本当なら数日で仕上げようと思っていたのですが、ゲームやアニメなどで怠けていたせいで一週間程になってしまいました。
なおボスの名前の漢字表記は元が平仮名だった為、合っているか分かりませんが多分これだと思います。
ではミルキーウェルまでの道のりをどうぞ!
ネス達の活躍によりゲップ―が撃退され、平和が訪れたサターンバレー。
村を脅かしていた邪悪な存在が排除された事で、名物である高所の温泉へ続く梯子も無事修復され、多くのどせいさん達の憩いの場として再開された。
まあ入浴する者は元々性別不明のどせいさんしかいなかった為、男性であるネスとジェフ、女性であるポーラは別々の時間に分けてだが、とにかく体全体に染みついていたゲップ―の臭いを洗い流していた。
「とりあえずは一段落ついたね」
「そうね、これでスリークに戻れば、あっちでもゾンビ問題も解決しているはずよ」
「これで僕たちは新しい土地へと進めるわけだ」
交代で温泉から出て来たネス達は温泉付近の丸太の椅子とテーブルがある休憩スペースで腰かけながら、会話を楽しんでいた。
「ぼくたちじゆうにしてくれてありがとうです」
『僕たち自由にしてくれてありがとうです』
「ぽえーんなんとおれいをいえばいいのだろうでもやっぱりありがとうはいわせてもらうのだ」
『ぽえーん、なんとお礼を言えばいいのだろう。でも、やっぱりありがとうは言わせてもらうのだ』
そんな中で村の英雄である三人の周りでは、相変わらず表情が読み取れないどせいさん達が礼の言葉を述べて、喜ぶように飛び回りまくっていた。
足に拘束具を付けられ、自由に身動きが取れなかった鬱憤もあってか、それらを晴らすように楽しそうに動き回っていた。
対してその愛らしい行動にネス達の顔の表情も和らぎ、活気に満ち溢れた住民の姿を眺める。
「そうだ、ネス。この奥の洞窟に行くんだろ?」
そうして暫く様子を見ていた中で発言したのはジェフ。
彼はゲップ―の基地に向かう前にネスがその気配を察知して、自分に話していた事を思い出しそう発した。
「うん、この先だ。間違いない」
言葉と同時にジェフが指さしていた先の洞窟。
ゲップ―の秘密基地とは別所に繋がる洞穴に目線をやりながら、彼はそう返答した。
「……やっぱりあるのね、この先に……どせいさんと遊んでいた時に聞いたわ。この先には『ミルキーウェル』って言う噴水みたいな不思議な場所があるんだって」
二人の話を間で聞いていたポーラが口を挟み、話に補足を付け足した。
彼女も住人たちと戯れていた際に、ネスと同じくテレパシーでその強力な磁場の存在を悟っていたのだろう。
ここに『おまえだけのばしょ』があると。
「ミルキーウェル……そこが三番目の場所なんだね」
そして体の調子を完全に取り戻した三人は、覚悟を決めて動きはじめる。
丸太椅子から立ち上がり第三のパワースポット『ミルキーウェル』へと続く洞窟の入口へと足を動かしていった。
「ぷーぷーまてまてまて」
『ぷー! ぷー! 待て待て』
……と直後に、背後から彼らを呼び止める者が現れた。
「まつですこれもっていくですぼくたちがもっていてもうまくあつかえないのでそのめがねのひとにつかってもらうです」
『待つです。これ持っていくです。僕たちが持っていても上手く扱えないので、そのメガネの人に使ってもらうです』
それは唐草模様の風呂敷きを背負ったどせいさん。
突然ドサッ! と風呂敷きの中を地面にぶちまけると、
「これこれ」
差し入れなのか何やら物騒なグッズを懐いている犬の様にその大きな鼻でジェフの足もとへと押しやった。
「!? こ……これって……」
だがジェフはそれを見て、思わず身をすくませた。
どせいさんが譲ってくれたのは鉛筆の様な細長い小型のロケット花火に似た物。
さらに付け加えるなら、軸となる中心の一本の周りに小型の物が四本付随していた。
「ぶきしょうにんのひとたすけたときもらったですえっとなまえはごほんあるからぺんしるろけっとふぁいぶです」
