そしてそろそろ小説の文字数が10万文字に行きそうになっていてテンションがかなり上がっています。
部活動で書いた小説でもここまでいかなかったので、早く10万字記念を迎えたいと思っています。
グレードフルデッドの谷。
当初の目的であった誘拐されたポーラの救出、そして新たなパワースポットのリリパットステップを巡った二人は、より強くなった状態となりハッピーハッピー村と別れを告げて、元来た道を辿っていった。
あれほどいたモンスターやロボットたちも更なる力を付けた彼らに畏怖しているのか、姿すら見えなかった。
「本当だってば、ロボットやUFOが飛び回っていて酷い目に遭ったんだって」
「本当に? でも何処にもいないわよ。UFOどころか敵さん達だっていないのに、フフ」
ネスはポーラにここでの苦労話を口にしていたが、ポーラはUFOやロボットを目の当たりにしていないせいで面白い冗談だと笑っていた。
「もう……ロボットが出てきても知らないからね。ぼく、逃げちゃうからね。ポーラを置いて逃げちゃうよ」
何の為に彼女を助けに来たのか疑いたくなる冗談を口にするとポーラはまたクスクスと嬉しそうに笑い、
「まあ、酷いわ。いいもん、ロボットだろうとUFOだろうと私のフライパンで叩きのめしちゃうから」
お気に入りの護身用武器なのか、彼女は体に括りつけるように所持する黒いフライパンに手を当てながら、意気込みを彼に伝える。
「ハハハ、頼もしいや、ポーラは」
村の平和を取り戻し、ヒーロー気分で和気藹々としながら、初めは孤独で何処か心細かったが、仲間が出来た事で楽しく谷を越えるネス。
本やゲームで見たような『パーティー』の様に新しい人物を味方に付けて世界中を冒険する。
フィクションではなく実際に自分の身で体験している事で、何とも言えない高揚感に彼は浸っていた。
けれども……それはすぐに消え去る事になる。
邪魔が入ることなくどんどん谷を進み、もう少しでツーソンへと続く洞窟へと戻れる所まで向かってネスとポーラの二人だったが、
(苦しい……なんだ? この重たい感じは……)
ネスは突然襲われた恐ろしい気配にやられ、気分を悪くしながら歩く速度が落ちていった。
「ネス、貴方も?」
ネスはポーラの言葉に反応して、後ろを歩いていた彼女の方を向くと、自分と同じように異様な寒気を感じ、怯えているような表情をした姿があった。
「何だろう……この気配……前に何処かで」
不安そうなポーラに寄り添うように後退し、足並みを合わせるネスはその気配に覚えがあった。
「そうだ、初めて谷を越えようとした時だ!」
それは彼がポーラを救出する前のこの谷で何者かに監視されている強い気配と同様だった。
唯一、違った点は……。
「近い……前はこんなに強烈じゃなった筈なのに、やっぱりスターマンか!?」
「スターマンって、私の敵で、世界をどうにかしちゃうってギーグの子分よね……」
ツーソンへ戻る前にハッピーハッピー村で一泊をした時、自分たちの目的や本当の敵は誰かの話をしていたのだろうか。
ネスの知っている情報を共有していたポーラはそう口にする。
「うん。でも、前に戦った時はこんなに恐ろしい気配はしなかったよ、なん……で?」
前回の戦い、ネス達にギーグ打倒の予言を残した故人ブンブーンと共に戦ったスターマンは強い気配までは発していなかった。
だが、姿形こそ確認していなかったものの、ロボットでもUFOでもない、殺し屋という肩書に恥じない殺気を持つスターマンだと考えていた。
「強さの違い?」
「ソウダ!」
声は二人の前から響いたものだった。
ほんの一瞬の瞬きをした途端に現れた声の主。
「随分ト苦シソウダナ。ソレホド私ガ怖イカ?」
特徴的な銀色ではない青色の体のスターマン。
「選バレシ少年ネス。貴様ガブンブーント共ニ倒シタノハ、所詮、下ッ端ダ。気配ガ違ウノハ当タリ前ナノダ」
敵の背後から増援として現れたエリートと思われる金色のスターマン達を従え、真っ赤マントをその身に羽織った人物。
