ロイミュード・リターンズ   作:煩悩No.108

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うわぁああああ!!
気が付けば、一ヶ月以上更新していない……
すいませんでした!!エタりは無い積りです。


彼女に迫る試練は何か?

とあるキャンプ地のログハウスの中。

その広間では二人の男たちが言い争いをしていた。

 

「そのような事……!!

俺は断じて認めん!!」

 

「おいおい、ハっつあん。良いか?よく考えろ?

これは絶対に必要な物だ。いわば必ず乗り越えなくちゃならねー試練だ。

そこに挑戦する事が今、必要な訳よー?」

片方は没個性的でさえある、普通過ぎる容姿の青年。

もう1人は、派手で遊び好きそうな如何にもホスト崩れと思われてしまう様な、いで立ちの男だった。

タダの男の言い争いに見えるが、決してこれはそうではない。

それどころかこの二人は人間ですら()()

 

悪の天才科学者、蛮野 天十郎の生み出した最後にして最高の作品――『リバースロイミュード』だ。

その力は既存のロイミュードたちとは大きく一線を隔している。

より人間に近く、より多くの事を学習する様にとすさまじく精巧に人間のさまざまな面を写し取っている。

 

話がそれた。再びこの二人の話に戻ろう。

 

「何時までもこのままっていう訳にはいかないんだ。

八っつあんも分かってるんだろ?」

なだめるように男――『501-』が説明する。

 

「ぐぐぐ……だが、今は危険だ……」

露骨なまでに渋る態度を見せるのは同じリバースロイミュードの『801-』だ。

 

「覚悟を決めな!いつかはやるべき事なんだ……なら、先延ばしにするんじゃねぇ!!」

 

「わ、わかった……ああ、そうだ……先延ばしなど意味はないからな……」

苦虫を噛み潰した様な顔で、『801-』が視線をおとす。

歯がゆいとはこんな感情なのだなと、妙に冷静な部分で『801-』は他人事の様に考えていた。

 

 

 

 

 

翌朝――

 

窓から入ってくる朝の陽ざしを浴びてリバースロイミュードの紅一点『901-』が目を覚ます。

 

「ふみゅ……?」

寝間着を着たまま、目をこすりながらベットから起き上がる。

 

「ふぅあ……」

大きなあくびと、それに連動して目に一筋の涙が浮かぶ。

 

ブゥウウウウン……!

 

低い音と共に『901-』の身に纏う寝間着が変化する。

薄い水色の服は黒い、墨をこぼしたかのようなワンピースへ。裾や袖に白いフリルが構成されれば最後に忘れてはいけないとばかりに、足元のスリッパが真っ赤なストラップシューズへと変わる。

 

そして、そのまま部屋の扉を開ける。

 

「ふみゅー、おはよう~」

 

「おお、『901-』一人で起きられて偉いな」

起きぬけと同時に、『901-』の頭が『801-』によって撫でられる。

 

「ふみゅ、ふみゅ、ふみゅ……」

成すがままとばかりに撫でられる『901-』気が付くと『801-』の膝に乗せられ櫛で髪を梳かれていた。

 

「リバースロイミュードと言えど、髪は大事な部分だからな。

ちゃんと整備しないといかんな」

 

「ふみゅ~?」

『901-』と並ぶ数字(ナンバー)を持つ『801-』は過保護とも呼べる態度で『901-』に接する。

その様子を見る『501-』には白い目で見られるモノの二人とも気にする事は無い様だ。

 

「さ、出来たぞ」

数分後髪を梳き終わった『801-』が『901-』を解放する。

鏡を見るとそこにはつやつやと黒髪の少女が映っていた。

 

身支度が終わるとその後は朝食の時間だ。

『801-』がパンをトースターで焼き、サラダ、玉子、牛乳というメニューが並ぶ。

『901-』はそれを夢中になって、パンにかじりつく。

 

「おっと、今日はこういう物を用意したやったぞ?」

 

「ふみゅ?」

おもむろに『801-』が立ち上がると、小皿に琥珀色の液体を入れて戻ってくる。

 

「これにパンを浸すのだ」

それを口にした瞬間『901-』が目をカァっと見開いた!!

