々さえ手に入れば。

 

結局のところオーフィスが求めるのは次元の狭間での静寂、そしてそれをなすべく赤龍神帝(グレートレッド)を次元の狭間より追い出すのに十分な戦力。

 

それだけなのだから――――――

 

 

「さて、覚悟はいいかしらね、反逆者さん?」

 

 

!!

 

俺とアナトの周囲には結界、それもこの学園を覆うものよりも遥かに強固にできた結界が展開されていた。

 

そして彼女より発せられる闘気が急激に膨れ上がったかと思うと、いつの間にかその手にはハルバードが握られていており、その瞳には狂気と愉悦の入り混じった色が。

 

くっ・・・今の俺では到底敵う相手ではn「因みに」?!

 

「最初に一つ言っておくけど、これは戦いではないわ。これは―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――『狩り』よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドッ

 

 

 

 

もはや当てられるだけで意識が飛びそうになるくらいの覇気と闘気。

 

だが・・・

 

「・・・面白い」

 

俺が『禍の団』に入ったのはアース神族、ひいてはまだ見ぬ世界の強者達と戦うため。

 

こんなところで死ぬなんて真っ平御免だが同時にこんな桁外れの強敵と戦える機会はそうそうない。

 

『よせ、ヴァーリ!『天后』アナトは今のお前の敵う相手ではない!このようなところで果てるつもりか?!』

 

アルビオンの必死の制止の声。

 

ああ、分かってるさ、そんなことくらいは。

 

それでも俺は自分の力を試さずにはいられない!!

 

「神よ、この白龍皇がお相手仕ろう!!」

 

俺は宣言すると同時に幾重もの魔力弾を出現させ、女神に向けて放つ。

 

これは飽くまでも目眩まし。

 

当然こんなモノで倒せるなどとは微塵も思っていない。

 

だから・・・

 

『Half Dimension!』

 

グバンッ

 

俺の張った弾幕が一気に半減する

 

そして何度も繰り返して半減の力を行使する。

 

 

さて、神格相手に俺の力はどれだけ通用するのか・・・!

 

 

 

 

もうどれだけ繰り返しただろうか。

 

半減に半減を繰り返した結界内の風景はグチャグチャで原型すら留めていない。

 

いや、正確にいえば『半減』を繰り返すだけであればこのような奇妙な光景は生まれなかっただろう。

 

・・・縮小を繰り返したはずの世界の中のただ一か所、俺の、白龍皇の力を拒絶するかの如く周囲とは全く別の理に支配された領域がこの景色の『歪み』を生ずる元となっていた。

 

「ふうん、中々面白い手品じゃない。けれど・・・」

 

そこには先程と何一つ変わらないアナトの姿が。

 

彼女のいる場所を中心とした半径3メートル圏内だけは元のままだ。

 

「それで終わり?」

 

・・・全く効いていないというのか。

 

「それじゃあ、今度はこちらの番かしら?」

 

そう言うや否や視界からアナトの姿が消える。

 

すると

 

「こっちよ」

 

背後から声が。

 

「墓穴を掘ったわね。アナタが自分の周り全てに対して半減を繰り返したせいで私とアナタの距離もそれだけ縮まっていたのよ?まあ元々あの程度の距離では大差なかったのだけれど。それに『白龍皇の光翼』(ディバイン・ディバイディング)の半減がどれほどのものかと思って敢えて(・・・)受けてみたのだけれど・・・やはり大したことなかったわね。」

 

ピキ・・・

 

何かが軋むような音を立て、半減を繰り返した世界が元に戻ってゆく。

 

どうなっている?

