mother2 ギーグの逆襲   作:黒まめちこ

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今回でついに20話&合計文字数20万文字突破です!
自分でもここまで続くとは思っていませんでしたが、まだ物語は途中もいい所。
出来る限り、年内にはフォーサイド編を完結させたいと考えているのでまだ速度をあげたいと考えています。

少しギャグ要素が強すぎに加え、自分の好きなように書いていたので、今回は癖が強い物語になってしまったと達成感と反省の狭間でモヤモヤしています。
その為、「えっ!? ここはそんな書き方で済ますのかよ」って怒られる方もおられるかもしれません、冒頭から注意書きで申し訳ないです!

ではいつもながら前置きが長くなりましたが本編どうぞ。


俺もアイツも三番目

『大都市フォーサイド』

結局、自由行動としたネス達三人はこの大都市フォーサイドにて三日ほど遊び回った果てにやっとの事で冒険は再開される事になってしまうのだった。

 さらに時間の合間を縫っては娯楽としてフォーサイド内のゲームセンターや海へと隣する区域で開催されているヘリツアーや遊園地等で彼らは日々を堪能していたのである。

 

 

 

 

 

 そうして気持ちがスッキリとした後に、一行が向かった先は人々の多くが話題にあげており情報の目玉でもあった権力者モノトリ―が住まうモノトリ―ビル。

「ハァ―イ、今ではこの街最強にして絶対のモノトリ―ビルへようこそ。坊や達、何か御用?」

 そこは階層の総数なんと48階建ての超高層ビル。

 なぜか権力を握った人間は高い所から他社を見下ろすことが好きなのか、街を統治する程のモノトリ―が住まう居城としてはうってつけの大きさだった。

「モノトリ―さんという方に会いたいんですけど……」

 表の顔と裏の顔両方が住民達の間で噂になっている人物からフォーサイドに潜む悪の存在尋ねようと、ネスは受付の女性にそう切りだした。

 すると……。

 

「はあ? あんたらみたいな小便臭い田舎のガキ共がモノトリ―様に会おうって? 図々しいにも程があるわね」

 

 モノトリーについて尋ねようとした瞬間までニコニコとしていた女性の表情が一変。

 周囲に聞こえない程の声ではあったが、怒り狂う修羅の様な見幕で三人に食いかかって来た。

「チッ、まあクソガキに教育するのも大切な仕事よね。どうなってもいいなら、そこの『P』って金色のロゴが飾ってあるエレベーターに乗りなさい。47階に行ってモノトリ―様の右腕とされる偉大な方に許可を得なさい」

 と言いつつ彼女の中ではこれも仕事の一環だと険しい表情こそ変えなかったが、彼らの向かうべき場所を指さす。

「あ……ありがとうございます」

 いきなりの女性の豹変ぶりにネス達は戸惑いを隠せないながら、女性が指した一般用から僅かに離れた場所に設けられた別のエレベーターへと向かう。

 

「本当に大丈夫なんだろうか? これに乗って……」

 

 VIPのPなのかは不明だが、通路の途中には一般の方々は立ち入り禁止と警告表示の看板まで置かれていた。

(あのガキ共……生きて帰ってこれるかしら、フフフ)

 加えて応対した受付の女性からは不穏なメッセージをテレパシーで感じ取る始末。

「ネス、流石にモンスターがいる訳じゃないんだ。何かあれば話し合おう。僕達は殴り込みに来たんじゃないし」

 一般客は立ち寄るなという警告メッセージを無視して進んだはいいが、Pのエレベーター前で身がすくんでいる彼に、隣に立っていたジェフはそうフォローを入れる。

 

「そう……だよね。僕らは映画に出てくるようなマフィアとかと違うんだ。怯えずに行こう」

 

 精神を落ち着かせ、どこか怖がっていた姿勢から立ち直ると、上に向かう為の電子版に手を触れ、47階で留まっていたエレベーターを1階まで戻す。

「あっ、でも一応戦闘の準備をしといて……」

 だが、到着したエレベーターへと乗りこむ際には念のためと情けなくも用心をするように仲間たちへと告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

『モノトリ―ビル 47階』

 エントランスの1階を除き2階から46階までは企業などの事務所、倉庫等で利用されており、ネス達にはどの道あまり用の無いフロアばかりだった。

 しかし、47フロアは違った。

 単純に企業の事務所などではない事だけではなく、雰囲気が明らかに別格と感じ取れる暗い空気があった。

 その証拠に……。

「動くな! 撃ち殺すぞ! 死にたいのか!」

 ネス、ポーラ、ジェフが乗ったエレベーターがこの階層に到着し、その扉が開いた直後に出迎えたのは黒人。

「落ち着けボブ! 見ろ、ただのガキだ。無駄に銃を乱射して殺そうとするんじゃねぇよ」

 黒いスーツの上からでもムキムキと分かる筋肉に加え180センチは優に越える巨漢が、マシンガンを持って激昂しながら出迎えてくれたのだった。

「…………」

「…………」

「…………」

 これには流石にネス達も唖然とした。

 ネスとジェフは少しでも気を抜けた小便を洩らしてしまいそうな緊張感と恐怖に支配され、ポーラは汗だくで涙目。

 相棒と思われる同じ体格のスーツの男性が、制止しているにもかかわらず、まだ銃身をこちらに向けるボブという男性に心底恐怖を覚えていたのだった。

 

「悪かったな、危うく撃ち殺すところだった。何の用があってここに来たかは知らねぇが、妙な事をしたらガキと言えど、容赦なくハチの巣にして魚の餌にするからな」

 

 そう乱暴な言葉を吐き捨てたボブに変わって、片方の男性が泣きそうな三人の元に駆け寄り、

「まあ、怯えさせちまって悪い。俺達のボスのお友達かな? 年齢も同じくらいだしこのドアを抜けた手前の部屋におられるから会いに来たのなら、ささっと用事を済ませて帰った方が良い。ここの連中は皆気が立っているからな」

