「ポーキー兄ちゃん! 勝手にオイラを置いていなくなるなんて無責任もいいとこだよ! こっちは兄ちゃんを探して彷徨ってたって言うのに、本当にどっちが兄貴か分かんなくなっちゃうよ」
開幕は弟の説教から始まった。
「えっ? 俺そんな事したっけ?」
ピッキーがいなくなった。
ポーキーはそう言ってネスを巻き込んだが、事件の真相は全く違い、付き添いでついて来ていたピッキーの事を忘れて自分だけがそそくさと自宅へと帰った際に弟が行方不明になったと錯覚したポーキーの馬鹿な早とちりが原因だった……よって正確にはポーキーがいなくなったの方が正しいだろう。
「はあ……もう、ポーキーってばしっかりしてよ……」
流石にここまで友人に振り回されたネスも思わずため息を漏らして、そう文句をこぼす。
「うっ……もういい……とっとと帰ろうぜ」
すると流石のポーキーも双方から言葉攻めにあうのが嫌になったのか、珍しくしょんぼりとすると山頂から今まで通って来た道へと進んでいた。
そんな時……ネスは動かなかった。
「うわぁ……隕石って本当だったんだ」
理由は至ってシンプルだった。
ポーキーとピッキーは警察が戻った直後にこっそり眺めていたが、ネスは今回の事件の発端である隕石を見物出来ていなかったため、未だに明るく熱を帯びたそれを見たかったからである。
「おい、早く行こうぜネス。…………うんっ?」
そんな中で彼を急かすポーキーだったが、彼の耳にはある異音が届いた。
ブーン……ブーン……ブーン……。
「おい、ネス! ブーンブーンっていう、カブト虫が飛んでるみたいな音がその隕石から聞こえないか?」
「えっ?」
ポーキーに指摘された直後にネスも同じ異音を感じ取る、その虫が飛行する際に鳴らす羽音の様な音を……するとその瞬間!!
「わしはカブト虫などではない! 10年後の未来からやってきた人物じゃ! 未来はもう惨憺たるありさまじゃ! ギーグという名を持つ銀河宇宙最大の強敵が何もかもを地獄の底にたたきこんでしまったのじゃ!」
バシュンっと何かが飛び出したかと思えば自身は否定しているがカブトムシにそっくりな人語を解するその生物は突然そう大声で言い張り、さらにその生物は言葉を続ける。
「お主がネスじゃな。いいや、ネスに違いない。わしはお主と出会う為に奴らの支配下から逃げ出して、ここまで飛ばされてきたんじゃからな」
すると続けざまに言葉を並べる生物に、
「あ……貴方は一体? 本当に10年後から来たの?」
ネスは困惑しつつも尋ね返した。
対して謎の生物は大きく丸を描くように動いて肯定し、
「わしの名はブンブーン。よいか、ネス。お主にとって信じられない事かもしれんが、これから話す事は全て本当の事じゃ、良いかーー」
10年後から虫が来たという異変ぶりに興味を持ったポーキーとピッキーはネスの元へと歩み寄り、その話に耳を傾ける。
「良いか? ギーグと呼ばれる悪の元凶が銀河中を支配しようと企んでいる! しかし奴の力は強大過ぎてわしたちでは歯が立たなかったのじゃ」
真剣な眼差しで話を聞くネスの姿勢を見てブンブーンは続ける。
「しかしわしのいる未来に不思議な言い伝えが残っている!その予言とは《少年がそこにたどり着くならば、正しきものは光を見つける。時の流れは悪夢の大岩を砕き、光の道ができる》とあり、そのリーダーはネス、お主なのじゃ」
「僕が光の道を作る少年?」
急な話で困惑はしていたが話を解釈すると、ネスは返事をする。
「うむ。そしてそのギーグの悪の計画は、もうすでに地球の一部におよんでいるはず。しかし今すぐに反乱を始めれば間に合うはずじゃ! 大切なのは知恵と勇気、そして仲間。言い伝えではお主を含めた3人の少年と1人の少女がギーグを倒すという。詳しいことはあとで教える。いくぞ! ……いきなりじゃったがわしの話は理解できたかの?」
