もしかしたらまたタイトル変更はする可能性は十分にあります。
まず初めに幾つかの描写ミスやオリジナルについての謝罪だけ失礼します。
1・港町サマーズ→リゾート地サマーズです。ここは勘違いをしていました(前の文章は確認した限りの修正を致しました)
2・この小説では生存していますが、オリジナル(ゲーム)ではトンチキさんはフォーサイドで亡くなっています。読んでて少し違和感を覚えられた方への補足説明です。
では少し前置きが長くなりましたが新章スタートです! どうぞ!
第五章『あちらへこちらへ』
……結論から言えばネス達の冒険は墜落から再開された。
リゾート地のビーチの上で体育座りをして、眼前に広がる果てしない海の景色を眺めている。
体中をススまみれにし、虚ろな目をして座っていた。
「いい天気だね……」
「そうね……気持ちのいい日光だわ」
声に覇気が無く、茫然とするようにネスとポーラはそう言葉を交わしていた。
周囲では水着を着用した男女が砂上を歩いていた他、パラソルを開いて日に当たらない様にくつろぎ、シートの上で横たわっている人間もいる。
会場では子供から大人まで性別問わずに泳ぎ、ビニールのボールでバレーをしている団体、さらにはサーフボードに乗っている男性が意気揚々にバランスを取っていた。
そんな楽しそうにいる人間が多くいる中で肝心のネス達はと言うと。
「ダメだ、レーダーも駆動計もコントローラーも全部壊れてる……」
ビーチで座り込みボーっとする二人を置いて、乗って来た飛行移動装置スカイウォーカーの点検を黙々と進めていたジェフ。
元々球体だった乗り物とは思えないまでにグチャグチャ。
前回の時は内部の機器自体はまだ生きており、球体の原形こそ無く、あちこちが痛々しくへこんではいたものの辛うじて乗り物らしき存在と分かった。
しかし、今回はただのスクラップ。
廃車を圧力で潰し、四角い塊に変えるように。
全ての機能がイカれ、もう何の利用価値も見いだせない物体に成り果てていたのだ。
「仕方ない……大人の人に言って引き取ってもらうか」
墜落の衝撃で立脚、アンテナも飛んだ無惨なスカイウォーカー。
因みに墜落の原因は……燃料切れだった。
サマーズへ向かう事ばかりに気を巡らせていたジェフは、ウィンターズからスリークへの往復分しか満足に詰まれていなかった事を知らずに、カスカスの燃料で飛んでいた。
勿論、燃料無しで飛べる程機械は頑張り屋でもなければガッツがある訳でもない。
限界を超えて動く人間とは違い、マシンはそういった情熱などない。
動力切れればそこでお終い。
目的地の景色が見え始め、着陸地点を探そうとしていた途端に機体が停止。
燃料が切れたという警告メッセージ以外の電力は全て落ちた。
後は慣性に任せるまま、機体が勢いを付けて地面へと落ちていき、こちらの姿を見つけたビーチの客たちが次々と慌てふためく中で墜落。
何度もバウンドし、何度も回転していく中で機体は全壊したのだった。
「モウニドト、ノリモノニハ、ノラナイカラ……」
ネスは表情を崩すことなく、そう感情を含まない棒読みで後ろのジェフに向けた。
快適な空のツアーだったはずが生死を彷徨うあの世巡りツアーに早変わり。
まさかのこの齢にして乗り物の墜落という恐怖体験を味合う羽目になるとは。
墜落してから半時間ほど経った今でも無傷だった周囲の客から痛い目線を向けられ待たされた挙句に、ジェフから告げられたのは修理が不可能という報せだった。
それでもアクシデントはあったが、何とか生きてサマーズまで来たのは事実。
トラウマによるショックこそありはしたものの、気持ちを切り替えネス達は一旦ビーチを離れ、大人がくつろぐリゾート地として名高いこの地域を巡っていった。
少し贅沢ではあるが、強敵を多く倒し無駄遣いをせずに溜め込んでいた父親の仕送りにより、高級ホテルの『ホテル・ド・サマーズ』の一般客室を借り、そこを一時的な拠点に決めた。
そしてホテルから出た三人。
廃車等の処理しにくい廃棄物を引き取る専門業者に『スカイウォーカーだった何か』を料金共に引き渡し、その様子を目の当たりにしつつ情報をビーチで集めていた。
前まで冒険していた大都会フォーサイドとは違い、広いのは砂浜と海。