どす黒く、おぞましい気配の正体はこの者だった。
(戦わなくても……分かる。コイツには絶対に勝てない)
ポーラを庇うように前へ一歩出てはいたが、ネスは格の違いを本能的に悟った。
「オ前達ハ手ヲ出サナクテ良イ。コノ少年ハ我ガ手デ葬ッテクレル」
リーダーであるマントのスターマンはそう仲間たちに告げ、一線を引かせるとネス達を凝視する。
「ココマデ、御苦労ダッタナ。シカシ、冒険ゴッコハココデオ終イダ、ギーグ様二刃向ウ者共ハ消シ去ル」
そう口にすると、部下の一人に預けていた銀色の剣柄のような物を受け取る。
「ぼく達は冒険ごっこなんてしてない。ぼくもポーラも命を張って、世界を救う為に必死なんだ……」
呼吸も乱れ、次第に足が小刻みに震える。
圧倒的な実力を察知させる程の相手が現れた時から背筋は既に凍り付き、気を抜けば泣きだしそうになる。
だが、ネスは必死にこらえた。
「それを遊びみたいに言うな! 例えお前がどれだけ強くてもこんな所で殺されるわけにはいかない、ぼく達は大切な人たちを護る為にここに立ってるんだ」
弱音を吐く事もしなかった。
ひたすらに両親の幸せな笑顔を思い浮かべ、こんなよく分からない侵略者に絶やさせないと鼓舞し、友人から受け継いでいる武器のバットを構えた。
「見事ダ。コノ私二向カッテ、初メテソンナ大口ヲ叩イタノハ貴様ガ始メテダ。良カロウ、私ノ気配二苦シソウニシテイル少女ハ後回シダ。先ズハ貴様カラダ!」
特殊なスターマンは受け取った剣柄に念を送り、テレパシーの力を光り輝く光線の刃に変え、ビームソードに形を切り替える。
「うおおお!」
雄叫びをあげ全身に力を入れると、ネスは勇気を振り絞って相手の懐へ突撃していった。
武者震いではない純粋な恐怖から来る体の震えが収まっていないにもかかわらず、向かっていく。
「ぼく達が皆を守るんだっ!」
ビームサーベルを構えていた相手に、ネスは力の全てを込めた渾身の一撃を放った。
「…………」
そう、たった一撃だった。
「所詮ハ、子供ダナ」
力こそ込めていたが、スターマンはいとも容易く攻撃を受け止めると、受け止めていたビームサーベルを大きく振り、ネスの体は弾き飛ばした。
「うぐっ、ぐぐぐ」
圧倒的。
先に苦戦した巨大モグラなど可愛く見える程にそのスターマンと彼の実力差はかけ離れていた。
「イズレ、オ前達ハ脅威二ナル。ココデ死ネ」
少年の最後になるであろう一撃を『わざと』受けた相手はそう口にすると、止めを刺すべくネスの方へと向かってゆく。
「させない! PKフリーズβ!」
ネスに危機が迫る現状を見過ごせないポーラは敵の追撃を阻むべく、気力の全てを注ぎ込んだ最大威力のPKフリーズをスターマンへとぶつける。
「小娘メ! 余計ナ事ヲ!」
周囲を囲っていたスターマン達が彼女の咄嗟の行動に反応し、慌てて彼女の放った大きな氷塊を消すべく、持っていたビームガンで撃ち落としにかかる。
だが、フルパワーのPKフリーズβは一部が欠けるだけで、周囲の植物や木々を氷漬けにしながら、勢いを付けて目標へと向かった。
「ホウ、コレハ確カニ大シタ技ダ。私ガ通常ノ戦闘員デアレバ、ヤラレテイタカモシレナイ」
しかし子分が慌てる中で、目前に迫る氷塊を目にしてもリーダーは冷静そのものだった。
勿論、少女が放った技にしては威力の高い技である事は承知している。
「ダガ、残念ダ。私ハ貴様達ニハ負ケナイ。ヨッテ、コノPKフリーズモ無駄ダ」
その刹那、氷はあっさりと破壊された。
息を吸って吐くように、持っていたビームサーベルで氷塊が幾つにも分離し、地面や流れる谷の川に落ちる。
「そんな……」
ポーラは唇を震わせて言葉を出すと、相当なショックが襲い掛かってきたのだろう、すぐに両手で口元を隠すと、崩れ落ちるようにその場に膝を付いた。
「フン、安心シロ。スグニ地獄……天国二送ッテヤル。ネスヲ抹殺シタ後二、同ジ場所ヘトナ」