 

「くっ」

 

可能な限りの速さで、相手に相対する向きで距離をとろうと試みる。

 

だが

 

「無駄よ」

 

無情にもそれ以上の速さで後ろを取られてしまう。

 

声だけでも分かる。

 

完全に遊ばれているのだと。

 

クッ、ならば

 

『Divide!』

 

半ば苦し紛れにだが、相手の力そのものの半減を狙う。

 

しかし・・・

 

「・・・興醒めね・・・」

 

 

・・・何が起こったのか分からなかった。

 

ただ感じたのは『何か』が崩れ去るような感覚

 

その『何か』が具体的にどのようなモノであるかは何となくしか分からない。

 

それは肉体のようであり、力のようであり、魂のようであり、そして世界のようでさえあった。

 

・・・いや、それはおかしいな・・・

 

『俺』は確かにまだ(・・)存在している。

 

故に、少なくとも魂まで砕けてしまったわけではないのだろう。

 

するとあれは一体何だったのか・・・

 

初め、俺が空間ごと半減を狙った際にアナトの周りだけが効果を受けていなかったことからてっきり俺の力を無効化したのかと思った。

 

そして彼女が動いた瞬間俺の力で半減した世界が元に戻って行った。

 

それに俺が力を半減させようとした際も相手の力が半減する様子も俺に力が流れてくる様子も微塵も感じられなかった。

 

・・・いずれも確かに『発動』はしていた。

 

しかしそれだけでは先程の感覚は説明できない。

 

あの時崩れ去ったように感じたモノ・・・っ!!

 

まさか・・・いや、十分にあり得る・・・

 

本当にその通りだとしたら・・・

 

 

 

 

俺は柄にもなく思考に没頭していた。

 

そしてそれ故に、いや、そうでなくともあの状態で体が思い通りに動いてくれたかはかなり怪しいが―――――――――――

 

 

―――――気付いた時には受け身を取ることさえできずに地面に叩き付けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

sideアザゼル

 

 

「フフフ。命拾いしましたね、アザゼル。」

 

カテレアが皮肉気な笑みを浮かべてくる。

 

ヴァーリが反旗を翻してからどれだけ経っただろうか?

 

俺とカテレアとの攻防は未だに続いている。

 

戦況は拮抗・・・と言いたいところだがいつまで持つか分からねぇ。

 

さっき俺達がオーフィスの登場に気を取られた隙に何か飲み込んで以来このザマだ。

 

俺が放った光の槍を腕を薙ぐだけで消しやがった。

 

・・・恐らく今の奴の力は死んだ前魔王並か。

 

クソッ

 

「チッ・・・オーフィスの野郎に何を貰った?」

 

「ええ、世界を変革すべく、無限の力を有する彼から多少力を借りました。お蔭でこうしてあなたとも戦えるしミカエル、そしてサーゼクスを倒すこともできる。彼らは愚かな総督・・・そしてあなたもね。」

 

「ああ、確かにそうかもな。俺はシェムハザがいなけりゃ何もできやしねえただの神器マニアかもしれない。――――けどよ、サーゼクスもミカエルもそこまで馬鹿じゃねぇと思うぜ?少なくともてめぇなんざよりは遥かに優秀だ。」

 

「っ・・・世迷言を・・・!いいでしょう、新世界創造の第一歩として堕天使の総督たるあなたに止めを刺しましょう!!」

 

俺の言葉がよほどカンに障ったのか、余裕な様子を見せていた先程とは打って変わって積極的な攻勢に出るカテレア。

 

それに呼応して繰り出される攻撃も激しさを増す。

 

このままじゃ埒が明かねぇな。

 

 

 

 

正直まだ使いたくはなかったが・・・仕方がないか。

 

 

 

 

俺は一旦距離を取るべく一度に出せる最大量の光の槍を形成してカテレアに浴びせかける。

 

「性懲りもなく、こんなもので・・・」

 

それを奴はやはりあっさりと消し去る。

 

だがそんなことは最初(ハナ)から想定済みだ。

 

時間さえ稼げればそれでよかった。

 

カテレアが俺の攻撃に対処する一瞬の隙を見計らって距離を取り、俺は懐から一本の短剣を取り出し、奴がいる方に向ける。

 

「それは―――」

 

俺の持つ短剣を見た瞬間カテレアの表情が訝しげなものに変わる。

 

