異変
異変
Sideアダト
オーフィスとの邂逅より数日後。
今朝は随分と珍しい光景を目にすることができた。
現赤龍帝の兵藤一誠が魔王の妹であるリアス・グレモリーと一緒に登校してきた。
以前、アスタルテとシャラの報告で兵藤が悪魔になったことは聞いていた。
実際この前の日曜辺りに一瞬だが兵藤の魂の反応がこの世から消えていたようだ。
おそらく何らかの原因で死亡したところを悪魔――この場合はグレモリーかシトリーのいずれかだが――によって眷属として転生させられたのだろう。
だが彼女らから聞いた兵藤の様子とこれまでリアス・グレモリーが接触してきていないことを鑑みるに変化を実感させるためあえて放置しておいたと見える。
こうも早く事態が進展するとはな。
周囲の野次馬共は兵藤とリアス・グレモリーが並んで歩いてることに対してやたらと非難の声を上げている。
まあ、確かに無理のある構図ではあるな・・・。
しかし、そこが重要だったりする。
「ねぇ、アダト。」
今日一日を振り返っているとアナトが声を掛けてきた。
「いいの?これで『赤龍帝の籠手』は悪魔側が手にしたことになるわよ?」
「いや、寧ろ暴走する前に保護者が見つかったことを喜ぶべきだろう。白い方は堕天使側が手に入れたらしいがとてもじゃないが兵藤では相手にならないだろうな・・・なんせ今代の白龍皇は先の大戦で死んだ本来のルシファーの子孫て話だからな。」
「それって明らかに歴代の白龍皇と比べても宿主のスペックは最高クラスじゃない?!よりにもよってあのイタズラ小僧のアザゼルが?」
「アザ坊は類稀な神器マニアと聞く。それにあの大戦で部下の多くを失ったせいで奴はすっかり戦争嫌いになったようだしな。」
「そういえば例の大戦で一番最初に兵を引いたのは堕天使勢だったわね。」
「ああ。シェムハザやバラキエルも同様だろう。強いて警戒するならコカビエルだな。あのガキは兎に角戦争のことしか考えてない戦闘狂だしな・・・」
「ああ、そういえばそんな奴もいたわね。言うほどの実力は無かったと思うけどね」
そりゃあ俺らから見ればな・・・
・・・ん?
「そういや最近堕天使がこの町に入り込んでいたな?」
「そうだったわね。それがどうかしたの?」
「いや、もしかしたら、だが兵藤はそいつらに殺られた可能性もあると思ってな。確か『神の子を見張る者』は神器所有者を集めるだけじゃなく危険と判断した者の始末も行っていたはずだからな・・・アカーシャ」
「はい」
白いワンピースにエプロン姿の、僅かに赤みがかった金髪に鮮血のような鮮やかな赤色の瞳をした女性が振り返る。
彼女はアカーシャ・ノスフェラトゥ。
古の時代の吸血鬼の女王で今いるツェペシュ、カーミラといった真祖も元を辿れば彼女の血族であり、太祖の吸血鬼などとも呼称されるほどなのだが訳あって俺達のもとにいる。
普通吸血鬼の気配は凍てつくように静かで生命の気配が乏しいと形容されるが、彼女の場合はその真逆、力強くも穏やかで、慈愛に満ちた雰囲気を醸し出している。
恐らく吸血鬼の中で見てもかなり特殊な部類だろう。
その証拠に彼女の力は吸血鬼のカテゴリを軽く逸脱している。
現在はうちで炊事係をしていたりするが彼女の作る料理は少々鉄分多めなのはまあご愛嬌だ。
そして彼女にはここ最近この町に入り込んだと思しき堕天使の動向を探ってもらっていた。
「堕天使共の様子はどうだった?」
「はい。以前お話ししたように、町外れの廃教会に下級、中級合わせて4体の堕天使と他数十名のはぐれ悪魔祓いが結集しているようです。それに中級堕天使と思われる女が例の少年と何度か接触を図っていたようでしたのでアダト様のお考えになった通りかと。」
そうなると堕天使説が一番濃厚か・・・。
「それと」
「ん?」
「申し遅れましたが・・・堕天使が初めて例の少年と接触した際グレモリーの手の者と思しき輩が付近にいたようですので向こうも赤龍帝、或いは堕天使をマークしていたようです。
あ、恐らく私が見張っていたことは気付かれておりませんのでどうかご安心を。それからこれはまだ未確認なのですが、近々その堕天使共はこの町にとある神器の所有者を招き入れるつもりのようです。」
「とある神器?」
「ええ。なんでも悪魔や堕天使など種族を問わずに治癒が可能だとか。」
種族を問わない・・・もしかすると『聖母の微笑』の類か?
