もしかするとドコドコ砂漠の『白ごま&黒ごま』や『おおしおへいはちろう』の面白いネタが盛り込めない恐れがありますが、ここはご勘弁ください。
※一応、投稿と同時に過去の話も僅かですが読みやすいように見つけた誤字や文章のズレを一部修正しておきました。
では少し長くなりましたが、スリーク編終了からどうぞ!
第四章『大都市フォーサイド』
「君達はこの町のヒーローだ。ありがとう」
「私たちのスリークを救ってくれてありがとう。感謝、感激、感動の言葉に尽きるわ」
「素晴らしい、子供とはいえ君達は私たち大人顔負けの勇敢な人間だよ。あっ、もしよかったら握手とかしてくれるかい?」
謎の生物どせいさんの住まうサターンバレーからスリークに帰還した三人を迎えたのは、スリークの住民達だった。
大人たち皆が英雄の帰りをずっと墓場の抜け道の傍で待機していたのか、帰ってきた事を確認すると拍手と声援で出迎えたのだった。
「ネス、大変だったけど上手く行けたね」
「スリークの町が明るくなっているわ! 気持ちのいいお日様の光まで差し込んでる」
帰還したスリークの町は三人が散策していた深い闇が町を支配していた頃とは見違えるようにその活気を取り戻していた。
ゾンビ達全てが捕縛またはゲップ―敗北の影響で消滅し、町上空を覆っていた分厚い暗雲も消え去っていたのである。
おかげで地上に久しぶりの明るい日光が燦々と差し込み、住人たちは本来の平和な生活を取り戻すことに成功したのだった。
「よしっ、これで元通りって訳だね」
ネスはそう口にすると結婚式で式場を離れる新郎新婦を温かく見送る様に、彼らに感謝を述べる人々が並んだ道を一歩ずつゆっくり進んでいく。
殆ど外出していなかった常夜の時とは違い、スリーク内の多くの住民が抜け道から墓場の出口まで行列を作り、三人はこの町本来の住民の数を確認する。
「ネス、見て。車が通っているわ」
さらに墓場から町中へと出ていくと、道路を走っている幾つもの車や荷を運ぶ大きなトラックの姿を三人それぞれが確認する。
今までスリークと隣町を繋ぐトンネルが悪戯をするオバケによって封鎖されていたのだが、現在ではその問題も解消され、現在ではスリークを訪れている人の姿も町のあちこちで確認できていた。
そう、これが従来のスリークの姿。
周囲を深い森で囲まれている自然の豊かさに加え、深い緑色の草が生い茂る落ち着いた雰囲気の土地、さらに度々大きなテントで開かれるド派手なサーカス。
発生していた不気味な存在だったゾンビやオバケなどとは全く無関係の、空気が美味しい心安らぐ美しい田舎町だったのだ。
「本当に静かな町だったのね。将来はこんな所に住んでみるのも良いかもしれないわ。ゾンビやはえみつは二度と勘弁だけど」
「そうだね、でもぼくはお墓があるのは少し怖いかな」
平和が戻り、全てが元通りになったスリークをネス達はもう一度見て回っていた。
以前の広場には一部の肉が腐り落ち、骨が見えていた気味の悪いゾンビドッグやカボチャ頭をした怪人『ハロウィーンやろう』などが我が物顔で闊歩していたが、今はサーカスで活躍する動物を入れる滑車付きの檻が放置してあるだけで、普通の短い草が所々に生えた場所となっていた。
「良い町だよ。ここは本当に」
墓地に至っても同様で、かつては敵達の襲撃に合うと立ち入り禁止になっていたのだが、今では花を持った老人や大人が先祖の墓参りに向かう姿も確認できる。
「やっぱり、皆楽しく生きなくちゃ損って事だね」
広場、墓地と巡り、最後にネス達は居住区へと戻っていき、ワイワイと外で遊ぶこと子供、立ったままやベンチに腰掛けお互い笑いを交えながら話す住民の姿。
「これで良かったんだ」
自らが行ってきた行為が人々の平和の為に役立った事に大きな満足を得て、彼らのスリーク再探索は終わりを迎えた。
「坊やたち、このバスはフォーサイドへ向かうんだけども、お金は持ってるかい? 料金は三人分で六ドルだ」
スリークから新たな土地へと向かう為に彼らはホテル前のバス停で、別の町へ移動する為のバスが来るのを待っていた。
通常の車だけではなく、当然町と町を繋ぐバスも再開されたため、今の落ち着きを取り戻したスリークを訪れる人間がいるのだ。
「はい、これでお願いします」
バス出口から客が出ていき、新たに乗りこんだネスは先にポーラとジェフを乗り込ませ、ホテルのキャッシュディスペンサーから引き出しておいた金を運転手に渡す。
「あいよ、確かに六ドル受け取った。もし気分が悪くなったら一応降りられるけど、お金は返さないから気を付けておくれよ」
バス酔いする子供の客が以前にいたのか、そう忠告を受けながらネスらは自由に席を選び横一列に並ぶように腰を下ろした。
「じゃあ、しゅっぱーつ! 目的地はフォーサイドだ」
他に乗車する客がいないことを運転手は確認し、ボタンで入り口の扉を閉めると、そう口にして発進させる。
レバー式のギアを動かし、アクセルを徐々に踏み込み車体を僅かに揺らすと、少しずつ音をあげて動き始めた。
「さあ、また新たな冒険の始まりだよ。皆」
「大都市フォーサイド……田舎者の私が行っても恥ずかしくないかしら」
