mother2 ギーグの逆襲   作:黒まめちこ

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スリーク編開始&合計10万字突破記念です!
今回は思っていたよりペースが速く出来たつもりですが、次もペースがどうなるか分からないです、お気に入り数の増加や感想のおかげでモチベーションが上がったというのも大きな要因と考えています。
これからもよろしくお願いします!

自分の中でも大っ嫌いなスリーク編。
小学生の頃は怖すぎて、ツーソンをクリアした途端行き先が分からなくなり記録を消してやり直してたのはいい思い出です。
ですが物語を書くとなっては四の五の言ってられません。
頑張ってこのパートも書きあげていきますよ!


Biohazard?いいえ、これはMother2(スリーク編開始)

 第三章『スリーク』

 ネス達を乗せたトンズラブラザーズのワゴン車がオバケトンネルを抜けた先は闇の町だった。

 ツーソンを朝に出発し、ここスリークにたどり着くまで半時間も経過していないはずなのだが、空はどす黒い色をした暗雲に支配され、日光など何処にもなかった。

「とりあえず、ワシらとはここでお別れや。随分と暗い雰囲気漂う町じゃが、達者でやっていきな」

「俺達はフォーサイドにある劇場で歌っているはずだ、きっとどこかで会えるさ」

 トンネルを抜け、車が一つも走っていない静かな道路を進み、スリーク南部の広場で車を停めると、降りていくネス達に励ましの声をかけるトンズラメンバー達。

「はい、メンバーの皆からオバケに立ち向かう度胸を学んだのできっと大丈夫です」

「よし、その意気だ。じゃあ、また会おう!」

 ネスの力強い言葉を聞いたナイスは、ニコッと笑いながら車に戻ると、勢いよく彼らのワゴン車はスリークから都会フォーサイドに向かうトンネルへ向かっていった。

 さらにトンネルに入った直後、ツーソンのトンネルと同じでオバケがはびこるトンネルだったのか、グルービーが大声をあげて、またオバケたちへ説教をしている声が聞こえて来たという。

「ネス、じゃあ早速情報を集めましょう。少し不気味で怖いけど、きっとここにも敵の手が伸びているはずよ」

「そうだね、でもここは今までと違って道路や建物の影にもモンスターが湧いているみたいだ、気を付けよう」

 これまで冒険してきた町と大きく環境が変化している第三の町スリーク。

 人は町の中心に集まるか、平然と町を歩くモンスター達に自宅で怯えながら閉じこもっている。

 さらに空は日の差すことなく、周辺が常夜の様に闇ばかりが支配している。

 怯える人間達の誰にも邪魔されず、暗く澱みきった住みやすい不気味な雰囲気の両方が揃ったため、モンスター側としても極楽気分なのだろう。

 その中でモンスターに注意しつつ、外に出ている数少ない人間、または家の中に入れてくれる人物にネスとポーラはそれぞれ話を聞いていった。

 可能な限り、お互い北部に広がる『墓地』には踏み入らないようにして……。

 

 

 

 

 

 その後、ネスとポーラは人が集まる町の中心部。

 かつてスリークの目玉だった巨大なサーカステントの裏側で合流し、耳にした情報をお互い交換し合った。

 まずお互いの意見が一致したのは町の惨状について。

 数か月前からスリークの墓場に夜中、気味の悪い体色をした人……現在で言うゾンビがうろついているという噂が出回ったそうだ。

 当初、馬鹿馬鹿しいと誰も信じなかったホラ話という線が強かったが、日を増すごとに空に晴れぬ暗雲が立ち込め始め、気が付けば青い体に赤い目玉と赤いパンツを着用した『アーバンゾンビ』の数体が、墓場付近や人気のない場所を徘徊し始めたという。

 他にもオバケと呼ばれていた幽霊のモンスター『とりつきゾンビ』や死んだ野良犬が息を吹き返した『ゾンビドッグ』などまるでホラー映画のような存在が町中で数を増やしどんどん姿を現すようになったらしい。

 