後はホテルや食料店、ドラッグストア等が脇に設けられた道路位である。
その為全体的に規模が小さい街並みであるサマーズは個々に別れて探り回る程でも無かった。
「君達、いきなり落ちてきてビックリしたよ……ここは大人の遊び場なんだから、あんまり我々大人に迷惑をかけるんじゃないぞ」
「私見たのよ、双眼鏡で。海のずーっとずーっと向こう側に緑色の龍みたいな化け物が泳いでいたのを。あれは怖かったわね、えっと名前は確かクラーケンだったかしら?」
「知っている事かい? そうだなぁ……そうだ、人気(ひとけ)のある所には必ず変な奴が紛れ込んでいる事ってあるだろ? このサマーズにもさおかしな奴らが揃っている建物があるらしくて、その中じゃあ変な形の石を眺めて延々と語り合うってつまらない事をしてるらしい」
ビーチではネス達が突然の墜落で驚かせた人間が多くいた為か、あまり情報収集に協力してくれる大人たちがいなかったせいか、サマーズ名物のスープの肉にも利用されている怪獣『クラーケン』の話、後は『ストイッククラブ』というへんてこな石を見て互いに語り合う奇妙な集団についての情報を入手していた。
そしてビーチでの情報集めを行い、ホテルに戻った一行。
時刻は昼を越え、ホテルの隣にあるレストランにて昼食を食べていた。
それぞれが注文した珍しい食材をあしらった美味な料理に舌鼓を打ちながら、これからの予定について話し合う事にしたのだった。
「どうする? まだ情報を集め始めただけで全然この町を散策していないよ」
初めに口を開いたのは、ジェフ。
海鮮の食材がふんだんに使われたサマーズ風パスタを飲み込んだ後にそう持ちかける。
対して、ネスは含んでいた付け合わせのクロワッサンを水で流し込み返答した。
「そうだね。ギーグはぼく達をサマーズへ行かせない様に仕向けていた。きっとここに奴らへ近づくヒントが隠されているに違いないよ。だから食べたら町を回ろう」
ギーグに操られていた人物モノトリ―。
彼はネス達をサマーズへ向かう事を妨害する命を受けていた。
ネス達の奮闘により辛うじて、呪縛から解かれた彼はネス達にそれを話した。
ギーグが何を恐れているかは予測できないが、畏怖する原因がこの町にあるはずだと確信を持っているネスは強い意思を持ってそう告げる。
「ちょっと待って」
話が進んでいく中で、二人の話を席の間で聞いていたポーラが口を挟んだ。
自分の意見を待たずして、勝手に話が進行していくのに少し戸惑ったのか、彼女は汚れた口元をナプキンで上品に拭うと、溜めていた言葉を口にする。
「私の意見も聞いてもらってもいい?」
別に拒む理由も無かった。
どうぞと言わんばかりにネスとジェフはコクリと静かに頷くと、彼女の意見を待つ。
すると、ポーラらしからぬ変わった意見を口にしたのだ。
「せっかく、リゾート地に来たのよ? ちょっとでいいから海で遊んでいきましょう!」
「「へっ!?」」
もし今が古典的なギャグの世界ならば着席しているテーブルから転げ落ちていただろう。
何か考えがあるのかと思いきや、海で遊びたいとの提案。
思わず肩の力が抜け、男子二人が間の抜けた声をあげるのも無理ないだろう。
「もう……ポーラってば真面目に考えなよ。僕もネスも真面目に話してるんだから」
ジェフは彼女の突拍子もない意見に否定の意を示しつつ、相方のネスの方を見る。
すると姿勢を正した彼は彼女の意見に答える。
「流石にダメだよ、ポーラ……」
彼もジェフ同様に否定した。
まさかとは思っていたが、彼のしっかりとした返答にジェフは安堵の表情を浮かべる。
当然である。
敵は本格的に動き出している。
イカの様な化け物であるデパートの怪人こと『ドムーク・リーダー』
強力な閃光攻撃や幻惑で人を惑わす幻影マシーン『マニマニの悪魔』
その二体がイーグルランドで有名な大都市フォーサイドに現れたのだ。
自分たちは急がねばならない。
(ネス……ポーラには悪いけど、それでいいんだ。僕達は進むしかないんだ)
仲間の申し入れを断るネスの冷静な判断に対して、ジェフはそう考えた。
だが……人間というものは難しい。
「だって水着なんて持ってきてないから……」
(んっ!?)
ジェフは思わず耳を疑った。
水着を持ってきていないから?