『武器商人の人助けた時に貰ったです。えっと名前は……五本あるからペンシルロケット5です』
ジェフに渡したのは仕組みが複雑だったのか、或いは手が無いどせいさんでは扱いに困っていたのかは不明だが、とにかく強力な攻撃用らしいグッズのプレゼントだった。
だが……。
「………………ジェフ?」
彼は素直に受け取らなかった。
それどころか身をすくませ、地面に転がったペンシルロケット5を畏怖するように、黒縁眼鏡の奥からでも充分に分かる程の強い視線でそれを睨みつけていたのだ。
「ジェフ? ジェフってば!」
「えっ?」
ふと無意識で睨みつけていたのか、ネスの呼びかけに僅かな時間を要して我に返ったジェフは応酬まで少し間を置いたものの、
「あ、ありがとう…………い、一応受け取っておくね」
そう口にすると震えた手で拾い上げると、
「えっ、えっと……ハアハア……これだったかな」
過去に触れた事があるのか一通りロケット弾を眺めると、誤射を防ぐ安全装置を探しだし起動させた。
何故か息切れと額から嫌な汗を流して……。
「…………よし! 行こう」
ジェフの様子の変わり様に引っかかる所があったが、ネスは明るくそう口に出して、仲間を洞窟へ先導する。
「大丈夫よ。危険そうだけど使わなければ大丈夫だから。落ち着いてジェフ。ほら、ゆっくり深呼吸して」
明らかな動揺に対し、ポーラも敵陣に乗りこむ前から緊張してしまった彼に優しい気配りの言葉を述べて、落ち着かせていたのだった。
そうしてやっと三人はミルキーウェルへと続く洞窟へと進んでいったのだった。
『ミルキーウェルへの道』
地元のどせいさんも立ち寄らない場所だけであって、洞窟内部には敵が我が物顔でわんさかと歩き回っていた。
いたのは以前にジェフが遭遇した歩くきのこが進化形『いけないキノコ』や同一に進化した歩く芽の上位版『つよいあるくめ』など自然から発生したモンスター達。
「くっ、結構手ごわいな……喰らえPKキアイα!」
噂で聞いたミルキーウェルが本当に噴水であるならば、その特殊なパワーを含んだ水が霧状になり周囲の地面に溶け込んでいるのか、
「キュ! キュ! ゴクゴク!」
回復技のライフアップだけでなく、サイマグネットなどネス達の技のエネルギーになる精神力まで奪ってくる強敵に進化を遂げてしまっていたのだ。
「ブーブー! ブブッ!」
その他にも物理攻撃は俺に任せろと言わんばかりに、葉っぱに身を包み込んだ人型モンスター『ランブーブ』が得意げに片手に握りしめた硬質の葉っぱで殴りつける。
「こんのぅ!」
消耗が激しいと予想できる大将戦の前に、余力を残したいネスはバットで果敢に立ち向かうが、攻守のバランスが取れたモンスターであるが故に撃破には及ばず、
「キュキュ!(ライフアップ!)」
倒れる間際の強い歩く芽が新たに仲間を呼びよせ、善戦をする仲間の補助に入る。
「ミュー、ミュー! ブシュゥ!」
さらにダメ押しではいけないキノコが体を傾かせ、その緑色の大きな傘から胞子をまき散らし、敵を牽制する。
(なんてバランスの取れた行動なんだ……強い)
温泉での休憩中に改造したのはいいが、また威力をあまり発揮しないバンバンガンで応戦しているジェフ。
さらに言えばまるで訓練されたように連携を組んでいく敵の姿にそんな称賛を述べてしまっていた。
「どうしよう、何とか数匹倒して進んでも、すぐに洞窟の外から応援が来る!」
何とか目前で戦っていたランブーブに運よく『SMAAAAASH!』の強烈な一撃をヒットさせて倒したネスだったが、まだまだランブーブや強い歩く芽たちの御代わりはいくらでもいるらしい。
(ぼくはライフアップの回復技を持っている分、余計に力を消費させる訳には……)
それでも少し進んでは現れたモンスターと戦い、ネスはバット、ポーラはフライパン、ジェフは光線銃のみで決して楽とは言えないが、なんとか戦闘を切り抜けていく。
