自分が変わりました。
他に何が変わりましたか?
‐side士道
「し・・・・・・どう、クン?」
10分? 体感ではそれぐらい経った頃だろう。ようやく悠佳が声を出した。と、共にそのテリトリーにも似たそれが解除され、俺は悠佳の元へと走っていき、一足遅れて皆が駆け寄る。
「よ、よかった・・・」
空を見上げれば、魔王は雲の隙間から顔を出して、その星にも似たシルエットもくっきり見える場所まで来ていた。
ようやく助けられる。
「そ、それに十香ちゃん達・・・え、っと、な、んで?」
「もちろん、お前を助けにな。死ぬかと思ったぞ」
「そ、それは本当にゴメン・・・・・・記憶操っちゃったり、ど、どうしよう」
今まで見せなかった悠佳の姿。
パニックになって今にも泣きだしそうだ。ワタワタと手を動かしている。
そんな彼女を見ると、人類滅亡まで後ちょっとだってことも忘れ、皆ホッ、として笑っていた。エレンも一緒に笑っていた。
昨日の敵は今日の友ってか?
「そんなことどうでもいい。これをどうにかしてくれ」
そう言って上を指差す。
「・・・・・・えっと、その、とても言いづらいんだけど、これ、私から操作できないみたい」
「ッ!? な、何とかならないのか!? なんでもする! 出来る限りの情報をくれ! こっちには自称最強も付いてるからなんでも出来る」
「当たり前です。最強に出来ないことはありません」
さっきまでずぅっとケーキの話しかしなかった奴が何を言う。
なんて言ったら心臓刺されてバッドエンド直行になりそうだから止めておこう。
悠佳の肩を掴み、願いの込めた瞳を向ける。
すると、少しして悠佳は少しずつ口を開いた。
「私が知ってるのは、
その言葉を聞いた直後、俺らは時が止まったような感覚に陥った。
何かはあると思っていた。悠佳ならなんとか出来るんじゃないかと、心のどこかで信じていた。
だが、現実は非常だ。
「そんな・・・ここまで来たのにかよ・・・」
がくり、と膝をつく。
やっと、やっと終わったと思った。
救えた、と思った。
「シドー、私達はどうすればよいのだ?」
「今すぐ非難してくれ・・・シェルターよりも、フラクシナスの方が絶対安全だから」
十香の方へ向けて言う。
皆あたふたしていて、落ち付きが無い。何とかならないものか。
辺りを見渡したら、エレンは既に何処かへ行ってしまっているようだ。
「し、シドーは・・・」
「安心しろ。絶対に戻る」
その言葉を最後に、俺と十香達は別れた。
目の前で、フラクシナスが皆を回収した。
「士道、ゴメン。ここまでしてくれたのに・・・・・・えぐっ」
皆が消えたと気付くと、悠佳はすぐに泣きだしてしまった。
決して大声ではない、小さく、けれど、隠さずに泣いていた。
涙を拭いながら、しかし流れていく涙は止まらなかった。
「なぁ、悠佳。一個だけお前と皆を助けられる方法があるんだが」
「な、なにそれ? や、やりたい! なんでもいいから! 私に出来ることなら・・・」
「いや、それがだな・・・き、キスをすることなんだけど・・・い、嫌だよな」
そりゃぁそうだ。
今は違うとは言え、元は大嫌いな存在とキスするなんて、俺だったら即却下で、罵詈雑言を浴びせるだろう。
自分から言ってなんだが、俺は不安になって俯いてしまった。
「・・・いいよ。最初は酷いこと言ってゴメン。えっと」
悠佳は顔を真っ赤にしながら、ちょいちょい、と手招きする。
言われる(?)がまま悠佳の目の前まで向かうと、俺は目を閉じた。
ビンタされるかもしれない。
そんな不安もあった。
「んっ・・・」
だが、そんな不安が現実となることはなく、悠佳の震える唇が触れた。
少し涙交じりの口づけは、少ししょっぱく、ただ、可愛らしかった。
少し長い口づけの後、二人は離れる。
「こうなるなら言ってくれればいいのに・・・」
いつも通り、悠佳の霊装は光の粒子となって、風に飛ばされて消えていった。
けど、慌てているそぶりは見せない。
彼女の裸は、ローブからは分からなかったが、なかなかに綺麗なものだった。エロいというよりかは『綺麗』な方が近い。美しい曲線美を描いたスタイルは、世の男を皆メロメロにさせるだろう。
いや、でも、やっぱり目のやり場に困るな・・・
魔王は? と思い空を見上げると、先程まで世界終末を如実に表していた魔王は、粒子となって地上に降り注いだ。
映像でマリンスノーを見たことがあると思うが、あれなんて日にならないほど美しい。
無数の光の粒子が、雪のように地上に降り注ぐ。また姿を現したオレンジ色の太陽がそれを煌びやかに彩り、一つの絵画の世界に入り込んだような気分になった。
「・・・・・・あ、悠佳。とりあえずこれを羽織ってくれ」
我に帰り、上着を脱ぎ悠佳に投げる。
ハハ、これじゃまるでヒーローだ。
答え
誰も変わりません。
気付くべきことではありませんから。