1.ゲームを始める。
主人公の名前は?『ネス』←OKですか?
女の子の名前は?『ポーラ』←OKですか?
友達の名前は?『ジェフ』←OKですか?
もう一人の友達は?『プー』←OKですか?
ペットの名前は?『ポチ』←OKですか?
すきなこんだてはなに?『ハンバーグ』←OKですか?
カッコいいとおもうものは?『キアイ』←OKですか?
主人公 ネス
女の子 ポーラ
友達① ジェフ
友達② プー
ペットの名前 ポチ
すきなこんだて ハンバーグ
カッコいいとおもうもの キアイ
これでよろしいですか? はい。
―― ―― ―― ―― ―― ――
199X年。
ここはイーグルランドと呼ばれる地方に存在する町『オネット』
切り立った高台や木々が周囲を囲い、隣町とは孤立した町で、住人は120人ほどとそれなりではあるが、町の規模自体は小さなものである。
そんな小さな田舎町の中、皆が寝静まった深夜に事件は起こった。
「早く寝ないと……」
町の郊外に建っている一軒家に住んでいる家族の長男であるネス。
野球好きの黒い短髪の元気な少年でトレーシーという妹がいる。
そして見た目についても身長が高い、目の色が青いなどの特徴は一切なく、何処にでもいるような平凡な少年で好奇心が旺盛な年頃である。
そんな彼は夜中に用を足す為に起きた後、眠りに就こうとしていた。
しかし今夜は【妙な胸騒ぎ】からか眼が冴えてしまい、今では真っ暗な部屋の中でベッドの上に座って窓を覆うカーテンの隙間から見える星空を眺めていた。
「なんだろう? こんなに胸がざわざわすることは無かったのに」
手で胸を擦るように押さえながら、眠れない原因と思われる胸騒ぎを和らげるようにしていた。
すると……その落ち着かないネスを黙らせるように次の瞬間?
ヒュゥゥゥゥ、ドオォォォーーン!
「!?」
変化が起こった。
彼が感じたのはまず届いた音は風を切る音。
そしてすぐさま小さな地鳴りと同時に発生した地面に何かが直撃した音だった。
「い、いったい……何が落ちたんだろう?」
普通の野次馬ならば慌てて家を飛び出すような事態だが、打って変わってネスは奇妙な程に落ち着いていた態度だった。
今までこんな事は無かったからだろうか。
「すこし見に行ってみたいな……」
けれども湧き立つ好奇心は抑えられなかったのか、結局音を立てぬようにと部屋のドアを静かに捻り、こっそりと自室を後にした。
―― ―― ―― ―― ―― ――
ネスの家は二階建てになっており、彼がいる場所は二階の突当り。
そしてネスの部屋から見てその右には彼の妹トレーシーの部屋があるため、気付かれる事なく廊下を通り、一階の階段へと向かわなくてはならない。
「よし、あまり物音を立てずに静かに行こう」
底で彼は階段へと続くフローリングの廊下を抜き足……差し足……とまるで泥棒のように慎重に進んでいく。
明かりが点いておらず暗いが、暗闇に慣れてしまった夜目で何とか階段へと一歩一歩と近づいていった……。
しかし?
