今回も長いです。
邂逅
邂逅
ーーーあぁ、平和だーーー
俺は有馬崇哉(ありまたかや)。どこにでもいる普通の高校生をしている。
青空の下、時折吹き抜ける風が心地良い。
こんな日は空を見上げてぼーっとするに限る。
学校の屋上のベンチの上に寝転がり、何も考えず、ただ雲の流れを見送る、傍から見れば何とも非生産的、或いは怠惰とさえ映るかもしれない。
しかし俺には今まで、この時ほど安らげる瞬間はなかった。
無論過去には栄光もあれば屈辱に塗れたこともあった。
だがそこに平穏はなかった。
人間の歴史だって紐解けば必ず何処かで争いが起きているものだ。
今、この瞬間においても例外ではない。
確かにこの国は平和だ。
しかし遠い異国の地では今も戦火が広がり多くの血が流れている。
まあもっとも、少なくともこの国に暮らす者にとっては対岸の火事程度にも思われないことだろう。
だがいつまでもこのままでいられる保証はどこにもない。
どんな些細なことでも捩れに捩れて争いの火種になりうるのだ
ーーーましてや荒れつつある今の世界では尚更だ
故にこの刹那の間の仮初めの平和は尊い。
そして俺は意識を手放したのだった。
「ん・・・」
目が覚める。
ふと、後頭部に何やら柔らかいものの感触が
「フフ・・・目は覚めたかしら?」
聞き慣れた声
目を開けるとそこには絶世と形容するに相応しい美少女の顔があった。
「ああ・・・杏奈か」
彼女は咲桐杏奈(さかぎりあんな)。俺とはかなり長い付き合いだ。
そして今俺は彼女に俗にいう膝枕をされているようだ。
恋人かって?それはおいおい説明しよう。
いや、説明せずともじきに分かると思う。
「もう・・・二人きりの時くらい本当の名前で呼んでくれてもいいじゃないの」
少し不機嫌そうな表情でそう言う。
「そういうわけにもいかないさ。どこで誰が聞いてるか分からんだろう。特にここではな。」
さっき名乗ったのは俺も彼女も本名ではない。
今はまだ明かすわけにはいかないから。
「そういや明日香と沙羅は一緒じゃないのか?」
「あの二人ならアンタが言った通りに例の子を見張ってるわよ。」
そうなのか・・・
自分で頼んだこととはいえ何だか二人を省いたような感じがして少々きまりが悪い気がするな・・・
「それで、どうだって?」
俺は起き上がって杏奈と向き合う
「確かに神器持ちね。それとドラゴン系なのもほぼ確実。
でもアンタが睨んだ通りだとするなら随分反応が弱いみたいだけど」
「だからこそ余計に気になるのさ。龍の手にしては異質なオーラが感じられたからな。反応の強弱は器のスペックに依存する部分があるのかもしれないし。」
「仮にもしアンタの言う通りなら史上最弱レベルじゃない?」
「それはまだ分からないがその可能性は高いな。少なくとも今はまだ目覚めていないようだからからいいが・・・」
もし本人が全て知った上で力を抑えて平凡に振舞っているとしたら恐ろしい事この上ない・・・
それに万一暴走、例えば『覇龍』にでもなればいくら器が弱くても甚大な被害が出る。
そうなればこの街を根城にしている魔王の妹とその眷属共を以てしても到底抑えきれるものではない。
ついでにいうと魔王というのは冗談でも何でもない。
いや、マジだから。
「それでもし、暴走でもしたらどうするつもりなの?少なくともあの悪魔っ娘達の手に負える相手じゃないでしょ。」
「そこが一番悩ましいとこだよ・・・とりわけこの土地では自由に動けない以上悪魔、主に魔王辺りに一任する他ないだろうね。」
そこまでいうと俺は下ー校庭の方に目を向ける。
「噂をすれば何とやら、ね。」
彼女も気付いたのか俺と同じ場所に視線を遣っていた。
視線の先では三人の男子が多数の女子に追われていた。
「やれやれ、またか・・・」
「本当、性懲りも無くよくやるわね・・・」
あの三人はこの学園はおろか近隣他校にまでその名が知れ渡るほどの有名人であるー悪い意味で。
こいつらは何というか、欲望に忠実過ぎる、ぶっちゃけて言えば変態である。
先程話題に上っていたのはその中の焦げ茶の髪をした少年で、名を兵藤一誠という。
俺も何度か話したことはある。
根は悪い奴というわけではないし顔もまあまあ整っている方なのだが如何せん万年発情期のような奴で始終先程共に追われていた二人とその類の話をしているので色々と残念な男である。
それがなければ今頃彼女の一人や二人はできていそうなものだが。
そういえば昔杏奈と明日香達に色目を使っていたので彼女らと少しO☆HA☆NA☆SHIしてやったこともあったな。
どうなったかって?完全にビビってそれ以降はやらなくなったよ。
同時にその時から主に女子生徒からやたらと尊敬の眼差しを集めるようになった気がするが・・・
ピピピピ・・・
「?」
回想に浸っていたところ、不意に俺の携帯が鳴る。
発信元は家からだった。
「もしもし、俺だ。」
別件で頼んでいたことだろうか
「なるほど。」
ふむ、どうやら当たりだったようだ。
やはり堕天使か・・・
「分かった、ありがとう。ん?えっ?!」
礼を言って電話を切ろうとした時、聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。
「やれやれ・・・またか・・・」
全く、困ったものだ。
「分かった、探しておくよ。わざわざありがとうな。」
そう言い、今度こそ電話を切る。
「どうしたの?急に疲れたような顔して?」
杏奈が怪訝な表情で尋ねてくる。
「あの黒猫、またこっちに向かってるらしい」
「はぁ!?またなの?!」
流石の彼女も盛大に呆れている。
まったく・・・一応自分が追われる立場だってことが分かってんのかね、アイツは・・・
ーーその時だった
『見つけた』
「「?!」」
何処からか響く声
それと同時に周囲の風景がモノクロに変わっていく。
この結界、対象の空間の位相をズラすタイプだな。
発動した時には既に対象の空間の位相が元の空間からズレているので周囲からは気付かれにくいという利点があるがこの手の結界を生み出せるのは相当な手練れに限られる。
なるほど、余程邪魔をされたくないと見えるな。
それに何よりこの気配!
紛れもなく奴だ・・・
周囲の風景が完全に白黒に変わると、空間に裂け目が生じるのが感じられた。
そちらに目を向けると
ーーー黒いゴスロリ衣装に身を包んだ一人の少女が佇んでいたーーー
「やっと見つけたーーーーアダトーー」
オリ主の名前ようやく出ました。
ヒロインの方も既にお分かりの方もいらっしゃるかもしれませんが次回から
徐々に明らかにしていく予定です。
感想等おありでしたらお願いします。