「大丈夫だよ、きっと。逆にソワソワする方が怪しいよ」
三人はまだ慣れないバスに座り、そんな他愛の無い話をしつつ、数日間滞在したスリークの地を離れてトンネルへ入っていくのを窓から見ていたのだった。
しかし……。
不運にもネス達は目的地のフォーサイドにたどり着く事は叶わなかった。
理由は単純。
数キロに及ぶ異常な交通渋滞である。
スリークからフォーサイドまでは、一つ目のトンネル先に広がる高台に覆われた道路を越えた第二のトンネルへと入り、その先に広がる中継地の『ドコドコ砂漠』を越えて進む必要があるのだが、
「悪いな、お客さん達。この渋滞のせいで、後1~2時間は動きそうにねぇや」
人々の憧れの都市であるフォーサイドへと向かう為の道路は目の前から見渡す限り停車した車ばかり並び、中では車を降りて様子を伺っている人間までいる始末。
その為、バスを放棄する訳にはいかない運転手は一時的に席を離れて、客席にいる人に対して料金は返せない為、謝罪を含めて発言する。
「って言っても坊や達だけか。ごめんよ、何でもさっき外にいる奴の聞いた話だと、この先の道路で『バッファロー』の大群がノロノロと横断しているらしい」
運転手の男性は車内の数少ない客であるネス達に、丁寧に現在起こっている事情の説明をして渋滞の原因について把握させる。
バッファローというのはこのドコドコ砂漠に住まう頭に大きな双角を携えた茶色の牛の事であり、性格は通常時では大人しいが、怒らせると大群で襲い掛かって来る習性を持っている集団意識の強い生物。
そのせいで怒らせない限り動き自体は鈍重で、誰も下手には手を出せず、今もそれらの横断が済むまで否が応にも待たされている状態である。
「俺は運転が仕事だから降りるわけにはいかねぇが、ここは自由の国だ。降りて歩いていくもよし、ここで待つのも良し。好きにしてくれ。でも日射病には注意しろよ」
そう運転手の男性は、三人に優しく助言をして運転席に戻ると扉の開閉ボタンを押し、プシュー、ガコンと音をあげ出口の扉を開けた。
「行こうか、みんな」
「そうね、いつになるかわからないものね」
運転手の説明の甲斐あってか、予想だにしていなかった出来事に慌てる様子を見せる事無く三人は大人しくバスから下車していった。
「うっ……」
バスの中は冷房がきかせてあったのか、車内から飛び出してドコドコ砂漠に向かった三人を出迎えたのは感じた事の無い猛暑。
焼け付くように照りつける日光に流石のポーラやジェフも、
「暑いわ……真夏の中で暖炉を焚いてるみたい」
「僕は寒い所で生活していたから……温度差が恐ろしい」
頭からだけでなく首元にも汗が吹き出し、辛いと顔に書いてあるように息を切らす。
不幸中の幸いか、バスを降りた眼前に中がショップが存在していた事により、飲み物と食料を購入でき、これから砂漠を歩く人間にとってはオアシスの様な場所。
チップスやクッキー等の簡単に食べられるお菓子や、冷蔵庫で冷やされたコーラやサイダーなどの炭酸飲料やアイスキャンディーは外の渋滞で待つ人々が次々と購入していったせいで悲しくも完売だったのだった。
その為、遠足ランチやハンバーガーなど胃にズシリとくる食料品、飲み物はオレンジジュースやアイスコーヒーなど好きな物をリュックに詰めて砂上を歩いていた。
「はあはあ……暑い」
ネス達が歩くのは広大な面積を誇るドコドコ砂漠。
ちっとやそっと歩いた程度では目標地点のフォーサイドへ繋がるトンネルは見えてこない。
道路の傍はゴツゴツとした岩場で囲まれ隠れており、自分たちが道路と併行して歩いているのかもハッキリと分からない。
「くそっ……えいっ!」
さらに、この暑くて苦しい状況を悪化させているのが、砂漠のモンスターの存在。
砂漠中を自由に闊歩するサソリの『スケルピオン』、球体に分厚い唇が付き、笑みを浮かべる『笑いボール』、細長い頭に着いた赤いトサカが特徴の丸い胴体を持つ『トサカラン』などこれまで見たことが無い姿をした敵達に襲われていた。
「ふぅ……ふぅ……ふぅ」
しかしそれでも余りの暑さに集中力が乱れ、苦しい戦いを強いられつつ敵の襲撃を逃れる。
「はっ、はっ……ふぃ」
予想を遥かに超える砂漠の猛暑と太陽の熱波。
今までモンスターとは戦ってきた影響で戦闘は得意ではあったが、厳しい環境という自然が起こす意図しない障害には全く慣れていない。
そもそも、このような命すら落としかねない危険地帯は通常であれば子供が気軽に立ち寄っていい筈が無い場所なのだ。
「飲み物を……何か……飲まないと」
けれども精神力は逞しいネス達は、この皮膚をジリジリと焼かれる様な耐えがたい暑さにも引き返すという選択を選ばずに進んでいた。
「はあ……はあ……これも一つの試練よ、頑張るのよポーラ」
それでも肉体的に辛い状況の為、いつもの和気藹々とした仲間同士の会話は一切無くなり、苦痛から出る溜め息やや独り言は出てはいたが……。
それでも彷徨わぬようになるべく道路に近いと感じられる岩場の傍を、ネスに続くように全身汗まみれにして歩いていった。
だが……。
ドサッ!
