文字数のおかげで非常に早く投稿できましたが、かなり内容としては薄い点もありますがこれからまた膨らませた内容を組んでいきたいと思っています。
『幕間の物語』
時は少し遡り、ネス達三人がゲップ―を倒して僅かばかり経過した頃だった。
「…………」
そこは世界地図には記載されていない未開の地。
というより人間はこの場所の存在すら知らない。
地面や壁の全てが白の切り立った地形。
底が一切見えぬ渓谷に似た高所が連なる地点。
そんな中で……生命体の存在だけはあった。
「只今、帰還イタシマシタ。兄上様」
勿論、存在していたのは人間では無かった。
「………………」
それどころか地球上の生物すらこの地にはいない。
けれども場には声が響いていた。
人の言葉を解し、コミュニケーションを図る者がいたのだ。
「お前らしくないな。我が弟『カイザー』よ」
それは地球外生命体、スターマンだった。
ネス達が追う銀河系最強の巨悪『ギーグ』の配下にして、戦闘、工作、暗殺など宇宙の殺し屋という異名だけでなく高度な技術をも併せ持った宇宙人。
場には他にも部下であるロボットや異形の化け物が見張りとしてうろついてはいたが、声を発していたのは二人だった。
カタコトで話す片方は以前、まだネスとポーラが出会い、二人で冒険を始めて間もない頃に襲撃をした人物。
その名も『カイザースターマン』
帝王の名を冠するに相応しく、そのスラリとした青色の人型の体に赤い色のビロードマントを羽織っているのが特徴的な人物だった。
「あの子供二人を逃がした上に、『カタナ』と言ったか。あの武器を振るう旧敵の男に一杯食わされるとは」
そして非常に流暢に地球の言葉を話す人物。
彼は地球に潜伏していたスターマン一族の中でも最強と謳われていた筈のカイザースターマンですらその前にひれ伏し、その実兄となる存在だった。
「申シ訳……アリマセン。デ……デスガ、ヤハリ『アノ男』ガ再ビ現レタ事ハ大キナ発見デス。次ハ決シテ後レヲ取リマセン故、私メニ次ノチャンスヲ……」
カイザーはは話しながら怯えていた。
自身が実力を持った強者でありながら、恐れていたのだ。
正面に凛として立っている人物に……。
「お前は優秀すぎる我が次男だ。信頼もしている、お前を手に掛けようとは思わん。だが、問題はそこではない」
そのスターマンは王の前に姿勢を低くする戦士の様な弟に対して、言葉を続ける。
「やはり運命というのは恐ろしいものだ。最も忌むべき今の問題はお前が逃がした子供が『ゲップ―を倒した事』なのだ」
「ハッ!? 今何ト!?」
彼の言葉に思わず、カイザーは反射的に顔をあげ驚く。
ギーグの軍団でもゲップ―は怪物たちの中でもそれなりの実力を持っていたらしく、彼らからすれば少し前まで赤子の様に弱かった子供達が打ち破った事が軍隊の中で大きな話題となっていた。
「奴に任せていた任務は『スリーク』という町の人間共に絶望を与え弱らせた後に、我々が侵略しやすい土地を作ろうとしていたのだ」
カイザーも承知していた陣地拡大の為の重大な任務。
人間達に『逆襲』をする事が彼らにとって悲願の為の大切な一歩である人間世界の土地侵略。
そう、トップであるギーグが望む最重要課題だった。
「しかし、この作戦には【裏の理由】があった」
だが、彼はゲップ―には『わざと』詳しく伝えていなかった作戦の詳細を、再び頭を下げたカイザーに伝える。
「奴がデータで送って来た、奇妙な地元住民を束縛する事が最も必要な任務だった」
スターマン達が本当に恐れていた事、それは。
「あの『どせいさん』という生物は高い知能を持つとデータで送られていた。それも我々を凌ぐかもしれん知能をな。もしそれが本当ならばあのネスと言う少年をこちらへ移動させる装置を発明するかもしれん」
万が一にもあり得ないと信じてはいたが、僅かな、極々僅かな可能性は拭いきれなかった。
奴らが自分たちのこのアジトとなる地点に辿りつき、彼らギーグ軍の持つ超予言装置『知恵のリンゴ』の通りに【自分たちのボス、ギーグが敗北してしまう】事を。