「・・・俺は神器マニアが過ぎてな、レプリカだったり、こうして自分でオリジナルを作ることもあるくらいだ。まあ大半が屑ばかりでどうしようもないモンばかりだがな。その点聖書の神は凄いよ。俺が唯一奴を尊敬するところだ。――――だが甘い。『神滅具』(ロンギヌス)『禁手』(バランス・ブレイカー)なんて世界の均衡を崩しかねないほどのバグを残したまま死んじまったんだからよ。」

 

「安心なさい。新世界において神器などというものは絶対に作りません。そんなモノがなくとも世界は機能する。――――現状に不満を持つのは何も我々だけではありません。いずれ世界の神々の中にも我々に賛同するものが現れるでしょうし、我々もまた彼らに働き掛ける予定でいるのですから。」

 

「ハッ、聞けば聞くほど反吐の出そうな理想だな。さっきアダトの野郎が言ってたこともう忘れたのかよ?!神々(アイツら)はてめぇらなんぞよりよっぽど世界ってモンをよく知ってやがる。何よりてめぇらみたいな他者の力に縋らなきゃ何もできないようなガキの革命ごっこに付き合ってくれるほど優しくはねぇ。堕ちた俺が言えたことじゃないがあんまり神サマは舐めてかからない方がいいぜ?だがそれ以上にだな、俺の楽しみを邪魔する奴は――――――消えて無くなれ」

 

俺がそう言うや否や、短剣が変形し、パーツに分かれて光が溢れ出す。

 

「ッ?!これは・・・アザゼル、まさか・・・!!」

 

「・・・禁手化(バランス・ブレイク)!!」

 

 

 

 

sideアスタルテ

 

 

アダトが突如として屋上に現れたオーフィスの下へ向かってから暫く経つ。

 

私達会議室に残った面々は戦いの余波が外の住宅地に及ばないよう結界を展開・維持に努めつつ、戦いの行方を見守っていた。

 

オーフィスの出現を機に校庭で繰り広げられる戦闘の流れは一変した。

 

・・・飽くまで表面上は、だけど。

 

カテレア・レヴィアタンが何か小さな黒いモノ、恐らくはオーフィスの蛇を飲んでドーピングし、遂に白龍皇が行動を起こした。

 

白龍皇がカテレアと交戦中のアザゼルに死角からの攻撃を試みるも、それを見たアナトが「私の出番ね」と言わんばかりの勢いで飛び出して行き、そのまま白龍皇と交戦状態に突入した。

 

前魔王ルシファーの末裔にして白龍皇。

 

才能的には歴代トップと見ていいだろう。

 

あと少し、もうほんの暫くすればきっと彼は文字通りの超越者の領域に足を踏み入れることになっただろうけれど・・・流石に今の彼では姉さんには敵わない。

 

『覇龍』《ジャガーノート・ドライブ》を使えば少なくとも善戦はできるかもしれない。

 

しかし『覇龍』(ジャガーノート・ドライブ)は使用者の生命力乃至その代わりとなる力を著しく消耗する、謂わば諸刃の剣。

 

それで仮に姉さんを退けることができたとしても、魔王、天使長、堕天使総督、神が控えているこの状況下でそれをするには余りにもリスクが高すぎる。

 

彼の性格上オーフィスの力を宛にするとも考えにくいし、オーフィスもまた手を出すような真似はしないだろう。

 

 

 

 

ドオオオオオオオオン

 

 

どうやら予想通り、幕引きが近いようだ。

 

さて、問題はアザゼルとカテレア。

 

流石にオーフィスの蛇で前魔王級の力を得たカテレアの相手を続けるのはキツいと判断したのか、アザゼルは一旦距離をとると、何やら懐から短剣のようなモノを取り出す。

 

アレは・・・神器?