彼らの限界の時はすぐにやって来てしまった。
「えっ? ジェ……フ?」
砂漠での歩行を開始して半時間程経過した頃。
ついに一人目の脱落者が出てしまった。
音をあげて砂地に顔から突っ込んだのは、ジェフ。
やはり雪国育ちの彼にとっては辛かったのだろう。
さらには……。
「…………あっ……いし……きが」
弱り目に祟り目とはこのこと。
ジェフが倒れたのと同時にポーラはフラフラとしながら、たった一言だけ力無く発すると彼女も、どさりと顔から砂漠の上で倒れ込んでしまう。
「嘘……でしょ」
強烈な猛暑にその体が耐えきれずダウンしてしまった二人の姿を見て、動揺するネス。
慌ててその元に駆け寄り体を起こすと、順番に近辺の岩場まで連れて行き、楽な姿勢で岩にもたれさせていった。
そしてネスは医療の知識は全く無いが、彼らを苦しめる症状を確認する。
「!?」
すると彼は見た事も無い症状に驚きを覚えた。
なんと、服が殆ど濡れていなかった。
……と言うよりは、日光で乾ききった服が、付いた水分により生じる湿り気を持っていなかったと言った方が正しいだろうか。
そう、二人は『汗』を掻いていなかったのだ。
いつからかは分からないが汗を全く掻かず、体中酷い高温を発しており、意識自体もはっきりとせず朦朧としている。
典型的な日射病の症状である。
「PK……ヒーリン……グ。ダメだ、ぼくも……」
砂漠の上を歩く以外にも繰り返された激しい戦闘で疲弊しきった体力だけでなく、早期決戦を目指していた為、技を使いすぎたせいで、精神力すらも限界を迎えていたネス。
他にも日射病になる前に仲間が体の不調を訴えてきた際にも、体の調子を取り戻すPKヒーリングαやβで治療を行っていた為、余計に彼はその身を削っていたのだ。
「く……そ」
長距離を走った後に暫く止まっていると、一気に汗が噴き出すように、場に留まった彼にも日射病の兆候はすぐに現れ始めていた。
「こんな所で……」
激しい吐き気と目眩、果てには頭痛までその小さい体に容赦なく襲い掛かり彼を蝕んでいく。
そしてついに……二人が倒れて僅か数分。
「ハア……ハア……もうだめだ……」
パタリとリーダーのネスも診察の為に腰を下ろした姿勢から地面に倒れ込んでしまった。
「……ご……めん……ふたり……と……も」
彼は自然が人間達に及ぼす強大な影響をその体で感じながら、次第に意識を失っていく。
(…………)
見えている景色に幕が下りていくかの如く、段々と視界が黒に染まっていき、最後には何も見えなくなる。
「……δξ÷%……、>Δ〇×¶!」
意識が途絶する直前まで聴覚は生きてはいたが、ネスが最後に聞いたのはモンスターか、幻聴かも判断できない何かの声に似た音だった。
こうして冒険史上初めてネス率いる一行は志半ばにして完全に意識を無くしてしまった。
このまま彼らの体はモンスター達の餌になるのか、干からび続け、砂漠の中に転がる牛の骨の様に変わり果ててしまうのだろうか……。
最早、その決定権は天に委ねられる結果となった。
(……あ……れ?)