だが何となくだが狙いは分かった。
「なるほど・・・点数稼ぎが目的か。」
「と、いいますと?」
「連中の目的が赤龍帝の抹殺なら既に目的は達成したはずだ。まあ実際には悪魔に転生するというハプニングが起きたわけだが・・・。だが悪魔側、それも魔王の妹の眷属となった以上は手を出すことはできない。おまけにここはグレモリーのシマだから普通はあまり長居はできないはずだ。だが実際連中は引き上げる素振りすら見せないし、そこへきて新たな神器所有者。おそらくは兵藤の殺害までが上からの命令でその神器所有者の件は奴らの独断だろう。戦争嫌いのアザゼルが態々グレモリーの領地でそんなことを命じるとは考えにくいからな。」
「つまりはその神器をアザゼルに献上してご機嫌伺い、ということよね・・・でもそうなるとかなりレアな部類のはず。心当たりでもあるの?」
「あくまでも推測だが『聖母の微笑』かそれに類するものだろうな。」
「もちろん手は出さないのよね?」
「そうだな。今俺達が出て行っても何もいいことはないからな。それにもし万一連中が行動を起こすようであればグレモリーかシトリーが何とかするだろう。」
仮にもこの土地の管理者を名乗るのであればその辺の管理はちゃんとしてもらわないとな。
「でも『神の子を見張る者』の情報網は三勢力一と聞くわ。もしかすると私達の存在を掴んでいる可能性もあるんじゃない?」
・・・確かにそれも目的である可能性も否定できないか・・・
「・・・そうなればいずれ私達にも接近してくるでしょうね」
とアスタルテ。
彼女は瞑目する。
その顔にはほんの一抹の憐憫ともとれる色が浮かんでいた。
彼女がその先に何を言わんとしているのかは理解できた。
「そうだな。その時は・・・」
―――――その時は――――
あれから色々なことがあった。
まずこの町にいた堕天使共の気配が綺麗さっぱり消えたこと。
そしてそれとほぼ同時にグレモリー眷属がまた一人増えたようだった。
名はアーシア・アルジェント。
調べてみると元教会のシスターでその治癒の力をして一時は聖女にさえ祀り上げられたほどだったが、悪魔を治癒した廉で教会を追放され、そこをこの町にいた堕天使の一党に拾われたんだとか。
そもそもが『聖母の微笑』の種族を問わない治癒効果自体が聖書の神の不在による神器システムのバグの可能性が高いわけだしな。
少しずつ、だが確実に神の死の影響は出始めている。
思えばあの大戦を機に切られる聖職者の数が増えたように感じる。
だがそれにしても聖女という偶像を生み出し都合が悪くなれば切り捨てる。
それが自分たちの主が最も忌み嫌う物であるというのに。
あの頃と何も変わらないな、人間という生き物は・・・。
いや、分かっていても目に見えるモノに縋らずにはいられないのだろう。
それは欲であり、純粋に救いを求める信仰でもあるのだから。
人間の醜悪さと悲しさ。
この世界に人間が誕生した時から背負った宿命なのかもしれない。
それから何やらグレモリー達がやらかしたのかいつもより感じられる悪魔の気配が2体分ほど多かった。
片方は完璧雑魚だったがもう片方には正直驚かされた。
あれだけデカい気配を感じたのは久々だった。
そんなこんなでここ暫くは俺達に大して動きはなく、いつの間にか季節は初夏になっていた。
今駒王学園は球技大会とやらで盛り上がっている。
全く平和なものだよ。
だがそんな光景すらも微笑ましいものに感じる。
いくらここが悪魔の経営する教育機関であるとはいえ、ここの生徒の大半は堅気の人間だ。
何もなければ世界の裏側を知ることもなくその短い一生を終えるのだろう。
その彼らがあくせくと何かに取り組む様を見てもかつての俺であればおそらく何もかんじなかった。
・・・まったく、俺も焼きが回ってきたのかね。
仮にも戦神である俺が束の間の平穏に喜びを見出すなんて。
・・・だがそれももうじき終わりだな
今回も何かグダグダな展開になってしまいました(><)
あとここ最近自分でも描写がいい加減になってきたかんじがしてます・・・
次回あたりから徐々に原作介入をスタートしていくつもりです。
ご指摘、感想等おありでしたら宜しくお願いします。