それがネスの発したポーラの意見への反論。
(えっ!? ちょっと待って、それってつまり……)
ゲーム機が無ければテレビゲームが出来ない。
釣り具が無ければ、釣りが出来ない。
9人以上揃わなければ野球が出来ないのと同様。
そう、彼の物言いは……言ってしまえば。
「それなら安心して、水着ならホテルで貸し出してるらしいわ、私達子供用もね」
「よし、決まりだ。次の行き先カリヨンビーチ!」
(やっぱり……そうなるよねぇ)
あれば、やる。
揃えばレッツプレイ。
舞台と道具が揃って何を迷う事があろうか。
これぞまさに即決。
ポーラの助言の数秒後、流れるようにネスは承諾したのだ。
「ちょっと、ネス!? 僕達には遊んでいる時間は無いんだよ!? 流石に今の君だってそれは分かっているだろう。一体どうしたんだ、食べていたスープに何か入ってたのかい?」
いつもであれば目的の為であれば冷静に冒険の指揮を取っていたネス。
フォーサイドの時であっても、互いに得た情報の交換が遅れた際に自分とポーラに簡単に済ませてはいたが彼が説教をしていたのを鮮明に覚えている。
そんな彼が、今じゃあ目をキラキラさせて今すぐに海で遊びたいと顔に書いてあるかの如く、レストランの窓から見える海岸に注目していた。
「いや、これはね……ジェフ……違うんだよ」
流石に冷静さを欠いていたのを自覚したのか、あたふたと手を振りながら、眼鏡の奥から分かる厳しい目付きで自分を凝視するジェフにネスは弁明を述べる。
これまでしてきた自分の悪行が親や知人にばれた時に発せられる言い訳に似た前置きを置くと、ネスはふぅと一息ついてポーラとジェフに発した。
「宇宙人たちの跡を追わないといけないのも分かってるよ、でも僕は今まで海っていうのを絵本や地図とかでしか見た事が無かったんだ。だから遊びたいんだ」
オネットにもクチバシ岬という一応海に隣している場所はあったものの、海流が荒くお世辞にも子供がワイワイ楽しんで遊べるリッチな浜辺とは言い難く。
さらに岬というだけあり崖ともいえる高所からの眺めのみであり、泳いだ疲れを癒せる砂浜らしき場所も無かったため、彼にとっては自由に遊べる海というのは新鮮そのもの。
子供の好奇心くすぐる海という領域には流石のネスも勝てなかった。
よってこれ程までに魅かれる理由に為りえたのだった。
「…………」
対して意見を聞いたジェフ。
正直、彼自身も海で遊ぶという意見に肯定的だった。
観光目的でこの地に降り立ったのならば迷わずにネスと共にホテルで海水パンツをレンタルして、故郷のウィンターズとは対照的な温かい地で羽を伸ばしたかった。
「……仕方ない。海で遊ぼう、でも二人共分かってるよね……」
「勿論だよ、今日と明日だけさ……そんなに長い期間遊んでいる暇はないって事でしょ」
「私もネスと同意見よ。ほんの息抜きで済ませるから安心して」
結局はフォーサイドの時と瓜二つ。
賛同を決めかねていたのがネスかジェフだったかの違い。
こうして海で遊ぶのが決定した三人。
思っていた以上に値が張っていた料理の代金を払い、隣のホテルへと直行すると係員に水着の貸し出しについての話を持ち掛けて、ものの数分後には飛び出してった。
ネスとジェフは波の模様が入った海水パンツ。
ポーラは女の子らしいピンク色のキャミソールの様な体の多くを隠せる可愛い水着を着用。
そして人がいなくなり始める夕暮れ時まで同じくレンタルのビニールボールを用いたり、海で泳いだりと冒険から意識を外して堪能していったのだった。
次の日も朝起きては食事を済ませると男女別で着替えを行い、外で遊ぶ。
バカンス気分で三人は見慣れぬリゾート地で大いに楽しんでいった……。
『スカラビ文化博物館』
そこは、サマーズよりはるか南にあるスカラビと呼ばれる砂漠に覆われた国から出土した古代の遺産である由緒ある歴史的な品々が飾られた大きな建物。
神殿をモチーフとして建造されている為、館内では細かい彫刻が施されたパルテノン神殿を彷彿とさせる幾つもの石造りの太い柱によって建物全体を支えている。
バカンスのみを目的としている大人たちはあまり寄り着く事は無く、どちらかといえば歴史についてを研究する学者、または物好きが見学にやってくる。
そうした中で海での遊びを切り上げたネス達も新たな情報を集めるべく、子供でも払える入場料を払って館内へと入り込んでいたのだった。
ただし……。
(さっきの子供たち、真っ黒だったわね……『どれだけ遊んだら』ああなるのかしら?)
