‐side ××
とても落ちつく、目は開かないけど、まるでお母さんに包まれてるような、安らぎを覚える空間。
『巻き込んじゃってごめんね』
意識がこぼれおちそうになった時、可愛い女の子の声が聞こえた。その子の声は、まるで小さい頃で止まってるみたいに、幼い。
『君の名前はなんていうのかな?』
私は正直に私の名前を答えた。
『そっかそっか。××って言うのか。君の彼氏さんが頑張ってくれたら、出られるかもね』
その言葉を最後に、私の意識は、こぼれ落ちた。
‐side 士道
やはり、その死んだ誰かが頭から離れないでいる。寝ている時も、起きた時も。
「誰・・・なんだ・・・?」
なんて考えていると、まだ朝早いというのに、妹の琴里が扉を壊す勢いで開けて来た。
「どうしたんだ?そんな忙しそうにして」
「そんな悠長なこといってる場合じゃないわよ!!」
琴里のただならぬ様子に、もう眠気は吹き飛んだ。そして、次の一言に、俺の脳はパニックを開始した。
「美九が何処にもいないの!!」
「わ、私じゃないわよ・・・?」
とりあえず皆を集め、五河家のリビングで話を始めると、七罪が最初に声を上げた。
「えぇ、明らかに七罪の霊波じゃないもの」
俺も、元から七罪を疑っていない。
七罪の天使、
けど、今琴里もいったようにい、七罪の霊波じゃない。それに、七罪は能力を俺に封印されて、天使を顕現、能力を使うことは不可能な筈。
「ぬ、では、七罪に似た能力を持った精霊がいるということだな?」
十香がいつにもまして険しい顔を作る。まぁ、友人が消されたのであれば、それも当たり前だが。俺も顔に出さないようにしているが、内心、噴火しそうな程怒っていた。
『琴里ちゃーん、ちゃんと探したのー?』
四糸乃の右手に付けられたコミカルなウサギの人形『よしのん』が口をパクパクさせる。
「探したわよ!美九の学校にも、家にも連絡したし、今はフラクシナスでカメラを飛ばしてるわよ」
「質問。映像はないのですか?」
座っていた瓜二つの八舞姉妹の夕弦の方が口を開く。
「ないわね。七罪の時みたいに前もって予測が出来なかったから」
そういえば、あの時は前に予告をしていたからカメラを設置出来たのか。
「手紙とかは?」
俺が聞いてみる。
「そんなものあったら気づいてるわよ」
その言葉にうぐっ、と喉を詰まらせる。
まぁ、そりゃぁそうか。考えてみれば琴里ならもう見せている筈だし。
「だったら何故かも分からんという訳か・・・タチが悪いな」
八舞姉妹の耶倶矢の方が口を開く。
皆が一斉に「うむぅ」と唸ると同時に、琴里の携帯に連絡が来た。
「もしもし、令音?」
どうやら相手はラタトスクの解析官、村雨令音さんみたいだ。
その内容を盗み聞きしたくて、聞き耳を立てたが、やっぱり分からない。
「それは本当?・・・えぇ、分かったわ」
そう言うと、携帯の電源を切った。勿論俺は、なんだって?と聞いた。
「美九が・・・いえ、微弱だけど美九の霊波が探知されたわ」
その言葉に、皆が揃って目を見開いた。
‐side 美九
私は、あの包まれるような感覚の世界から抜けると、ぽつり、道の真ん中に佇んでいた。
太陽が眩しい、朝か正午くらい?周りを行き交う人は、まるで見えない存在のように私を無視する。
男はどうでもいいけど、同じ学校の生徒さえも。
「なんで?」
『どうだろう?』
深い絶望に苛まれそうになった時、またあの声が私の脳に響く。
『私と同じ境遇に陥った感覚は、私と同じ、無視され続けているのなら』
何でだろう。その声は、とても悲しい。
「あなたは・・・?」
『そっか。名前がないと分からないか・・・そうだよね。じゃぁ、こうしよう』
『名無し』