 そして……。

「ネスも聞いた? この事件の親玉の話?」

「家に隠れていた人に聞いたよ。確か……名前は」

 勿論、この奇妙な事件は自然で発生したものでは無い。

 かと言って小説やゲームのようにウィルスが流出し、死者が蘇った……なんてことは無く、二人は町中でゾンビ達の味方をしているという人間に話を聞き、原因の元を辿り、親玉の名前を口にしていた。

 その名は『ゲップ―』

 何でもスリーク中の墓場に埋められた人々をゾンビモンスターとして蘇らせ使役し、 人々に恐怖や絶望の感情を与えて『ゲロゲロに狂わせてやる事』が目的らしい。

 その為、どれだけゾンビを退治しても次から次へと数を補充されるほか、ゾンビ自身も力や知能もそれなりに備わっており、集団戦法などで敵を追いつめ、殴る蹴る噛みつくなどの暴行で喧嘩強い人間を病院送りにしたという。

 まだフィクションのように噛まれたり、攻撃を受けた人間がゾンビにならない事が救いという話もあった。

「そして、その背後にいるのは」

「ギーグ……だよね。聞いた人は女性って答えてたけど、間違いない。ゲップ―っていう奴を送り込んで、この町を支配する気だったんだ」

 大きなヒントとしてゲップ―の背後にいる存在がギーグという事まで探り当てた二人は、残った情報をお互いに伝えあっていた。

 ポーラ独自の情報はトンズラブラザーズがいない以上トンネル利用できないため、この町から出られない事。

 変わってネス独自の情報は、墓場だけやたらとモンスターがうろついている為、何かお宝のような物を隠しているのではという噂。

「これで残ったのはテントの中だけだね」

 似通っている情報こそあったものの、道で立ち往生していた操り人形のモンスター『おちゃめなサム君』『可愛いトム君』との戦闘を潜り抜けた二人は、まだ探索していないサーカスのテント内へと入っていく事にした。

 

 

 

『ゾンビ対策本部』

 急激に仲間を増やしたゾンビ達からスリークを取り返そうと結束した大人たちが設けたテントの別称だった。

「むむ! なんだ子供か。驚かせおって」

「もうゾンビ達が私達を襲いに来たかと思ったわ」

 しかし、現在では対策本部とは名ばかりで、ゾンビ達に怯える姿勢を人間側が見せた事で犠牲者がグッと減ったうえに、今では四六時中ろくな解決策も閃かず、無駄な会議を開いている場所に成り果ててしまった。

「どんな感じの会議なのか気になってしまって、少し参考にしようと思って」

 長い間、落ち着ける場所が無く苛立っている相手を気遣うようにして、ポーラは上手くその場に混ぜてもらおうと発言する。

「あのね、お嬢ちゃん…………いや、まあいいか。大人たちの頑張りを見てもらうというのも大事だしね」

 彼女の言葉にリーダーの男性がそう発言すると、余っていた椅子を引きずってきて、座るように指示する。

「追い出した方が良いぞ! コイツらゾンビの手先に違いない! きっと俺達の行動を伝えて、殺す気なんだ」

「私は家族を捨ててまで、ここまで逃げて来たんだ! 嫌だぞ、死んでしまうのは、だからそのガキどもを追い出すんだ!」

 しかし、歓迎はされなかった。

 作戦会議に参加せずに、避難していた一部の人間は二人の姿を見るなり、拒絶する言葉をぶつけていた。

 安らげない恐ろしい町に変貌してしまって、精神に異常をきたしてしまっている事が目に見える程に避難民は目を血走らせ、口々にわめいていたのだ。

「ヒソヒソ、確かに君たちは見ない顔だが、確証が無い以上私が責任を持って無下にしないと約束するよ」

 こんな悲惨な状況にあっても、何処か希望を捨てずまだ良識が残っているリーダーは罵詈雑言を浴びせられる二人をフォローする。

(あの人は諦めていない。ぼく達もこの町を救う大事な手がかりを手に入れなくちゃ)

 椅子に腰を落ち着かせ、ネスとポーラは無駄と噂される作戦会議での話題を聞く為に、黙って聞き耳を立てていた。

 大人たちも子供に分かりやすく、車輪付きのボードに現在起こっている問題と手がかりを書きだしていく。

 