パチッ。
「あ、あれ?」
突如、ネスの視界は明かりに照らされ広くなった。
だが別に彼がスイッチに手をかけたわけではなく、
「もう、ネスったらそんな泥棒さんみたいな真似してもダメよ」
実行した人物と思しき女性の優しい声が彼の耳に届いた。
「ま……ママ、起きてたの?」
そう、彼の母親が家の全ての電気を付け、階段に差し掛かっていたネスを発見して言葉を向けたんだった。
「あんな大きな地鳴りがしたんですもの。ママ、思わずビックリして飛び起きちゃったわ」
彼女は小さく笑いながら息子の言葉に返答する。
「フフ、ママは分かっているつもりよ。ネス、何が起こったか見に行きたくて今こうして部屋から出て来たんでしょ」
(ギクッ……)
続けて自分の子供の行動を見透かした様に彼の母親はそう尋ねると、ネスはうっかり表情にその答えをハッキリと出してしまう程の変化を起こした。
「う、うん……今は目が冴えちゃって眠れない。しかも今は何が起こったか気になって余計に眠れないと思うんだ」
しかし、それでもネスは止められると思ってはいても、自分の考えをハッキリと母親に伝えた。
「……」
そんな息子の意見に母親は少し沈黙はしたものの、こう返答した。
「ダメよ」
危険がある夜遅くに子供を外へ出すなど教育としても息子の安全のためにも、それは親が子を守る義務としてここは止める。
「ママ……」
ネスも重々承知はしていたが、流石のいつも優しい母親から御託を並べずに一言で断られた事に少しだけショックを受けていた。
だが……。
「……なんてね。普通の家のママならここは止めるけど、何かに興味を持って自分から動こうとする子供を止められないわ」
息子の意見を否定した時は真剣な表情だったが、今はニコリと笑い酷い寝癖が付いたネスの頭をそっと撫でると、言葉を続けた。
「じゃあ、行ってもいいの?」
「ママが止めても一緒でしょう。じゃあ部屋で着替えて来るのよ」
そして彼女はネスの外出を了承すると、彼女は息子の背中を押しながら部屋に入っていき、パジャマ姿でボサボサな頭をしたネスの身支度を整える事にした。
―― ―― ―― ―― ―― ――
黄色と青が交互に彩るストライプ模様の服。
そしてズボンには青色のハーフパンツ。
そして頭には友達から貰った野球の大スターと名高いミスターベースボール選手の赤い野球帽を頭にかぶった姿。
これがネスが好み、外へ出かける時にはよく着用する服装だった。
「うわあ、やっぱりみんな起きて出てきてるよ」
そうして準備が整った所で玄関のドアを開けると、ネスの眼前に広がる景色は夜にもかかわらずに野次馬の大人たちが外を出歩いていた。
「おや、ネスじゃないか? こんな時間に外に出ていけないんだぞ」
すると顔見知りの男性がネスを見つけて名を呼びつつ歩み寄る。
「こんばんは、おじさん。一体何が落ちて来たんですか? それによく見たらパトカーまであるし……」
事件沙汰の出来事なのか、彼は呼び止められつつもネスは家からオネット内へと続く坂道が警察が閉鎖している事を目撃する。
「なんでも『隕石』が落ちたらしいぜ。でもそんな事で大騒ぎしすぎだよな、おかげで町へ帰れやしないってのに」
「隕石?」
「ああ、そうだ隕石さ。空から降ってきた石っころみたいなやつだ。って……おっとこうしている場合じゃなかったんだ……悪いなネス、俺は少し野暮用があるからまた今度な。……ったく何でいちいち家に帰るのに検問なんか……ブツブツ」
「あっ……うん。バイバイ、おじさん。よし僕も行こうかな」
そうしてネスは苛立ちを見せていた男性との会話を終えると、普通なら人気の少ない山の所に人が密集している事を確認して、隕石が落下したと推測した山の頂上へと向かう為に歩いて行った。
「隕石なんて本当に落ちたのかな……でもみんなカメラ持ってるし」
山と言っても数分で頂上に着くような小さな山の道を徒歩で上がってゆくネスは、道の脇で盛り上がっている大人たちを尻目に進んでいく。
そして……中腹辺りまでたどり着き、山頂への道を塞いでいるパトカーの点滅するライトが見える場所まで来た頃。
「あれ、もしかしてネスちゃんかい?」
それは山道に一軒だけ孤立した家に住まう男性だった。
「あっ、ライヤ―さん。こんばんは」
目の下にクマがあり、疲労からかやつれた風貌をした怪しい雰囲気を漂わせるその独身の男性は自称トレジャーハンターことライヤ―・ホーランドだった。
「やぁ、ネスちゃん。隕石がすごい音をたてて落ちてねぇ、けっこう驚いたもんさ。俺は毎日多くのニンニクを食べて体を鍛えてるから平気だったけど一般の市民なら気絶して白目をむいてたね」
「あはは……」
その今にも寝不足や栄養失調で倒れそうな見た目のライヤ―を、ネスはあからさまな苦笑いでその話を聞いていた。
