デート・ア・ライブ 悠佳メモリー   作:事の葉

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思い出せない

「死刑・・・・・・執行」

 

 

 

 

 

‐side 悠佳

 

私にとって、それは今までで1番、悩んだ死刑執行だった。

勿論、士道は許さない。殺したい程に憎んでいる。

でも、一時は友人だった。遊んだんだ。少なからず思い出はある。

 

 

 

 

でも、そんなのどうでもよかった。

手を振り下ろすだけで、士道を束縛している断頭台の刃は糸が切れたみたいに士道の首筋目がけて振り下ろされる。

感覚が麻痺したのは、簡単すぎるのと、周囲を覆う深い霧の影響だろう。

 

美九ちゃんは、深い霧の影響で今士道が立たされている窮地にも気づかない。

 

 

 

 

 

灼爛殲鬼(カマエル)!!!」

鏖殺公(サンダルフォン)!!!」

 

 

 

 

 

 

そんな時だった。二つの声が聞こえたのは。

それと全く同じタイミングだろう。周囲を覆っていた霧が晴れたと同時に、断頭台が木端微塵に切り刻まれたのは。

 

「まさか、あんたが精霊になっていたとはね・・・」

「なんだ、琴里ちゃんか」

 

赤いツインテの髪に黒いリボン、少々性格に違和感があるけども、それは士道の義理の妹、五河琴里であろう。そっちの夜色の長い髪を持つ子は・・・誰か分からないけど。

 

「久しぶりだねぇ、君は私のお墓に毎日来てくれたから恨んでないよ。そっちの子は初めましてかな?」

 

言うと、その子は意外といった風に目を丸くさせ、上空に浮いている私を見ていた。

 

「いったた・・・し、死ぬかと思った・・・」

「士道、あいつは知ってるのよね?」

「あ、あぁ。悠佳だ。」

 

「君が私の名前を呼ばないでよ」

 

「落ちついてくれ悠佳!俺はお前の敵じゃない!」

 

「私の名前を呼ぶなって言ってんじゃん」

 

「ゆ、悠佳?」

「士道、あんたって人の話を聞かないわね」

 

「私の名前を、呼ぶな!!!」

 

 

 

 

‐side 士道

 

 

 

悠佳の怒号が俺達の鼓膜を破らんばかりに震わせる。

 

「いっつもそうだ!お前は一度として私の話を聞いた覚えがない!」

「そ、そりゃぁ、喋ってな―――」

「喋ってたわよ!頑張って口を開いてたわよ!当時は喉も潰されてた!なのに無視した!少しこっちを見れば分かるでしょ!口が動いてたら!」

 

彼女の悲痛の叫びにぐうの音も出なかった。当時の記憶はあまりないが、確かに自分だけで遊んでいた記憶が殆どだ。

 

「悠佳。落ちつきなさい。叫んだところで何も変わらないわよ」

「じゃぁ、静かに言うよ・・・」

 

そう言うと、目の前から悠佳が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ねよ。マジで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声は、一瞬の内に俺の真後ろに瞬間移動した悠佳の、悪を凝縮したようなそんなドス黒い声を上げた。

 

 

「シドー!」

 

 

その声に金縛りにでも合ったみたいに固まっていた俺の体を、十香が思いっきり左に突き飛ばした。無論、十香もすぐに俺の上に落ちたから無事だ。

その刹那、俺の居た場所に、十字の白い斬撃が飛ばされた。十香がいなかったら4つに両断されていたところだ。

 

「貴様!」

「落ちつきなよぉ。私は君を傷つけたくない。それだけを壊せばいいだけだから」

「それって・・・どれだけ堕ちたのかしら?小さい頃はもっと可愛かったと思うのだけど」

「よく言うなぁ。堕ちたのは一緒でしょうよ。精霊、イフリート」

「なんであんたがその名を知ってるのかしら?」

「さぁね」

 

そう言うと、悠佳はおもむろに地に足を付け、カツ、コツ、と音を立てて俺の前までやって来た。

 

「シドー。下がっていろ」

 

俺が少しばかし退くと、十香が鏖殺公(サンダルフォン)を手に、俺の前に立ち塞がった。

 

「どいてよ・・・」

「なにをする気だ?」

「話をするだけさ。ねぇ?士道君?」

 

ゾクリ、と俺の背筋が凍った。真後ろから聞こえたその声は、誰から見ても分かる通り、悲しげな声をしていた。

 

「私ね?ずっと感情を押し殺していたの。とある人に言われて・・・復讐しろって・・・」

「悠佳・・・」

 

俺はそっちの方を見て、倒れてくる悠佳を胸にうずくめてやる。

 

「でさ?一番君を不幸に出来る方法ってのが・・・」

「ゆ、悠佳?」

 

少し不気味というか、恐ろしいような彼女の声に、俺は首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういうことなんだよねえええぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の最高な笑顔と共に発せられた大声。

それと同じタイミングで俺の胸に触れた彼女の手。

かと思えば天宮市一帯を襲った巨大で深い霧が現れる。

そして、彼女はまた、その霧の中に消えた。

 

 

「な、なんだ?」

「不幸って・・・どういうことよ」

 

 

現在、俺の身には何も変化はない。霧もすぐさま晴れ、人間が減った訳でもないし、十香も、美九も、琴里もいる。琴里の反応を見ても、俺の体に異常がないのが分かる。

 

「ねぇ、十香、美九」

「ぬ?どうしたのだ琴里」

「どうかしましたかぁ?」

「なにか変化はない?」

「私には無いが・・・」

「はい。体にはないんですがぁ・・・」

 

二人は顔を見合わせ、続いて俺の方を見て来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「その男の人が思い出せないのだ(ないんですよねぇ)」」

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