 相方に変わってそう謝罪を述べると、まだ緊張の糸が張っているネス達一行の元から去り、現場監視の任に戻った。

 

「い、い、い、行こうか……みんな」

 

 一応予約なしで面会の許可が下りた為、唇を震わせつつネスは背後で怯える二人に告げる。

 

「ぐす、ぐす。えっ、ええ……大丈夫よ……私、泣いてなんかいないもの……ひっく、ひっく!」

 

「僕、生きてるよね? 五体満足で生きてるよね?」

 

 流石に悪い事をしたと反省するボディーガードの黒人二人に見られながら、全員が深呼吸を繰り返し感情を落ち着かせると、彼らが警護するVIPが住まうフロアへと入っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

『モノトリ―ビル 47F 金豚の間』

 部屋の名が表す通り、部屋中が金の装飾があしらわれた家具で覆い尽くされ、クローゼット、ソファー、事務机、柱、カーペットなど人によっては趣味の悪い内装。

 その中で『彼』は両脇をボディーガードで守られながら、ソファーにもたれかかる様にして座っていた。

 

「ウーララ、これはこれは昔の友人の……えっと、豚のケツ君だったかな? そうだ、ネス君だ。何かね? 物乞いにでもやって来たのかい」

 

 その重要人物はドアを潜って来たネスら三人を発見するや否や、非常に厚かましい言葉を口にしてけしかける。

(嘘……)

 ネスは悪口を吐いたその人物に衝撃を受けていた。

 

「やっぱり……君か。ポーキー……」

 

 ネスの前に座っていたモノトリ―の片腕とは、見違えるように派手な服を身に着けた幼馴染のポーキーだった。

 ポーラ救出の際に出会った時のオーバーオールなどとは違い、今ではドレスコードでも容易に通過できるスーツを太った体に身に着けていたのだ。

 

「ウーララ、人の名を貧乏人が安易に口にしてくれるなよ、俺様の品格が落ちてしまうじゃあないか。まあ、今じゃあモノモッチ・モノトリ―のパートナーとして政治や経済に関するアドバイスをしている真っ最中なんだ」

 

(この人がネスの言ってたポーキー……)

(ネスには悪いけど、あまり良いイメージは持てないな)

 

 理由も無く一方的に自分たちを卑下し、ポーキーは延々と自身の凄さを語る姿勢に、初対面であるネスの友人に対し、反感を持っていた。

 しかし、声に出してハッキリと彼に対して言葉を口にしたのは他でもないネス自身だった。

「今度は何を企んでるんだ……ポーキー……またポーラの時みたいに多くの人を巻き込んで何かをするつもりなんだ?」

 

 ネス自身も得た情報で勘付いてはいた。

【金髪のデブ】【成金のデブ坊ちゃん】

 この差別的なキーワードで勘付いてしまう自分も悲しくはなったが、以前のツーソンで発生したポーラの誘拐事件でも似た言葉がポーキーの事を指している。

 その為、もしかするとこのフォーサイドでも彼自身が街を包む闇の件に一枚噛んでいると考えていたのだ。

 

「おいおい、口に気を付けろよ。誰に向かって口を聞いているんだ! 人聞きの悪い事を言ってるんじゃねぇ。俺様は俺様の意思で動いてるんだ。言う必要は皆無だ」

 ネスの言葉に苛立ちを覚えたのかポーキーは声を少し張り上げると、悪態をついた後に足を前に出すようにして座る姿勢を変えると、

 

「みすぼらしいガキ共がモノトリ―の事を嗅ぎまわっているって情報が警察から入ってな。まさかネス、お前の事だとは思わなかったよ。ここは金と権力と強さが支配する大人の世界だ! 小便臭い田舎者のチビ助共が来ていい場所じゃないんだ。消えろ! 今すぐ俺様の視界から消えやがれ! おい、すぐに摘み出せ!」

 

 ネスに反論を口にさせる隙すら与えなかった。

 耳障りな友人の言葉をこれ以上聞きたくも無かったポーキーは身勝手な言葉や罵詈雑言を一向に浴びせると、パチン! と指を鳴らし、長々と自分の部屋に居座る同年代の少年たちを連れ出すように、黒服のボディーガードに命令を下した。

「「イエス! マイ、ボス!」」

 

 流石に暴力でボロ雑巾の様になるまで叩きのめして追い出すのは気が引けたためか、巨漢の二人は少年たちをドアへと外へと押しやるように動き始める。

 

「待って、ポーキー! ぼくの話はまだ…………」

 

 感情に任せてしまい、本当に大切な事を言いそびれたネスは追い出されそうになりつつ、こちらを見向きもしないポーキーに向けてそう放った。

 けれども……彼は諦めの悪い友人に向かってギッと歯を力強く鳴らすと、思わずソファーから重い腰をあげ、

「聞きたくもない! 諦めてオネットへ帰れ! これ以上俺様の邪魔も……お節介もするな!」

 言葉の途中でネス達はボディーガードによって部屋から閉め出され、聞き取れていたかは不明だがポーキーはそう怒るように口にしたのだった。

 

 

 

 

「ポーキー様、これからも護衛はお任せください。我々はいずれもボクシングやプロレスなどのプロでした故……あのクソガキ共が次に来たら、肉塊にしてや――」

 ネス達をポーキーの頭文字のPを意味するVIP専用エレベーターへと連行し、金豚の間に戻って来たボディーガード二人は主人の気分を盛り上げさせるために、そんな物騒なジョークを口にしていた途中だったのだが、

 

「出ていけ……」

 

「はっ?」

 彼のジョークは全くの逆効果。

 

「出ていけって言ったんだ……お前達は俺様の言う事が聞けないのか? 早く出ていくんだ。一人にしてくれ。今はお前達の暑苦しい顔すら見たくないんだ」

 

 先程のネス達に見せていた威勢はいつの間にか消え去り、ポーキーは思いつめたように床のカーペットに視線を落としながら、護衛にそう告げる。

「……了解しました。ではごゆっくり」

 失言を口にしたボディーガードは頭を下げ、申し訳なさそうに謝罪の言葉を発してはいたが、

 