リーダーの発言後に気力、精神力共に奪われたポーラは彼女の動きを警戒する子分のスターマン達に体を押さえつけられる。
変わってネスも弾き飛ばされた時の衝撃が強く、深手を負ったのかぼやける視界で立ちあがりはしたが、
「く……そ。ダメ……だ、体の自由が利かない……」
激しく消耗した体では満足にバットも構えられないどころか、立っている事すらやっとだった。
絶体絶命。
残酷ながら無謀な勇気では勝利は拾えず、勝敗は決す。
勝者は敗者の生死を自由に決める権利を獲得できる。
「オ別レダ。セメテノ優シサ二、一撃デ殺シテヤル」
勝者であるスターマンは武器を横に構えると、ふらつくネスの首元に狙いを定める。
(ごめんなさい……パパ、ママ、トレーシー、ポチ。ぼく、もう帰れないや)
ネスに恐怖は無かった。
ただ、諦めたように空を見上げると後悔の涙を流しながら、悲しげにそう心の奥底で念じる。
この世との別れを決意した少年の姿を、しかと確認するとスターマンは武器を大きく振るったのだった。
「何ダト!?」
しかし、天はネスを見捨てなかった。
彼は生きていたのだ。
「おいおい、坊主。何、簡単に人生諦めてんだ? 人生はゲームと違ってコンティニューは無いんだぜ?」
突如崖の影から現れた謎の人物に庇われる形となって。
さらに相手のビームサーベルに対し、その者は鋭く光る刀で剣撃を受け止めていたのだ。
「お嬢ちゃん! 坊主! 目を瞑ってろ!」
その男性の言うがままにネスとポーラは驚きながらも、すぐに味方だと思われる人物の通りに目を瞑る。
相手の攻撃を片手で持っていた刀で受けていたおかげで、謎の人物は黄色い長ズボンのポケットから球体の物体を取出し、場の中心に投げ込む。
「グッ!?」
地に落ちた途端、球体は緑色をした眩い閃光を放ち、サングラスをかけて光を防いだ本人と目を瞑ったポーラとネス以外はその餌食となる。
球体は閃光手榴弾に似た物だったのだ。
「ウ、動ケン……」
さらに閃光を見た者は数秒間、体の自由が利かなくなる麻痺効果も付与されている。
「さあ、逃げるぞ。お前ら、俺でもアイツには勝てない。だから、さっさとおさらばするぜ」
二人を全力でサポートしたその男性はネスと、ポーラを押さえつけていたスターマンを刀で見事に切り捨て、救出し、脇に抱え込む様にするとそのままツーソンへと続く洞窟の方へと全力疾走していった。
「クッ……情ケナイ。コンナ所デ邪魔ガ入リ取リ逃ガストハ、兄上二何ト報告スレバヨイカ……」
閃光の拘束から解かれ、獲物を逃してしまったリーダーはそう嘆いてはいたが、突如ネスの助けに入った人物を目撃した事に喜んでもいた。
「ダガ、ヤハリ噂ハ本当ダッタヨウダナ。アノ男ヲ見ツケタ事ハ大キナ収穫ダッタ。フフフ、ハハハハハハ!」
身の毛もよだつ恐ろしい笑い声を谷中に少しの間、響かせ続けると、リーダーのスターマンは部下たちを引き連れて谷内に控えておいた星の船……UFOの元へと帰還していった。
ネスは男性に体を担がれたまま気絶していた。
その為次に目を覚ましたのは病院の一室だった。
敵に弾かれた際に頭に傷を負っていたのか包帯を巻かれた状態で、ネスは身を起こして周りの景色に目をやった。
「起きたか。お嬢ちゃんは家に帰しておいたよ。家族に心配をかけさせちまうのはダメだからな」
付きっ切りで看病してくれていたのだろうか、助けてくれた謎の男性はパイプ椅子に腰かけながら、そう口にして笑っていた。
「貴方は一体誰なんですか? どうして僕たちを、どうして……宇宙人たちと戦えたんですか」
ネスは訳も分からない内に流れるように救出され、その場を見事に凌いだ男性の正体が気になった。
「やっと話せるようになったと思ったら質問攻めか……」
男性は彼の言葉にそう返事をすると、顎に手を当てて思い悩むように黙り込んだ。
話すかどうかを悩んでいるのだろうか。
「って……考え込んでもテレパシーでばれちまうよな」
だが、沈黙はすぐに解かれて男は口を開いた。