それは入り口の受付嬢ですら驚くほど。
白い肌だったはずの三人の姿は今や丸焦げ。
それこそ黒人と間違われても文句は言えないまでに肌が焼けていたのだった。
(肌がピリピリする……)
結局、二日とは言わずに【一週間】も飽きもせずに海で遊んでいた。
そのせいで三者とも水着で隠れていた肌の部分はやけに白く、日光にさらされていた顔や腕はものの見事に、パンダもビックリなくらいに白黒がはっきり分かれていたのだった。
最早全員が時間を忘れて楽しんでいた以上、ホテルで二時間に及ぶ反省会は開いたが、今更誰も文句を言えるほどの説得力がある訳も無く互いに叱り合う事はしなかった。
「うーん……良い情報が無いね」
そんな経緯を経た中で気持ちの切り替えを行い、真面目に情報集めに勤しんでいたネス達。
一階にある休憩用のベンチで仲良く三人並んで座り、互いの情報交換を行う。
「僕も同じさ。ここにいる学者の人達が言う内容はみんなここにある遺品の事ばかりだよ。僕はあまり歴史的な遺品には興味ないし、トタンカーメンの弁当箱やラムレーズンのおまるについて延々と語られても僕は理解できないよ」
博物館内に飾られているのは、かつてスカラビの地を支配したと考えられている皇帝トタンカーメンが眠っていたとされる棺や、学を治める際に利用した筆箱。
または学者達の間で議論が大きく分かれているが、子供の時に賢者から教育を受けていた際にこっそり食べていた、所謂『早弁』を行っていた際に使われた物と囁かれている弁当箱。
いずれも黄金に包まれた品々であり、王族らしい生活の痕跡として飾られている。
だが、ネス達にとってはトタンカーメンまたはその親の代であるラムレーズン一家のミイラが眠っていた棺、ましてや乳幼児の際に使われたと仮説が立てられている『おまる』など正直どうでも良かった。
歴史好きの多くの学者たちが集う中でネス側が欲しい情報は一つ。
ギーグという存在の片鱗だけだった。
「一応、私聞いたわよ。役立つ情報を係員の人から」
「「本当かい!? ポーラ」」
ネスとジェフの二人とは別行動を取り、少し離れた場所で情報を集めていたポーラ。
過去の遺品に魅かれ学者ばかり集まっているこの展示室では無く、彼女はスカラベにあるピラミッドのジオラマや有名な学者の論文が展示されている別室にて情報を集めていた。
そして彼女は二人が手に入れなかった情報を口にする。
「ポーキーって人か確定は出来ないけど、改装中の二階にあるヒエログリフ展示室。そこにやたらと金回りの良さそうなデブ……ごめんなさい、太った子供が来てたって話を聞いたの」
「ポーキーがここに?」
その報告にネスは奇妙な疑問を持った。
サマーズに来ていた事は承知している。
自分達が乗ろうとしていたヘリコプターを横取りし、サマーズへ先回りして妨害工作を講じる気なのではと若干の予想もネスはしていた。
しかし、何故なんだろうか。
歴史という分野を一番くだらないと馬鹿にしそうなポーキーがこの博物館を訪れている。
ましてヒエログリフ、言うなれば古代の人間が書き残した石碑。
そんなものに興味を持つなどネスには考え難かった。
「どうしてポーキーは……なんで?」
そんな疑問が疑問を呼ぶ中で、確認に赴きかねないネスの姿を見たポーラ。
もう一つ大切な情報を伝え忘れていたのか、よし行こうとネスが動き出す前に口を開く。
「後、これも係員さんに聞いたんだけど、改装中でも『その人』が入れたのは宝石を賄賂として渡していたらしいわ。だから私達は入るのは無理よ。宝石なんて持ってないもの」
予め釘を刺すように、ポーラは二人に向けてそう発した。
現在、改装中にて関係者以外立ち入り禁止である二階部分。
そこに潜入できればポーキーがやって来たヒントを得ることが出来る。
そう思っていたのだが、あえなく潰えてしまった。
「……取りあえず、まだ行っていないこの町の東へ向かおう。まだまだ情報集めは始まったばかりだしね、何かヒエログリフに打って変わる情報があるかもしれない」
そうと分かれば行動は早い。
今は入れないと断念し、改装が済んだら改めて見学という事でネス達は一階展示室のベンチから腰をあげると、写真やメモを取っている熱心な学者たちを尻目にエントランスを抜けて博物館から退いていったのだった。
今はこれ以上得るものは無いとスカラビ文化博物館から出ていったネス達。
途中ショップにて色々とアイテムを買い込む為に西側のホテル側へと戻りはしたが、サマーズの東を目指して歩き進んでいった。
この地を訪れている人間の多くはネス達が遊んだ広々としたビーチが目的。