(ちっ……そこまで横柄な態度取る事ねぇだろうが……)

 

主人に見せぬその表情は酷く不機嫌で、もしポーキーが金も権力も無い子供であれば殴り掛かっていただろう。

 だが仕事は仕事。

 高い給料の割に仕事は一日中子供の御守をするだけ。

 これほど美味しい職場にありついた彼らは普段気まぐれな成金の生意気な子供ポーキーに悪意や恨みこそあったが、それを隠しきっていたのだった。

「では何か用がございましたら、なんなりとお呼びください」

 そうして二人の護衛は命令通り部屋の外へと出ていき、エレベーター前で待機している仲間と合流しに動いた。

 

 

「ふう……馬鹿な大人たちだ。俺様に舌打ちの音や向けられている悪意の片鱗を感じ取らないとでも思ったのか……」

 

 

 だが、恐ろしい事にポーキーは悟っていた。

 

「昔から金で雇われて、俺の事を嫌な奴と感じながら強引に付き合おうとする連中の面なんて、見ただけで分かる……。分かっちまうんだよ……くそ……」

 

 生活での金銭面では一切苦労しなかった裕福な家庭で生まれ育ってきたポーキー。

 だが、そのせいか彼は金という概念の強さを知ると同時に、所詮人間は感情より利益で動くという少年とは思えない考えを持ってしまっていたのだ。

 過去に両親が世話役などで高い金で雇われた人間が自分に向ける笑顔、いつしか彼はそれを『愛想笑い』と覚え、所詮自分はイタズラ好きのクソガキで嫌われ者。

 どれだけ馬鹿な事をしても、叱りつける事すら無くただ作られた笑顔を向けられはしても、何も満たされない。

 それどころか、雇われた人間全員が同じ表情をする事が恐ろしく、気味が悪く、そして腹立たしかった。

 

「ネス……俺様……いや、俺はただ……お前に…………」

 

 歯をギリギリ鳴らし、頭をもたげながらポーキーは孤独になった部屋の中で苦しんでいた。

 元々自分の決めたはずの意思と、友人の姿を見た瞬間に生じた罪悪感に似た不快な感情が入り乱れ、彼は苦しみ長考していた。

 唯一、損得関係なく動き、信頼も出来る『相談できたはずの相手』を追い出して、一人で悩んでいたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『モノトリ―ビル 入口前』

 ポーキーのボディーガード達に強引に追い出されたネス達は外に出て話し合っていた。

「ポーキー……」

 最早、自分の近くにいた友人が自分の意思で躊躇う事なく怪しい事に手を出している事に衝撃を受けたネス。

 彼は視線を下に落とし、酷く落ち込んでいた。

 

「私は幼馴染っていえる友達はいないけど……きっとあの人は貴方の所に戻って来るわ……大切な友達ってそんなものだと思うの」

「ポーラの言う通りだよ、ネス。今はくよくよしても何も解決しないさ。多分、もう一度会うのは無理だろうから今は時を待とう」

 

 分かりやすく落ち込むリーダーの姿を見兼ねた二人は、そう優しく声をかけて励まし、いつもの元気なネスに戻るように説得する。

 

「そう……だね。ぼく達は前進しかないんだもんね」

 

 まだ彼らは三つ目の音までしか集めていない。

 今もギーグを倒すための旅は途中だというのに、意思を揺らがせてしまっては元も子もない。

 変わりゆくポーキーの事が心の奥に引っかかり、依然として消えていなかったのは事実だが、彼は暗い表情を消して明るく仲間たちに振舞った。

(きっと、また近いうちに会う気がする……ポーキー。でも君がどれだけ言ったって、ぼくは足を止めないよ)

 視線を上げ、モノトリ―ビルの最上層を見上げながら、彼はそう心に強く誓うのであった。

 

 そうして士気を取り戻した一行はモノトリ―ビルを離れて、次の目的地へと足を動かそうとした。

 その時。

「待ってたぜ。お前さんら、ただもんじゃねぇと思ってたが今じゃ有名なモノトリ―ビルに入っていくなんて、何処かの偉いさんの息子だったのかい?」

 付近に建っていたビルの影からそう発すると、ある男性が三人を待っていたように現れる。

 都会内のオシャレな服装をした住民の中で、一際目立つ様な黒いタンクトップに傷ついたジーンズを着た場違いな人物。

「チュージ・モッチーさん? どうしたんですか」

 それはドコドコ砂漠でネス達と知り合い、彼らに食べ物や寄付を受けたおかげで埋蔵金掘りを今だ諦めずに続けているモッチ―兄弟の弟チュージ。

 歩かずにフォーサイドへやって来たのか、彼が出てきたビルの入口には大きなショベルカーが赤いランプを点滅させながら、一時駐車して放置されていた。

 

「その……色々貰って本当に心苦しいんだが、お前さん達にまた助けてほしい事があってな」

 

 そう口にするとチュージは被っていた安全ヘルメットを脱ぎ、依頼の話を口にしつつ救世主の三人に近づくと言葉を続けた。

 

「実は、穴掘ってたらどえらい化け物が出てきやがって、出来れば腕っぷしが強いって噂のお前さん達に退治をお願いしたんだ……兄貴曰く、もうすぐ宝が出るらしいんだけど俺らじゃあ埒が明かねぇんだ。頼めるかい?」

 

 彼の頼みはモンスター退治について。

 波に乗るように気分よく地中を掘っていると、所々の掘り起こした区域から怪物が現れて、モッチ―兄弟の妨害をするらしい。

 いくら土木工事や筋肉トレーニングなどで肉体は鍛えたとはいえ、見た事の無い敵相手には畏怖してしまい、歯が立たないのだろう。

 

「分かりました。じゃあ早速連れて行ってください」

 