「だがゲップ―は住民達の住まう村の位置はおろか、面倒くさがって延期した挙句、結局自分たちのアジトの位置すら送っては来なかった。今から捜索をかけても見つかるかどうか分からん」
腕を後ろに組み、仲間たちが拠点を守っている姿を遠目で眺めながらそう告げた。
「デシタラ我々二オ任セヲ! 次コソハーー」
ゲップ―の尻拭いではあったが、名誉挽回のチャンスが回って来たカイザーは話を聞き、スッと立ち上がって慌てて意見を述べる。
「ダメだ、お前には別の任務にあたってもらう。それにもう現地にいる『部下』に連絡を入れておいた。我々スターマン以上に人間社会に潜り込ませやすい奴にな」
しかし途中で意見は否定され、男は静かに告げた。
「ワ……分カリマシタ。マタ……オ呼ビクダサイ」
カイザーは相手と兄弟でありながら意見を満足に口にする事も許されず、場から去っていったのだった。
打って変わり、話の舞台は人間の世界に戻る。
イーグルランドの遠い何処かの地にあるホテル。
彼はそこにいた。
「えっと、次の商品はこれだな。もう少ししたら交渉に出かけるとするか。それから仕送りもしないとな」
宿泊しているホテルの寝室で、三十代後半にしてまだ何処か幼い頃の面影がある男性はテーブルに着き、今日の取引で扱う製品の詳細を調べていた。
「ふう……それにしても元気でやっているかな、あの子は。さっき電話貰ったはずなのにすぐに心配するなんて、私も随分と親バカになったもんだな」
そして扱う商品知識をサッと身に着け、一段落つくと片手に温かいコーヒーを持って、時折口に含むと彼は家に残して来た妻と娘、そして息子の身を案じていた。
その交渉術の上手さが認められ、収入の良い役職に就き家族を充分に支えられるまでは良かったが、彼を待っていたのは出張の繰り返しの日々。
愛する家族へはまともに帰ることが出来ずに、クリスマスやニューイヤーイブ(大晦日)だけでなく、家族の誕生日にすら中々顔を出せない。
「今日のこの仕事が終われば一段落つくな。会社に無理を言って一時的に長期休暇を貰おうかな。社長からもいっぱい休め休めって怒られてるし」
しかし、いくらよく働くとはいえ彼だって人間である。
真に落ち着ける場所に戻って愛する人の顔を見たい。
その為にほぼ不休で休みを溜めていたその父親の男性は今日の交渉により力を入れる事にした。
「まだ二時間もあるな。たまにはランニングでもして昔の様な若返った気持ちにでもなろうかな、ハハハハ」
遅刻は絶対に出来ない為、交渉の数時間前から準備を整えていた彼は部屋のガラス窓から、外を歩く人々の姿を見て、そう呟いていた。
プルルルル!……プルルルル!
そんな時だった。
寝室に備え付けられた電話が音をあげて鳴ったのは。
「一体、誰だろう? こんな朝から」
彼はベッドの傍に備え付けられたその黒電話を手に取って、相手の返事を待った。
すると……。
「やっと見つけた。ずっとお前を探してたんだぞ!」
「えっ!? もしかして君は…………」
声は男性にとって聞き慣れた人物のものだった。
それは彼が少年の時代に出会った、幼馴染とまではいかないが、それでも多くの時間を共有し合った人からの電話だった……。
「ぽえーんぶじにかえってきたよかったよかった」
『ぽえーん、無事に帰ってきた。良かった良かった』
「みるきーうぇるどんなところだったおいしいものあったおもしろいものあった」
『ミルキーウェル、どんな所だった? 美味しい物あった? 面白い物あった?』
第三のパワースポットを攻略し、また一つ強くなり帰ってきたネス達を迎えたのはやはり、どせいさんだった。
人の足もとに群れで接近しないと気が済まないのか、その大きな鼻を脛に擦りつけ、一斉に帰還した彼らの元へ押し寄せる。
「フフフ、何だか落ち着くわね」
「事故とかで集まる野次馬じゃないんだから、いつもいつも押し寄せてこなくても……」
自分たちの元に集まる可愛いのか、不気味なのか、人によって主張が分かれる小さな生命体に囲まれながら三人は暫く彼らが飽きるまで待っていた。