そのせいもあってか、ビーチから離れていくネス達が向かう東側は次第に歩く人々の姿が少なくなっていき、三人はその先にある別の町『トト』へと向かったのである。
「おや、君達見ない顔だね。ここからはサマーズじゃなくてトトって言う町だよ」
西に広がるはリゾート地サマーズで、東にあるのは港町トト。
互いに接する両隣にありながらも別の地として扱われている原因は不明。
バカンスを楽しむために観光客が多く訪れる地サマーズ。
逆に新鮮な魚を仕入れる為の漁船、またはサマーズへ客を送る為の船の停留所。
潮風に強いコーティングが為された建物ばかりが立ち並ぶ特徴を持った小さな町。
それがトトである。
「人が随分と少なくなったね」
ジェフは車道から外れるように立ち並ぶトトの町を回りながらそう発した。
高級ホテル、人気のレストラン、ダイヤの装飾をも扱う高級なアイテムショップ。
どれにおいてもそのゴージャスさやリッチさに魅了され憧れを持ち、さらには燦々と照り付ける心地よい太陽の元で遊べる砂浜、海も常備されている最高の場所に魅かれる。
対照的にそういった娯楽が殆ど無いトトとは最早比較にすらならない。
まだ子供のネス一行には理解しがたい事情ではあったが、それでもサマーズに比べると町中を歩く人間の数はぐっと減っていたのだった。
「うん? 坊主たち、サマーズはあっちだぜ。道に迷ったのなら賑やかな方に向かうと良い」
さらにうろつく人間の殆どはこの町の住人ばかりで、明らか地元民ではない彼らを発見した男性は歩いていて迷い込んだのではないかと心配される程。
東西でこれほど人気がハッキリと分かれる土地も珍しい程トトには観光客が少なかった。
付け加えるなら華やかさで圧倒的に勝っているサマーズと比較しても、こちらには住民達同士で野菜や肉、果物等の取引を行う露店が集まる場所ぐらいしかなく、住宅街に立ち寄る者は彼ら三人くらいにしか見かけられなかった。
「おう、どうした。おめぇらも新鮮な魚を食いてぇのか? ハッハッハ」
そうしたトトにて住宅が立ち並ぶ地区では情報収集が捗らないと踏んだネス達は漁船で海を駆ける男達が集まり、今も魚の解体や調理を行い、観光客ではないが魚を取り扱う業者たちで賑わっている港の地区にて聞き回る事にした。
「どうだい、ガキンチョ達! 美味しい魚を捌いたんだが、味見していくか?」
「ここじゃあ海は泳げないけど、うめぇ魚は食えるぜ。なに? あまり興味ないって? 最近の子供はハッキリと物を言いやがるな……おじさんショック受けちまうぜ」
「変わった事ねぇ……そうだな、最近こちら側、まあ俺らが漁獲……魚を取る事が許されている範囲に魚たちが多く来るようになったんだよ。何でもクラーケンがその先の海流で現れたらしくて、魚が怯えて逃げて来たらしいんだ。それはそうと、ちょっと魚のスープを作りすぎたんだが、食っていくかい?」
荒波にもまれ時には厳しい環境で漁業を行い苦労して過ごしているせいか、港をウロウロとするネス達に男性たちは気前よく、捕れたての魚料理を振舞ってあげていた。
刺身、切り身を入れたスープ、串焼きなど色々な物を馳走になりつつ、漁師たちと会話を挟み様々な話を聞いていった。
「もう……お腹いっぱいだ」
「美味しいけど……食べ過ぎは体に良くないわね」
振舞われた料理を快く食させてもらった三人。
これと言って冒険に役立ちそうな情報は得ることが出来なかったが、膨れた胃袋の中を動かそうと腹ごなし程度に大人たちが集まっていない場所へと移動していった。
すると……。
「はあ、どうしたもんかねぇ」
他の漁船や輸送船から孤立する様に港の端で白い帆をしたヨットが浮かんでおり、その上で男性が荷である木箱の上で独り言を呟いていた。
波打つ海の方角へ視野を向けているセーラー服を着用した船乗りらしき男性。
力の入っていないため息を吐きつつ、望遠鏡の如く遠くを眺めている。
「おじさん、どうかしたんですか?」
そんな一人で静かに佇む男性にネスら三人が見つけて近寄り、疑問を投げかける。
対して男性は丁度愚痴を聞いてもらえる人を探していたのか、
「……お前らでも良いか……実は俺はこのヨットでスカラビまで人を送る仕事を二十年程やっている男だ。あの辺は海が荒れる事が多いから俺みたいな熟練者しか向かえないのさ」
この際子供でも話を聞いてくれるだけでも有難いと感じたのか、くたびれている男性はそう自己紹介を交えて話し始めた。
博物館でもあったようにピラミッドがあるとされる国スカラビ。
ピラミッドを見せるな。