「あっ、そうだそうだ。ネスちゃん、隕石ついでに少しで良いから家に入りなよ、どうしても見せたいものがあるんだ」
「見せたい物ですか?」
「ああ、こっちだ。おいで」
「は、はい」
隕石が気になるネスだったが、昔からの知り合いであるライヤ―の勧めである以外にも彼の家には珍しい石や骨などが飾られているため、少し興味をもってその後を付いていった。
―― ―― ―― ―― ―― ――
「これは……凄いね」
ライヤ―の家に入った直後、ネスは咄嗟に口を開けて驚いた。
「どうだい? 今度の掘り出し物はたまげただろう。まあこれを掘るために自分の部屋の床をぶち抜いたんだけどね」
二人の視線の先にあったのは両手で正面に向けて剣を支えるポーズを取った黄金に輝く風変わりな像だった。
「警察が来たときは家宅捜索されないか不安だったけど、これだけはなんとしても守りたいね。だってこのライヤ―・ホーランドは昔から……ブツブツ」
宝に興奮しているライヤ―は得意の数時間に及ぶ自慢話が始まろうとしていたが、ネスはその金の像を見てある違和感を覚える。
(なんだろう、この像を見ているととても怖い。というより冷蔵庫の中に入ったみたいに体中が寒い。なんなんだろうこの寒さは)
もう一人で勝手に自慢話を繰り広げているライヤ―を放置して、違和感に耐えられなくなったネスは彼の自宅を飛び出した。
「ライヤ―さんには悪いけど、隕石の方を見に行こう」
そうして別れを告げると、彼は再び足を動かし山の頂上へと向かっていった。
―― ―― ―― ―― ―― ――
山頂部。
どうやら中腹部にいた野次馬たちはここで警備網を敷いている警察たちに追い返された者達だったようで、『約一名』を除いて警察の人間しかいなかった。
「あれは……ポーキー?」
山頂までやって来たネスはその見知った背中を見て、歩み寄る。
「んっ? 今度の野次馬は誰だ?」
対してその約一名は、誰かの気配を察知したのか背後を振り返る。
するとそれはネスの同年代であり隣人である金髪少年のポーキーだった。
目元が隠れる程に垂れ下がった髪と大きめの青色のオーバーオールにキッチリとはまる太り気味の体形が特徴の子供。
「なんだ、ネスじゃないか。よりにもよって次の野次馬がお前とは……早く帰れよ」
会ってすぐに不躾な言葉でネスを叱るポーキー。
ネスはその悪友とも呼べる友人の言葉に戸惑いながら、視線を警察の人々へと向けると、警察は隕石だけじゃなくポーキーにも迷惑しているような不機嫌そうな顔をしている。
「警察のみなさん。この『僕』が野次馬の少年を家へ帰るように説得するので、気にせずに隕石の調査を続けてください」
(すごい話し方……いつものポーキーからは考えられないや)
普段の彼を知っているネスからすれば、その別人のような丁寧な話し方にふと心の中でそう笑っていると、
「なあ、お前もうちに帰れよ。謎の隕石のことなら、このポーキー様が明日くわしく教えてやるからさ! さあ、帰った帰った」
「う、うん……分かった、帰るよ。またね」
ネスはそんなポーキーの一方的な態度に気圧され、思わずこの場所から退こうと足を動かした……すると、その警官の一人が気を遣い、
「ネス。帰り道は危ない。私が家まで送ろう」
「ありがとう、おじさん」
無事に家に届けるべく付き添っていった。
―― ―― ―― ―― ―― ――
現場から離れた直後。
「ネスはポーキーを何とかしてくれると思ったが、アイツ中々キツイ性格してるよな。本当にうるさくてまいってるんだ。今度遊ぶ時は俺達の意見も言っておいてくれよ、ハハハハ」
その道中、ポーキーのしつこさに手を焼いていたのか警官はネスが彼と友人である事を知っているうえで、そんな愚痴をこぼしていた。
帰路での会話の殆どが彼の話題になるくらいに。
だがその警官は家まで送り届けた際。
彼が発した言葉に関心を抱く。
そして……その言葉とはこうだった。
「でもポーキーは……そんなに悪い人と思ったことは無いよ。確かに大変な時もあるけど、それでも大切な友達だよ。だからポーキーの事を嫌ってあげないで、お願いします」
言葉を受けた警察はその優しい言葉に笑みを含んだ表情で頷きながら、山頂へと戻っていったのだった……そうして。
「おかえり、ネス。何があったかママはちゃんとわかってるつもりよ」
その後は外から彼の声が聞こえたからか、母親は玄関を開けるとネスを家の中に迎え入れ、
「今日はもう遅いし、ベットに戻っておやすみなさい」
と、何処か疲れた顔をした息子に言葉を向けて、すぐに寝巻の準備をすると外を歩いた事で落ち着いた彼を寝かしつけた。
―― ―― ―― ―― ―― ――
それからさらに夜も更けた頃だった……。
ドン! ドン!