未来、ギーグという巨悪、銀河、話こそ早大ではあったものの、ネスは一番重要な部分を理解してこう言葉を返した。
「えっとつまり……その『ギーグ』っていう悪い奴を倒せば、みんなを救えるんだね」
ブンブーンはその返事を聞いて、口を動かす。
「偉いのぉ、そうじゃ。奴の持つ超予言装置、要するにこれから何が起こるかを予想する兵器『知恵のリンゴ』がお主とその仲間が自分の計画を邪魔すると出たのじゃ。だから奴はお主たちを消した後、銀河中の人々を苦しめることになってしまう。じゃからわしが来た」
詳しい事が明確には伝わったかは不明だがネスはそう聞くと、
「みんな大事だけど、パパやママ、トレーシーやポチが傷つくのは絶対に嫌だ。だからブンブーンさん、僕は戦うよ、そのギーグって悪い奴に」
ネスは引き下がることなく、勇気を出して決心したのだった。
「ふむ、見込み通りの感心な少年じゃ、ではまずはお主の家に戻ろうか」
感心したブンブーンはそう告げると、小さな体を彼の野球帽の先端へと運び、そこで腰を下ろしていた……。
ーー ーー ーー ーー ーー ーー
「なあ、ネス! ずいぶんやっかいな事に巻き込まれたみたいだな。3人の少年って俺も入っているのかなぁ。いやだなぁ、ドキドキ」
先のブンブーンの話の後。
自身も予言の少年なのではないかと期待を抱きながら、その山から家へと続く帰路を辿る際に、ポーキーは照れくさそうに笑いながら友にそう話していた。
「さあ、もう家は目の前だ。先にポーキー様の家に寄ってくれよな」
そうしてネスの家とミンチ家の両方が視野に入るまでに戻って来た全員は最後の一本道を進んでいった。
「分かった、でもポーキー、これからこんな時間に起こさないでね」
今夜、隣人のワガママに振り回されて、くたびれたネスは足を動かしながら、自宅への距離を詰めていく。
そして……あとは誰もが安心できる自宅へと帰れると思った時だった……。
シュバァーン!
だが突如!
そんな安心仕切っていた全員の眼前に行く先を遮るように一筋の眩い光が降りて来た!
「うわっ! 今度は何だ!?」
その閃光に瞳を閉じ、腕で目を隠すようにして構える。
ポーキー、ピッキーも驚きながら彼と同じく身構えていた。
「まさか……もう後を追ってきたのか!?」
けれども……当人のブンブーンだけはその正体を知っていたのか、ネスの帽子から慌てて離れてその閃光の正面を羽音をあげて飛んでいた。
「ココ二イタカ、愚カナブンブーンヨ」
何者かの声が怯んでいる者達に届くと、やがて光は落ち着き存在の姿が明らかとなる。
「ギーグ様ノ計画ヲ邪魔スルコトニ、オマエハ昔カラ熱心ダッタナ。シカシ、ブンブーン、モウアキラメロ。オマエハ、モウ英雄デハナイ! ココデ死二行ク虫ケラダ。ココデギーグ様ノ邪魔ヲスルオマエヲツブス!」
それは形こそ人に近いとはいえ人間とは明らかに別の雰囲気を漂わせる銀の宇宙人だった。
しっかりとした肩から次第に細身を帯びていき手先は槍のように鋭く、首が無く胴体からニョキと生えた顔の部分に瞳らしきものはなくロボットの様な暗い空洞の奥に眼光が輝くモノアイに似たもの。
「グッ……わしもここで倒される訳にはいかん! ネスとその友人よ。わしが危害が及ばぬようにサポートする。じゃから共に戦ってくれ!」
ブンブーンはその突然の襲撃に焦りの色を見せながら、呆気に取られていた若者たちにそう言葉を放った。
「わ、分かりました!」
ネスは慌ててバットを手に取り、銀色の宇宙人めがけて向かう。
「愚カナ子供ダ! コレデモクラエ、ファイヤー!」
すると敵は体の中央から突然、轟々と燃え盛る火炎を発生させて無謀に突進してくるネスめがけて放つ。
