王の眠る地
12時間という時間の末、ようやくイギリスにたどり着いた。
とはいえ、今の時間ならもう夕食の支度をしていると思うのだが、イギリスでは、まだ朝の10時前だ。時差ボケというのか。調子が上がらず、荷物を手に空港を出たところに、見覚えのある女の子がいた。
「予想通りの時間の到着ね。衛宮君。」
まあ、なんとなくわかっていた。チケットを買っといてくれたご友人、それは遠坂だった。
「そうか。そりゃどうも。」
「どうしたの、衛宮君。元気ないわね。」
「まあな。時差ボケってやつのせいだよ。遠坂はもう慣れたのか?」
「ええ、これぐらいはすぐになれないと魔術師としては失格よ。衛宮君?」
「はいはい。どうせ俺はまだ半人前ですよ。」
相変わらずというか、やっぱり遠坂はどこまでいこうと遠坂である。
「まあ、立ち話もなんだし近くのカフェに入りましょうか。」
「賛成。なんかいい店があるのか?」
「ええ、もちろん。もうこっちに来て1日よ?それぐらいはもう見つけてあるわよ。」
「そ、そうか…」
いや、早くないか?1日でお気に入りの店が見つかるなんて。というか、遠坂を満足させた店は少し気になる。
「そこに行きたい。案内してくれないか?」
「もちろん。元々そこに行くつもりだったし。」
空港から徒歩10分。遠坂のお気に入りの店。中はまあ、いかにもカフェという感じの雰囲気のお店だった。
席に座りドリンクを注文したあと、俺は早速本題に入った。
「なあ、遠坂。なんで俺がイギリスに来るって分かったんだ?」
「簡単な話よ。士郎なら時間が空いていれば、必ずここに来ると思ったからよ。だって、セイバーの眠る地だもの。顔ぐらいは絶対出すだろうと思ってたし。それが今回ってことね。」
「ああ、顔ぐらい出さないとな。セイバーに俺が愛していない、なんて風に思われるのは嫌だからな。」
当然のことだ、と力強くそう言い放った。
ただ、俺はそうだとして、
「なんで、遠坂はイギリスにいるんだ?」
「前に話さなかったっけ?私は高校を卒業したら、時計塔に行くって。」
「ああ、そういえば言ってたな。」
「そう。で、その時計塔に関する手続きをこっちでしてるってわけ。」
なるほど。一応、遠坂は遠坂家の当主である。しかも、遠坂家は、かなり名のある魔術師の家系らしい。それで、遠坂には時計塔からの招待みたいなものが届いているというのは、知っていた。それの準備に向けて、イギリスに来たということだ。
「なあ、遠坂。」
「何?」
「このあと、空いているか?」
「ええ、今日は1日空けてあるわよ。」
「なら、ちょっと今日は付き合ってくれないか。」
「いいわよ。その誘い乗って上げるわ。」
「すまないな。手続きがあるのに。」
「いいわよ。あんなのすぐ終わるし。それより、士郎の方が心配だしね。」
「悪いな。心配かけて。」
「その自覚があるんなら、そうさせないように努めなさいよね、全く。」
「ああ……」
そのカフェで昼食を済ませ、店を出た。流石にいきなり本命に向かうのは、緊張するというかなんというか… なので、まずは気晴らし程度にイギリスの観光地に赴くことにした。遠坂が行く時計塔、ウエストミンスター、大英博物館など様々な有名どころ出向いた。
次はどこに向かうか話してた時に遠坂が、
「士郎、グラストンベリーには閉園した後に忍び込みましょ。」
「な、何言ってんだ遠坂!」
「これは、士郎とセイバーを二人きりにするためよ。大丈夫。忍び込むのは簡単だから。だから、一旦私のホテルに行きましょう。」
そう言われ、遠坂の泊まるホテルに向かった。
遠坂の部屋に着いた時、遠坂が爆弾発言を放った。
「士郎あなたは、ここに泊まるのよ。」
「はい? と、遠坂何言ってんだ。ここに泊まる?」
「大丈夫よ。ベッドは3つもある部屋よ、ここ。それとも行くあてはあるの?」
「いや、まあ確かにないけど。」
「じゃあ、決まりね。」
とまあ、半ば強引に遠坂の部屋に泊まることになった。
日が沈み午後10時ごろ。
グラストンベリー修道院にすんなりと忍び込んでいた。
警備員は遠坂の宝石を使い、俺らを警備対象から外した。
堂々と、中を歩いている俺たち。
まあ、誰もいないけど。
そして、今回の旅の最終目的地に到着した。
「私はまわりを見てるから、ゆっくり二人きりで話してきなさい。」
「ありがとう、遠坂。」
「師匠として当然よ。」
アーサー王の墓。
セイバーが眠っているとされる場所。
「久しぶりセイバー、1ヶ月ぶりだな。」
一人で黙々と話しかける。
「セイバーがいなくなっても、俺はセイバーを片時も忘れたことはないよ。セイバーと一緒に戦って、暮らしたあの2週間は本当に特別だ。」
いろんな思いがこみ上げてくる。
そして、俺は口にする。
これが、俺の止まった時間をもう一度動き出させる一言だった。
「もう一度、セイバーに会えるのなら。」
突如まわりが光りだす。俺はその光に飲み込まれていった。