僅かずつ洞窟の出口への距離を詰めていく事、数分。
「よし、これで外に出られる!」
止むを得ずに放ったPKキアイαで体力が少なくなったランブーブや芽達を一掃し、上手く経路を確保して薄暗い洞窟から先へと進んでいったのだが、
「ブブ?」
「キュキュキュ!」
洞窟の先はまだミルキーウェルでは無かった。
先に広がっていたのは短い草が生え散らかる中道。
勿論草を踏み分けて歩き回っているのは草から生まれ出でたさっきのモンスター達。
「くそう!」
だが、パワースポットの気配は近かった。
この中道を越えた先にある。
「ここが正念場だよ! 皆頑張っていこう!」
そう確信を持ったネスは大声で一同の士気を高める。
ここの雑魚敵軍団を凌ぎ切れば、大将首を狙える地点に到達できる事を仲間たちに示唆させたのだ。
さらにこちらも相手に負けじと連携を取り、バットと硬度が近い強力なはっぱを振るうランブーブを主にネスが相手にし、脇で妨害工作を仕掛けるいけないキノコと強い歩く芽を残った二人が隙を与えずに攻撃。
「キュキュウ……」
「ブグォォ!」
打って変わってすぐに対策を練られて、やり返す前に敗北し大人しくなっていく敵モンスター達。
対抗策をすぐに編み出したおかげで、あっさりとはいかずとも僅かに戦闘に余裕が増していったネス達はパワースポットの番人が潜んでいると思われる洞窟を視野に入れるまで前進する。
「ブブブブ! ブブ!」
「キュキュキュ! キュッ!」
「ミューミューミュミュ!」
だが敵もあっさりと首領の元へは行かせぬように、最後のあがきとして洞窟の入口を大量の同胞たちで囲んでいた。
その数、ざっと数えただけでも『いけないキノコ 8匹』『つよいあるくめ 7匹』『ランブーブ 5匹』と言った所だろうか。
どのモンスターもそれほど体が大きいわけではない為、場の圧迫感には欠けるが、この数が一斉に襲い掛かって来るとなると、下手をすれば敗北し、コンティニューで最後に父親に電話をしたサターンバレーからやり直しを受けるかもしれない。
「ネス、向こうもこっちに気が付いているよ。多分これ以上近寄ると、襲い掛かる」
お互いの姿がやっと確認できる地点まで接近を試みていた彼らと警戒する敵の距離ほんの十数メートル。
「ブ、ブブ……」
「ゴクリ…………」
まだ周囲に敵の気配が無く、立ち尽くすネス達を襲う増援がいない所を見ると、敵は洞窟前にたむろしている連中が最後なのが唯一の救いではあった。
けれどもそんな利点があっても、この大軍をどうにか出来る手段は無い。
むしろこの場で相手に背中を向ければ、バックアタックを取られさらに不利になるのは間違いない。
(もう、我慢できないわ)
だから、四の五の言わずに『彼女』は動いた。
「二人共、前に出ないと襲われるなら動きましょう!」
両者が視線で牽制し合う中で、堂々とポーラは進んだ。
「ブゥ!」
何の躊躇も無く自分たちのテリトリーへ進んでくる彼女に反応した敵陣は、開戦とすぐさま捉え全軍引き連れ、勢いよく動き始める。
「しまった、一歩遅れた。行くよジェフ」
「あ……ああ!」
勇ましく行動を先んじた彼女の後に遅れるように続く二人。
しかし常に臨戦状態だった敵の行動の方が一足早く、一切の迷いを見せず止めない歩きをする少女へ数の暴力で仕掛けてゆく。
「「危ない、ポーラ!」」
合わせて二十はいる相手の一斉攻撃に射程も、技の発動も間に合わない二人は大声をあげた直後だった。
「ここぞで使う為にパワーを溜めてたんでしょ。じゃあ私が判断するにここが使いどころよ。喰らいなさい! 新技PKファイアーβ!」
彼女の前に大きくかざした両手から放たれた炎の波動が、周囲の敵めがけて分散するようにはじけ飛んだのは。
決着は一瞬だった。
そう敵は全員、植物から出来たモンスターである。
身を焦がす炎を一番の苦手とする敵を前に、彼女は自身の技に勝算をもって殴り込みに行ったのだった。