鼻に香ってきたのは木の独特の香り。
身に当たるは微かに冷たい風。
聞こえるのは何かが回転している音。
そして頭に触れているのはフカフカとした何か。
「…………うん?」
だが、ネスは何とか生きていたのだった。
「う、ううん……」
意識が覚醒した初めは見える風景もぼやけていたが、次第に体の調子を取り戻すと、
「ここはどこだろう?」
幸運にも特に大きな傷も負っていない身体を起こし、自分がいる場所を確認する。
彼がいたのは木製の小屋だった。
ワンフロアしかない非常に簡素な小屋で、中に置かれていたのはベッドが二つとタンス一つに小さな冷蔵庫、後は扇風機と幾つかのクッションだった。
彼が寝ていた場所には枕としてクッションが置かれ、毛布の様な薄い掛布団と体を冷やすように風を送るように扇風機が回っている。
「……助かったのか?」
腕をつねると痛みを感じ、鼻は木の香りを感じとり、体にはしっかりとした重みがある。
そうして体の感覚を通じて色々な事を試して自分が生きている、この世に残っている事をその身をもって自覚するネス。
「ふいー、これから忙しくなりそうだな」
その時だった。
一人の男性がタオルで汗だくの顔を拭いながら、小屋の扉を開けて入って来た。
「おっ、お前も起きたか。仲間なら外でキツイ説教を受けているぜ。早く行ってきな」
工事現場にでもいた男性だろうか。
安全第一と書かれた黄色い安全ヘルメットを頭にかぶり、服装は汗が付いた黒のタンクトップにジーンズを着用していた。
「ポーラとジェフも一緒なんですか!」
情けなくも疲弊した仲間を背負って進めなかったネスは、男性に対してそう質問する。
すると男性はかけていた日光を防ぐサングラスを外し、
「ああ、砂漠の中で倒れていたお前らを見つけたのは俺たち兄弟だ。本当に危ない所だったんだぞ。もう少しで死ぬところだった」
意識を無くす直前にネスが耳にしていたのは、偶然近場を通りかかった彼の声だったのかもしれない。
「分かったら早く行きな。兄貴はおっかねぇぞ」
「はい。助けていただき、ありがとうございました」
幸運にも優しい人達に救助されたネスは、彼に対して深々と頭を下げると、小屋の扉を開け、入れ替わるように外へと出ていった。
小屋はドコドコ砂漠内に立っていた建造物だった。
何かの建築現場か、作業場かはまだ不明だったが、その付近には地中へと続く大きな穴と、大きなショベルカーが二台用意されていた。
「よし、おめぇも起きたな。じゃあもう一回キツイお説教をしてやる。ちゃんと頭に叩き込んで後世に活かすんだぞ」
日光の真下では流石に酷だと把握しているせいか、そのショベルカーの影で小屋の男性が口にしていた兄からネスを含めた三人がお叱りを受けていた。
「言いか、この俺ショージ・モッチ―と弟のチュージ・モッチ―の兄弟がいなかったら、おめぇらは今頃ミイラみたいにガリガリになっちまってたところだ」
体育会系だと分かる筋肉質な体に、荒々しい口調で話す男性ショージはそう自己紹介を済ませつつ、目の前で体育座りをさせている三人に言葉を続ける。
「確かにおめぇらがまだガキってのはよく分かるぞ。ましてや、こんなえげつねぇ環境を体験した事も無い事くらいな」
そこまで口にすると、彼はネス達のリュックから一時的に拝借したジュース入りペットボトルを取出すと、
「でも、だからってな。こんな水分の足しにもならねぇ、ジュースなんか買ってくるな。水を買え、水を。こんな猛暑が続く中で汗は嫌でもどんどん出ていきやがるんだ。だから水分が吸収しにくい飲み物よりも、直に吸収できる水とかの方が砂漠を歩く上で滅茶苦茶役に立つんだ」
一見、罪もない子供を脅しているような絵面にも見えるが彼は命の危険に晒されていた三人に自然の厳しさを教育していたのだった。
「自然はおっかないからな。対応できない生物は例え人間だろうともあっさり命を持っていきやがる。だからおめぇらも、もしこれから未知の自然に出くわしても、まずは観察と適応する術を身に着けるんだ」
年端もいかぬ子供には少し難しい事とは承知していたが、これからのネス達の安全を考えてショージはそう付け加えると、持っていたペットボトルを返した。
「本当にありがとうございました」
「助けてくれて、ありがとうございました」
「これからの僕達の冒険に役立てます」
そうして説教が終わると、ネスらはこれからの冒険において役立つ事を学ばせてくれたショージに向けて、息を合わせてお礼の言葉を述べ、頭を下げる。
その姿勢に……思わず、
(こいつら……しっかりしてやがる)
最近の若者とは思えない程に芯がある行動にショージは心中で感心しながら、彼らに向かって僅かに微笑んでいたのだった。
「ところでショージさん達はこんな暑い砂漠の中で、ショベルカーまで持ち出して何を行っているんですか?」
その後、説教が済み、ネス達は気になっていた疑問をショージに投げかける。
「ああ、これか。俺達は埋蔵金の発掘を依頼されてる人間だったんだが、今は雇い主の気が変わっちまったせいで見放されちまってな」
するとショージは砂が付いたショベルカーの機体に手を当てて、少年の質問に答える。
(こんな砂漠に……埋蔵金?)
