なんだか毎回1万文字以上書いていないとどこか満足感が得られないヨシノスケです。
では前置きはこれくらいにして連投であるオリジナル幕間の物語をどうぞ!
『幕間の物語Ⅲ』
彼らも動いていた。
今を生きる若い世代たちの未来を救う為に。
過去に出会った者達との間に出来た因縁を絶つ為に。
「本当なのかい? 今の話は……」
それはまだネス達がフォーサイドへ着いて間もない頃に遡る。
ホテルに宿泊していた彼が急遽、長期の休暇を取り愛する家族に伝言だけを残すと、すぐに同国内のとある場所へとタクシーや電車を経由して向かった。
彼は古い知人に呼び出しを受けたのだ。
「そうだ。全ては一年くらい前から始まっていた」
本当であれば休暇は家族とのんびり暮らしたいと決めていた。
しかしいま世界に起こっている事。
そして自分の前に姿を現した男性。
さらに自身を呼び寄せたこの土地。
「信じられない……全ては終わった筈だ……あの時に……私達が……」
隣に立つ知人である年上の男性に彼はその話を聞いた。
現状もさることながら、只事ではないと即座に察していたのだ。
「この先の洞穴(ほらあな)だ。『奴ら』が隠蔽しない様に隠しておいた」
彼二人が先程まで再会の挨拶を交わしていたのは『マザーズデイ』と呼ばれる町。
昔の町を治めていた町長の【口笛を吹きたくなる町にしよう】というスローガンを礎として、今でも周辺地域が整備されており農業や観光が盛んな町として名を馳せていた。
そして今回呼ばれた家族を持つ男性。
彼の『生まれ育った故郷』でもあった。
そしてこの町から北にある『シュークリーム動物園』。
中でも歌う猿として当時名を馳せていた檻のあった場所が今回の合流地点だった。
流石にその時から十数年経っていったせいか亡くなり、歌う事が無くなった子孫が入っていたものの、物心ついた時から結婚するまでこの辺りに住んでいた彼にとって……歌う猿と会った事のある彼にとってはどこか感慨深い場所であったのだった。
「でも、どうして『彼ら』が再びやって来たんだ……」
旧友と会った直後は顔を合わせる事を懐かしみ、笑っていた男性だったが、その友人から事情を伺い、マザーズデイから離れていく今は違った。
余裕があれば自分が住んでいた跡地に寄りたかった。
母親も父親も自分の結婚を機に、妹である娘と共にこの地から去っている。
変わっていても、やはり生まれた地。
愛情に包まれて育った場所をもう一度確認したい。
(私の家はどうなったんだ……廃屋になったのだろうか……それとも……嫌、今は止めよう)
そんな気持ちを押し殺し、彼は暖かそうなトレンチコートに身を包んだ友人の後を追う。
離れたマザーズデイから東へ十分ほど歩いた先。
そこで二人は自分たちの背を越える大きな口を開けた洞窟へと侵入していった。
入口と同じく内部は縦に広いが、横幅はそれほど無い少しねじれた通路が続く。
通路は太陽の光に辛うじて照らされ、二人は奥を目指して歩いていった。
トレンチコートの男性は自慢のリーゼントに砂埃がかからない様に注意を払いつつ、わざわざ呼びだてた友人の男性を先導して、最奥部へと案内する。
只、洞窟を案内される中で彼は、
(ここって確か……あの岩があった……)
彼はここに見覚えがあった。
小さい頃に大きな目的のある冒険をしていた彼にとって、ここは通り道だった。
家から出発し、マザーズデイへ行き、そしてこの場所へと向かった。
(懐かしいなあ。何も変わっちゃあいない)
人工物である町や建物の雰囲気は変化しても、自然が生み出した天然の洞窟は変化しない。
洞窟の形、足で踏んでいる土の感触、洞窟独特の空気の冷たさ。
リーゼント頭の男性についていく中で周りを見回しながら彼はそれを感じ取っていた。
「おい、着いたぜ。これが言ってた物体だ」
そしてしみじみとしている内にたどり着いた最奥部。
U字をした通路だった為、途中から太陽の光が届きにくくリーゼント頭の男性は服の中から懐中電灯を取出し、空間を照らしてみせた。
すると……。
「!?」