 ネスもそういった事情であれば自分たちの出番だと意気込み、ポーラとジェフも彼の言葉に賛同するように相槌を打っていた。

「よし! ……とは言ったもののショベルカーは一人乗りだ。お巡りさんの厄介にもなる訳にもいかないから、準備を整えてからまた来てくれ。じゃあ頼むぜ!」

 化け物退治の目処が立ったチュージは勇気ある少年たちに敬礼に似た仕草をすると、ネスの元を離れ駐車していたショベルカーに乗ってフォーサイドを去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

『ドコドコ砂漠 埋蔵金発掘現場』

 ネス達が以前に日射病で倒れ、モッチ―兄弟に救出された際にはまだちっぽけな縦穴で発掘現場なのかすら危ぶまれた場所。

 しかし資金、食料、日数が揃った彼らはネス達と別れた後から驚くほどの猛スピードで作業を進めて行った。

 そのおかげでほんの一週間足らずで砂漠に来ていた観光客が騒ぎを聞きつけて周囲をを賑わせ、見違えるまでに現場の発掘は進んでいたのだった。

 そうして穴の周りにたむろする人間達の間をかき分け、ネス達は掘り起こされた空洞の中へ来ていたのである。

 

「よく来てくれた、何から何まですまねぇ。チュージから聞いた通りだ、この洞窟のあちこちにでっけぇ怪物が生息してやがる。あちこちに明かり代わりの松明やカンテラを吊るしてあるから、見えない場所は無いはずだ」

 

 外に広がる高温の砂漠に比べるとひんやりとしている地中の洞窟内部。

 その入り口付近でモッチ―兄弟の兄ショージがネス達を見つけるとすぐに説明を済ませ、

「俺はこの辺りで作業を続けてるからよ。何かあれば言ってくれ、買い揃えた物で回復もしてやるからよ。怪物は任せたぜ」

 そう口にし、付近に置いていたシャベルを猫車の上に乗せて、敵のいない場所を掘り始めるのだった。

 

 

 

 話を済ませ、ショージたちから離れると一行は奥へと続く洞窟を進んでいく。

 地上とは違い、熱線をシャットアウトし涼しく進める事に越したことは無かったのだが、

 

「やっぱりモンスターは出てくるんだよね…………」

 

 兄弟は発掘中にどうやってこの現場に生息していたモンスターを掻い潜ったのかは不明だが、三人の前に立ち塞がるのは綱が邪気を持ち、意思を持って動きだした『ツナマン』や、今となっては弱いうえにどうやって入り込んだか不明の『つっぱりダック』など奇妙なモンスターがいたが、

 

「ネス! アイツの牙には気を付けた方が良い!」

 

 前述の二匹こそ出会っても苦戦すらしなかったが、確かな実力を持って一行の行く手を阻むのは蛇のモンスター『まきへびドライ』

「シャー!」

 本来多くの生物は自然と擬態する他、その身を保護するために深緑や黒色など地味な体色を持つ生物が多いが、まきへびドライは警戒色と考えられる全身が真っ赤な色彩を放っていた。

 

「あの牙は多分、毒を持っている!」

 ネスが牙の攻撃から身をかわしている間にジェフは冷静に敵を『チェック』し、相手の行動や特性を読み取る。

 それにより、ネスに噛みつく際に広げる牙の色と正体を見破る。

 その怪しい紫色に染まった鋭い牙について判明させ、ジェフは前線に立つ仲間に的確なアドバイスをしたのだった。

 

「分かった! じゃあ隙を見て…………」

 ジェフの助けを借りたネスは、避けられては素早く態勢を立て直し、巨大な敵に口を開けて立ち向かうまきへびドライの動きを落ち着いて観察する。

「ここだ!」

 そして時間こそかかったが、何度も繰り返される相手の動きのパターンを読み、噛みつく前に狙いを定めるために一時的に身を止める一瞬。

 バコンッ!

「キシャァ!?」

 そこを見逃さずに力を込めてバットで叩きつけ、強敵まきへびドライを何とか撃退する。

 

「なんとか倒したけど、まだ初めの方だ。先は長そうだね」

 

 そうしてあまり力を消費せずに戦闘を終了させ、バットを片付けるとネスは仲間たちを率いて進んでいった。

 洞窟を歩き始めて、まだ数分も経たぬうちにモンスター達の洗礼を受けたネス達。

 一定の方向には掘られずに、気分に任せるように採掘が進めてられていたのか、まるで迷路のように入り組んだ内部。

 

「敵は多いわ、ややこしいで面倒な作りになっているわね。まるで蟻の巣を歩いているみたい」

 

 ポーラも思わず愚痴が出てしまうまで一本の道から複数の道へと分岐していき、一度迷えば延々と彷徨う程。

「でも、まだ弱い綱のモンスターやアヒルが多くて助かるよ。毒蛇はPKヒーリングで治せるとはいえ噛まれるのは痛いしね」

 穴に出没したという怪物はまだ姿を見てはいなかったが、仲間が文句をこぼしても特に嫌な顔することなくネスは先頭に立ち、時々フォローを入れていく。

 

 そうしてある程度薄暗い地中を進み、三人がたどり着いたのは、今いるフロアを地下一階とするなら、地下二階へと続く縄梯子を降りた先。

 恐らく地下一階を楽に行き来する為に、その下に穴を掘り一階の所々と繋げたフロアなのだろう。

 ほぼ一本道で行き止まりには地下一階に上がる為の別の縄梯子が掛けられている。

 だが、三人は縄梯子から地下二階へと降り立ち、場を僅かに進んだ先で留まっていた。

 

「ネス、やっと見つけたね。アレだよ、きっと」

 

 苦労して探していた存在がネス達の挑戦を待つように、脇道の奥にある広々とした空間で佇んでいたからである。

「フッフッフ……」

 逃げ出さない度胸のある人間かを確かめる為に目を光らせるだけで、自分からは襲い掛かる事なく少年たちが動き出すのを待っていた。

「ああ、どうも口で言っても多分無駄だね。お前らと戦いたいって顔に書いてあるよ」

 ネスら三人も戦闘は免れないと匙を投げ、大人しく笑みを浮かべる敵の元へとトボトボ向かっていった。

 

 洞窟の首領と思われる姿はリリパットステップにて音の番人として現れた『巨大モグラ』を彷彿とさせる、剛毛に包まれた大きなモグラ。

 ただし今回は泥や土、コンクリートなどを被ったのか体毛が汚れてしまい薄暗い灰色の色をしていたのである。

 

「ようこそ我らの住処へお出で下さいました、本日はお日柄も良く……じゃねぇ。ゲフンゲフン」

 

((はあっ!? 言葉上手すぎるだろ!?))