(埋蔵金……ニッポンでいう『トクガワの隠された遺産』みたいな物かしら……まるで夢物語ね)
にわかに信じがたい話ではあるが、この地に大きな縦穴まで存在しているところを見ると、本当にあるのかもしれない。
「兄貴ぃ、ついに食うものが無くなっちまったよ!」
そんな推測をネスやポーラが立てているところに、大声をあげて小屋から出てきたのは、ネスと入れ替わりになったチュージ・モッチ―。
「馬鹿野郎! 俺なんて昨日から水以外何も口にしてねぇんだぞ! 金も全くねぇんだ、もう少し我慢しろ!」
対してそんな弱音を吐く弟に対して、ガツンと厳しい言葉を返し、隠していた空腹を気合いで紛らわせる。
「わ、分かったけどよ……流石にこればっかりはこれからの生活に関わってくるぜ」
「うーむ……まあ、そりゃそうだ。だがここまである程度の位置を突き止め、ずっと掘って来たんだ。今から他の現場に戻るのは意地でも断るぞ!」
雇用主から見放された事で、実質的に収入は無し。
見事に埋蔵金を掘り当てたわけでもない為、勿論報酬を受け取っているわけでも、発掘した物を売ったわけでもない為、彼らの懐事情はこの砂漠とは違い寒かった。
だが彼らも諦められず自棄になっていたのか、このロマンある仕事から別の仕事へと移行するのは断念。
「男なら一発当ててこその人生よ。ロマンを忘れちゃいけねぇ。俺は昔から『インディー・ジョーンズ』が好きでよ。遺跡とかに眠る財宝を見つける所に憧れてたんだ」
特にショージは自分の叶えたかった夢が実現する可能性を求めていた甲斐もあってか、弟のチュージですら彼の強い意思を曲げることは敵わなかった。
「でも……兄貴、ロマンじゃ人生食っていけねぇよ」
しかし儚くも人生とは無情なもの。
確かにチュージの口にした通り、二人は一攫千金の夢とひもじい貧乏生活の狭間を歩いてしまっていたのだ。
「ここで当てれば、お空の上にいる俺達の御先祖さん達に誇れるんだぜ! 自分を信じろ!」
金か夢か。
互いに言い争う中でショージの内に秘める思いの強さがネス達に伝わったのだろう。
「あの……これ、良かったら使ってください」
ネスは二人が言い争っている中で、こっそりポーラとジェフにアイコンタクトを取り、意思を伝えあっていた。
そして合意がなされたうえで、ネスが互いのリュックやポーチから荷物を取り出し、ショージに向けてそれらを譲るように差し向けた。
「えっ!?」
それは炎天下の中でも傷まなかった、店で購入した遠足ランチやハンバーガー等の食料品に加え、元々強い装備やグッズを買う為にスリークで引き出していた50ドル札の束、総額2000ドルの二種類だった。
何者かは聞かなかったが、まさか子供から食料と金銭の施しを受ける事とは思っていなかったが、ショージは眉間にしわを寄せ少し苦い顔をしながら、
「いい……のか? こんな大金まで貰っちまって。お前達これから……困るんじゃないのか」
本音を言えばすぐにでも受け取りたい欲はあったが、良心が妨害をし本性を奥へと追いやり、天使の様な優しさを持つ子供たちに再確認を取る。
対してネスは彼の言葉にコクリと頭を下げると、
「遠慮せずに使ってください。ショージさん達兄弟にはぼくだけじゃなく大切な仲間も助けて貰いました。二人が介抱してくれなかったら、今頃どうなっていたか分かりません。ですからぼく達からのお礼だと思って気にせず使ってください」
ネス達は救出された事、ショージたちは困っていた食料問題と資金繰りの問題に援助の手が入った事。
両者は天から与えられた縁によって救われたのだった。
「す、すまねぇ……じゃあ、ありがたく使わせてもらうとするよ。待ってな、もし埋蔵金が見つかったら殆どおめぇらにくれてやるからよ」
こうしてネス達は人助けの気持ち優先のせいで、深くまで考えてはいなかったが、子供の身でありながら埋蔵金が出れば莫大な収入が入る約束をショージと結ぶ。
その後……ネス達が気絶していた間に数時間が経過していたのか、とっくにバッファローが完全に道路を横断しきっており、渋滞もとうに解消されていた。
日も沈みかけてはいたが、このままネス達はフォーサイドへと向かう事も可能だった。
しかし、体を完全に癒していくべきだと勧められ、小屋で一服するようにショージ兄弟は言い張り、そのまま彼らの住居でやっかいになるのであった。
次の日。
「頑張って行ってこい! すぐに金を見つけてやるから」
「ご苦労様、また会おうな! そして金と食い物ありがとう! 俺達頑張るからよぉ!」
日光が差し込み、砂漠の暑さが出始めた朝頃。
ネス達は命の恩人の兄弟に見送られながら、僅かな距離の砂上を歩いていき、邪魔者がいなくなり渋滞も解消された道路へと向かっていった。
冒頭から少し予想だにしていない事故があったとはいえ、何とか三人は優しい人の手を借りながら、ドコドコ砂漠から大都市フォーサイドへと伸びるトンネルへと侵入していくのだった。
『フォーサイド』
ドコドコ砂漠から東に伸びる長いトンネルを抜けた先、そこには海上に建設された巨大ブリッジが存在している。