それはギーグがモノトリーに命じた指令の一つ。
サマーズと同時に敵側が妨害したかった重要事項。
(この人に頼めば、ピラミッドに行けるかも……)
ポーキーがスカラビ博物館で秘密裏に行っていた事も気になるが、ピラミッドへ向かえる機会に偶然巡り合えた。
話を聞き終えた後にスカラビへ連れて行ってもらおうと考えていたネスだったが、
「でも今は休業中なのさ。とてもじゃねぇが船を出している余裕なんて無いんだよ。多くのキャンセルを出しちまってお客さんには大目玉を食らったが、どうしようもねぇのさ」
その可能性はあっさりと潰える。
確かに、話している男性の今の姿は枯れ木の様に頼りない。
ちょっとでも押せば崩れてしまうかの如く、力強い船乗りのキャラクターであるポパイとは真逆とも言える情けない風貌。
「何があったんですか?」
次に質問を投げかけたのはジェフ。
話しかけた以上、最後まで彼の話を聞き届けるべきとその経緯を伺う。
「…………こいつを見てくれ」
すると項垂れていた男性は首からかけていたロケットの蓋を開くと三人に中を見せた。
中には金髪のエプロン姿をした女性の写真が入っていた。
男性と仲良く肩を組み、二人共明るい笑顔でヨットの上に乗っている。
すると少年たちがその女性について口にする前に男性は言葉を続けた。
「俺の女房だ。べっぴんだろう……。悩みってのはコイツの事でね。女房はお菓子作りが大好きな奴なのさ、俺も甘い物が好きだから有難い趣味の持ち主でね。ここの連中の間で不思議な味がする事でちょっとした好評を得ていた『マジックケーキ』を作っては販売してたんだ」
自分の大好きな女性についてそう熱く語り始める男性。
しかし、そこまで口にすると表情をさらに暗くし今にも泣きだしそうな顔へと変化する。
船を出さない訳も含めて理由は即座に明かされた。
「でもよ……今じゃああのストイッククラブとかいう変な店に入り浸っててよう。マジックケーキを作らなくなったどころか……話が合わなくなっちまって、俺はもう困り果てちまっているんだ。クラーケンなんかより、今の嫁との関係の方が怖いんだよう」
まるでタチが悪いドロドロとした昼のドラマでも見ているように、今の離れつつある妻とのの関係に男性は苦しんでいたのだった。
それが原因で精神的に仕事に集中できず、船を動かすのは危険だと判断を自身で下し、毎日こうして港の端に付けているヨットの上で日が沈むまでとほうに明け暮れていたのだった。
「ストイッククラブには入れないんですか?」
「ダメだ、あそこは完全予約制らしくて予約しない奴が来ても、入口すら開けてくれねぇ。強引に開けたとしても中で楽しんでいる妻の機嫌を損ねたくねぇ」
サマーズ内でも情報があったストイッククラブ。
男性曰く、会員しか知らない電話番号があるらしく、規則では他言無用で通っており、もし会員以外で発覚した場合はクラブから強制的に脱退させられるらしい。
番号も定期的に変えるらしく、一度外されたメンバーから聞いても役に立たない事がある。
あまり友人がいないうえに、口下手だから上手く聞けないと男性は諦めつつあるそうだ。
「もし、その女性を説得したらスカラビに連れて行ってもらえるんですか?」
けれども、ネス達にとってスカラビへ行けるチケットをみすみす逃すわけには行かない。
クラーケンが出るとされるスカラビ周囲の海流。
彼らが漁師から聞いた中で多くの発言があったのがそれについて。
クラーケンは専門家の狩人が武装した船を用いないと倒せないとされている。
その上、近くにやって来た船を襲い転覆させてしまう事から海の悪魔ともされており、これが出現している間は狩られるまでスカラビへは無謀な人間以外は近づけない。
「勿論だ、噂のクラーケンも俺の操縦テクニックには着いてこれない筈だ。お前達がどうやって女房を説得するかは分からないが、それは約束してやれるぜ」
クラーケンが狩られるまでオチオチ待っているわけにもいかない。
こうしてネス達は女性の説得を条件に、男性と約束を結んだ。
誰も口外しない隠された電話番号。
それを聞いて探り当てるのは至難の業だと推測できる……。
「ストイッククラブだって? ああ、あそこね。そうそう秘密の電話番号が無いと入れないんだよな、俺かい? 俺なら知ってるよ。何だったら教えてやるよ。メモ取っときなよ。えっと×××‐888だ。電話かけたら入れるようになるからよ」
「えっ?」
……と思われていたが、訪れた一件目の住居。
トト内にある住宅を訪問して、まずストイッククラブについて情報を探ろうとした矢先。