「『これ』は一年前、あの山……そう『ホーリーローリーマウンテン』で俺が見つけたものだ。そこには奴らの姿もあった。二体程度で何とか倒し……後は近くで馬鹿でかいトラックを借りてこいつを運んできた。奴らが自分たちの足跡を消そうとする事を阻止する為と『お前ら』に見せるために、俺はコイツをここに隠した……一応人の手は借りたけどな」
懐中電灯が放つ黄色い光の先にあったのは円盤。
それもディスクやフリスビーの様な人間が扱うものでは無い。
全長三メートルはある巨大な船。
『未確認飛行物体』所謂『UFO』が壁に立てかけられる様に置かれていたのだ。
「もう言わなくても分かるよな……【ニンテン】」
ここに来て初めて名前を口にした。
両者とも立派な大人になり、顔が分かっている以上わざわざ名前で呼び合うのが恥ずかしかったのかは分からないが、リーゼントの男性はここで家庭を、所帯を持つ男性の名を呼んだ。
対して今まで子供からは『パパ』
周囲の住民からは『パパさん』
愛する妻からは『アナタ』と呼ばれ続けたせいか。
本名で呼ばれる事が新鮮だった男性は続けて相手の名前を口にする。
「ああ、分かっているとも……テディざえもん……いや【テディ】」
どこかで色々と話したい事もあったが、まずはテディが確保したUFOに近づき、触れる。
銀色をした冷たい金属で作られた円盤。
可能であればもう二度と見たくない物ではあったが『地球に姿を残している』以上、ニンテンは懐中電灯を持って、機体を照らし続けている彼に向けて言葉を発した。
「また……『アイツ』……が来ているんだね……」
「そうだ、また『あいつら』がこの地球に来やがった」
SF映画やフィクションに出てくるようなUFOという非日常的な物を目の当たりにした二人。
普通の人間であれば、このあり得ない現象に大興奮する。
すぐにメディアにも取り上げられ、大スクープの話題。
『宇宙人襲来か!?』『洞窟内で宇宙人は生活していた!?』『地球へ来た目的とは!?』
などの読み手の気を引くようなキャッチコピーで取り上げられる事があるかもしれない。
しかし……彼ら二人は違った。
「一体、どうして……」
UFOという謎多き筈の物に寒気があった。
『宇宙人』という概念に微かな絶望があった。
「ここで立ち話もなんだ、一旦マザーズデイに戻るぜ」
初めて自分がこれを見つけた時と同じリアクションを取るニンテン。
ショックを受けている彼の姿を見兼ねると、テディは彼の背中を何度か押す。
そうして仲間を衝撃から立ち直らせつつ、町へと戻っていったのだった。
マザーズデイの喫茶店『ポダンク』
住民からコーヒーとサンドイッチが美味との評判があり、町の様子を眺められるテラスでは今日もカップルや夫婦、また知人同士が集まり会話を楽しんでいる。
その他にもウッドデザインの落ち着いた雰囲気漂う店内には、仕事の休憩で一服する男性。
間食で小腹を満たし、注文したコーヒーを待つ女性。
人気(ひとけ)がある中でニンテンとテディはトイレが近い奥側の席にて談話。
「へぇ、君が警察官をやっていたなんて知らなかったよ」
「まあ、そうだろうな。あの時は俺の事情はどうであれ、まだガキだったお前らに戦いを挑むぐらいの不良だったからな。今じゃあブラックブラッド団にいたメンバーと顔を合わせれば、良い話のネタになるくらいだ」
腰を落ち着かせたことで辛気臭い話ばかりも好まない二人。
一旦本題から外れて二人は現在の生活や心境について話していた。
ニンテンは優秀なサラリーマン。
テディは地元の人々から優しさや愛嬌の良さで親しまれている警察官。
お互いが最後にあった時から見違えるように成長した事を確認し合っていたのだった。
「そういえば、テディは歌が上手かったのに『ぼく達』と別れてからはシンガーの道は閉ざしてしまったのかい? 随分と人気あったって噂は聞いていたよ」
「ああ、今でも歌ってた頃の仲間とライブをする事がある。でもよ、俺はお前達の人を救おうと必死になる姿を見てて、その勇気に中てられちまったんだろうな。死んだ母さんと父さんが俺を守ってくれたように、今度は俺が町の皆を守ってやるんだと強い意思を持ってたら、気が付いたらこうなったってわけだ」
弱き人を守り、助ける警察官。
テディはそう語ると、まだ熱いコーヒーに息をかけ冷ましつつ口元へと運ぶ。
「そうだね……テディの両親は……あいつらに」