ブリッジの上を走る車の中からでも、たとえ脇の歩道を歩く人であっても左右に首を振れば広大で海の景色を堪能できる。
さらに美しい景色に見とれながらも、再び先へと続く長いトンネルに入って抜けた先。
西と南が海に面した陸地で繁栄を遂げた都市。
そう、この場所こそが大都市フォーサイドである。
人口は言うに及ばず、イーグルランドでもトップクラスに及ぶネスとポーラの故郷のオネットやツーソンとは桁違いの総数。
外見は、見上げる程の高さを誇るビルが無数に点在しており、道路の長さや交差点の数、走る車の台数も圧倒的であり、とにかく近代的な物件が都市中を埋め尽くしていた。
「ここがフォーサイド……」
「す、凄いわ。建物を見るだけで首が痛くなる」
まるで巨大生物の映画で襲われる都市のジオラマを見ているようで、本当にこれ程の巨大都市が実在している事に、田舎育ちのネスとポーラはあまりの衝撃に身を打ちひしがれていたのだった。
「…………君達を探す時に見たんだけど、空中からと地上からじゃあ建物の迫力が違うね」
ウィンターズからスリークへとネス達がゾンビに捕まり、飛行用装置『スカイウォーカー』で救出に向かった時、ジェフは一度この光景を空中から俯瞰し、目にした事はあったが、それでも同様に驚きを覚える。
「と、とにかく……まずは僕が気付いた事を言うよ」
まずは大都市で遊びたい、噂で耳にした程度で見た事も無い『トカイ』という未知の領域を自由に回って楽しみたい。
「ここにもスリークみたいに邪悪な気配がする。しかもかなり大きな力だ。まるで町を飲み込もうとしているくらいだ」
……という少年らしい気持ちはあったけれども、わざと押し殺してネスは仲間たちにフォーサイドに入った瞬間にテレパシーで感じた違和感について述べる。
「ええ、ここにもギーグの手先が入り込んでいるみたい」
同じくポーラも彼に同意するように場所や正体こそはっきりとは断定できないが、何かどす黒いオーラを感じ取っていた。
「とりあえず、今回は少し広いけどばらけてここの人達に話を聞いていこう。この大きさの土地だ。住んでいる人も多いし、この邪悪な気配に中てられて襲ってくる人もいるかもしれない。注意していくんだ」
こうしてこれまでの巡った全ての町の規模を総合しても足りない程の土地、ネス達はこれまで以上に気を引き締めて情報集めに取りかかる事にしたのだった。
『ネス・SIDE』
仲間たちに情報収集を切りだしたネスはフォーサイドの中央に広がる広大なビルが立ち並ぶ区域を歩いていった。
「あの、すいません。お尋ねしたい事があるんですが」
歩道を歩く大人や老人。
他には休憩していたタクシーの運転手など。
見知らぬ土地では情報が武器であるため、彼は念入りに情報を聞いて回っていた。
「変わった事ねぇ、そうだな……このフォーサイドの街で一番大きなデパートが何故か閉鎖されちまってさ、今は困ってる事がそれかな」
「デパートの閉鎖ね。あそこの食料品で売っているお肉が凄い美味しいんだけど、今は買えなくて、ステーキや肉じゃが、ハンバーグとかが作れないのよ」
「フォーサイドデパートっていう場所があるんだけど、ほんの少し前から急に閉じちゃって奇妙なの。私の孫はACのドンキーコングが出来ないって悲しんでたわ」
故郷のオネットを離れ、ツーソンへやって来た時と同じく一人で情報集めをする感覚を懐かしみながら、ネスは様々な人たちと会話を重ねっていた。
その中でまず得た情報の一つ目は多くの住人たちの悩みの種である巨大デパートの急な閉鎖についてであった。
良質な商品を常に取り扱い、値段も文句が出る様なとんでもない金額ではなく、目立つクレームもあまり見られない通常のデパートもといショッピングモール。
開店していた頃は大都市の目玉のデパートだったためか、日々の客足が途絶える事も殆ど無く毎日が賑わっていたとされていた筈の店舗が前触れも無く突然閉鎖。
喜ぶ者こそおらず、賑わいの場がなくなり困り果てる人々が多くいるにもかかわらず、現在でも再開の目処は立っていないそうだ。
「すみません、デパートの閉鎖以外にこの町で何か変わった事や面白い話ってありますか?」
住民の不満や悩みの多くはデパートについてが多かったため、ネスは別の住民達をターゲットにすると、そう質問を変え新たな情報について伺った。
「デパート以外かあ。そうだな……この街にはモノリッチ・モノトリ―っていう男がいるんだが、そいつがこの街の政権を握る程に成長したって話かな。まあ坊やに言ってもこんな話分からないだろうけどね」
「このフォーサイドの中央におっきなビルがあるんだよ。そこがモノトリ―ビルって言って、この街のボスになった男モノトリ―が住んでるんだ。こんな話で良かった?」
「ボルヘスの酒場ってバーが少し北西にいけばあるんだけど、そこにモノトリ―さんに財産を奪われた男性が愚痴をこぼしてるみたいだから詳しく聞いてみると良い。ただし子供の君はお酒なんか飲むんじゃないぞ」
意外にもこの町で蠢いている異変は他にもあるようで、次なる情報は強大な権力を手に入れたモノモッチ・モノトリ―について。