「そうはさせん! サイコシールド!」
ブンブーンはそう言い放つと、ネスだけでなく敵を除いた全員に体を覆い尽くす程のピンク色のバリアを発生させた。
「お前の攻撃は知っておる! 行くんじゃ、ネス!」
バリアのおかげか、ネスの体に炎が直撃したにもかかわらず、一切の傷どころかまるで何かに衝突したという実感すら持つことが無く、そのまま宇宙人の頭めがけてバットを振った。
「グッ!」
見事に攻撃が決まったのか、銀色の頭部から鈍い音が響き、敵は少し怯みながら、直立していた場所から僅かながらよろめいていた。
「よくやったぞ、ネス。最後はわしがとどめを刺そう」
ブンブーンはネスの攻撃に称賛の声をあげると、小さな全身にバチバチと雷を帯びて、相手の胴体へと高速で突っ込んでゆく。
「ギィ! ヨクモヤッテクレタナ……ブンブーン、コノカリハカナラズハラッテモラウカラナァァ!」
その勢いに乗ったブンブーンの体当たりは宇宙人の体を強く吹き飛ばし、苦しみの声をあげて敵はそのまま光を放って消滅した。
「はあはあ……何だったの、あの人は?」
正体がイマイチ掴めぬまま、敗北して消え去った敵の詳細を雷を伴って黄色の光に身を包んだブンブーンへと疑問を投げかける。
そしてブンブーンはネスの方へと振り向くと、謎の襲撃者の正体を口にした。
「奴の名はスターマン。先程の弱さからその息子だった様じゃが、スターマンという名の奴らは、さっき言ったギーグの手下たちじゃ。宇宙の殺し屋という異名を持っていて、さっきの炎攻撃、他にも様々な攻撃で敵を追いつめる恐ろしい奴らなんじゃ」
スターマンと呼ばれる銀色の宇宙人の登場と襲撃。
ブンブーンの話を聞いていた三人は、目の当たりにした事件で彼の言っていた銀河の危険が本当なのだと確信を抱く事となった。
「とにかく詳しい話は後じゃ。ひとまずその小太りした子の家に行って二人を返すんじゃろう? ならば早く行こう」
そう言葉を述べるとブンブーンは体中の雷を静めて、再びネスの帽子の先へと乗り、戦いで消費した体力を回復していた。
「そうだぜ、ネス。早くこのポーキー様を家に連れて行ってくれよ。でないとさっきの宇宙人より怖いウチのオヤジに怒られちまう」
家が隣で数十秒で着くような距離にも関わらず、スターマンを見て腰を抜かしていたはずのポーキーはいつの間にか、彼の前に立って奮闘していた友人を急かしていた。
「許してやってね、ネス。兄ちゃんはいっつも自分勝手だから。さっきの時もビビッて少しおしっこを……」
「おい! ピッキー。それ以上言ったら今回は全部お前のせいだって親父に言いつけてやるからな」
ネスは兄弟の軽い口喧嘩を目撃して、笑みをこぼしながらその兄弟の後を付いて行って、ネスの家の倍はある大きさをした立派なミンチ一家の居住へと入っていった。
ーー ーー ーー ーー ーー ーー
「このバカ息子共! 一体何処をほっつき歩いてたんだい!?」
ドアを開けて中に入った直後、女性のけたたましい大声が家の中に響き渡る。
「早く、お父さんにお仕置きを受けてきなさい!」
ポーキー、ピッキーの実の母親であるラードナ・ミンチ。
家の中だというのに派手な化粧を施し、ポーキーと似た肥満体のヒステリックな女性でネスの母親と真逆のタイプの母親である。
「ラードナ、大丈夫だ。もう私がここにいる。ネス君、うちの馬鹿息子どもが大層な迷惑をかけたようですまなかった。ほら、二人共すぐにケツ叩き100回のお仕置きだ」
スラリとした体形のピッキーを除いたミンチ家の宿命なのか、父親である彼アンブラミも正装のスーツが少し張っているのが見て分かるように、小太りした中年オヤジという言葉が似合う男性だった。
「くそ!」