まず一つ目の話題は『怪しい女』だった。

 ゾンビ達が種類も数も増やしていく中で、見慣れぬ金髪の露出度の高い服を着た女性が目撃されており、もしかするとゾンビと関係のある人間という仮説を立てられ、今も捜索は続いているそうだが、未だ吉報が届かない事。

 

 二つ目は『ゾンビ襲撃』について。

 人間達が怯える姿勢を見せた事で、制圧したと考えゾンビ達は墓場や人気の少ない、より暗い場所を好む様にうろつく様になった為、町へは殆ど寄り付かない。

 しかし、このテントで反乱の種を育てている情報をゾンビ側に寝返った人間のスパイから得たのか、テントと邪魔する人間を攻撃し、さらに絶望させてやろうと軍団を整えている動きがあることだった。

 こちらも決して数が多いわけではなく、ましてや戦おうと勇気のある戦闘員なんて片手で数えられる程しかいない為、大きな不安要素として考えられている。

 

 そして最後の三つ目は。

「私たちはこっそり敵側に付いていたスパイを説得し、ゾンビ達が多い墓場に潜入してもらったんだ。すると墓場の奥にゾンビが厳重に見張りをしている場所があったんだ」

 話題は人間達の考察として明らかにゾンビ達が大切にしている『墓場の奥』だった。

「もう、何度この会議を開くの……。どうせ私たちは映画みたいに皆ゾンビにやられちゃって、ここはラクーン……じゃなくてゾンビシティになっちゃうのよ」

 毎日が同じ事の繰り返しでウンザリしていたのか、眉間にしわを寄せて作戦ボートを見ていた女性は対策本部の一人とは思えない発言をする。

「そうだ! 墓場の奥の情報だってかなり前の情報じゃないじゃないか。強引に突破をしようにも我々は数が足りないうえに戦えない。もういっそこの対策本部を解体してゾンビ達に媚びへつらうしかない」

 つられてストレスで髪が薄くなった男性も同じように文句を述べて、テントを捨て新たな避難所を探すべきだと現実から目をそむける意見を述べていた。

「ですが、それでは我々の愛したこのスリークを捨てることになるんですよ。正体もろくに掴めていない薄気味悪いゾンビ達に!」

 そしてネスとポーラを匿った友好的な本部のリーダー的存在の男性は諦めつつある隊員に檄を飛ばしはしていたが、誰も賛同することなく結局現状報告のみで作戦会議は終わりを迎える。

 これがここ数日間、具体的な対抗策を発案せず、問題を言い合い無為に時間を浪費し続けるゾンビ対策本部の一連の動きだった。

 

 

 

 絶望的な状況で殆どが自分の身の安全や逃げる事ばかりを考える事しかない大人たちを尻目に、ネスとポーラはテントから出て行った。

「流石にこの町は酷すぎるわね、お日様も当たらないから元気も出ないし、何より安心できないって怖いわ」

 一度、誘拐され家族から離ればなれになり、監禁までされたポーラは大人たちが持つ恐怖の感情に対して、情けないや弱いといった否定的な意見は出さなかった。

 大人子供関係なく、安心できない、いつ自分が傷つけられ、どんなおぞましい体験をするか分からない。

 彼女はそれを理解しようとしたのだろう。

「一番の手がかりは墓場だ。行こうポーラ。今は少しでも明るい場所から来たぼく達が、敵に怯える人たちの光になれるようにしよう」

 彼女の意見に同調し、ネスは何かの手がかりになるであろう墓場を越えた先へ向かう為に足を進めた。

 

 

 

 

 

 