ヨットの男性の思わせぶりな発言とは裏腹に、いとも容易くそれは得る事が可能となった。
さらにその家の主人はとんでもない発言を口にする。
それはヨットの男性から聞いた門外不出である筈の番号についてネスが尋ねた時。
「ああ、間違っちゃいないけどさ……それ古い話だぜ。今じゃあ聞けば教えてあげられる位に緩くなったのさ。確かに教えまくるのもダメだけど、子供の一人二人位なら教えても問題ないぜ。まあ全然面白くない店だけど、楽しんできなよ」
男性が仕入れていた情報はいつの物だったのか気になる点ではあったが、これにて特に苦労もすることなく、教えてもらった主人の家に備えられた電話から予約の電話を入れる。
『はい、こちらストイッククラブでございます。新規のお客様、ネス様……ご予約ですね。かしこまりました。では入る際のルールとしてリズムよく五回玄関のドアをノックしてください。それで我々の会員である事が証明されますので。それでは失礼いたします……ガチャン』
こうして火を見るよりも明らかなほど簡単に目的の第一段階を果たすと、いきなりの訪問を詫びるようにネス達はお礼の言葉と一礼をしてクラブへと向かう事に決めたのだった。
意外な程にあっさりと情報を掴んだネス達だったが、もう一つ意外な出来事が起こる。
プルル……プルル……プルル……プルル……。
それは電話だった。
彼の持つ受信電話から音が鳴りはじめ、連続する呼び出し音が持ち主に早く出ろと急かす。
「はい、もしもし?」
親切な男性の家から出て、近くにあったベンチにリュックサックを置き、小型の受話器を取り出すとネスは赤い通話ボタンを押すと、耳に当てて会話をする。
すると彼にとっては聞き覚えの無いある人物が言葉を発してきたのである。
「お忙しい中すいません。僕はトニーです。ジェフの大親友にして黒子(ほくろ)の数まで知っている大、親、友のトニーです。すみませんが彼に替わっていただいてもいいですか?」
いきなりながら激しい自己主張をしてくる聞き覚えの無い名の人物に戸惑いを覚えたものの、何処で番号を聞きつけたのか不明だったが、ネスは慌ててジェフへと受話器を渡す。
「はい、トニー。どうしたんだい」
「あっ、ジェフ。心配してたんだよ、ずっと連絡も寄越さないからさ。でも無事そうで良かった。もう君と話せない毎日なんてオチの無い落語くらいつまらない日常だったよ。これほど人生で友人と話したいと懇願した事も無いくらいさ。君に会いたいと思いすぎて夢にまで――」
余りにも長々と語りから入るトニー。
余程ジェフと会えない事が苦しかったことが本人にもじわじわ伝わってくるまでに口を動かし続けていたせいか、流石に聞いてるだけのジェフも……。
「分かった、分かったから……要件を教えて」
一方的に今重要ではない世間話ばかりで詰められるのが辛くなったのが強引に切り替える。
すると、トニーはジェフの気持ちを理解したのか、
「あっ、ごめんごめん。今回電話をした理由はちょっと困った宿題が出ちゃって」
「宿題? 君でも解けないってどんな問題?」
一体、遠出をしている友人にまで訪ねる程の宿題とは何なのか。
恐らくしっかりと答えてあげないと電話から解放してくれないとジェフはトニーの性格を知っている影響もあったが、頭の良い筈の彼が解けない内容について尋ねる。
すると、電話の向こう側から机の上からプリントを漁るクシャクシャという音が響いた後に、トニーは内容を確認しつつ大切な親友に向けて返答する。
「えっと、【この小説の著者について調べてるんだ。今ウィンドウズ8.1のNEC製ノートパソコンのキーボードと同社のマウスを使って、尚且つマイクロソフトワード2010を用いてこのMOTHER2の同人小説を書いている人さ】これは原作のMOTHER2のゲームじゃないからプレイヤーじゃないけどね。とりあえず名前を教えて貰えるかい、ローマ字表記だからくれぐれも間違えない様に注意してね」
サクシャのなまえ
【YOSHINOSUKE・・・・・・】
「プレイヤー……じゃなかった。作者の方ありがとうございます。これで間違いないですか? OKならばENTERキーを押してください」
サクシャの名前
【YOSHINOSUKE・・・・・・】←ENTER
「お手数かけてすみませんでした。友達のジェフをあまり危険な場面に晒すような描写は控えてくださいね。僕心配で心配で……ジェフの事が……。じゃあねジェフ、また元気な君の姿を見れる事を楽しみにしているよ。君の友達トニーからでした。あっもっと話したいけどこれ以上長くなるのは悪いから切るね。さよなら、頑張ってね。気を付けてね、本当に切るからね。これフリとかじゃないからね、絶対に切るからね、絶対に――ブツン」