元々、不動産業を営んでいたこの男性は性格も静かで大人しく、住民が抱いていたイメージは何処か頼りないおじさんである。
しかし、少し前から突然人が変わったように精神が強くなり、いつの間にか警察すらも手駒にしてしまうまでの権力を身につけ、この街を取り仕切るようになった。
さらに彼の行動の多くは街を発展させる為に大きく貢献しており、その点では住民からも絶大な信頼を寄せられている反面、余りに急な変貌ぶりに疑問を持つ者も決して少なくはないそうだ。
しかし他にも住民達の発言の一部では気になる言葉が発せられており、
「そういえば成金のデブ坊ちゃんが変わる前のモノトリ―と話しているのを目撃した事があるんだよ。今ではモノトリ―のアドバイザーとして活躍してるみたいだぜ」
「実は今のモノトリ―さんは悪魔と契約しているって噂だ。でなければあんなに気の弱かった人が雇用者の財産を奪い取った挙句、周囲の権力者たちを踏み潰して行ける程の度胸を持てるはずがねぇ。きっと、あの金髪のデブが悪魔に違いない」
ここまで大胆な行動を取るモノトリ―は何かに憑りつかれている影響で性格が豹変している。
見慣れぬ金髪の太った子供が彼に取り入ってから、フォーサイド全体を司る何かの歯車が狂い始めたという情報も寄せられたのだった。
(とりあえずはこの二つくらいかな。そろそろ時間も時間だし、先に集合場所のホテルに戻って二人を待とう)
かなり多くの住民から一致する内容の情報を入手したネスはビルに備えられた時計の電子版を見ると、情報収集を切り上げ、三人分予約していたのホテルへと戻っていった。
『ポーラ SIDE』
ネスが中央の区域で情報を集めていた中、ポーラはその周囲を回るようにして、無自覚ながら可愛らしい顔立ちを生かして多くの情報を収集する事に奮闘していた。
「すみません……この街についてお聞きしたい事が」
見知らぬ大人の男性に対して話し慣れていない事もあり、少しもたついた口調だったが、それでも臆することなく様々な人たちに尋ねていっていた。
「へぇ、君はツーソンから来たのかい。じゃあ知ってるだろ、トンズラブラザーズ! 彼らは今この街にあるトポロ劇場っていう大きな劇場で歌っているんだよ」
「もう、毎日が興奮状態なのよ。いえ、いやらしい意味じゃなくてね。トンズラブラザーズの歌を毎日聞いても飽きずにまた聴きに言っちゃうのよ。もう大好きなの」
「トンズラブラザーズが来てからトポロ劇場はさらに発展した事だ。毎日チケットが売り切れで、凄い儲けているって……子供になんて汚い話をしているんだ、私は……」
ネスが耳にしていたデパートの話やモノトリ―の話をする者も中にはいたが、彼女のみが入手した情報はその名がちょっと懐かしいトンズラブラザーズ。
難なくスリークを抜け、願望通りここフォーサイドで新ステージを手に入れた彼らの活躍。
「トンズラブラザーズもいいけど、あの劇場には『ビーナス』って綺麗な女性がいるんだ。オイラ、あの美声を聞くだけでメロメロのフニャフニャにされちゃうよ」
「元々ビーナスって言うべっぴんさんが歌ってて、トポロ劇場っていやあ彼女だったんだが、さらにそこにトンズラブラザーズの組み合わせだ、最高だね。食いもんで言うなら唐揚げとレモンくらいの組み合わせだ」
他にも劇場についての情報ではビーナスという女性がトポロの看板の歌姫としてセクシーなプロモーションのうえに、その美声も会場で聴く者を魅了する程。
女性客はトンズラブラザーズ、男性客はビーナス。
人間本来の二つの性別を魅力させる力を合わせ持つトポロ劇場についてが、ポーラが住民達からよく耳にした情報であった。
(ネス達と情報が一部被りそうだけど、結構時間も経ってしまったし、私ももうすぐホテルに戻ろうかしら)
ネスから預かったお金で購入した手帳で、聴いて書き記した情報を整理しながら、彼女は付近にあったガラス張りの雑貨店をのぞき込み、壁掛けの時計を確認する。
人口が多い分不審者もいる可能性が高いため、これ以降の少女の一人歩きは危険と判断し、
「……結構歩いたし、大丈夫よね」
何でも揃う都会の誘惑に負け、露店のクレープ屋でストロベリーソースのたっぷりかかった甘いクレープを買い、食べながら帰る事にしたのだった。
『ジェフ SIDE』
ジェフは特にこれといった場所で留まらずに、街中をぐるりと巡るように探索していた。
「あ……あの……聞きたい事が……あるんですが……」
彼の巡る場所の理由、人から話しかけられる分には良いが、普段年上の人間に話しかけるのは苦手なジェフ。
特に厳つい風貌をした男性には声をかけ辛く、少し選り好みする形ではあるが、苦手な会話を克服するために話しやすそうな女性や、男性であれば中年や愛想の良さそうな人に現状のフォーサイドについて訪ね回っている。
その為、使命感を持って情報集めはしっかりする反面、めぼしい人物がいなくなれば場所を変え、また話せる人を探すという形態をとっていたのだ。
しかし……この行動は意外にも役立つ結果を生む。