(嘘でしょ!?)

 顔を合わせた途端にどせいさん顔負けの慣れた言語を口にした『あなのぬし』に少年少女は呆気に取られる中で、そいつは一、二度咳払いをする。

 その仕草はどこで学んだのかは不明だが、言い間違いをした人間が咄嗟にごまかすために取る行動に瓜二つであった。

 

「まあ、俺は穴のヌシだ。先に断っておくが、この穴の中には俺と同じ姿のヌシが五人いる。正確に言うならば五匹だが……別に兄弟じゃないからな、勘違いすんなよ」

 

 さらに人間に対して、嫌悪感や恨みなどと言った感情は無いのか他の敵とは違い親切にもぬしについての助言を発する。

 

(見た目の割に良いモグラなのかしら……)

 

 ネス側はいきなり襲い掛かってくるのではと身構えてはいたのだが、試合前は友好的な運動選手のようにそいつは言葉を続けていたのだった。

 

「言うならば、俺達は戦士だ。強い生き物と戦えるのを楽しみでこんなヌシまでするようになったんだ。だから戦う前に教えておいてやる。俺が思うに俺は五匹の中でも三番目に強い。だから油断してかかってくるが良い!」

 

 さらに丁寧に自分の事を詳しく話しきると、相手の合図で戦闘が開始された。

「なんだか戦いづらいけど……そんな事言ってる場合じゃないよね! いくぞっ!」

 お互い人間と動物の世間話をするだけで小一時間くらい過ごせるまでに会話が可能な相手だったせいか、気が乗りこそしなかったが、ネスは先陣を切ってバットであなのぬしに殴り掛った。

 しかし……、

 

「ぐう……中々いい攻撃だが、反動はデカいぜぇ!」

 ネスのバットがあなのぬしの肉体に触れた途端だった。

 

 ピシンッ! 

 

 と、そんな何かをはじき返すような甲高い音が場に響き渡ると同時に、

「うわっ!?」

 信じらない事に勢いよくバットを持って飛びかかったネスの体が元の位置に返される様に弾かれたのだ。

 

「いてて……今のは一体?」

 

 激痛ではないが弾かれた瞬間に痛みを覚えた腹部を抑えながら、今何が起こったのか理解に苦しむネス。

「ヘッヘッヘ、流石に驚いたろう」

 するとバットで殴打されたはずの片腕を蚊にでも刺されたように軽く擦り、相手の攻撃にビクともしない体を見せつけるあなのぬし。

 普通であれば、成長を遂げオフェンス等のステータスが上昇し、攻撃力が上がったネスの物理攻撃はそれなりの威力があるはずだった。

 

「流石に覚悟があるとはいえ小さい子供を殺すのも忍びないぜ。降参するなら許してやるぜ、工夫(こうふ)のオッサンと一緒に出ていきな」

 

 しかし、小さなダメージがあるとはいえそいつは苦しみの声をあげる事もしなかった。

 これまでの厳しい食物連鎖を乗り越えた末に何か目に見えない技を繰り広げたのか、相手の得体のしれぬ気配に『一人』を除いて恐ろしさを感じていた。

 

 そう……熱心に目を細めて、度がきついメガネの奥にある瞳で敵をチェックするジェフを除いて……。

 

(なんだ? 何か透明のガラスみたいなものが……)

 

 攻撃を仕掛けたネスが弾かれて戻って来た。

 敵が何かを纏っている。

(もしかして……アイツは)

 ジェフはこの二つの事実を即座に整理し、結論に至る。

 今まで見た事が無いため、確信こそ持てなかったがジェフは、まだ諦めずにバットを握りしめるネスに向かって至った答えを述べた。

 

「ネス、アイツはきっと攻撃をはじき返すシールドを張っているんだ。僕達が戦う前から。だから殆どのダメージは君自身に返ってきてしまうんだよ」

「なるほど……シールド……か」

 

 ネスは仲間の推測に疑いを持つことが微塵も無かった。

 ジェフの言葉は確かにつじつまが合っている。

 だが困った事にネスもPKシールドを使えるとはいえ、相手が使われた経験は一度も無い。

「どうした? そこのメガネが解明した通りだ。俺が張っている反射のシールドβが怖いだろう。早く帰った方が良いぞぅ」

 そのせいか防御技の打ち破り方を考えた事の無かった彼は正体が分かったとはいえ、バットで攻撃とはいかなくなってしまったのだった。

 

「もう何を固まっているの? 簡単じゃない」

 

 と、少年二人が戸惑い動きを止めていた時。

 ポーラは何かを閃いたのか地面に膝をつく二人を尻目にズカズカとあなのぬしへと危険を顧みる事無く歩み寄っていく。

 

「おや、少年の次は可愛い女の子か。その手に持ったフライパンで殴っても、俺にはダメージを与えられないぜ」

 

 もはや戦況は自身の思うがままと圧倒的な余裕で、あなのぬしは彼女に笑いを含ませつつ、攻撃の意思すら見せずに口にする。

 

「将来、良い人を見つけて結婚して幸せになりたいだろう? だったら俺に攻撃して反射してきた攻撃が顔に当たったら大変だぜ。早くお友達連れて帰んな」

 