ズズズとコーヒーをすする彼を前にニンテンは表情を暗くする。
テディとしてはあくまでニンテンにこれまでの経緯や葛藤について詳しく口にしただけ。
しかし、ニンテンはその複雑な事情を知っている。
そして今日呼び出された理由と今の発言は無関係ではない事を。
(しまった……空気を重くしちまったか)
コーヒーを口にしつつ、しんみりとするニンテンの方へ目をやると彼はそう考える。
確かに本人からしてみても、亡くなった両親について笑い話で済まされては少し気分が悪いが、ここまで自分の事で気分を暗くしてしまう友人の姿を見兼ねる。
けれども、延々と昔の話をするわけにもいかない。
(仕方ない……話題を戻すか)
そう決断を下すと、飲み終えたコーヒーカップをテーブルの上に置き、同情してくれる優しいニンテンに向かって言葉を口にした。
「ふう、じゃあ本題に戻るか……ニンテン。ここからは真剣な話だぜ」
話題を過去から現代へと引き戻し、テディとニンテンは共に顔を引き締めて気持ちを切り替えると、東の洞窟にて中断した重要な話を再開する。
「単刀直入に言わせてもらうがお前も分かっている通り、あのUFOは奴ら『スターマン』が乗って来た宇宙船だ。って事は……黒幕は誰か分かるな、ニンテン?」
テディはニンテンに対し、そう質問をする。
答えはニンテン自身も当然分かっている。
多くの人々を巻き込み、当時に犠牲者を出した黒幕の名を。
「あいつしかいない……『ギーグ』だ」
テディはその回答を聞き、静かに頷いた。
そう『彼らの若かった時代』にもギーグが現れていたのだ。
「そうだ。いざ思い出してみれば、恐ろしい奴らだった。俺の両親だけじゃない、お前のひいじいさん、ひいばあさん、そして多くの人間が被害に遭った……奴ら宇宙人のせいでな」
そうテディに言葉を向けられたニンテンの脳裏に蘇るのは古い記憶の底に眠る冒険の日々。
当初は誰が敵かなどは検討すらついていなかった。
初めは一つの異変から。
一部の人間や動物たち、さらには物体が凶暴化したという変化からだった。
そうしてその異変を解決せんと幼かったニンテンは家を飛び出し冒険を開始した。
果てしなく長く、奇妙で、時には辛い別れを強いられた旅の記憶が蘇っていく。
「だが、俺はその場に立っていなかったが……『お前ら』は成し遂げた。ギーグの撃退を、人間を捕まえて地球をどうにかしようとしていたあの悪魔を地球外へ追いやった……」
そしてニンテン率いる一行の諦めない行動により一度ギーグは敗北した。
ダメージを負わせ、再起不能というわけではなかったが戦意を失わせた。
こうして人類は、地球は、『宇宙人の魔の手』から救われたのだ。
「追いやった筈だった……でも戻って来た。動機は逆襲か何かなのかホーリーローリーマウンテンにいた連中の持っていた資料を解析してみると、連中は決戦を繰り広げたあの山に自分たちの親玉が敗北した弱点があると考えて、動いていたらしい。土の情報、地形の情報、そして許せなかったのが情報の為に近辺の住人の拉致した事だ。発見が早くて助けられたが、あのままだったら拷問される予定だったようだ。奴らスターマンは冷酷な殺し屋である以上手段は問わない」
未だ故郷を離れずに地元で職務にあたっているテディ。
コートの中に忍ばせておいたメモ帳をテーブルに置き、詳細を伝える。
そのページにはこの地方の地図の縮小図が記載されており、幾つかの×印が描かれていた。
「UFOはホーリーローリーマウンテンにあって倒したのは同じ場所だった。だが、この×印のある場所で複数の目撃情報があったんだ。変な姿をした不審者が人里離れた土地を探り回っているって。俺はそんな風の噂で流れていた情報を聞いて調査を始めたって訳だ」
警察官である彼も初めからギーグたちの地球侵攻に気が付いていなかった。
住人との世間話の中で住民が行方不明になった。
または見覚えの無い人物が山中を歩いていたなど。
欠片の様な情報しか得ていなかった。
そうした噂を聞き、パトロール中に仇敵の姿を発見したという偶然。