こうしてポーラの活躍により洞窟内部に侵入し、狭いワンフロアのみの内部を進んでいった最深部で発見されたもの。
それは……勿論。
「さあ、ここまで来たよ。じゃあ戦いの幕を開けるよ」
最早見慣れ始めて来たキラキラと神々しく輝く眩い閃光に身が包まれており、姿形の一切が掴めない第三の音の番人である。
「少し怖いけど、力を尽くすよ」
「ここの音も取得しちゃいましょう」
音を守護するボス特有の強い気配を前にし、仲間たちが戦闘開始の了解を得る。
そして二人の返事を受けたネスはすぐに敵へと接近。
「よく来た。ここは3番目の『お前の場所』だ。しかし、今は私の場所だ。奪い返せばよい。……できるものなら」
開戦ののろしを上げたのである。
開始同時に姿を包み隠していたバシュッと音をあげて包んでいた光が消し去り、パワースポットの力を吸収した番人は正体を現した。
姿は番人として選ばれた一匹の『強く歩く芽』が大地に染みこんだミルキーウェルの影響をまともに受け、進化した怪物。
その名は『ちょうねんじゅのめ』。
「ギグジュジュジュ……」
見た目は頭部の一本の芽から生え伸びた根が肉体の殆どを占める土壌に繋がっており、芽の茎には二つのギョロりとした目玉、胴体の土壌の中央には口が生えている。
肉体の土壌が山型に固まった姿は、少しゲップ―と似ているところがあるが、気配はこちらの方がダントツだった。
「ジェフは後方支援! ポーラは一緒に攻めるよ!」
そして敵の姿を把握し、ネスは攻撃の命令を下す。
「先手必勝で倒すしかない、全力戦だ!」
わざわざ強力なPSIを使わずに、精神力を温存してきたネスとポーラは、後方で待機させたジェフを置いて一気に技の詠唱に入った。
「強敵相手に長期戦は厳しい、行くぞPKキアイβ!」
「植物ならこれに限るわ。PKファイアーβ!」
最後の伏兵として兆年寿の芽の傍に、子分となった強い歩く芽が潜んでいたが二人の息の合った素早いPSIには敵わず、
「「キュュュゥゥ!?」」
多くの色が重なった二つの念の波動が交差しボボン! と音をあげて、定めた範囲に強烈な大爆発を与えるPKキアイβ。
ボボボ! と赤い熱波がはじけるように対象の敵を焼き尽くすPKファイアーβ。
その彼らの攻撃が親分を中心に発生した念動波による大爆発と業火によって、部下二人は何もする間も与えられず、叫びながら消し飛んでいった。
だが……まだこれでは当然終わらない。
「嘘……全然、弱っている気がしない」
技が大技だったせいか、放った地点にはモクモクと煙が立ち込め、敵の生存している姿ははっきりと見つけられなかったが、
その音の番人独特の気は感じ取れていた。
「ケホケホ……あまり油断しない方が良いよ。まだ僕たちはアイツがどんな技を使ってくるか知らないんだ」
場に広がる煙をかき分けながら、先に攻撃を仕掛けたネスの声を頼りにジェフは忠告を口にして歩いて来た。
「多分、大丈夫だと思うよ。流石にあの見た目じゃ動き自体はゆっくりみたいだし、とりあえず今は敵から離れて煙が晴れるのを待とう」
逆に場を覆う煙のせいで一時的にだが、三人も満足に視界が確保できなかったため、敵の気を頼りにネスは傍にいるジェフを一緒に相手からの距離を取ろうと動く。
その時だった。
ビーン! とハープの弦を強引にかき鳴らしたような妙な異音と共に、敵の方角から紫色の閃光が立ち込める煙の中を飛び去ったのは。
(なんだ? 今の身の毛もよだつ様な恐ろしい光は)
目撃していたのはジェフだけだった。
前を走っていたネスは目に入らなかったが、背後を警戒していたジェフは敵の技と思われる謎の閃光をしかと見たのである。
(とにかく、今は煙が晴れるの待つしかない)
何処に飛んでいったかは見れなかったが、一定の距離を保った二人は次第に薄れてゆく煙を数秒だが待ち、視界を回復させた。
しかし……。
ジェフが見た技の正体は……煙の晴れた後に無慈悲にも『二人』が目の当たりにした……してしまったのだ。