 何もしなくても攻撃をしてくれば、勝手に自滅する。

 もう絶対的に俺様の勝ち、大勝利、今日も気分よく土の中に潜り大好物の上手いミミズや昆虫を探して食べられる。

 やはり人間達を追い出すことが出来る自分こそが最強のナンバースリーと他の主たちに自慢できるなど、既に敵の頭の中は勝利の二文字しか刻まれていなかった。

 だが、人間と言えど、動物といえどこの世は……そう良い事ばかりが続くなどあり得る事では無かった……。

 

「二人とも! 相手が物理を反射するなら、こっちは魔法に似た技でやればいいのよ。喰らいなさい! PKフリーズ『γ』!」

「えっ!?」

 

 例えば相手が右方向を完全に完璧に100%ガードして悦に入っているなら、ノーガードでがら空きになった左方向を思いっきり殴りつける様に。

 ポーラはフライパンを地面に置き、殴る蹴るの打撃では無く、精神力が生む不思議な技PSIを使えばいいと簡単な事を考えた。

 

 それだけだった。

 

「嘘だろぉぉぉぉ!? 今までの生き物たちはシールド張っていれば勝てたのにぃぃぃぃ……ガクッ」

 

 あなのぬしは、三段階目の進化を遂げさらに威力が跳ね上がったPKフリーズγが引き起こす凄まじい冷気の暴発に巻き込まれ、叫び声をあげながらそのまま気絶。

 相手も彼らの様な特別な技を使う人間と出会った事ないため油断をしていた事もあり、決着は意外にもあっさりとしたものだった。

「す、凄いや……またPSIが成長したんだね」

 いくら相手側が油断をしていたとはいえ、巨体だったはずのボスのモグラをたった一撃の新技で見事に伸したポーラ。

 戦闘が終わり、もうこの洞窟は彼女一人でもなんとかなるのではと妙な考えが頭によぎりながら、ネスはそう告げる。

 

 

「ええ、でも力の消費が凄いわ。あと撃てても……4発が限度ね、それで空っぽになるわね」

 

 

 今の使用が初めてで、まだ使いこなせていない事もありハイリスクハイリターンな技だという事を二人に説明するのだが……その言葉はある意味『最悪の言葉』だった。

「うん? 後四発だって?」

「って、事は……」

 

 

 

 

 

「よく来たな、俺が本当に強い三番目のぬしだ。さあかかってこい! このシールドが破れるか――」

「PKフリーズγ!」

 

 

 

「俺は二番目のぬしよりは弱いが、四番目のやつより強いんだ。さらにお前らみたいな小僧の攻撃なんか、この三番目の俺様にに相応しいα、Σと数えて下から三番目に覚えるシールドβで反射――」

「PKフリーズγ!」

 

 

 

「俺様が絶対の三番目だ。いいか、社会においても意外と三番目の方が良かったりするんだ。常に重大な責任が伴う社長のようなトップ、そして次点としてこれまた責任が付きまとう副社長の様なナンバー2。そして権力こそ最高ではないが、それでも上の立場にいてナンバー2や1にも候補とされるエリートとして扱われ、なおかつその謙虚な姿勢だけでなく大きな責任も流れ込みにくい三番目こそ素晴らしいのだ。いいか、生物ってのは欲張りすぎるよりは一歩二歩身を引いている方が上手く生きていけるもの――」

「PKフリーズγ!」

 

 

 

「これで最後のPKフリーズγよ!」

「おい!? 俺まだ何も言ってないだろうがぁぁぁ」

 

 

 

 最悪というのは無論、敵側にとってだった。

 ポーラの言葉はあなのぬしたちに対しての退場のカウントダウンそのものだったのだ。

 彼ら(?)に出会う為の道中の戦闘行為はポーラに一切の技や疲労を与えぬようにネスとジェフの二人で遂行。

 途中で新たな雑魚敵モンスター『もっと巨大アリ』という一つ目のパワースポットであるジャイアントステップの番人巨大アリの亜種が出現し、苦戦を強いられたもののこれを何とか二人で見事撃破し、

 まるでVIP待遇を受けたポーラは一撃でボスを葬れるため、その戦闘のみ参加させるという形で三人は次々とぬし達を発掘現場から退けさせていったのだった。

 

 

「俺達って…………何をする為に生まれて来たんだろう」

 そしてこの後に採掘場の強いボスという立場だったはずなのに流れ作業のように片付けられていったモグラたちが反省会&慰労会を退いたドコドコ砂漠から遠く離れた地で開くなど、ネス達の誰も知ることは無かった……。

 

 

 

 

 

 

「いやあ、助かった。なんかあちこちで人間の嘆く声みたいなのが聞こえてた気がするけど、とにかくこれで無事に採掘作業を再開できるわけだ! ガッハハハ」

 数時間と経たぬうちにあっさりと怪物撃退の依頼をこなし、大きな傷を負う事なく入口まで戻って来たネス達。

 その無事な姿にホッとしつつ、ショージは高らかに笑い声をあげて三人に礼を言った。

「じゃあ、ぼく達はこれで失礼します。発掘頑張ってください! 応援しています」

 対してネス達はこれから作業が再開され忙しくなる現場にいつまでも立っているのは邪魔だろうと考え、その場を後にしようとする。

 けれども、ショージは救世主の彼らにこのまま帰らせてもいいのかと思い、

 

「待ちな、今日は流石に疲れただろう。俺らのあの家に泊まっていきな。来ると聞いてから慌ててジュースやお菓子を買ってきたんだ、一日で掘り当てて見せるから。その間にお前らは好きに遊ぶと良い。ビデオゲームとかは無いけどな」

 

 発掘した埋蔵金をすぐにでも見せて渡したいという強い願いと合わさり、彼はそう提案する。

 

「そう……ですね。ポーラも休ませてあげたいですし、ではお言葉に甘えて今日はご厄介になります」

 

 大人の男性がここまで気を回してくれるのを断るのは失礼だという考えに加え、今回の功労賞であるポーラの疲れを癒してあげたいという事で両者は合意した。

「ようし、後は大人に任せな! 俺ら兄妹の底力見せてやるからよ!」

 

 

 

 

 

