0話 出航、ヨーソロ
4月7日 マルロクマルマル 私立高尾海洋学園第一埠頭
「いよいよ、本日か…。」
俺は今、第一埠頭に停泊している第六十号沿岸艇の艦橋にいる。
「そうですね、艇長。いよいよ本艇に外海での訓練ができるとは…自分はとてもうれしいです!」
「まあまあ、落ち着け磯浦副長。外海だろうが内海だろうが俺たちは習ったことをやればいいんだよ。」
そう、俺の隣にいる磯浦副長に言う。
副長の言ったように、今日から旧日本本土より先、太平洋の方へ向けてこの沿岸艇が出航する。
太平洋上では補給艦との洋上補給や、外洋での砲撃訓練など内海ではできないことを最低でも一年ほど行う。
だが、本来この六十号は今日一年間の演習を終えて帰港する予定だった。
それが遅れたのは単純に、教員のミスだ。
教員の船は新鋭のものだが、自分たち高校生は旧式のもの。そこの違いが事故の原因となり、改修含め数か月のドック入り。
その間に第六十号のクルーは科の授業と実習を受け、いつでも船に乗れるようになった。
その成果が今、実ったのだ。
「蒼鷹航海長、磯浦副長、ここは頼んでいいか?」
「はぁ、いいですが…艇長はどちらへ?」
「少しこの船を回ってくるよ、航海長。頭の中のデータと差異を埋めておきたいからな。」
「了解しました。」
了解を得て艦橋を降りる。まず向かうのは機関科の方だ。
「やぁ、こっちはどうだ?」
「艇長!?今は艦橋のはずじゃあ…」
そういって驚いて敬礼するのは機関長の天津だ。
「いやなに、副長たちに無理を言って見回りに来たんだよ。それより機関の調子はどうだ?」
「いやぁ、丸々一年寝てましたからどうなるかとは思いましたが…きちんと整備されてますや、当分は大人しいと思います。そっちはどうだ、音羽!」
「こっちもバッチリ、機嫌いいっす!」
「そうかそうか、何かあったらすぐに報告してくれ。」
「了解です、艇長!」
「それじゃあ、俺は砲でも見てくるよ。。」
そういって機関科の2人と別れ、甲板に出た。
「今は…おおよそ8ノットぐらいかぁ…」
どんなに整備が行き届いていようが機関は換装されていない。そのため最大速力は16ノット、今は半速の8ノットで航行中だ。
「…て、艇長!?どうしてここにいるんです!?」
「あー、摩周か。お前こそどうして?」
衛生とこの船の食事を一任された、摩周トキワが甲板に出てくることなんてそうそうない。
「運動不足気味っていうのと…この船のことを見て回って、場所を覚えてすぐ動けるようにしておきたいからです。」
「なるほど、いい心がけだ。それじゃあそろそろ艦橋に戻るから、電測と電信にもよろしく伝えてくれ。」
「わかりました、艇長。」
そういって外の梯子を上り、艦橋に向かった。
「…それで、今どんな感じだ、航海長?」
「はっ!現在8ノットで太平洋上へ向けて航行中、当分はこの進路で大丈夫です。」
「ふむ…副長、ここで砲の動作確認も行おう。もちろん、発砲はしないがな。」
砲雷長を兼任してる磯浦副長にそういうと、
「了解しました。」
と返事が返ってきた。するとすぐにこの艦橋に取り付けられた砲の制御盤を操作する。
「これより、演習を行う。右舷対艦戦闘用意!距離およそ1500!」
「方位、0-8-5…仰角5度…テー!」
副長が射撃の指示を出すが、実際に砲弾が放たれることはない。
「遠30!修正射!」
「弾着!続けて射撃!敵艦進路変更、徐々に面舵!」
「仰角調整、テー!」
「…弾着、敵艦撃沈を確認!」
「敵艦撃沈、訓練終了!」
と、まあ…砲を動かしただけであったが、おおよその感覚は掴んでもらえたらいい。
「…はぁ、やっぱり本物の敵艦に撃ちたいですよ、砲術を取った身としては。」
「俺たち高校生にそんな機会が回ってきたら、それこそ大事件じゃないか。副長。」
「そうですよ副長、そんな事件は起こってほしくないですよ。」
「あ、いや…まあ、そうですね。」
まあ、俺もこの船が撃つのは見てみたいが、当分そんな機会は来ない。その時はまだそう思っていた。
どうも、久里浜燐です。
はじめましての方は初めまして、そうでない方はこちらに石を投げないでください!
…ええ、とうとう書いてしまいました。これからはがっこうぐらしの方と交互に週一で投稿していければなと思っていますが仕事で重要なポジションについてしまって…。
こんな作者ですが、よろしくお願いします。