「あ……れ?」
「えっ?」
煙が消え、良好な視界を取り戻し戦場の洞窟内部を見返したネスとジェフの二人を襲った悪寒と違和感。
それは戦場にいるはずの【ポーラが消えていた】事。
正確に言うならば、髪をまとめた金髪でピンクの服を纏った少女の姿は場に存在していなかったのだ。
「何だ……あれ、は?」
代わりに彼女がいたと思われる地点には奇妙な物が固まるように立ち尽くしていた。
「まさか……あれがうらカンポ―に書いてあった……」
彼女が立っていた地点に残っていたのは『全身が鉱物のダイヤモンドで出来た不気味なオブジェ』だったのだ。
「!?」
二人は即座にオブジェをポーラだと信じ、この状態にしたのは兆年寿の芽自身だと考える他なかった。
特に技を目撃していたジェフは目を凝らし、のろのろと歩み寄って来る敵の姿を再確認し、証拠をつかむ。
「ネス! アイツの目を見て」
「えっ?」
彼に言われて、ショックから立ち直ったネスは言われるがままに敵のギョロギョロと動かす二つの目玉を見つめた。
「あれ? 紫色に光ってる……戦う前はあんな目をしていなかったのに……って事は?」
この状況で彼に解答を導き出させている時間が無いため、
「僕は見たんだ。アイツが何かの光を放つのを! 多分だけどポーラはアイツと目を合わせて、あんなダイヤモンド状態にされたんだと思うよ!」
ジェフはそう推測を立てて、ネスに自論を述べる。
敵をたった一撃で何もできない戦闘不能に近いダイヤモンド状態へと追い込む恐ろしい瞳。
それを知る由も無く敵の戦力を舐めてかかった報いとして、既に一人が犠牲になってしまっていたのだ。
「ジュジュジュ……グギュ……オまえだち……のぢがら試すの……オデの……やぐめ……」
すると一人を仕留めた兆年寿の芽はなんとパワースポットの影響が人語を解し、ごもごもとした口調で不器用ながら言葉を口にし始めた。
「でも……ヂカラ認められない……奴ば『じぬ』じかない。まずば……ぞのむズめ……ゴナゴナにずる」
そこまで口にすると敵は動き出した。
敵を洞察する力も無く、あっさりと倒された資格無き少女を消し去るために身を引きずり、大きく開いた口から牙を光らせ近づいてゆく。
「やらせるか、PKシールド!」
変わり果てたポーラに兆年寿の芽が寄るより素早く、ネスは自分の体に敵からの打撃を軽減するPSIを使用して勢いよく走っていった。
その手にバットを力一杯に握りしめて。
「ジュッジュッ!?」
対して兆年寿の芽は再び不気味な目で少女の二の舞にしてやろうと考えていたが、向かってくる少年の様子に動揺の色を見せた。
なんと無謀にもネスは目を瞑っていたのだった。
テレパシーと勘を頼りに、兆年寿の芽の場所を予測して動いたのだった。
「これでもくらえ!」
夏の浜辺でスイカ割りをするように、彼は目に力を集中させて防御が甘くなっていた敵の脳天目がけて、全力でバットを振り下ろす。
SMAAAAASH!
「ジュギギギィ!?」
頭から伸びた芽から叩き割られる様にクリーンヒットした高威力の打撃技に苦悶の声をあげた。
流石にこの一撃は敵にとっては効果的だったらしく、兆年寿の芽は苦しそうに大きく身をよじらせた後に、敵との距離を開かせて気を失ったように俯いた。
「今度こそ決めてやる! PK……キアイ……」
戦況は一気にネス達側に軍配が上がった。
今こそ、この相手を抑え込んだ状況こそ好機と考えたネスはダイヤモンドにさせる瞳を警戒し、再び目を閉じたまま手を構え、
「β!」
とどめの一撃を決めようと口を動かして、詠唱した。
そう詠唱したはずだった……。
だが……出なかった。
「!?」
いち早くに変化に気が付いたのはジェフだった。
PKキアイの詠唱が始まると予想した瞬間に、彼はネスの立つ裏側へ慌てて回り込んでいた。
PSIの爆発が起こるとすぐに判断し、巻き込まれない様にしていたのだが、彼の詠唱が終わっても爆発しなかったのだ。
(あ、あれ?)