ドンドドドンドン! ドン! ドン!
「うん?」
ネスの耳に響いたのは一定のリズムが刻まれたドアのノック音。
けれども叩く力が強いせいか、眠っていた人間を起こす程の音のため、せっかく眠りについていたネスはまた起きる羽目になった。
「一体……誰だろう?」
そして彼は自室を出て、再び一階のリビングへと向かうと……。
「あっ、ネスお兄ちゃん! こっちこっち!」
なんと今度は母親だけではなく妹のトレーシーまでも起きており、そう降りて来たネスを捕まえると、
「こんな時間に一体誰かしら? ネス、お願い。出てちょうだい」
不審な訪問者に少し怯えている母親と、
「随分と下品な叩き方だなぁ、お兄ちゃん、頼むわね」
と冷静に話す母親譲りの金髪をしたトレーシーが話しかける。
「わ、分かったよ。でも誰だろう?」
そしてそうせがまれたネスは断る事無くドアの近くまで向かってゆくと?
(あっ……そうだ。いい方法思いついた!)
玄関のドアノブに手をかける前に目を瞑り、精神を集中させた……。
(うーん……もう少し……かな?)
普段は平凡な少年であるネス……。
だが彼には他人とは大きく異なる点が存在する。
それは……微弱ながらも【とある特別な力】をもっており、多くの人はこれをテレパシーと呼ぶ。
そう、彼には動物の声や人の心、ライヤ―の家の金の像を見た時の違和感の様な気配を読み取るだけでなく、時はサイコキネシスの様な遠くの物を少しだけ動かすことが出来るのだ。
【開けてくれよ。もうみんなは寝ちゃったのかな?】
そこでドアの向こうにいる人間の心の声を読み、判別した。
「ポーキーだ、ママ、訪ねて来たのはポーキーだよ」
彼はそう母親に情報を伝えると、すぐに扉を開いて息を切らせて妙に慌てていた友達は家に招き入れた……すると!?