『墓場』

 スリークの町の北部にあり、土地の関係上二カ所に区切られた墓石がズラリと立ち並ぶ区域。

 中でも大きな特徴だったのが規模が小さく設けられた片方の墓地にはあまりモンスターがうろついておらず、「行くよ……ポーラ」

「ええ……」

 逆に件のゾンビが見張りをしている最奥部がある大規模な墓地にはモンスター達がうじゃうじゃと歩いていた。

 無論、子供とはいえ墓場に侵入した者に襲い掛かる事を傷つけ追い返すのが生業の敵との戦闘は避けられなかった。

「PKファイアーβ!」

 ポリバケツのゴミ箱に住まう赤いゴースト『ちょっとくさゴースト』や体中ドロドロし、ナメクジの様な突き出た目玉が特徴の化け物『カビクサイマン』。

 集団で現れては攻撃を仕掛ける『よくないハエ』がポーラの放った炎やネスのPKキアイの前でタフな強さを見せながらも退けられていった。

 けれどもスリーク周囲を囲んでいる深い木々から何処から調達してきたポリバケツかは不明ではあるが、ゴースト達が引っ切り無しに現れては、二人の体力を消耗させる。

「ゴノ先ニハいがじぇナイぞぉ」

 目玉をギョロギョロ動かし、人語を解するカビクサイマンはそう言って墓場の奥を必死で守ろうとする。

 それにつられ、すぐさま残っていたよくないハエやとりつきゾンビ達が道を塞ぐように動き始める。

「PK……ハア……ハア。ネス、ごめんなさい。私……もうこれ以上技を出せない」

 ポーラの勢いある技の連発や、横から妨害する敵をバットや技で倒していったおかげで道は切り開かれ、もう少しで辿りつける地点だった。

 しかし精神力を消費するPSIを連発すれば、体の許容を越えた運動のように気力や体力にも影響が出る。

「分かった、ポーラ。じゃあ逃げる事だけ考えて」

 額に汗をかき、息切れを起こしているポーラの気を遣い、撤退するかと思われたネスだったが。

「いくぞ、PKキアイβ!」

 今回はまだ敵に自分たちの実力を知られていなかった。

 だからこそ最初に技で強引に押し切ることが出来、敵は包囲網を突破される事を恐れて、勝負に出てきている。

「ゼェゼェ、このチャンスを逃すわけにはいかない!」

 その為、この窮地さえ凌ぐことが出来ればもう奥に辿りつけると判断したネスは、消耗は激しいが周囲に大きな爆発を引き起こす威力の高いβを放ったのである。

「ナイスよ、ネス。行きましょう」

 技が見事に決まり敵を消し去った一時ではあるが、突破口を作った隙に二人は走っていき、最奥部へとたどり着く。

 すると……そこで彼らが目にしたのは。

「ナンバー259、ゲップ―様から蘇らせてもらいました。これからお世話になります」

「ナンバー38、少し土が恋しくなったので休暇を頂きます。また少し土の中に埋まったら戻ってきます」

 アーバンゾンビの大群だった。

 その数20~30程で岩に隠れて体力を回復しているとはいえ突破できない事を二人は悟りつつ、様子を観察していた。

「随分と大きな穴だわ。多分あそこからゾンビ達が出入りして町中にゾンビを連れてきているのね」

 筋肉質な巨漢のゾンビ数体が道を通せんぼしており、敵に発見されない距離で観察していた彼女は目に入った事を口にした。

 そうゾンビ達は最奥部の地面にポカリと口を空けた空洞から次々と現れていたのだ。

「あの数に加えて、強そうなマッスルゾンビだ。とりあえず大きな穴がある事だけ分かったし、今回は諦めて戻ろうか」

 本当であれば敵の本拠地に続く可能性が高い大穴へ入りたいという気持ちはあったものの、敵の勢力を冷静に観察したネスは戦略的撤退の意思を示しつつ、しばらくの間様子を眺めていた。

 ゾンビ達が散開し、こちらの居場所がばれるまで様子を観察していた二人が得た大きな情報は二つだった。

 まず、時折何処かの会社の従業員かと勘違いしかけてるほどに生生しい愚痴が多かったが、交代制でスリークの町に一定の数のゾンビを配備しておく事。

 どうやら現場監督のようにゾンビ達はスリークの住人の動きを監視する役割を担っているようで、残りは休暇という形で穴の中から土中に帰り、起こされる時まで休憩を取るらしい。

 二つ目は大穴の先についてだった。

 墓場を抜けた先にはゲップ―という親玉がいる施設へ繋がる場所に出るため、敵はここへ侵入されまいと躍起になっているとの事で軍団の中でも強力な巨漢のゾンビをこの場に配置している。