何故なら……、
「探偵ごっこみたいな事してるんだな、君は。いいよ、面白そうだからお兄さんが情報をあげよう。この前モノトリ―さんっていう市長みたいな人がいるんだけど、時々、真夜中に酒場に行くのを見たんだよ。店は閉まってるから裏口からだけどさ。あれは怪しかったよ」
「実はこの街の何処かに『巨大な金属の塊』が隠されているらしくて、今の所俺しかこの情報を知らないみたいだから『おれだけのばしょ』って名付けてるんだ。でも見つけた人物は『特別な力を貰える』らしいから、お前が到達したら【おまえだけのばしょ】になるかもな」
「知っている事か……そうだな、実は恐竜って生きているらしいんだ。スカラビっていう砂漠の国の南に魔境と呼ばれる恐ろしい場所があるんだけど、そこを進んだ奥深くで目撃情報が僅かだけどあったんだ」
「ある兄弟に頼んで埋蔵金を発掘させていたんだけど、余りに時間がかかるから依頼を白紙にしたのさ。もし黄金が出てたら、私ならニッポンに行ってトーキョーの『かつまん』のヒレカツ定食を三回くらい食べちゃうかも」
博物館、路地裏、バスステーションなど道路上だけでなく、屋内の様々な場所を回ったおかげで幾つもの話題を耳にすることが出来たからである。
同じ場所で、まるで募金活動の様に固まって情報を聞き回っていた二人とは大きく違い、あまり知れ渡っていない少ない証言をジェフは入手していった。
ついでに言ってしまえばドコドコ砂漠のモッチ―兄弟を見放してしまった依頼主まで見つけてしまう程の細かい情報まで。
ネスとポーラが同じ証言の数による情報の確かさであるならば、ジェフはうっかり聞き逃してしまうような極僅かな珍しい話題と言ったところだろう。
(まだこんな時間だけど、地図見ると随分と離れた所までやって来たし、もう僕は戻ろうか)
街の至る所を回るのに時間を浪費した事に加え、集合場所のホテルまで距離もある為、聞き回った人の数こそ二人より少ないが、彼も仲間の一人として任務を果たして帰路に着く事にした。
(一応……少し寄り道もしたいし……)
その後、甘い物に向かっていたポーラと同じく、せっかくの大都市に来たのだからと、趣味の機械いじり用に珍しいパーツを取り扱う店に寄って行きはしたが……。
その後に三人ともフォーサイドでの異変についての大切な情報をリーダーの指示通りに集めて合流したのは良かったのだが、
「普通、情報交換って忘れない様にその日にする事だよ」
どうしたことか情報交換を始めたのは、一晩眠り次の日の太陽が高く昇った昼頃だった。
「悪かったよ、ネス。まさかこの街に見た事ないパーツがあるとは思わないじゃないか、君から預かったお金にも限りがあるから悩んでたんだよ」
「ごめんなさい、ネス。ジェフと同じで私も時間がかかったの。気が付いたら夜になってて……」
日を跨いだ訳は、子供らしい強い興味だった。
「僕だって欲しい物が途中でいっぱい売ってたのに、冒険のリーダーが現を抜かしてたら格好悪いと思って、わざと我慢したのに二人ってば……」
ポーラはホテル横のショップにて洋服やアクセサリー探し、ジェフは気になるパーツ探しで両者夜遅くまでかかってしまい、真面目に欲望より異変解決を優先したネスは完全に待ちぼうけ状態だった。
さらに、品を選ぶのに体力をすり減らし、疲れた二人は夕食を済ませるとネスが情報交換の合図をかける前にそそくさと床についてしまい、結果現状に至る訳である。
「まあまあこうして情報も交換できたし、今日は息抜きにあちこち回って遊ぼう、ネス」
「それ、ジェフが遊びたいだけじゃないの?」
中々に手痛いツッコミこそ返していたが、いくら世界を救う旅とはいえ、たまにはガスを抜くための休憩も大切だという事を学んでいるネス。
「はあ、仕方ない。分配したお金は使っていいけど、あまり無駄遣いしない様に。ぼくがパパに怒られるからね。じゃあ、今日は各自自由って事だけど気を付けようね」
「「大賛成!」」
オネットという田舎から始まり、これまで死線を掻い潜りつつ足を運んで辿りついたせっかくの娯楽施設が揃う大都市。
今、楽しまなければ損だという理由から三人は胸躍らせながらホテルを笑顔で飛び出すのだった。
ドコドコ砂漠でのオリジナル展開に加え、情報収集シーンをカットというのも味気なかったので今回はそれぞれの視点に切り替えて書いてみました。
あとフォーサイドは原作の大きさとは違い、広いニューヨークの様な都市をイメージして書いていたので、地形や建物の数がかなり異なっています。
時々メタいのはMOTHER2の原作でも結構あったので、リスペクトしつつ乗っかるように書いているので、もうご愛敬です。
個人的にかなりハイペースで書いたつもりですが、次は少しだけ遅くなるかもしれません(一週間~10日くらい?)。
新たな舞台となってゲームの大切なフラグ自体も複雑かつ多くなってくるので、ここがMOTHER2史上最も大きな展開になるやもしれません。
では次のお話でまたお会いしましょう!
ここまで読んでくださりありがとうございました。