 

「ふみゅん!!甘い!!」

 

「ふっふっふ、そうか、そうか」

満足気に笑みを浮かべる『801-』。

 

「あーあー、タダのメープルシロップだろ?なんでそこまで大騒ぎできるのかねぇ?」

1人つまらなそうにパンの切れ端を口にほおり込んだのは『501-』だった。

 

「何を言うか……!

コレも立派な進化だ。以前表のロイミュードの一体が味を元に進化を目指し実際に効果を上げているとの情報もある。

最早美食は人間だけの感情ではないという事だな」

 

「はいはい、少し前まで飯なんて、缶詰や最悪食べなくて良いって言ってたやつのセリフかよ……」

 

「ふん!俺はバイトをすることで金を手にした。この金は自由に使っても良い俺の金だ。ならば俺は迷わず『901-』の為に使う!!」

力説する『801-』の言葉に『501-』があきれた様に、肩をすくめてみせた。

 

「ふみゅ、ふみゅ……」

そんな見慣れた二人の姿を後ろ目に『901-』がもくもくと食事を続ける。

 

「ああ、そうだ。『901-』少し良いか?」

 

「ふみゅ?」

食事も終わりという所で『801-』が財布を取り出す。

 

「済まないのだが、今朝の朝食分ですべての玉子を使い切ってしまったのだ。

その……だな?町まで行って買って来てくれないだろうか?あと牛乳もだ」

歯切れ悪く財布から一枚の紙を取り出し話しかける。

 

 

 

「行ってくるー!」

買い物袋を手にした『901-』が手を振りながらログハウスから出る。

ログハウス扉を叩き壊す様に開けて『801-』が心配そうに見送る。

 

「気を付けるのだぞ!?車は危険だ、いいや、それよりも知らない人間に話しかけられてもついて行ってはいけない!!それから、それから……」

 

「おい、ハっつあん!嬢ちゃんもう行っちまったぞ?」

 

「な、なに!?」

明らかに狼狽する『801-』を見て『501-』がなだめるように声をかける。

その言葉通り『901-』はすでにログハウスから見ることが出来ない位置へと行ってしまっていた。

 

「まぁ、おとなしく待とうぜ?嬢ちゃんだってリバースロイミュードだ。

そんじょそこ等の奴とはちげーんだ」

 

「あ、ああ……そうだな……少し心配症過ぎたか……」

『501-』に促され『801-』が椅子に座る。

 

「さて、と。こっからどうするかだが――ん?」

 

トントン、トントン……

 

「どうした?」

 

「あ、いや……」

 

トッタン、トッタン、トッタン!

 

「んの……」

小さな音と、立て続けに来る振動を感じて『501-』が不機嫌な顔をする。

 

「なんだ?はっきり言ったらどうだ?」

苛立たし気に『801-』が口をひらく。

 

「貧乏ゆすりをヤメロ!!」

 

「『901-』が心配なのだ!!これ位我慢しろ!!

今頃迷子に成っているかもしれん、怪しい人間に攫われそうになっているかもしれん、いや、たまたま入ったスーパーに玉子の特売がやっていて、玉子を買い逃した『901-』は自責の念の余り泣き出してしまうかもしれん……!!」

机に両手をたたきつけ、『801-』が立ち上がる。

 

「……そんなに心配なら、様子を隠れてみればいんじゃねーの?」

 

「なぜそれを早く言わん!!今すぐ行くぞ!!『901-』!!今すぐ助けに行く!!」

慌てて立ち上がり、準備を始める『801-』。

その頃『901-』は……

 

 

 

「えーと、玉子2パックと牛乳一つで573円ね」

 

「ふみゅ」

パートと思わしき女性に千円札を渡す『901-』。

彼女はすでに街中で買い物を終えていた。

 

「お嬢ちゃん偉いね、一人でお使い?」

 

「……うん」

初めて話しかけられて『901-』は恥ずかしそうに答える。

 

「そうかい、気を付けて帰りな?お母さん待ってるよ」

 

「お母さん?」

 

 

 