 

しかもドラゴンの気配を感じる・・・

 

それも龍王クラスの。

 

「・・・禁手化(バランス・ブレイク)!!」

 

彼がそう叫ぶのと同時に短剣から眩い光が溢れ出し、光が止んだ後、そこには金色の全身鎧(プレート・アーマー)に包まれたアザゼルの姿が。

 

「これは『白い龍』(バニシング・ドラゴン)と他のドラゴン系神器を研究して作り出した俺の傑作人工神器・『堕天龍の閃光槍』(ダウン・フォール・ドラゴン・スピア)、そしてその擬似的な禁手化(バランス・ブレイカー)状態―――|『堕天龍の鎧』《ダウン・フォール・ドラゴン・アナザー・アーマー》だ。」

 

・・・神器マニアだとは聞いていたけれどまさかこれほどとはね。

 

確か以前も「僕の考えた最強神器」と称して|『閃光と暗黒の龍絶剣』《ブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード》「ぶえっくしょん!!!」・・・当たりね・・・とかいう人工神器を考案して大戦中ミカエルがそれをビラにしてばら撒いたお蔭で敵勢力ばかりか自陣営にまでその厨二ぶりを知らしめることになったとか・・・。

 

「・・・力を宿したドラゴンをベースにしましたね・・・?」

 

「ああ、ちょっくら二天龍――――『赤い龍』(ウェルシュ・ドラゴン)『白い龍』(バニシング・ドラゴン)の神器を模して『黄金龍君』(ギガンティス・ドラゴン)ファーブニルをこの人工神器に封じてな。まあ今のところは成功ってとこだ。」

 

なるほど。

 

強力なドラゴンの波動を感じると思ったらあの六大龍王の一角のファーブニルだったとはね・・・ただ見たところ完璧に封印しているわけではないみたいだけれど。

 

帝釈天(インドラ)にやられたヴリトラに続いてファーブニルも封印されたという訳か。

 

となると今残っている龍王はティアマット、玉龍(ウーロン)、ミドガルズオルム、それから悪魔に転生したというタンニーン・・・。

 

赤白が覚醒した今出会う日は近いのかもしれない。

 

「アザゼル・・・!!それだけの力を有していながらあなたは!!」

 

「フン、オーフィスをバックにしておいてよくもまあそんなことが言えたもんだな?」

 

「・・・神器の研究はそこまで進んでいなかったはずですが・・・」

 

「どうやら組織の裏切り者が神器研究の情報をいくらか持ち出したようだがそいつは無駄だ。核心に近い部分は俺とシェムハザしか知らないからな。」

 

カテレアは舌打ちし、全身に青黒いオーラを纏う。

 

「・・・いいでしょう、ならば私はあなたのそのご自慢の神器もろともあなたを葬るまでです!!私は偉大なる真なるレヴィアタンの継承者、カテレア・レヴィアタン!!忌々しき堕天使の総督如きに負けはしないッ!!」

 

「面白れぇ。来いよ」

 

アザゼルが口の端を釣り上げてカテレアを手招きする。

 

「舐めるなっ!!」

 

アザゼルの挑発に応じてカテレアが飛び出す。

 

カテレアは飛び込み、アザゼルも手に握る槍を振るう。

 

余波で遥か後方まで大地が避けるほどの攻撃。

 

そして勝負はほんの一瞬にして決まる。

 

―――――勝負あったわね。

 

次の瞬間、カテレアの体より鮮血が吹き出し、彼女はそのまま力なく地に膝を着く。

 

「ッ!・・・ただでは・・・やられぬ!!」

 

顔を上げたカテレアの瞳には凄まじいまでの憎悪。

 

そしてカテレアの腕が触手状に変化したかと思うと、そのままアザゼルの左腕に巻き付き、彼女自身の体にも怪しげな紋様が浮かび上がる。

 

更に、カテレアを中心として校庭全体、ひいてはこの学園の敷地全体をも覆う巨大な魔法陣が出現し、その魔法陣は彼女の体に浮かび上がった紋様が幾重にも折り重なって形成されていた。

 

あれは・・・

 

「カテレア・・・自爆する気か・・・?!」

 