「一部だけだ、俺が話すのは。名前も出身国もあまり詳しい事も俺は喋らねぇ、それが自分に課した『約束』だからだ。俺は……」
『お前達が言う宇宙人との因縁を断ち切りに来た』
男性はそう目的と動機だけを話していた。
彼の両親はスターマン達とその手下に殺害されており、再びこの地に現れたスターマンの噂を聞き付け、同じ被害者を出すまいとやって来たそうだ。
「これ以上は話せない。とにかく宇宙人を追うお前さんとはどこかで再び会う事になるだろう。その時にまた詳しい話をしてやるよ」
とにかく男性は深い話をすることなく、目的は同じという事を伝えると、椅子から立ち上がりネスの頭の包帯を取り変えて、場を後にしようとした。
その時だった。
「じゃあな、二ン……、すまねぇ、ネスだったな。またどこかで会おう」
言い間違いで詰まってはいたものの、すぐに名を言い換え別れの言葉を告げると、立てかけていた刀を腰に付け直し部屋を後にして行ったのだった。
(どうして……あの人、ぼくの名前を? それにあの頭はなんて言ったかな、昔ゲームセンターにいた怖い人がしていた……突っ張りヘアーだったけ? 中々忘れられない特徴のある人だったな)
違和感を覚えながらも相手の特徴を覚えたネスは回復した気力でライフアップを使用し、傷を癒していた。
自分以外にも宇宙人騒動で動いている人がいる。
自身の父親より少し老けているように見える大人の男性ではあったが、協力者という形で知り合えたことにネスは地味に喜びと共感を覚えていた。
ライフアップを使用したことで傷の回復が予想外に早く看護婦も驚きの速度でスピード退院をネスは遂げた。
「退院おめでとう……って一日も経ってないわね」
ガラス戸の玄関を出ると、誘拐から救出され、無事を伝えて来たポーラが自宅から病院前へ移動していた。
スターマンの襲撃があったのが朝方だったのだが、昼前にネスが気絶して入院、退院するまでは数時間しか経過していなかった。
「家族にはしっかり話して来た? ポーラ」
ツーソンの町で話題になっていた彼女の誘拐事件、家族も消息を追えず、心配で仕方が無かった事件が無事に解決させたネスはそう尋ねた。
「ええ、ママはハッピーハッピー村で私の電話を受けて、安心した後に出かけてしまったみたいでいなかったけど、パパや保育園の皆が喜んで迎えてくれたわ」
ネスはそう話を聞き、彼女の服装を見直すと首元に園児たちにプレゼントで貰ったのか、紐で括られたお守りがぶら下っていた。
「良かった。それで……冒険に出る事は認めてくれたの?」
ネスは彼女、いやその両親が厳しい旅路になるかもしれない冒険に出る事を許可したのかが気にかかった。
「反対してたわ」
返答は至極真っ当だった。
当然と言えば当然である。
誘拐でも充分恐怖だったにもかかわらず、まだ歳を重ねていない大切な娘を危険な旅へ出すわけがない。
「そうだよね……」
返事についてはネスも重々承知していた。
小学生の齢で世界中を旅する、まして相手にするのは血の気臭い殺し屋の宇宙人やロボット。
ネス自身でも、よく母親が冒険の許可をしてくれたと考えている程である。
「じゃあ……お別れ……」
「なんてね、パパはネス君と一緒なら大丈夫だろう。一度は世界を救う経験くらいするべきだって、まるでやったことある様な事を言って許してくれたわ」
ポーラを気遣い、別れを切り出しかけていたネスの発言を潰すように彼女はそう口にした。
「さあ、行きましょう。次のパワースポットを探す旅を」
彼女の思わぬ返事に呆気に取られていたネスの手を掴んで、二人はツーソンの町中へと走っていった。
こうして真に新たな仲間を引き入れたネスは、意気揚々に笑いながら冒険を再開した。
今回出て来たスターマンは作中では語られずに、プレイヤーの考えに任せるという糸井重里さんの作風に自分のアイデアを混ぜ込んだ展開を作るための鍵となっています。
しっかり完結する気で取り組んでいるので楽しみにしていてください。