 さらに追加として、ここ最近急激に忙しくなり、まともに休みを取れていないとぼやくゾンビ達がいた。

「数も数だけど、あの大きなムキムキゾンビは苦戦しそうだよ、どうしたら通れるかな?」

 帰り道、敵に見つからないように墓場をやり過ごしたネスとポーラは再び住宅街へ戻る南の道を辿りながら、策を練っていた。

「そうね。簡単にやっつける事は出来ないから、発見されないように穴に入るしかないけど、見張りが多すぎるから無理よね」

 マッチョゾンビだけであれば視野であれば、ネスのPKフラッシュで上手く注意を逸らし、隙を作ることが出来たが、流石に30を超える全ての視界を奪い、現場を離れさせるというのはいささか現実的ではない。

「でも下手に戦えばSMAAAAASH! で病院送りにされるだろうし、とりあえず町の人に――」

 そこでネスの言葉は途切れた。

 もうすぐサーカスのテントが視野に入る所で彼がある人物を目にしたからである。

「フフフ……」

 ポーラもその存在に気が付いたのか会話自体も無くなり、ただ自分たちを嘲笑うように『その女性』は立っていた。

 下着の様な高い露出度の服を着用した金髪の女性。

 作戦会議の議題にもなっていた謎の女である。

「ウフフ」

 二人にわざと発見された事を認識すると、笑い声だけで言葉を口にすることなく、女性は住宅街へと素早く逃げ去っていった。

「追いましょう、何か手がかりになるかもしれないわ」

 敵の味方と思しき人物から姿を現す違和感はあったものの関わりがあるならばゾンビ達の弱点を知っているかもしれないと思い、二人は姿を消した女性を目撃した僅かな住民に話を聞き、最後はスリークホテルへ駆けこむ姿の目撃情報を入手し、現場に向かった。

 

 スリークホテル。

化け物がうろつく現状では客足が全くなく、スタッフの殆ども出社出来ない為、管理人と残っているスタッフが代理で運営を行っている。

「誰も、いない?」

 ……はずだったのだが、謎の女性が侵入した事で何か異変があったのか従業員が一人もおらず、代わりに大理石の敷き詰められた床には一枚の紙が置かれていた。

「何かのメモかしら」

 宿泊客もいない閑散としたホテルの中に落ちていたその紙をポーラは拾い上げ、ネスと共に目を落とした。

 一番奥の部屋で待っているわ、坊やたち。

 最後に添えられたハートマークと口紅の痕が付いたメモにはそう書かれていた。

「行こう」

 奇妙な縁で発見した目的の女性を追いつめた二人は彼女の待つ奥の部屋へと近づいてゆく。

 しかし受付から客室へと繋がる通路でも、人の気配は一切なかった。

 ただ不気味なほどの静寂が支配するホテル内を二人はただ黙って歩いてゆく。

 緊張のせいか心臓の脈波は早まり、額だけでなく万が一の戦闘に武器を構える手にも汗が流れ出る。

 何かの衝撃に備えながら、ネス達はジリジリと最奥部にある104号室にたどり着いた。

 そして……。

「そこまでだ! 貴方に聞きたい事があるんだ!」

 即座にドアノブを捻り、そのままネスが勢いよくドアを開けてポーラも彼の後ろに続くように部屋の中へ侵入した。

「ウフフ、いらっしゃい。そして――」

 ネス達が部屋の中で目撃したのは、墓場の護衛をしていたマッチョなゾンビ二体と複数のゾンビ達の姿だった。

 女性の正体は……相手を油断させるために若くして亡くなった死者をそのままの状態で蘇らせた女性のゾンビだったのだ。

「お休みナサイ」

 近くで見なかったせいかあまり気が付かなかったが、病気のように酷く青ざめた顔をした女性ゾンビは、不気味に微笑みながら部下のゾンビ達に攻撃の命を下した。

「ぐあっ!?」

「きゃっ!?」

 心の何処かで罠と思っていたとはいえ、呆気に取られたネス達が敗北するのはあっという間だった。

 最大の敗因は正面のマッチョゾンビだけではなく、背後にあった103号室からゾンビ達が押し寄せ、後頭部を強く殴られた事だった。

「く……そ」

 視野がグラつき、先にポーラが眠るように気絶した姿を眺めながら、ネスの意識は次第に薄らいでいった。

 よって二人は命こそ奪われなかったものの、初めて敵の手に落ちてしまった。

 