そうして数分の間待っていた後にどせいさんがそれぞれの持ち場に戻り少し静かになった村の中で、彼らは名物の温泉付近のテーブルで休憩する。
「じゃあとりあえず、この後はスリークに戻るって事で」
「そうだね、きっと平和になってるだろうけど、一応確認しに行こうか。特にここに長居する理由も無いしね」
ネスとジェフはやるべきことを済ませたこの地に用は無くなったからとスリークへ戻る相談をしていた。
「ポーラ戻るよね? ね?」
だが、何故か一人だけ会話どころか聞く耳すら持たない金髪ボブヘアーの少女の方を向いてネスは念を押すように質問をする。
「ぷーくすぐったいですでもなんだかきもちいいです」
『ぷー、くすぐったいです。でも何だか気持ちいです』
話すら聞かない理由。
それはポーラが二人からそっぽ向き、近くを歩いていたどせいさんを捕まえ、犬やウサギの如く、
「もふもふ、もふもふ、もふもふ」
無我夢中でペット感覚で撫でまわしていたからである。
さらに言えばどせいさん側も気分を害することなく、むしろいじられる事に喜びでも覚えているのか、満更でもない形であるがままを受け入れていた。
「ポーラ、ポーラ。それペットじゃないから。一応その人たちここの村の住人だから。遊んでないで、早く離してあげて」
至上の喜びにでも浸っているように満面笑みを浮かべる彼女を話に戻す為に、ネスはわざと水を差す。
「分かってるわ、でも少しだけ、このまま三日位……」
「先にどせいさんが死んでしまうよ!? 三日もされたらもう顔がくちゃくちゃになるよ!?」
どせいさん側は嫌がる態度を取らなかったが、それでも旅の目的を見失いかけていたポーラ。
このままその無邪気な姿を眺めるのも悪くなかったが、
「これこれおとどけものですてすうりょうはいっさいとりませんいりませんぼくたちどせいさんはむしょうのあいをたいせつにするよ」
『これこれ、お届け物です。手数料は一切取りません。いりません。僕達どせいさんは無償の愛を大切にするよ』
三人が席に座っていた丸太のテーブルに別のどせいさんが現れ、頭に乗せていた『手紙』を彼らの元に届けると、
「あそんでばっかりいないでしごとするです」
『遊んでばっかりいないで、仕事するです』
ポーラと戯れていたどせいさんを叱りつけ、そのまま村の中へと連れ帰っていった。
「手紙? 誰からだろう?」
電話であれば両親または時々役立つ発明品の報告をする発明家アップルキッドからが多いが、この旅の中で手紙を受け取るというのは珍しい事。
「差出人は……あれ? 書いてないや」
ネスは机の上に置かれた封筒入りの手紙を手に取り、普通であれば裏や表の何処かに差出人の名前が記されているはずだが、それがなかった。
さらに言えば、送り先であるはずのネスの名前も記されておらず、無記名という少し違和感がある手紙だった。
「ネス、裏面の下をよく見て。なんか書いてあるわ」
謎の封筒をネスと共に観察していた二人の内、ポーラは気が付いた事を口にする。
先程は見逃していたのか、ネスは彼女の言葉通りに封筒を裏向けると、確かに小さな文字で何か記されていた。
「えっと? なになに…………これを読むときはコーヒーでも飲んでゆっくり読んでね。休憩も旅では大切だよ」
それは二行に渡るメモのような物だった。
「「?」」
何かのヒントなのかよく分からない文章に対し、流石に戸惑いを持ち始めるネス達。
送り主も分からない、果たして本当に自分たちに送られた手紙なのかも分からない、メモの意味も分からない。
「ぼくそれかいていたひとしってるよきみたちがみるきーうぇるいってたときにあらわれたひと」
『僕、それ書いた人知ってるよ。君たちが『ミルキーウェル』行ってた時に現れた人』
そんな時、助け舟を出したのはどせいさんだった。
そう言って温泉から上がり、体中をホカホカさせながら、コーヒーの乗った盆を器用に頭に乗せて運んでくる。
「誰なんだい?」
ネスは席にコーヒーの盆を置いたどせいさんが知っているという差出人の名前を伺う。
すると、
「いといっていうひとですなんでもあなたちのふぁんらしいですよあえないことをかなしんでいました」