「た、た、たた、たいへんなんだよ! 何がって、例の隕石の落下地点にピッキーの馬鹿を連れてったんだけどよ。あ、ネスのおばさん、こんばんは。いつもきれいですね、ゼェゼェ」
深夜などお構いなしに隣人の家に飛び込んできたポーキー。
第一声が以上の言葉で慌てて話したせいかさらに息切れをしていた。
「そ……それで一体どうしたの?」
だがそんな突拍子の無い言葉にネスは首を傾げて返事をする。
「えーと、要するにピッキーを連れってたらさ、警察はシャーク団が暴れてるからって町の方に帰ってさ……だからピッキーがいなくなっちまったんだよ」
ポーキーは玄関で頭を押さえるようにして言葉を続けた。
「警察が悪いんだよ。俺は悪くないのにさ。でも、とーちゃんが帰ってきたらおれが怒られるだろ。ケツ叩き100回だ。いっしょにピッキーを探しに行ってくれるだろ? 親友だってことでさぁ。もし嫌だと言ったら心が張り裂けそうなことを言うぞ」
文句、頼み事、脅迫の三種類を組み合わせた言葉を並べると、ポーキーはネスの返事を待つように彼の顔を見つめる。
「う……うん、別にいいけど」
そんな怒涛の言葉責めではあったが、ネスにとっては彼の頼みを特に断る理由も無く、そう承諾すると目こそ髪で隠れているがポーキーは口元を緩ませ、明るい表情を浮かべると、
「そうか聞いてくれるか、流石は我が友のネスだぜ! 後はちゃんとおばさんにあいさつをしてから行けよ。心配をかけちゃダメだぜ」
常に人の顔色を窺う事を重視して、ゴマを擦るせこい性格の特徴が前面に押し出されているが分かるような言葉を告げると、彼はその場で待機した。
「ママ、ごめんなさい。また外に行ってもいい?」
友人の頼みを無下にしなかった姿勢を一部始終見ていた母親は相槌を打ち、即座に返答した。
「話はわかったわ。でも人もいなくなって危ないからトレーシーの部屋にあるボロボロのバットを持っていきなさい。とにかくファイトよ! ファイト! でもちゃんと着替えてから行くのよ、いいわね」
そしてパジャマ姿の息子を見て、数時間前に袖を通したお気に入りの私服に着替えるように再び促したのだった。
―― ―― ―― ―― ―― ――
「うん、うん、カッコいいわ、ネス。そうそうそのバットはあくまで悪い奴を退けるためにあるのよ。絶対にやり過ぎはダメよ」
身を護る為とはいえ、母親は自分の息子が残虐な行動をとって後で後悔をさせないように先に釘を刺す。
「分かった、約束する。じゃあ行ってきます」
対して、ネスもその色も褪せて少し割れ目が入ったオンボロのバット片手に母親と約束を交わした。
「行こう、ポーキー」
そしてソファでジュースを飲んでいる迷惑な友に声をかける。
「おう、着いて行くぜ」
我が家のようにくつろいでいたポーキーは慌てて立ちあがりその後ろに付き添い、ピッキー救出の準備が完了した……その矢先の出来事。
プルル! プルル! プルル……。
「うおっ!? なんだ電話か」
「こんな時間に一体誰だろう?」
玄関傍に備え付けてある黒電話が急に呼び出しを始めたのだ。
「おい、ネス早く出た方が良いぜ。うちなんか3回コールまでに出なかったら親父にお仕置きされるんだぜ……ひでぇだろ」
「う……うん」
発信者が誰かは分からなかったが、電話から最も近いネスが受話器を手に取って応答した。すると、その相手はなんと。
「もしもし?」
「おっ、ネスか? 丁度いい。伝えておきたい事があってな」
「あっ、パパ!」
ネスの父親だった。
彼の父親は非常に優秀なビジネスマンで常に世界中を飛び回る程の忙しさでオネットでも有名な人物である。
その為、自宅には滅多に帰ることは無いが、たまに家族の様子や息子や娘を心配してこうして電話をかけて来る事があり、今回もその一つだった。