ケツ叩きと聞いた兄弟は慌てて二階の部屋へと逃げ込むが、アンブラミはすぐさま息子たちの背中を追いかけると、しばらくの間二階で何やら騒がしい物音が聞こえ続けた。
時折許して、もうしないからと聞き慣れた友人の謝罪の声が天井の向こう側からネスの耳に届いていた……。
そしてその数分後、お仕置きを終えたアンブラミがソファで待っていたネスと向い合せで座って話を始める。
「ところでネス君、いいかげんに家を売り払ってくれないかね……あんたのお父さんには、とんでもない金をかしてるのさ。何百億ドルにちょっとかけるくらいのね」
すると突然、とんでもないスケールの借金の話を始めたのだが、ネスはその話に一切動じることなく、ただ文句の一つも言わずに大人しく聞いていた。
しかし動じなかった理由は簡単だった。
彼の言っている事が見栄であり、それを決定づけるように昔一人でネスの家に遊びに来たピッキーが、父親がおかしな冗談で見栄を張っていると彼に告げ口をしていた為である。
しかも今まで取り立てなども全くなく、隣人の息子が来たこの時しかそんな言葉を口にしない所からもネスは冗談だと分かっている。
「まあ、この話は今度でいいだろう。とりあえず君は帰りなさい」
「は、はい……お邪魔しました」
ネスはアンブラミの言う通り、別れの挨拶だけをしてそのまま扉へと向かっていき、騒がしかったミンチ家を後にした。
ーー ーー ーー ーー ーー ーー
「しっかし、エライ家族じゃったのぉ。体罰があるなどあのポーキーという少年、タダの見栄っ張りかと思ったが苦労してるんじゃの」
ミンチ家では
「うん、ここの家は凄い厳しいって皆から言われてるんだ。だからポーキーは人一倍辛い思いをしているから今日も助けたかった」
自宅までの僅かな距離をブンブーンと会話をしながら、友人に対する優しい思いを口にしていた。
「やっぱりお主はわしが見込んだ男じゃな。しかしもう夜も遅い。後の話は家に帰って寝てからにしよう」
「そうだね」
そうして……二人は安心していた。
自宅を前にして、休息がすぐに行える状態であるが故に彼らは、『油断』していたのだ……そう、まだ全てが終わっていないというのに……。
「ゲホゲホ……シネ……コレガワタシノ最後ノ攻撃ダ!」
バシュン!
すると!
そんな二人を突如襲ったのは先程敗れ、全身が酷く傷ついたスターマンの息子の放った文字通り決死のビームだった!
「!? いかん! ネス」
「えっ?」
バシンッ!
そして……そんな最後の悪あがきにいち早く反応したブンブーンにスターマンの息子のビームは直撃した!
ネスを庇い、残酷にもブンブーンの体に命中し大きく抉り取ったのだ…………。
「ザマア……ミロ。モウ、オマエハ……ガクッ」
敵の負傷を確認した後に襲撃者は本当に死亡した。
「えっ……ブン……ブーンさん?」
ビーム攻撃を免れたネスはほんの数秒前まで楽しく会話をしていたはずのブンブーンの変わり果てた姿に、驚きの色を隠せなかった。
「ヒュー……ヒュー……不覚を……とってしもうた」
体を黒こげにし、羽で飛べる力を失った彼の前にネスは崩れる。
「そんな……こんな事って……」
自分の不甲斐なさと後悔の念で涙を流しそうになるネス。
だがブンブーンは彼に意思を託そうとまさに虫の息で言葉を紡ぎ出す。
「ネスよ……よく聞け。ギーグを倒すには……地球とお前の力を一つにして立ち向かう事が必要じゃ……そしてこの地球には、お前のパワーを揺り起こし、強めてくれる『お前だけの場所』と呼ばれる場所が8箇所あるのじゃ……そこをすべて訪れろ。そのひとつの場所はこのオネットにある。『ジャイアントステップ』と呼ばれている場所じゃ……ゲホ」