『【イトイ】って言う人です。何でも貴方達のファンらしいですよ。会えない事を悲しんでいました』
どせいさん曰く、彼らの父親や母親の様に歳を取った大人の姿をした男性で自らをイトイと名乗っていたそうだ。
その男性が手紙の送り主らしい。
「イ……トイ? うん? あれ?」
「なんだろう……ね。なんだか……」
「会った事……いいえ、まるで歴史の本に載っている偉人の名前を聞いたみたいな気分」
聞いた事ない名前の筈だったが、ネス達三人は何処かその三文字に妙な親近感を湧きながら、手紙への興味がより深まっていった。
「まあまあむずかしいかおしないでこーひーをのんでいってくださいおちついててがみをよめばいいのです」
『まあまあ、難しい顔しないでコーヒーを飲んでいってください。落ち着いて手紙を読めばいいのです』
イトイと称する人物から送られた手紙。
彼らはどせいさんの運んできてくれたカップに手を伸ばし、スリークの戻る前の最後の一服として、ありがたく頂く事にした。
そしてネスは一度だけコーヒーを口にすると手紙の封を切り、中の一枚の便箋に記されている内容を口にして、仲間たちにしっかりと聞こえるように聞かせた。
思えば遠く来たものだ。
ネス……君が、この曲がりくねった冒険の旅路を歩むようになったのは、あの最悪の隣人ポーキーのノックの音がきっかけだった。
記されていたのはまるで【イトイ】という人物が見て来たように綴られたネスの冒険についてだった。
ポーラとジェフも聞き覚えの無いポーキーという名が出ていたが、ネスは気にすることなく音読を続ける。
しかし、君は歩き続け、考え続け、戦い続けて来た。
勇気を失わず、何度も傷つきながら確実に強くなっていった。
それにもう君は一人じゃない。
可愛くて優しい、しっかりもののポーラがいる。
運命に引き寄せられるように、遠い国から駆けつけてくれた気弱だが切れ者のジェフもいる。
どうやらネス、君は何かとても大きな運命を背負った少年の様だ。
これから先の旅も、今まで以上に長く苦しいものになるだろう。
でも君なら大丈夫だ。
正しい者と正しくない者とがいて、
それが戦ったとして……正しい者が負けると君は思うかね。
決して失ってはならないもの……それは勇気だ。
勇気は、最後の勝利を信じる事から生まれる。
苦しい事も辛い事も、まだまだあるだろうが、そんな事を楽しむくらいのユーモアも 持っているのが君達だ。
コーヒーを読み終えたらまた冒険は始まる。
ゲップ―が消えて平和になったスリークを抜けて、砂漠を抜けた大都会フォーサイドへと君達は向かう。
ネス、ポーラ、ジェフ。
君達にいつも幸運の女神が微笑みかけてくれるように……私は祈っています。BY イトイ
記されていたのは非常に大きな勇気を与えてくれる内容だった。
まるで酷く落ち込んだ時に大好きな両親から温かい言葉をかけてもらったように、心安らぐように綴られた激励の文章。
ファンという点は理解することが出来なかったが、自分たちをこれ程までに励ましてくれる人物の存在に、
「行こう、世界を救う為に、ぼく達が戦うんだ」
「ええ、進みましょう。私たちの運命に従って」
「僕も同じさ。もう弱さから目をそむけはしない」
手紙の内容を頭に焼き付け、コーヒーを飲み終えたネス達は、それぞれに視線を合わせてそう発する。
お互い冒険に向ける心意気の言葉を掛け合い、三人の信頼関係がより深めたのであった。
フォーサイドへの伏線やこれからの伏線の意を込めて今回は書かせていただきました。
コーヒーブレイクの文章はどうしても変更したくなかったので最後の部分以外は全て原作通りにさせていただきました。
さて次からは長くなるであろうフォーサイド編開始です。
少し時間がかかるかもしれませんが、なるべく早くに新話を投稿していくつもりです。
ここのコメントは今のゲームではこのコーヒーブレイクの様なプレイヤーに向けているのか、本当にフィクションの中だけに向けているのか分からない深みのある所が絶対に作れない事に、昔のゲームと今のゲームの格差を感じます。