「急に言われても驚くだろうが何だかお前がちょっとした冒険に出る気がしたんだ。だからこう励まそうと思ってな。若いときの苦労は買ってでもしろ! という言葉もあるじゃないか。パパはいつでもお前の味方だ。怖れずに勇気をもってやってみなさい」
「う……うん! 分かったよ!」
「ああ、それとお金は定期的に振り込んであげるからキャッシュディスペンサーから引き出して自由に使いなさい。健闘を祈る。パパだってヒーローの父親になれるなら悪い気はしないぞ。ワハハハ!」
ガチャン、ツーツー。
息子の励ましの言葉を告げると父親は電話を切った。
「ありがとうって言いそびれちゃった……」
あまりの急な電話に加えて、一気に話を進められたおかげで返答が一切できなかった事に僅かに気を落としながらも、母親と妹に手を振って、待たせていたポーキーと共に彼はドアを開けて外へ出た。
―― ―― ―― ―― ―― ――
「結構暗いね……さっきはパトカーとか懐中電灯を持った人がいたから、あんまり暗いと思わなかったけど」
月の光があるとはいえ、子供のネスにとっては恐怖心が芽生えるような環境であった。
『おや、ネスじゃないか。一体こんな真夜中に何をしてるんだい?』
「うん?」
ネスは背後から聞こえる『動物の声』に反応して振り向く。
「あっ……ポチ、起きてたの?」
『勿論さ、あんな隕石落ちてきたら誰でも目を覚ますよ』
後ろから寄ってきたのは白い毛並みのペット犬のポチで、ネスはテレパシーで彼の声を聞けるため、会話が可能だった。
そしてポーキーについてもその彼の能力を知っているため、また話すのかと呆れながら家の周りを囲う柵に身を任せて待機していた。
『それにしても……犬だって人だって、夜は寝るんだよ? 君も早く寝なよ』
「あははは……まあ聞いてよポチ」
厳しい一言を吠えられたネスは、雄犬であるポチにこれ以上怒られる前に簡単な状況の説明を始めた。
『なるほど。ぼくについてきてほしい? 二人だと心細いでしょ』
「ホント? いいの?」
ペットの頼もしい言葉にネスはすぐに頷いて、協力を仰いだ。
『ああ、主人である君のお願いならしょうがないさ。それじゃ行こう』
「うん!」
こうして犬一匹が新たに仲間に加わり、ネス達は隕石が落ちた現場に取り残されたピッキーを救出すべく、再び動き始めた。
―― ―― ―― ―― ―― ――
ネス達が山の頂上を目指すべく、山道を進み始めてそれなりに経過した頃。
「気を付けろよ、夜遅くには野蛮な動物たちが新鮮な子供の肉を求めてさまよい歩くって警察の人に言われたことがあるぜ」
ポーキーは震えながら持ってきた懐中電灯を両手で握りしめて、そう恐怖感を煽るような不気味な発言をする。
「でも、それだったら余計にピッキーを一人に出来ないよ」
「ま……まあそうだよな」
すると……そんな子供二人が怯えている様子を横目にペットのポチは……。
(馬鹿馬鹿しい、そんなの警察の人達が夜に子供が外に出ない為の口実に決まっているさ)
と現実味を含んだ事を考えながら、怖がっている主人の横を引っ付いて歩を進めていく。
「さて、そうこう言ってる内に中腹だな。動物たちめ、このポーキー様に恐れをなして逃げていったに違いないな。いやあ、本当に強い人間って言うのは周りが怖がって逃げるから戦わなくて楽だよなあ」
そして特に目立った変化も無く、中腹に到着したポーキーは調子に乗って笑っていた。
だがそこからも彼の言う通りここまで何かが襲い掛かってくる事も無く、気が付けば山頂付近のすぐ傍にあるライヤ―の家まで進んでいた。
「よしっ! ここまで来ればもうすぐだな。ピッキーめ。この立派な兄上様が迎えに来たと知れば、尊敬して一生いう事を聞くだろうな、ワッハハハハ!」
余りの物事の順調さに高笑いを上げた直後にポーキーはネスとポチを置いて勢いよく走っていった……すると!?
ゾワワッ!