「今、俺は宇宙人捜査課という部門に配属されている。この地方の住民達は少なからずスターマンという人知を超えた存在を目撃している。家族が攫われた、また自分が拉致されたという案件以外にも、何人かの警察官があの培養器の様な中に閉じ込められていたせいで、宇宙人なんて馬鹿馬鹿しい存在を信じざるを得なくなった。最早この地方に住む古株たちは皆記憶に残っているからな。忌々しいあの連中の面をな……だからそんな部門が結成されたって訳だ」
宇宙人捜査課。
まるでSFの映画にでも出てきそうな奇怪な課であるが、テディの口にした通り。
この地方、特に昔のギーグが本拠地として母船を置いていたホーリーローリーマウンテンの周辺は誘拐や被害を被った事案が多く発生し、事件解決後はその存在が周知のものとなった。
通常時は警察としての業務を行うが、『もしも』の時は調査に赴く。
メンバーは宇宙人と戦ったという経験があるテディのみ。
あくまで裏の組織のような扱いの為、彼の地元でしか発足していない。
「……事情は大体飲み込めたよ。ギーグはまた地球へ来た、そして君は宇宙人を倒すために自由に動ける体制を取った。同じ被害者を出さない為に……奴らを叩く為に」
「そうだ」
テディは即答する。
取り乱すことなく、冷静に話を聞いていた仲間にそう答える。
対してニンテンは続いて疑問を口にする。
「……分かった、でも報告をする為に呼んだわけじゃないだろう?」
UFOを見せられた時からうすうす勘付いてはいたが、敢えてニンテンは発した。
言ってしまえば現場を写した写真と電話さえあれば今回の用は事足りる。
それをわざわざ遠方から呼び寄せた理由。
直接テディの口から聞くべく、彼は言葉を口にした。
「勿論だ。電話では誠意が伝わらないからこうして出向いて来てもらった。戦ってくれ、あの時の様に共闘してくれ。俺一人じゃあ出来る事に限界がある。だが面子が揃えば可能な範囲がぐっと広がる。だから頼む。貰える報酬は無いかもしれない。だが確実に救える命はある。それこそこの地球全ての人間が救われるかもしれないんだ」
懸賞金がつけられた指名手配犯を捕まえる訳ではない。
賞金がかかった競技をすると言った事でもない。
目に見える見返りは無いに等しい。
宇宙人という掴み所の無い敵の殲滅。
言い換えるなら、見えもしない幽霊を見つけて祓ったと言い張る事に似ている。
得られるのはそんな満足感だけになるかもしれない。
けれども、ニンテンはテーブルに頭部を置き深々と下げる彼の姿勢に、
「やろう。君には君の守りたいものが、ぼくにはぼくの守りたいものがある」
ハッキリと賛成の意を述べた。
敵の脅威を知っている。
連中が傷つけ、涙を流した人間を……家族を知っている。
だからこそ即座に答えたのだ。
「ありがとよ、お前ならそう言ってくれると信じていたぜ」
こうしてお互いの承諾を終え、二十五年近い時を経た現在で再結成した。
テディとニンテンはまた同じ目的で手を組んだのだった。
両者が愛するこの世界に迫る危機を排除するために。
「よし、一服もしたしここから離れるぞ」
「何処へ向かうんだい?」
自分たちが次に冒険する地。
この地球上の何処なのかをまた聞いていなかったニンテン。
すると会計を済ませていたテディは即座に返答した。
「フォギーランドへ向かう。そこで『二人』が待っているからな」
そう告げると、テディはニンテンを連れて喫茶店を後にした。
大人たちは大人たちで動き始めたのである。
この本編は『MOTHERの初代』を知らないと少し分かりにくいかもしれません。
出来る限り深くは掘り下げずに、概要を簡単に纏めて文章にしたので、知らない方でもある程度を理解していただけたら幸いです。
さて、この場面の物語も一話前と同じくMOTHER2の同人小説を書こうと構造を考えていた時から展開に使おうと練っていたものです。
MOTHER『2』である以上、原作では関わりが殆ど無く、別世界の出来事の様に扱われていた『1』のネタを盛り込んでいきたい。
そういった意思で伏線の回収も兼ねて、書かせていただきました。
さて、次からはサマーズからの本編に戻りますので興味を持たれた方は是非この次も読んでみてください! 今度は時間はかかりますがボリュームたっぷりで仕上げたいと思っていますので、また次のお話でお会いしましょう! では失礼いたします。