 

 

 

 

 ネス達が次に目を覚ましたのは暗闇の中だった。

「ここはどこだ?」

 起き上った彼は幸運にもバットを含め相手に奪われなかったリュックサックの中を手探りで漁り、取り出した懐中電灯で辺りを照らす。

 発見したのは横で気絶しているポーラと、後は自分たちのいる広々とした空間の壁、床、天井の四方八方が暗い色をした土に囲まれていた事。

 そして正面には出口と思しき扉があった。

「ポーラ、起きて」

 とりあえず進むことが出来る場所を見つけたネスは仰向けで目を閉じていた彼女の体を大きく揺すって、気を取り戻させる。

「う、ううん……ネス? 無事だったのね、良かった」

 瞳をゆっくり開き、、大切な仲間の姿を確認した彼女は安心した表情を見せながら、殴られた後頭部を擦りつつ体を起こした。

「とりあえず、扉があるからあそこまで進もう。一人で立てる?」

「ええ、大丈夫よ。早く動かないとこんな暗い所にいたら、体がおかしくなりそうだわ」

 ネスが手に持つ懐中電灯の光を頼りに、扉の方まで体調が完全に取り戻せていないのか、ゆっくりとした足取りで向かっていった。

 だが……。

「開かない……」

 ネスは何度もガチャガチャとノブを回すが、扉には向こう側から鍵が掛けられており、ビクともしなかった。

 まして、強い打撃を受け体力も大きく消耗した状態でこの先に何が待ち構えているかも分からない為、PSIで壊そうという事も出来ない。

「どうしよう……このままじゃスリークが大変なことに」

 鍵も開けられず打つ手が無く困り果てていたネスだったが、ポーラが賭けにはなるが一つの解決策を思いつく。

「私が祈るわ。昔から私はネスや他の仲間と冒険する夢を見てきたの、だから次の仲間になる人に祈ってみるわ」

 ポーラはネスにそう告げると、その場で両手を合わせて瞳を閉じると意識を集中させ、強力なテレパシーを持つ彼女しか出来ない『祈り』を始めた。

『まだ会った事ないの仲間に呼びかけます。まだあった事の無い私たちの仲間に呼びかけます! 名前はそうジェフ! ジェフ! 貴方の助けが必要です。私はポーラ、そしてもう一人はリーダーのネス、貴方に呼びかけています』

 ポーラはさらに意識を集中させ、祈りを続ける。

『わたしはポーラ、そしてもうひとりはリーダーのネス。ジェフ、あなたに呼びかけています。この呼びかけが聞こえたら目を開けて南に向かって出発してください。遠くにいるあなただけがわたし達を救えます。ジェフ! この声を信じて起き上がって歩き出して! 南に向かって、すぐに! ジェフ、お願い! まだ会ったことのない……かけがえのない……私達の仲間!』

 そして少女の健気な願いは北の国にいる、新しい仲間の元へと向かっていった……。

 まだ見ぬジェフという仲間の元へSOSの願いを向けるネスとポーラの運命はどうなってしまうのだろうか。

 




原作からの変更点は見張りがたったゾンビ二人だったというのは流石に戦闘になれば突破できるじゃんというゲーム世界独特のルールを打ち破る意見が自分の中であったので強そうなゾンビに加えて数を増やしました。
そして、ホテルが二部屋しかないのもおかしいのでいくつか増やしました。


次はいきなりのレベル1からの貧弱さで驚いたジェフが主人公のウィンターズ編です。
ここでも私なりのオリジナル要素を盛り込んでいく予定ですので、楽しみにしてください。
ペースは出来るだけ守るつもりですが、もし遅れてしまったら申し訳ないです。
ではまた次のお話でお会いしましょう!
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