‐side 悠佳
私の心の中に、今二つの感情がある。
1つは、士道を独りにさせたことでのやってやったぞっていう感情。
1つは、士道を独りにさせちゃったことでの申し訳ないっていう感情。
私でも分からないけど、なんか・・・スカッとしない。
‐side 士道
俺は仕方なく学校から出て、先程来た道を引き返していた。
今確認出来ることは、琴里とラタトスクの皆以外、自分を忘れたということだけだ。
悲しみがこみ上げる中に、少し怒りも混じっていた。勿論、悠佳に対してだ。
我が家に辿りつくと、ゆっくりと鍵を開け、靴を脱ぎ捨て、とぼとぼとリビングに向かった。
「おや、士道さん。お邪魔していますわ」
・・・はぁ?
いやいやいやいや。なんで狂三が俺の家のリビングでコーヒーを飲んでるの?
「あら、どうしたんですの?」
「どうしたんですの?じゃないだろ!・・・っていうか・・・俺のこと分かるのか?」
少し遅れて気付く。狂三は今、
俺の名前を呼んだ。
俺の記憶がないのなら、俺の名前さえも忘れている筈だ。
嬉しさのあまりに狂三の肩に手を置きブンブンと前後にふる。
「ちょ、ちょっと!よく分かりませんが落ち付いて」
「あ、あぁ悪い」
「で?分かるか?っていうのはどういうことですの?」
「なんていうか・・・と、とりあえず悠佳っていう精霊がいて!その精霊が持つ天使でここらの人間の記憶から俺が・・・」
自分でも説明が下手だなとつくづく思うよ・・・
「とりあえず、天使の能力で十香さん達の記憶から士道さんの記憶〝だけ〟がなくなっているんですの?」
「だけって・・・どういうことだ?」
「いえ、恐らくですが士道さんと同時にその悠佳という精霊についての記憶も消しているんだと思いますの」
「・・・聞いてなかったな」
狂三が小さく「ダメだこりゃ」と呟くが、今の俺の耳にはそれは届かない。
それもそうだ。俺の記憶だけ消えて、悠佳についての記憶があるんだったら。悠佳がやったことを知っているんだったらその悠佳が使った天使の・・・まぁ記憶を消し飛ばせる魔法が解除されて俺の記憶が呼び戻される筈だ。
「それで、なんで私の記憶から士道さんの記憶がけし飛んでないかというと、その時多分私は他の市にいましたの」
「市?んじゃぁ」
「えぇ、多分この天宮市全域だけなのではありませんか?」
「・・・って、広くないかそれ!?」
「えぇ、とっても」
何か問題でも?と言いたげに小首をかしげる狂三。
まぁ、精霊の持つ天使の影響は俺でも知っている。美九はスピーカーを使ってだがそれがある限りその力に制限はない。
頭を巡らせていると、胸ポケットに入っている携帯がブルルルとバイブした。
発信先は琴里だ。
「もしもし」
『士道。ようやく全員の検査が終わったわ。簡単に纏めると〝あんたと悠佳の記憶だけ〟ぽっかりと穴があいてるのよ』
「やっぱりか」
「どうしたんですの?」
『って、その声は狂三!?ちょっとどういうことよ士道!!』
携帯で拾う音の範囲内に入ってしまった狂三の声が運の悪いことに琴里の耳に届いてしまった。
「い、いや家に帰ったらいて・・・」
「いいじゃありませんの。私と士道さんの仲ですもの。それに、今は敵対するつもりはありませんわ」
狂三がスピーカーにしろと言ったので、携帯をテーブルに置いてスピーカーにする。
『・・・まぁ信じてあげる。で、続けるけど、その消えた記憶の部分には何かが代わりとして入ってる訳じゃなくてそこだけ真っ白なのよ』
「その精霊のミスですの?」
『さぁね』
それだけ言うと、3人の口が閉じる。
「なぁ琴里、何かを引き金に記憶が戻るっていうのはあり得るのか?」
『漫画の見すぎとゲームのしすぎね。確立は低いわよ・・・あ、でも貴方にとって良い結果が出たわよ』
「なんだ!?教えてくれ!」
『落ち付きなさい。美九が「唯一男の中でも嫌いになれない」って言ってたのと、七罪が「あいつだけなら普通の姿を見せられる」って言ってたわ』
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