それどころか、ネスは『動けなかった』。
神経が自分のいう事を聞かずに制止していた。
『まるで体全身が麻痺したよう』に動けなかった。
「PK……バラライシズ、ダド。オデをナメルナ!」
彼は見ていなかった。
いや、見れなかった。
俯いていた兆年寿の芽が目線をあげて、対象者の体の自由を奪う麻痺技PKパラライシスを放っていた事など。
目を瞑っていたのが彼の敗北の要因だったのだ。
「もうゆるザナイ。そごのメガネは……後回しダ。お前ら二人を絞め殺じでから、たおじでやる」
大切な頭部を酷く傷つけられた痛みから、兆年寿の芽は激昂し、肉体を地面と一体化させると、
シュルシュルシュル! と大地の下からウネウネと動く太い根っこを二本生やし、ダイヤ状態のポーラと恨み残るネスの両者の胴体を締め上げた。
「…………」
「ぐっ……あ」
鉱石人間となって最早口すら見当たらないポーラは置いておき、ネスは麻痺の効果が辛うじて及ばなかったせいか苦しそうな声をあげる。
「くそ! 放せよ。この野郎!」
唯一、テレパシーを持たぬジェフは敵から弱いと判断され見逃されていたが、仲間の苦しむ姿を見ていられず、次第に締め付ける力が強くなる根っこに対して銃の攻撃を行ったが、
「うっドウじい!」
「うわっ!?」
兆年寿の芽は戦闘の妨害をする彼に対して、新たな根を地面から出現させ邪魔者をバシッと弾き飛ばした。
バゴンッ!
弾かれた体は洞窟の土壁に痛々しい音をあげて激突し、
「がっ!? く、くそ……ゲホッ」
攻撃の衝撃で背負っていたリュックサックが目の前に落とされ、中身が四散している中に倒れ込んでしまったジェフ。
人生で感じた事の無い激痛に意識が朦朧とする。
いつも勇敢に前線に立ち、自分を庇うように攻撃を受けたりしていたのはポーラとネスだった。
だからこそ、彼は受け身どころか大きな痛みも知らないせいで体力があまりない彼は たった一撃、強敵の攻撃一発でピンチへと追いやられていたのだ。
「ちくしょう……一体どう、すれば。ハッ!?」
だがまだ諦めずに戦闘を続けるために、ジェフが地面に手を当てて体を支えるように立て直した時。
リュックから飛び出し、目の前に転がって来たある物が目に入ってしまい、思わず凍ったように身を固めてしまった。
「ぐぐぐぐぐ、ジェフ……それを使って……奴はもう虫の息の筈だ、『それ』を使えば倒せるよ! ゲホッ!」
彼の前に転がっていたのはどせいさんから受け取った『ペンシルロケット5』。
胴を絞められ、苦しくなりながらもネスは大きな決定打を彼に託した。
けれども……。
(はあ、はあ、はあ……)
手に取り安全装置を解除するまでは良かった。
しかしジェフはペンシルロケット5を握ったまま、凍えるように激しく身を震わせるだけで撃てなかった。
「だ、だめだ。ダメだよ、ネス! 僕には撃てない」
「何を……言ってるんだ、ジェフ! それを扱えるのは君だけなんだろう? それにこれじゃあ……ぼくはポーラを助けられない!」
こんな非常時というのにジェフは怖気づいていた。
仲間が危険にさらされているのに出来なかった。
あるトラウマが彼の動きを制御させているのだ。
「僕は……僕は……」
立ち向かおうとはしていた。
だがその壁は崩せなかった。
一人ではとても切り崩す事は不可能だった。
そんな時、どせいさんの村でペンシルロケットに対して何らかの恐怖感を持っていた事を承知していたネスは大声をあげて、こう言った。
「ぐっ……バカヤロー! 君は僕たちの仲間だ! 大切な仲間だ! これは君にしか出来ない大切な事なんだ! そのロケットで何があったかは知らない! でもぼく達は君を責めない! 絶対にだ! だから構わず撃つんだ。優秀な君なら絶対に出来る! ぼくは信じてる!」
そう……彼一人では無理だった。
「!?」
僅かに変えたのはネスから向けられた信頼の言葉だった。
役に立たない仲間だと怒られるのではないかと考えていたが、自分たちの仲間はそんな薄情な奴では無かった。
ピンチになっても自分を信じて応援してくれる優しいリーダーだったのだ。
「わ、分かった!」
『ひび』はネスが入れてくれた。
仲間のおかげで分厚い壁に綻びが生じた弱点をジェフは自分自身の勇気と決心で力強く一気に打ち砕いたのである。
「よしっ! これで大丈夫だ。敵めがけて飛んでいけぇぇぇぇぇぇぇ!」
そうしてジェフは即座にロケットの発射装置を起動させ、
ブシュ―! パンッ!