自身が死ぬまでに、彼が救世主となる為の道しるべを示すべく、全身を貫く激痛に耐えながらもブンブーンはネスへの言葉を続ける。
「わしが死ぬ前にこれを渡しておかねば……『音の石』じゃ……さっき言った8箇所ある『お前だけの場所』の…音をしみこませるグレートなアイテムじゃ……うれしいじゃろう……どうした、泣いているのか、お主は……」
ブンブーンは手のひらサイズの白銀に輝く『音の石』を彼の手に渡すと、悲しみで泣き出しているネスを見てそう言った。
「グスン……グスン……ブンブーンさん……」
短い時間であったが、自分の命を守ってくれたブンブーンに対して少年は涙を堪えられなかったのだ。
「ハハハ……何と情けない姿か……ゲホゲホ……良いか、最後に大事な事を伝えておこう。この先悲しい事はたくさん起こるじゃろう。しかし決して後ろを振り返っては……ならんぞ。お主たちは前だけを向いて真実だけを追い求めるのじゃ。挫折や……悲しみで歩みを止めてしまう事もあるじゃろう。だが絶対に途中で諦めて……来た道を戻ってしまう事だけは止めるの……じゃ。よいな?」
対してネスが即座に何度も頷いた事を確認すると、最後にブンブーンはやり残したことを行った。
ピカァァ!
ブンブーンは体外へ光る霊体の様な物を発生させると、ネスの体に入り込ませて、その儀式を終了させた。
「ブンブーンさん? 今……」
「お主の内に眠るテレパシーの力を……強くしてやった。お主がこれから戦う相手は次第に強くなってゆく。強くなるんじゃ……少年よ。様々な経験を……ゲホゲホ……通して成長するのじゃ! そうすればお主もわしたちの様な強力な技を使うことが出来る!」
そう言葉を向けて急激に意識が薄れゆくブンブーン。
己の責務を見事に全うした彼が生涯の終わりに聞いた言葉。
それは勇気溢れる優しい少年が放った温かいものだった。
「ブンブーンさん……ぼく強くなるよ。強くなってもうこんな悲しい事を味あわないようにすっごく強くなって皆を守ってみせるよ。だから天国で見てて、ぼくは絶対にギーグを倒して世界を救うから!!」
「ふふ……そうか……それは良かったーー」
彼の返事に安心したブンブーンはネスの涙に体を濡らしながら、そのまま静かに息を引き取ったのだった。
彼の亡骸はネス自身の手によって自宅の近くに手厚く弔われた。
ーー ーー ーー ーー ーー ーー
ブンブーンと別れた後、泣いていたネスは大好きな母親に事の顛末を伝えて、心が落ち着くまでの少しの間一緒にいた。
「ブンブーンさんは貴方の事を本当に大切に思っていたのね。だから自分の命を犠牲にしてまで、貴方を守ったの。それが任務だったかもしれないけど、その人の行動はとても素晴らしいものよ」
彼女は何度も何度も息子の頭や肩を擦ってあげながら、慰める。
「ママは貴方を止めないわ。無責任って言われるかもしれないけど、今貴方は人生の中で大きな成長をする手前にいる。その壁を乗り越える為に冒険したいなら向かいなさい」
ネスは自分の母親から応援されている事を強く自覚すると流していた涙を拭い、そのまま自室に戻って眠った。
くたびれただけでなく、その小さな肩に今日とんでもない使命と責任がのしかかった事でドッと疲れが出たのだろう。
隕石が落ちる直前に目が冴えていたのが嘘のようにネスは深い眠りに落ちた。
(ネス、頑張りなさい! でも忘れないでママとパパ、トレーシー、ポチも皆貴方の事が大好きなんだから。絶対に無事で戻ってきてね)
そうしてブンブーンが彼のテレパシーを強くした影響か、離れた別室にいるはずの母親の心の声がネスがその日最後に聞いた愛情に溢れた安心できる言葉だった……。
原作ではあっさりと死んでしまうブンブーンですが、少し感動的な別れをイメージしてオリジナルな展開に変えました。