私の近くで戦いの様子を見ていたサーゼクスが呟く

 

「ええ、あれは自爆用の術式に違いありません。しかも見たところかなり強力な・・・恐らく自らの生命力や気の力はもちろん肉体や魂に至るまで、己が存在の全てを魔力に還元して暴発させる類のものです・・・勝算がないとみるや周辺地域全てを道連れにしても我々を抹殺しようというわけかッ・・・!」

 

苦虫を噛み潰したような表情で言葉を発するミカエル。

 

「カテレアちゃん・・・」

 

どうしてこんなことになってしまったのか、そう言いた気な表情を浮かべるセラフォルー。

 

魂と肉体を全て魔力に変換しバーストさせれば莫大な力になり、その被害は計り知れない。

 

前魔王の縁者であることに加え、更にオーフィスの蛇の力が上乗せされている今それが起これば・・・

 

「チッ!死と引き換えに俺も道連れってか、安っぽい発想だが面倒なことしてくれるな!」

 

アザゼルも槍で触手の切断を試みるが一向に切れる様子はない。

 

至近距離で受ければいくら人工神器の鎧を纏ったアザゼルといえど致命傷は避けられない。

 

「無駄です。その触手は私の命を吸った特別性、切ることなどできませんよ・・・さあ、終わりにしましょう!!」

 

「ッ!!」

 

カテレアの体に浮かぶ紋様が怪しい輝きを放ち始める。

 

もう一刻の猶予もなし、か・・・

 

私は二人のいる場所に向けて左手を翳す。

 

 

 

 

 

 

―――――――「『大地母神の戦盾』(アースティルティト)」―――――――――

 

 

 

 

 

 

sideカテレア・レヴィアタン

 

 

堕天使総督アザゼルとの一騎打ち。

 

如何に私の力がオーフィスの蛇によって底上げされているとはいえ、相手は聖書にも名を残すほどの遥か古の時代よりの強者。

 

戦闘経験も技術も彼の方が遥かに上だった。

 

「くっ」

 

飛び込んだはいいが、私の体はアザゼルの槍に切り裂かれ、私はその場に膝を着く。

 

ここまでか・・・

 

だが最後を悟った刹那、ふと、今までの記憶が蘇る。

 

それは忌々しい記憶。

 

 

 

 

 

先の大戦は聖書に記された三勢力全てに未曾有の惨禍をもたらした。

 

天使は上級から下級に至る数多の天使と自らの創造主である神を失い、堕天使側も幹部クラスを除いた大半が死滅、そして我々悪魔も72柱を初めとする大半の上級悪魔と魔王を失った。

 

どの勢力も大幅な勢力の減退を強いられ、もはや戦争どころではなくなっていた。

 

だがしかし、事実上、三勢力中最も不利なのは悪魔だった。

 

天使や堕天使と違い悪魔には光という致命的な弱点があり、更に光は連中が最も得意とする攻撃だからである。

 

とりわけ堕天使は既に堕ちている上に天界に住む天使と違い、冥界を拠点としているだけ更に厄介だった。

 

悪魔は他の二種族と違い同族間で子孫を残せるが、元々出生率が著しく低いので戦力の増強という点では期待できない。

 

それにいつまでも連中が手をこまねいているとも限らないし、更にいえば私達の神話体系に恨みを持つ他の神話体系の神々の侵攻を受ける可能性さえあった。

 

故に、早急に手を打つ必要があったのだ。

 

ところが事はそう単純にはいかなかった。

 

悪魔の中でも反戦を主張する者が現れたのだ。

 

その中には本来の魔王の血筋以外の家系より生まれた類を見ないほど強力な悪魔も含まれていた。

 

それが今の四大魔王。

 

彼らは前魔王すらはるかに凌ぐ力を誇っていた。

 

そして尚許せないのが上層部。

 

前魔王生存時には積極的に戦争推進に携わっていたにも関わらず、現四大魔王が台頭して来るや否や掌返したように態度を変え、我々本来の魔王の血族を邪魔者扱いし始めたのだ。