「うん!? なんだ今の気配は……ポーキー、待って!」
何かの気配を察知したのか、ネスは大声で走る友人を制止する。
それを聞いた彼も動いていた足を止めて、後ろにいるネスの方へ振り向く。
「おいおい、ネス! 一体なんだよ……そんな怖い顔して」
ライヤーの家の前を通過する直前だったポーキーは苛立ちを見せながら、その場で腕組みをして立っていた。
すると……。
「グルルル……ガルル……」
全員の耳に聞こえて来た音は犬の低い唸り声……。
そしてその声の主は姿を現したライヤ―の家の影から、のしっ……のしっと草を踏み潰すようにして現れた。
「うわぁぁぁぁぁぁ! 出たぁぁぁぁ!」
さっきまでの威勢は何処にいったのか、鋭い眼光をした凶暴な茶色の野犬を見た途端、ポーキーは慌てふためきながら友人の背後に回りこみ、ネスを盾にしようと怯えていた。
(凄い悪い感じがする……何か悪い奴に取りつかれてるような)
『ネス! こいつは知っている子だ。普段はこんな悪い顔しないよ』
ネスのテレパシーで読んだ気配を裏付けるように、ポチは見知っている犬の情報を吠えて伝えた。
「戦うしかない……それで追い払うしか……」
ポチの情報はしっかりと聞いていたが、今ではすっかり獰猛ですぐにでも牙を剥けて噛みついて来るのが分かる程に、相手は警戒し、身を構えていた。
そして数秒後に……野犬はネス達に向かって飛びかかる。
「くそぉ!」
普段はボールを打つために振るうバットを今度は動物めがけて、抵抗はありながらも振り回して野犬を牽制する。
(後ろには友達がいるんだ。絶対に守らなくちゃ!)
『ぼくも戦うよ!』
勇ましい主人の姿にポチもそう吠えながら、ネスの援護に参加。
野犬に向かってバットを振るって攻撃をするネス、そして白い体をぶつけて体当たりを仕掛けるポチ。
バットは足先や手などあまりダメージを負わせられる部分には命中をはせず、ポチの体当たりも綺麗に決まる事はなかった。
「グルルル……ギャウギャウ!」
野犬の方も敵の手ごわさに次第に苛立ちうっとおしくなっていた。
だが、そんな時に敵の目はある人物を捉える。
それは……。
「ハッ! しまった! 逃げて、ポーキー!」
怯えて腰を抜かしていた太った少年のポーキーだった。
絶好の標的と判断した野犬の動きは速かったため、呆気に取られたネスはそう発したが、ポーキーは立ち上がれなかった。
反して野犬は口を開き、噛みつこうと飛びかかったのである。
「ちくしょう! これでもくらえ!」
しかしポーキーも意地を見せ、野犬にタダで負ける程逃げ腰にはならずに、なんと彼は持っていた懐中電灯の光の強さを最大にして、その赤く光った凶暴な野犬の目に向けたのだ!
「ギャ!? ギャインッ!」
夜目に慣れていたせいか、余りの眩しさに目がくらみポーキーの横を掠ると、野犬は驚いた鳴き声をあげて落下し上手く目を開けずにウロウロとしていた。
「ごめん……少し大人しくなっていて」
ネスは目つぶしをされた野犬の体めがけてバットを振り下ろす。
「ギャアオウ……グルルル……グウ」
ネス自身、手加減はしていたものその痛みで気絶したのか、獰猛だった野犬は大人しくなった。
「ふう、何とかなって良かった……」
とはいえ友人の思わぬ一撃で何とか危機を免れ、ネスは安堵の声をあげて、ポーキーの手を引いて起こしてやっていた。
「おい、ネス! 今回のこの戦いのMVPはこのポーキー様だ。だからいい気になってんじゃないぞ。さあ早く頂上へ行こうぜ」
足が笑っていて、イマイチ説得力のない言葉を口にしたポーキーは今度こそ邪魔者のいなくなった山頂へと一人で突っ走っていった。
「よし、じゃあ僕たちも行こうか。ポチ?」
目的地に先走りしていった友人の背中を負う為に、ネスは愛犬の方を振り向いてそう口にした……するとそのポチはと言うと?
『ごめん、ネス。ぼく、こんなに山が怖い所だと知ってたら……僕来なかったよ。悪いけど先に帰ってるね』
いきなりの凶暴な敵を前にして、戦闘後に冷静になりその溜まっていた恐怖が一斉に押し寄せたのか、ポチはそう言い残すと犬らしい素早い動きで帰路を全力疾走していった。
「…………もう臆病なんだから」
そうしてネスはそんなポチの背中を見送ると、山頂で待っているポーキーの元へと走っていった。
自身が今までのゲームの中で揺るがない最高のゲームの二次創作を行いました。
なるべく原作の雰囲気を壊さないように連載していきたいです。
腕前についてはまだまだですがよろしくお願いします。