直後、正確に狙いを付けたペンシルロケット5は勢いをつけて兆年寿の芽へ向けて発射された。
「ゲッ!? ギグギャガァァァ!」
ネス達を虐げるために地面に根を張っていたため、敵に即座に避ける術は無かった。
ボボボボボンと空中で分離し、同時に五連続のロケットがその身に直撃し、大爆発と共に兆年寿の芽はバラバラに砕け散り、撃退させたのだ。
敵の近くではなく離れた位置で捕まっていた二人は、何とか爆撃を免れ、本体の生命が尽きた根っこはネスとポーラを開放した後にしなびていったのだった。
こうして第三の番人は運命の少年たちによって敗北した。
「僕はね……ネス。小さい頃に父さんの研究所で遊んでいた時にペンシルロケットを暴発させてしまったんだ」
戦闘が終わり、ジェフは信頼する仲間に向けて自分の過去に起きた事件についての話を始めた。
何か言われるかもしれないが彼やポーラになら話せる。
自分がそう信じたから話していった。
ある悲しい決断を心の奥で構えつつ……話した。
「研究に没頭する父さんに振り向いてほしくて、父さんが作っていた試作型ペンシルロケットを改造して凄いと褒めてもらおうと考えていたんだ。でもそのせいで……暴発したロケットは僕自身に向けて飛んできた」
「………………」
腰を落ち着けて彼の話を黙って真剣に聞くネス。
その茶々を入れない真面目な姿にジェフは取り返せない後悔が押し寄せて来たのか、眼鏡から涙をこぼしつつも話を続けた。
「その時、近くにいた父さんがすぐに僕を庇ったんだ。その後にロケットが爆発して、気が付いた時には父さんの片腕は無くなっていたんだ」
(それで……ジェフはトラウマを……)
どせいさんが差し出したペンシルロケットに対して異様な動作をした彼の行動に、話を聞いたネスは納得する。
彼はどんな時でも自分が犯した罪の意識から逃れる事は出来なかったのだ。
息子である自分が育ててくれた父親の人生に害を及ぼしてしまった柵(しがらみ)に縛られていたのだ。
そして誰にも話せなかった心に潜めていた過去を仲間に話したジェフは、話し始める前に考えていた決意をネスに告げた。
「この話をして、僕は覚悟してるよ、ネス。こんなひ弱で役立たずな僕との冒険はここまでにしよう。君とポーラは僕の事なんか忘れて冒険を続けると良い。僕みたいに家族を傷つける人なんか、勇敢で優しい君達は一緒にいちゃあいけない」と。
「!?」
なんと彼が口にしたのは冒険離脱の宣言だった。
今回の戦闘で自分の無力さだけでなく、過去に怯え傷を負わせた父親ともまともに口がきけない愚か者はこのパーティーには不要だと判断してしまったのだ。
「…………」
しかしネスは……。
「こんの…………大馬鹿ジェフ!」
バコンッ! ジェフの顔を思いっきり殴り、滅多に見せない怒りを見せていた。
「君は……また逃げるのか! 今度はお父さんだけじゃなくて、ぼくたちから! 君はまたそうやって逃げるのか!」
顔を赤くし、息を荒立てながら殴られた衝撃倒れたジェフの胸倉をつかむと、彼は声を荒立てながら続けていった。
自分が感じていた彼に対する思いを。
「そんなに自信が無いならはっきり言ってやる。君は『弱くなんかない』! 何故なら今、君は、ぼく達を救う為に怖いはずのペンシルロケットを使ってくれたじゃないか! 本当の臆病者は過去の過ちを忘れて、覚悟も無しに生きる事だ。だから過去と立ち向かって打ち勝った君は、決して弱い人間なんかない! 凄く強い人間だよ!」