 

そして現四大魔王を担いで我々の殲滅を試みた。

 

そして敗れた我々は冥界の辺境へと追いやられる。

 

代わって彼らは現四大魔王――――偽りの魔王に据えられた。

 

すっかり目の敵にされた我々は忌々しい偽りの魔王に従う者達に“旧”魔王などと呼ばれ、長きにわたる恥辱の日々を強いられた。

 

 

 

 

――――全ては奴らの仕業。

 

 

 

――――我らは誇り高き真なる魔王の末裔

 

――――このような屈辱を甘んじて受ける謂われはない

 

――――我らは我らの誇りを取り戻さねばならない

 

――――態々テロリストなどという汚名を背負ったのだ

 

――――そのためには偽りの魔王とその血族、およびそれに加担する者、悪魔の仇敵全て、そして何より――――――我々を邪険にし、嘲笑った者共をを討ち滅ぼさねばなるまい・・・!!

 

 

 

 

 

しかし、たった今アザゼルの攻撃でかなりのダメージを受けてしまった。

 

傷の具合からしてもう長くは持たないだろう。

 

白龍皇やオーフィスの援護も期待できそうにない。

 

このままアザゼルの槍に貫かれて散るのか。

 

まだミカエルにサーゼクス、そしてセラフォルーにはかすり傷一つ付けられていないというのに目的を果たすことなくこんなところで犬死するのか。

 

 

 

―――――――ふざけるな――――――

 

 

私の中から黒いものが湧き上がる。

 

 

 

ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!!!

 

 

 

 

私は真なる魔王レヴィアタン・・・!

 

断じて犬死などしてなるモノか。

 

 

「ッ・・・ただでは・・・やられぬ!!」

 

 

この身の終わりは甘んじて受け入れよう。

 

だがただでやられるわけにはいかない。

 

私は腕を触手状に変化させてアザゼルを捕える。

 

そして前もって己が身に施しておいた術式を発動する。

 

これを発動すれば肉体はおろか、魂さえも消滅する。

 

しかしそれにより生じる破壊力はこの学舎はもちろん周辺地域一体を消し飛ばしてなお余りある。

 

それで少しでも我らの悲願に近づけるのであれば安いものだ。

 

私が死んでもまだ同志達がいる。

 

如何なる犠牲を払おうとも我らの邪魔立てをする者達には全て消えて頂く!

 

アザゼルも何とか触手の切断を試みる。

 

無駄だ。

 

この術は一度発動したら止めることなど不可能。

 

仮に私本体を攻撃しても計算上の最大威力には及ばないがそれでもアザゼル一人だけなら確実に殺せる。

 

トップが一人でも死ねば会談継続は事実上不可能。

 

これでこの会談はTHE END。

 

「さあ、終わりにしましょう!!」

 

 

 

 

 

 

だがその時だ。

 

突然、私とアザゼルのいる場所が結界に覆われる。

 

「ッ?!」

 

「この結界・・・まさか」

 

アザゼルが何かに気付いたように声を上げる。

 

そして私の体の紋様の放つ光が徐々消えていく

 

「ウ、ウソ・・・?術式の発動が止まった?!」

 

次に腕の触手化が解除され、力尽き、支えを失った私はそのまま地に平伏す。

 

気付けばオーフィスの蛇で強化された分の力も消えていた。

 

そんな・・・

 

これは正真正銘、最後の切り札。

 

それが不発に終わった今、もう私には後がない。

 

流れ出た血とオーフィスの力を失い、更にさっきの術式で大幅に力を消費していたこと、何より最後の捨て身の攻撃さえも阻まれ、一矢報いることもできなくなったことに対する絶望の為、急激に意識が朦朧としてきた。

 

「どうやら自爆テロは失敗のようだな・・・。その傷じゃもう長くは持つまい。お前はよく戦ったよ。せめて最後は苦しまずに逝け。」

 