来るときは町に出るという楽しみの為、高速で移動してきたが帰りはどうもそんな気分ではなかった。

お釣りをもらった『901-』は最後に店員に言われた言葉を口に中で転がしながら帰り道を歩く。

 

『母親』――自身を生み出した両親のひとり。女性を指しその対義語は父親。

家庭では主に家事を担当する事が多く――

 

そこまで自身のメモリをたどって『901-』は止めた。

そんな事はあらかじめプログラムされている。

勿論人間ではない自分に、そんな物が存在しない事も――

 

「ふみゅ……」

公園の前、母親と思わしき女性が子供を叱りつけている。

しばらくすると、子どもは母親に連れられ帰っていく。

その顔にはさっきまで無かった笑顔が滲んでいる。

 

――理解不能。

 

だがほんの僅か、胸中に何かが沸き上がる気がした。

 

ガサッ……!

 

「!?」

何かが揺れる音に、気が付き『901-』が視線をそちらに向ける。

そこには――

 

「しまった……見つかってしまったか……」

バツが悪そうに『801-』が茂みから姿を見せる。

 

「あーあー、だから言ったのによ。『尾行が下手過ぎる』ってよ」

同じく別の場所からも『501-』が姿を見せる。

 

「済まない、『901-』よ。お前を騙す気はなかったのだ。

人間とお前を触れ合わせようとした結果だ。

だが、こんな形とは言え騙して済まなかったと――」

気が付くと『901-』は『801-』に向かって走り出していた。

なぜか分からない、胸の痛みが消える気がする。

なぜか分からない、自身の口角が意図していないのに、さっきの子供の様に上がっているのが分かる。

 

メモリを参照――この相手を指すのに最も適切な言葉を参照――

 

「お兄ちゃん、お迎えありがとう!!」

最大級の笑みを浮かべ『901-』は心配性な自信の兄の胸に飛び込んだ。

その後ろで『501-』がやれやれと手を広げるのが分かる。

だが、そんな事など今の『901-』には些細なことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お兄ちゃんだと……!?」

 

「ふみゅ?」

露骨に態度を変え、小さく震える『801-』を良く分からないという表情で『901-』は見ていた。

 

「もう一回だ……」

 

「ふみゅう?」

顔を下げて、絞り出す様に言った言葉を再度聞き取ろうとして、耳に手を当て『901-』が近づいていく。

 

「もう一度……もう一度『お兄ちゃん』と呼んでみてくれ!!」

 

「ふ、ふみゅ……お、お兄ちゃん?」

その言葉を聞いた瞬間!!『801-』が大きく両腕を広げた!!

 

「素晴らしい!!なんだ、なんなんだ?この胸に湧くくすぐったいような、幸福感を覚えるような、だが時に苦しく切ない感情は!?

コアドライビアの異常?それとも動力プログラムにバグが発生したのか?コアとこの体の融合が剥がれかけているのか?

ああ、だが、だが!!もっとこの感情が欲しい。けして、決して良いモノのハズで無い胸の小さなざわめきを俺は欲している!!」

1人で大きく騒ぐ『801-』を見て『901-』が後ろにあとずさりして震える。

 

「ふ、ふみゅ……?ふみゅみゅ?」

なぜかは分からないが、とても良くないモノを感じてしまう。

 

「おっと、すまない『901-』。怯えさせてしまったな……

さ、お家に帰ろうな?今夜はお前の好物を作ってやるからな?」

その言葉を聞いて、さっきまで震えていたのが嘘の様に『901-』の表情が明るくなる。

「ふみゅ!?本当!!ハンバーグが良い!!」

 

「ああ、勿論だとも。さ、一緒に帰ろうな」

二人が手を繋いで、まるで本物の人間の仲の良い兄妹の様にスキップをしながら帰っていく。

 

 

 

「うわ……マジか……ハっつあんマジだな……」

すっかり二人の世界を作り出す様そうを見て、『501-』がげっそりした顔をしてその後をついていく。

悲しい事に、向かう先は同じ。

あの仲の良すぎる二人の会話を聞くことに成るのかと、げんなりしながら歩き出した。




ふぅ、次回からまた『401-』編に戻れたら良いですね。
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