 小屋の中でネス達は、日が沈み冷え込む中でも明かりを点けて熱心に採掘を続ける兄弟の厚意に甘え、その日は仲間たちと食事を済ませて仲良く団欒する。

 モッチ―兄弟の趣味なのかチェスやトランプなども置いてあり三人はお互いに知恵を絞り、時間を忘れるまで心理戦を楽しんでいた。

 初めは自分たちだけ遊び呆けるのは悪いと気を遣い、外に出ては兄弟の様子を観察してたが、二人は彼らにガキ達は遊ぶのが仕事だ、と作業場から離れさせた。

 そのため、三人は埋蔵金が出るか出ないかはともかくとして、ショージとチュージが楽しそうに協力し合い仕事をする姿を見て、邪魔をしない様に過ごしていたのだ。

 

「それっ! フルハウスだ。これでぼくの勝ちだね」

「甘いよ、ネス。僕はなんと4のファイブカードだ!」

 

 ホテルでは他の客に迷惑がかかるせいであまり騒げなかったが、ここでは周囲に聞こえても人の寄り付かない砂漠なうえに、この場にいる人間は彼らくらい

「嘘!? またジェフの一人勝ち!?」

「フフ、ネスったら自信満々だったのに恥ずかしい」

 

 まるで宴会のように騒ぎ、リアクションの際に大声をあげて楽しんでいたネスはいつの間にか、今朝ポーキーと出会った際に生じたショックはすっかり緩和され、立ち直っていたのだった。

 

 

 そうして楽しく過ごすうちに時間は流れ、眠る深夜の時間になる前。

 

「あら、ネス。少しの間とは言え電話が来なかったから心配してたの。どんなことがあってもママはずっと貴方の事を見守っているわよ」

 

 訳があってジェフを除いたネスとポーラは、ここ最近無沙汰だった家族への電話を小屋の中に取り付けられた黒電話から行っていた。

 

「ありがとう、ママ。ぼくなら大丈夫だから安心して。友達も増えて楽しく旅をしてるんだ」

 

 久しく聞いていなかった母親の元気そうな声にネスは安堵しながら会話を続ける。

「今度戻って来る時は、友達も一緒に連れてきなさい。美味しいハンバーグを作ってあげるから皆で仲良く食べましょう」

 母親側も息子の声を聞いて、まだ幼かったはずの彼が立派に諦める事無く旅を続け、こうして進捗を聞かせてくれることに喜びを覚えて話していた。

「じゃあ、短いけど電話を待っている人がいるからこれで切るね」

 そうして家族の声を聞けたネスは、順番を待っているポーラの事を考え、母親との通話を切ろうとした。

 すると、母親は思い出したように伝え忘れた事を慌てて口にする。

 

「あっ、そうだわ。ネス、これを聞いたら切っても大丈夫よ。パパの事なんだけど、実は長期の休みを取ったって一度家に帰ってきたんだけど、【知り合いの所へ行く。また暫く帰れないかもしれない】って言ってすぐに旅立ったの」

 

(えっ、あのパパが?)

 

 それは未だにあまり会う機会の無い忙しい父親の話だった。

 だが、自分の知っている父親ならば休みを取ったならば必ず家族の元でその全ての時間を過ごす程の家族思いで愛妻家だった。

 

「貴方達と何処かで出会うかもしれないから、もし会った時は用事が済んだら家に帰ってのんびり過ごしましょう、皆待っているわよって伝えて。じゃあ長話はまた今度にして、バイバーイ。ガチャン……ツーツー」

 

 知り合いというのも気になったが、家族よりも優先する事とは何かと、少し違和感のある報告ではあったが、母親は続けて最後まで話すと電話を切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「ポーラか!? 心配してたんだ。ママからは電話や手紙は送られてくるが、まだ帰ってこないからパパ寂しかったんだぞ」

 

 続いてジリジリと電話の番号を回し実家のポーラスター幼稚園にいる父親に電話をかけたのはポーラ。

 落ち着いていた口調だったネスの母親とは違い、声を聞いた途端に涙声で話す彼女の父親。

「ごめんなさい、パパ。ネス達との冒険が楽しくなっちゃって、ついつい連絡が遅れたの。今はフォーサイドの辺りまで来てるのよ」

 ポーラも流石に泣きが入った父親の事を気の毒に思ったのか、安心させるべく今いる地点について語った。

 しかし、父親はその土地の名前を聞くと、

 

「グス……グス……今フォーサイドなのかい? ママが昔の顔馴染とフォーサイドに調査に言ったって報告した手紙が少し前に届いてたよ」

 

 そう娘に向けての報告をする。

「ママもここに来てるの?」

 父親の言葉に彼女は反応を示すと、彼に尋ねる。

 

 ネスの手で救出され誘拐事件が解決したとはいえ、彼女は声だけで、ツーソンに戻った際には母親と会う事は叶わなかった。

 彼女が自宅に戻った時には、既に母親は出かけていた。

 だからこそ、声だけでなく自分の元気な姿を見せたいという気持ちで尋ねたのだ。

 

「いや、多分もうそこにはいないはずだ。今は不定期であっちこっちに行ってるみたいで、詳しい場所も不明だ。ママもママで心配だが、頼むからポーラは私に連絡する時は場所を教えてくれ。頼むぞ」

 

 けれども、良い答えは帰ってこなかった。

「そう……」

 声のトーンを落とし、僅かにしょんぼりとした彼女だったが、またすぐに会えるだろうと前向きに思考を持つと、

「でも、分かったわ。私たちもあちこちに行くけどちゃんと伝えるようにするわ。じゃあね、パパ。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ。私もポーラ達の健闘を祈っているからな。また電話をくれ。ガチャン……ツーツー」

 こうして二人は大切な家族を安心させるために電話を済ませると、先に眼鏡を外し眠りに入っていたジェフを追うようにして、その夜を過ごしたのだった。

 なおジェフがウィンターズにいる父親のアンドーナッツ博士に電話をしない理由は、トラウマを克服して立ち直った事は顔を合わせて話したい、と望んでいた為であった。

 