アザゼルは手に握った光の槍を構え、地に這いつくばる私を見下ろす。

 

気の所為でなければその瞳には一抹の憐憫の情が浮かんでいたように思えた。

 

 

そしてアザゼルは槍を振り下ろす。

 

ああ、これが・・・結末・・・

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

「悪いけど、その娘は貰うわ」

 

 

 

 

運命の悪戯とは正にこのことを言うに違いない。

 

どこからともなく聞こえた声。

 

薄れゆく意識の中、最後に私の目に映ったモノ。

 

それは―――

 

 

 

―――――月明かりを思わせる白銀だった―――――

 

 

 

 

 

 

 

sideイッセー

 

ギャスパーを救出した俺達は魔王様方のいらっしゃる会議室へ向けて歩を進めていた。

 

助け出したはいいがコイツの引きこもりは一向に治る気配がない。

 

コイツの体質も直していかないとな。

 

そんなことを考えつつ玄関まで辿り着いた時だった。

 

ドッガァァァァァァァアアアアンッ!

 

俺達の目の前に何かが落下してきて、土煙が舞い上がる。

 

土煙が晴れて姿を現したのは・・・

 

「クッ・・・流石は『天后』(バアラト)か・・・ここまで手も足も出ないとはな・・・」

 

ボロボロになった、白龍皇――――ヴァーリだった。

 

神々しい輝きを放っていた鎧は今やあちこちが砕けており見るも無残な姿となっていた。

 

「久々にドラゴン、それも二天龍の片割れを狩れるからと思って楽しみにしていたのだけれど・・・期待外れだわ」

 

「「「?!」」」

 

聞き覚えのある声。

 

声のした方に目を向けるとそこにいたのは駒王学園の二年の三大お姉様の一角にして、その正体はなんと女神様という咲桐杏奈。

 

でも、何で・・・?

 

「ど、どういうこと・・・?」

 

部長も状況が把握できていないようだった。

 

「ん?ああ、そこにいたのね。アナタたち、アダトの話を聞いてなかったのかしら?そこで無様に這いつくばってる白龍皇こそが今回の襲撃を手引きした裏切り者、言い換えればアナタ達の仲間の情報をテロリスト共に売った張本人でもあるのよ?」

 

・・・そういえばギャスパーを助けに行く前、アイツが確かにそんなことを言っていた気がする・・・

 

「欲しければあげるわよ?ソイツ。正直興醒めなのよね。『覇龍』(ジャガーノート・ドライブ)を発動して、万一上手く私を退けたとしてもまだ魔王に天使長、それにアダト達がいる以上『詰み』であることに変わりないのだから・・・。」

 

彼女は無造作に髪を掻き上げながら、取るに足らぬモノを見るが如き視線をヴァーリに向けていた。

 

「はぁ、はぁ、・・・流石は神だ、恐ろしく強い。だが・・・運命とは残酷だと思わないか?」

 

突如、ヴァーリはこちらに視線を向けて言う。

 

何が言いたいんだ?

 

「俺の本名はヴァーリ・ルシファー――――死んだ先代魔王ルシファーの末裔だ。」

 

そう言うと同時に奴の背中から悪魔の翼が幾重にも生え出した。

 




グダグダは次で終わらせる、などと大口叩いたにも関わらずこうなってしまいました(-.-;)

あと本当に今更になるのですが、やはりアーシア救出やフェニックスのくだりもあった方がいいでしょうか?

最近読み返していて原作勢との絡みがもっとあってもいいような気がいたしまして…

そこで僭越ながらも読者の皆様のご意見を聞かせて頂きたいと思います。


1.原作第一巻、第二巻の内容を補填する
2.このまま

1の場合は新たに原作1巻、2巻の内容を作成し、既に投稿済みの各話もそれに見合うように修正していく予定で、大筋では変わらないと思います。2の場合はもちろん今の調子で進めていくことになります。
期限は6/28までとさせて頂きたいと思います。
色々とご迷惑をお掛けしますが、ご協力お願い致します。

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