貴方は、誰の為に生きて、誰に生かされている?
‐side士道
状況が掴めたと同時、俺は恐怖よりも先に憤りを感じた。
悠佳を殺した、本人、EDM社の最強の女、エレン・M・メイザースへ向かい、すぐに立ちあがる。こいつは、何があっても許せない・・・!
十香を、七罪を・・・そして悠佳までさえも、こいつの手で狂ったんだ・・・!
「お前・・・!!」
「はい。どうしましたか?」
「なんでそんな飄々としてられるんだよ!」
「世界にとって害のある存在を消したまでですから」
無機質なエレンの声は、俺の感情を逆撫でるのには十分すぎた。
「害だと!?悠佳が何をしたっていうんだ!」
「貴方は知らないんですか?悠佳、識別名〝サイレス〟昔から、不定期に現界してきた精霊。その力で30人以上の人間を殺害している。また、ASTやDEM社にも死傷者が複数。記憶消失等を含めると、数えるのが嫌になる程です。でも、無害と言えるんですか?」
「そ、それは・・・」
そこまでしていたのか・・・一瞬、俺は悠佳が怖くなった。
もし、そのまんま生き続けたらまた人を殺すのか?
もし、このまま生き続けたら、また危害を加えるのか?
「そ、それでも・・・!今は楽しんでいたんだ!なんで今!?」
「精霊が油断する時をねらいました。正直、貴方でもよかったのですが、まだまだ研究のしがいがあるので生かすと判断しました」
エレンはそう言うと、俺の首元に光の刃を突きつけ、こう言ってみせた。
「いいですか?貴方は生きているのではなく、私達に生かされているのです」
それだけ。
唯、それだけ。
それだけな筈なのに。
猛獣?野獣?そんなちっちゃい存在じゃない・・・だったら、俺だって反抗してる。
けど、それが、
怪物
だったら?
ドラゴンとか、メデューサとか、そんな本来存在しないような生物にギロリと、殺意にも似た、けれどもどこか違う感情を凝縮して睨まれたような感覚だ。
今すぐにでも逃げ出したいが、後ろは断崖絶壁。前に逃げようものなら光の刃が突き刺さる。
絶体絶命。
全くもってその通りだ。
凄いな。こんなにピッタリな状況があるとは
「あ、あぁ、分かった。降参だ・・・」
俺が負けを認める。
ゴメン、悠佳。流石に俺もこいつには勝てない・・・
俺が負けを認める。そして、悠佳を弔ってやろうと、心の中で決めた時、エレンは、光の刃を持つ手が少し緩んだ。
警戒がほどかれた?自称最強のコイツが?いや、他に何かある筈だ。
琴里がこの状況に気付いて助力をしてくれた?そんな程度じゃこいつは動かない。
誰か他の精霊が気付いて駆けつけた?そんな第六感を持つ奴はそう多くないし、ここまで来るのに早すぎる。
狂三?いや、だったらなおさら可笑しい。エレンなら、すぐに対処できるだろうから、緩む筈はない。それどころか、強く握り締めて戦闘に備える。
・・・反転?
俺はほぼ反射的に後ろを振り返った。
悠佳が反転した?
「・・・・・・」
正解。なのか?
俺は、悠佳が反転しているかしていないか、そんなことよりも、自分の目を疑った。脳が恐怖のせいで壊れたんじゃないかって思った。
真っ暗なんだ。
確かに太陽は沈みかけていた。けれど、まだ真っ暗になるには早すぎる。
真っ暗、というか、影のようだ。うっすらとビルや住宅街の形は見えるものの、いきなりで、皆がパニックになって悲鳴を上げるのがここでも聞こえる。
「何だよ。これ」
「・・・・・・それは本当に言っているんですか?」
俺が唖然にとられていると、エレンはいつの間にか誰かと連絡を取っていた。恐らく、琴里から聞いたアイザック・ウェスコットという人だろう。
「お前。この状況が分かるのか?」
「・・・・・・説明しても止められませんが?」
「それでもいい!教えてくれ!」
「これは、魔王です。貴方も見たでしょう。プリンセスが反転した時に顕現した
「は?何処にあるって・・・」
エレンが上を指さす。
まさか・・・いや、嘘だよな?
俺の言葉が漏れていたのか、顔に出ていたのか、エレンは「事実です」と伝える。
誰が思う?
これが、一個の物体の影だなんて・・・
答え
無し