貴方は学校へ行っています。クラスの中では中心核で、皆を楽しませています。
では、貴方は楽しいですか?
‐side士道
俺は、何度か間違ったものの、何とか元いた商店街まで辿りついた。
辿りついたはいいものの、流石に時間を費やし過ぎたせいで、ここから水族館まで行くと、じっくりみられる時間はないだろう。行ったら推測だが、見られる時間は10分とない。
「ん~、ま、いっか」
能天気に悠佳は言うが、俺はその前に一瞬だけ見せた悲しい顔を忘れなかった。
どうにかして楽しんでもらいたい。ゲーセン?いや、ダメだ。もっと他に・・・何か・・・
商店街で食べ歩く?いや、2人とも腹は減っていない。
遊園地へ行く?水族館と一緒で、すぐに閉園する可能性がある。それに、ここから行くにはバスに乗っていかないといけない。けど、バスの時間なんて知らないし。
士道の家に上らせる?確か十香達がいる筈だから、会わせるのはよくない筈だ。
あぁ、くっそ!いっつも琴里に助けて貰ったのが裏目に出た!俺一人じゃデートプランの一つも考えられないじゃんか!!
内心叫びながら、どうしようかと頭を掻く。
「・・・・・・士道。別に私は楽しかったから、終わりでいいよ?」
俺の心を察してか知らないが、悠佳が今まで見せなかった心配している顔でこちらを見る。
一日でここまで変わるかと驚いたものの、確かに彼女は心配してくれていた。
楽しかった。ならいいのか?楽しんでくれたんなら、俺の役目は果たせたんじゃないか?
一瞬、もうのまんま終わりにしよう。と、思ってしまった。楽しんでもらえたし、本人から言ったんだ。別に、俺はこれから何も出来ない。
良いデートスポットも知らないし、気障なセリフも言えない。何もできやしないんだ。
本当にないのか?
他の皆と被っていてもいい。どこかある筈だ。
あ、あった。
俺は気付くと、悠佳の手を取って、そこへ走っていった。
俺が連れてきた場所は、正直言って良いチョイスとは言えなかった。
十香と一緒に来たあの公園から、少し離れた崖。公園もいいかと思ったが、こっちの方が綺麗な夕焼けが見えるのを、俺は昔から知っていたし、よく秘密基地にした場所からも近かった。
「懐かしいなぁ・・・」
一瞬、怒られるんじゃないか?と身構えた俺が馬鹿に思える程、悠佳はこの場所が気に入ってくれたようだ。崖の先へ向かって、その夕焼けに染まった天宮市の一角を見た。
「だな」
声をかけてよいものかと思ったが、ここで退いては男がすたる!
悠佳の後ろについて、また、俺もその景色を見る。
水平線に沈んでゆく太陽が発するオレンジを、ビル群が包み込み、そして住宅街に、ゆっくりと、隙間なく送られてゆく。まるで、時が止まったように、二人はその光景をずっと見ていた。
この空間がずっと続けばいい。なんて、そんな夢物語を語ってしまう程に、俺はこの空間が大好きなのかもしれない。悠佳の、あの時から変わらない、愛らしい背中。
「ん?士道クンも座りなよ」
「んじゃぁ、お言葉に甘えて」
悠佳のお誘いに甘え、隣に座る。断崖絶壁から見える景色は、10年前と全然変わらない。それどころか、2人で見れることが影響してか、さらに綺麗に見える。
そして、夢は、早かれ遅かれ、覚める。
「・・・・・・!?」
俺は、全くその状況がつかめなかった。
1つ、2人の他に人間がいたこと。
2つ、ここが断崖絶壁であって、落ちたら一瞬の猶予もなく死ぬこと。
3つ、人間が鋭利な刃を突き立てていたこと。
4つ、悠佳の体制が崩れていくこと。
5つ、悠佳の心臓部分から、鮮血が飛び散っていること。
6つ、悠佳が断崖絶壁から落とされていくこと。
それだけ。
それだけ?
悠佳が、また?それとも、始めて、死んだ?
答え
2通りあります。
1、はい。暗示をかけているので、私も楽しいです
2、いいえ。私は楽しくありません。怖いです。