1話 救難、ヨーソロ
4月7日 1034 旧千葉県房総半島上
その信号は、突然入った。
「艇長!電信室が小型貨客船『サザンクロス』より救難信号を受信!」
「なに、救難信号だと!?」
この辺で救難信号を出すような理由が見当たらない。
座礁か?と一瞬思ったが、自分たちでも無事に航行できているし海図ではこの辺に岩礁はない。
「…副長、救難信号はどこから発信された?」
「ここから東南東の方角、10キロのところです。」
「…航海長、救助活動を行って合同演習の海域まで行ったら…どれぐらい遅れる?」
「燃料消費を考えると速度を落とさないといけなくなりますから…半日は下らないですね。」
半日…航海最初からついてないとは思うが、ここでサザンクロス乗員と乗客を見捨ててもいかなる結果であれ後悔するだろう。
「…艇長、行きましょう。半日遅れたって、海上での救助目的なら大丈夫です!」
「すでに航路を引き直す準備はできています!」
それに、副長も航海長も準備万端だ。
「…よし、電信室にはサザンクロスに救助に向かう旨伝達した後学校に連絡してもらってくれ。航海長は航路を頼む。」
「「了解!」」
二人が返答をしてからの行動は早かった。
「電信室、こちら艦橋です!サザンクロスに救助に向かう旨電信してください!そのあと学校にもお願いします!」
半ば叫ぶように伝声管に言ったのは副長だった。
その横では副長が海図とにらみ合っている。そのため、舵を取っているのは俺だ。とはいっても停船中、正直することがない。
「…艇長、航路できました。」
「了解、航海長に進路任せる。指定ポイントへ行った後に停船、スキッパーを降ろして救助活動を行う。」
「了解しました、両舷前進微速!」
俺たちの船が、動き出す。遠方に見える、黒煙に向けて。
「…そういえば副長、サザンクロスはどうして沈みかけているんだ?」
「そこまでは、情報が入ってないです…。」
「…まあ、直接みて確認すればいいか。」
そんな会話をしているうちに、俺たちの船は指定ポイントにて停船した。
「…艇長、これは…」
「ああ、砲撃を食らっているな…副長。」
双眼鏡越しに見たサザンクロスは、右舷上部からおそらく左舷喫水線下に抜けたのだろう。
不発だったのか、訓練用だったのか…それでも、貨物船の装甲を破るには過剰な威力があった。
「…俺ともう一人、連れていく。艦橋は頼む。」
「了解しました、艇長。」
「…航海長、貴方も行ってきたらどうです?」
「副長…艦橋を一人で運用できるとでも思っているんですか?」
そんな二人の会話を横目に、階段を下りて機関室に向かった。
「…それじゃあ音羽、一号艇の方は任せた。俺と摩周は二号艇で向かう。」
あの後音羽を連れて救護室に向かい、摩周を連れて三人で打ち合わせを行った。
結果として、音羽が右舷側の艦載一号に救難ボートを乗せて洋上に投下、艦載二号を俺が操縦して摩周はそれに乗り、サザンクロス付近での救命活動にあたる。
おそらく、これが今行える最善のことだろう。
「了解っす!艇長!じゃあ、一号艇の音羽、早速行ってきます!」
そう言って一号艇を降ろしてすぐに向かっていった。
「俺たちも行くか、摩周。」
「そうですね、艇長。早く行かないと助けられる命も助けられなくなります。」
二号艇も降ろし、進路を黒煙の上がっているサザンクロスに取って速度を上げようとしたその時だった。
「…艇長、右に雷跡二つ!ですがいずれも60号艇の直撃コースではないです!」
「何だと…!?」
すぐにエンジン出力を抑え、魚雷を確認する。弾頭は赤色、訓練用のものだ。
「…魚雷接近の旨、発光信号で伝えておいてくれ。」
「了解です!」
ここも危なくなる。ならば装甲というものがない我々水上スキー組が一番危険だ。
「…追加で発光信号…回避行動に専念せよ、だ。」
「了解しました!」
後席の摩周には悪いが、少し乱暴な操縦になるかもしれない。だが、きちっと通信だけは行ってもらおう。
「…飛ばすぞ!」
二号艇のエンジン出力を上げて、俺は傾斜の止まらないサザンクロスの方へと向かった。
遅れました、久里浜です。
言い訳になるのですが、本職の方が忙しいのです。
また、モチベーションが上がらないのもあります。
遅れて申し訳ないです。
…あと、主砲魚雷戦は次回か次々回になります。お楽しみに。