向けられたのは尊敬の言葉。
「あ……ああ……ああああああ」
ジェフにとってその言葉は何物にも変えがたい非常に嬉しい言葉だった。
その潤んだ瞳からは溜まっていた涙が次々とこぼれ落ち、声をあげて泣いていた。
「だから君は恥じる事なんてない。歓迎するよ、ジェフ。ぼく達と一緒にこれからも冒険を続けよう。ぼくは君の事を絶対に弱いなんて思わないからさ」
胸倉に掴みかかっていた手に力を抜き、泣いてしまい体のバランスを崩すジェフを安心させる為に抱きしめた。
【君の居場所はここだよ】
そう語りかけるように、ネスは過去から今を束縛していた苦しい鎖から解かれた彼が泣き止むまで、優しく手を当ててやったのだった。
『ミルキーウェル』
これまでの二つのスポットは違い、人間達の認知度は極めて低く、地元のどせいさんしか知りえない秘境。
ミルクの様な白い池の中央に、同色の液体を噴射する噴水の岩が存在している、奇妙にして不思議な地点。
音の番人を退けた一行は強敵との戦場となった洞窟を抜け、その場に立っていた。
「さあ、ネス。噴水に近づいて」
うらカンポ―とパワースポットの安らぎの力で無事ダイヤモンド状態から復活し、全回復したポーラ。
「ああ」
ひとまず、今回も無事に苦境を乗り越えた仲間の姿に安心しながらネスは噴水の元へと歩み寄っていく。
そして瞳を閉じると……。
《ネス、ネス》
(これはママの声?)
パワースポットのみで起こる記憶のフラッシュバック。
彼の脳裏に浮かんだのは若い女性の声。
《偉い人や……になら……いい……》
何か自分に呟いているのだろうか、途切れ途切れだが彼の頭の奥には確かに声だけは聞こえていた。
(これは……やっぱり何処かで)
映像では無かったが、彼にとって感慨深い物だった。
今までの蘇った記憶とは少し違ったが、過去の母親の言葉をしっかりと聞き取ったネスは意識を取り戻し、目の前のパワースポットを見つめていた。
「…………」
そうしてネスは遠くにママの声がしたように思った。
おぼろげな言葉の中に思いやりのある強い子に…と聞こえたのだった。
♪♪~~♪♪~♪
続けて記憶の中で流れていた何処か心地よい音色の流れを耳に残していたのだった。
ネスの持っている音の石が『ミルキーウェル』の音をきちんと記憶したのである。
予定ではコーヒーブレイクのシーンを入れるつもりだったんですが、さらに長くなってしまいこれ以上はさらに読みづらいかと考え、ここで終わりにしました。
一応、今回で一つの伏線としてアンドーナッツ博士の義腕についてを回収しました。
トラウマから立ち直る強い少年の姿を描きたかったという願望の為に、原作と少し違う展開を書かせていただきました。
まだまだ書きたいオリジナル展開があるので、殆どは原作に沿いつつも僅かに一風変わった考察やイメージで作ったMOTHER2を楽しんでいってください。
一応次の展開は、ヒントを貰えるコーヒーブレイクとMOTHER2内では語られなかったオリジナルの幕間の物語を書こうと思っているので、新しい感覚で読んで頂けると光栄です。
最後にここでのゲームでのコメントは特にないです。
普通にゲップ―を倒して、なんとなくちょうねんじゅの芽を叩きのめした事しかイメージが残ってないです。