 

 

 

 

 

 

 次の日。

 徹夜で発掘現場を掘り起こして進んでいた兄弟に起こされ、ネス達三人は日が当たらぬショベルカーの影にいた。

 そして埋蔵金についての重大発表が為される時でもあった。

 だが、結果は残念ながら聞くまでも無かった。

「……悪い」

 兄ショージの開幕の一言に加え、二人の表情が暗く、浮かない顔をしていたからである。

 そしてとどめの一言は次の言葉。

 

「やたらと掘り起こしたが、埋蔵金は見つからなかった」

 

 やはり埋蔵金など夢のまた夢なのだ。

 子供のネス達ですら、その事実くらいは理解できる。

 犬の言う通りに地面を掘れば大判小判が出る花咲か爺さんの物語の様に、簡単に黄金が出る訳が無かった。

「あまり落ち込まないでください。モッチ―さん達は頑張ったんですから、別にぼく達は何も言いませんよ」

 少年たちから物資を恵んでもらった上に抱いた夢すらも砕かれ、情けなくなってしまった男性をネスは温かい言葉で助け舟を出す。

 

 すると、横に立っていたチュージはその両の手に何かの赤い札と布でくるまれた何かの大きな物体を持って、ネス達の前へとトボトボ歩み寄っていく。

 いつもロマンを追い求めて生き生きしていた兄の落ち込む様子を見る事が相当辛かったのか、彼自身も苦い顔をしていたのだった。

 

「本当ごめんな……。俺達がお返しできるのはこの『二つ』しかないんだけど、受け取ってくれ。まずは野次馬に餞別で貰った『トポロ劇場専用トンズラブラザーズのライブチケット』だ。俺達はこういうライブは苦手だし……とても今の気分じゃあ……盛り上がれねぇ」

 

 まずは右手に持っていた札のライブチケット(使用期限は無し)を彼から受け取ると、続けて左手に乗せていた布でくるんだ『何か』を差し出す。

 

「これは一体?」

 

 チュージの手に乗った大人の拳程の大きさをするその正体をネスは尋ねる。

 すると、その質問に対する返事は。

 

 

「こいつは発掘した『デカいダイヤモンド』だ。かなり綺麗な形をしてはいるが、ダイヤモンドなんか発掘してもな……ハア……仕方ないからな……」

 

 

 残念そうに溜め息を洩らしつつ、彼は躊躇することなく包んでいた布を剥いで、中で太陽の光を反射させ眩い光を放つ物体を見せてから手渡す。

 

「…………」

 

 その中身は間違いなく天然のダイヤモンドだった。

 恐らく価値の分かる人間が値段を付けたならば、原石とはいえ整った形をしている為、その大きさを含めて凄まじい金額になる事は間違いなかったはずだったのだが。

「すまねぇな。こんなダイヤモンド一つで……クソ……悪いが、今日は俺とコイツの二人だけにしてくれ。また今度暇なときにでも寄ってくれ、じゃあな」

 予想の斜め上をいく報酬にネス達一同が黙り込んでいる内にショージはそう告げると、弟を連れて小屋の中へと哀愁に満ちた背中を見せながら帰っていったのだった。

 

「……ねぇ、二人共」

 

 ネスは手の上に乗るダイヤモンドが及ぼすその重量感に頼もしさすら覚える中で兄弟が姿を消し、静かになった砂漠の上で思わず呟き、そのまま続ける。

 

「色々言いたいことあるんだけど……ロマンって何?」

「「……さあ?」」

 

 計り知れない価値を誇る可能性が充分にある物体を掘り起こしたにもかかわらず、何処か無気力だった二人の兄弟。

 ダイヤモンドの価値を知らない只の馬鹿だったのか、それとも黄金郷以外を見つける事は意味が無いのか。

 少なくとも兄ショージの語るロマンとは到底常人には理解できないものだったに違いない。

 

 その為彼らの行動と心理の理解が及ばずにやきもきしていたが、本人たちが語らなかった以上、三人が真実に到達することは無かったのである。

 

「とに……かく? フォーサイドに戻ってトンズラブラザーズのライブを見るかい? 今は訳が分からないけど、楽しい物を見れば頭もスッキリすると思うよ……」

「ええ……ジェフの言う通りよ。今はそのダイヤモンドはリュックの中にしまって、何処かで落ち着くべき……」

 

 受け取ったものが凄まじ過ぎる事に加え、それをすんなり手渡すモッチ―達の凄まじさが合わさり、何が何だか分からない状態で三人は大人しくドコドコ砂漠からフォーサイドへと戻るのだった。

 

(家に帰ったら辞書でロマンって単語の意味を調べよう……六回くらい)

 こうして、ネス達は貰った人気絶頂の劇場のチケットですら張り合う事が愚かしい希少な鉱物ダイヤモンドの両方を手に入れて冒険を再開するのだった……。

 

 

 




モグラの倒し方については本当に原作ではフリーズγでほぼ一撃だった事に加え、同じモンスター(あなのぬしのステータスは順番関係なく全員一緒)の戦闘を何度も書くのはあまり気が進まなかったので、こんなギャグ漫画の様になりました。
元々ナンバースリーのあなのぬしはユニークなキャラクターでもあったので、この展開の方があっているのではと考えたのも理由の一つです。

ダイヤモンドにおいても、原作での発掘現場周辺にいたモブキャラたちが『ダイヤが出てもねぇ……しょうがないんだよねぇ……』と敢えて、訳の分からない事を口にする所に糸井重里さんのギャグセンスを感じたので、私は兄弟の価値観にこれを反映させてみました。

色々と挑戦した今回でしたが、次の展開は私的にトラウマのあの『停電』がやってまいります。そしてその先では……あのおぞましい世界への展開が待っています。
重なった飲み会や部活動などで色々遅くなりましたが、次はペースを元にもどすつもりなのでまたよろしくお願いします。

では、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
また次の話でお会いしましょう!
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