「あれ?」
トニーが【意外と早く電話を切った】のかと思いきや、只の電池切れだった。
ネスがこれを預かってからこれまで電池の入れ替えを行っていなかったせいか、ある意味こんな素晴らしいタイミングで電池のパーセンテージが0を示していたのだった。
「途中から誰に向かって話していたか分からないけど、ごめんよトニー。でもあの状態になったら君はやたらと電話を引き延ばそうとするのを知っているから、今回は勘弁してね」
いきなり切ってしまった事を声の届かない友人に詫びつつも、ジェフは役目を終えた受話電話と、リュックの中から取り出した動力である単三電池をネスに手渡した。
こうしてジェフ本人ですらイマイチ理解できずにいながらも、トニーの電話で中断していた旅を、クラブにいる船乗りの妻に会うべく再開し始めたのだった。
『ストイッククラブ』
当たる日光を全て反射する様な真っ白い外壁をした建造物。
元は劇場だったらしく、その大きさも中々の物でショップやホテルにも匹敵する高さのある建造物であり、今では名を変えてストイッククラブとされている。
一目見れば海からでも分かる様な配色がなされた建物にネス達は逆に白とは対照的な黒があしらわれたドアを、告げられたルール通りに五回叩き開かれた扉の中入っていった。
「何だか……見るからに面白くなさそう……」
それはネスがクラブへと入り、真っ先に口から出した言葉。
彼らの目に飛び込んできた風景。
内装には一切の派手さは無く、静寂を思わせる水色を基調とした壁と床。
広々としてはいたが、まるでパーティー会場で片づけの途中を見せられているように広い空間にポツリポツリと疎らに置かれたテーブルとそれに寄りそう大人たち。
ビーチで得た情報にもあったように元はこの劇場を盛り上げるために歌い手たちが華々しく演奏を行っていたと考えられる舞台には、どでかい石。
それこそ削られた消波ブロックの様な妙な形をした石が寂しく置かれている。
当初は人間が立つはずだった場所には歌いも話もしない石がふんぞり返るように鎮座。
丁寧にライトアップもされているが、だからなんなのだと言わんばかりである。
「ネス……僕は今から失礼な事を言わせてもらうけど。これほど無意味な場所、存在している意味が分からない場所っていうのは初めて見たよ」
その様子をネス様一行専用とカードが置かれたテーブルから眺めていたジェフ。
まだ幼いながらも、中々厳しい言葉。
だが彼がここまで言う理由もネスとポーラは支給されたコップの水を飲みながら、しっかりと把握している。
場所自体の雰囲気はまさに放課後の教室かの如く、静かという言葉を体現している。
ところが、微妙なのはそれだけでは留まらなかった。
場が盛り上がっているのならまだ良かった。
ここへきて改めて石を見ながらというのは理解に苦しんだが、話し合いの場という以上はやはり盛り上がりがある程度必要である。
けれども、情報との誤差に三人は愕然としていた。
それは……。
「つまりこの銀河系は無限のエネルギーによって生み出された物なんだよ。我々はきっと数億年後にはその力を手にし、いつかは時空を生み出せるような力を得られるって事で……」
「えっ!? 君は資本主義の最終イメージも湧かずに生きてるのかい!?」
「私が考えるに後30年もすれば、人間は次なる進化を遂げるはずだ。本来であれば手を出してはいけない秘術……きっと進化の秘法と呼ばれる術を編み出し、それがかつてのナチスのヒトラーの様な独裁者の手に渡り、再び戦争が起きるだろうね……」
当事者たちの話す殆どは空論、妄言も甚だしく多くは聞くに堪えない。
ついでに言うと相方の人物も相手の話を理解しているのか疑わしく、反論や語り合えているなどお世辞にも言い難いまでにただボーっと突っ立っているように見える。
確かにまだこの世という概念について何かを悟るには若すぎるネス達にとっては、この場所はつまらないという一言に尽きていた。
さらに酷かったのは、途中から『誰も見ていない』事である。
その事実に気になったネスはコップを運ぶウェイトレスに話を伺うと、
「ええ、そうよ。初めは石を見てるんだけど、途中からは訳の分からない会話を始めて【石なんか全く見なくなるわよ】。そうね、せいぜい二分が良い所ね……ほんっと馬鹿らしい」
ただでさえネス達にとって理解の範疇を越えている謎の石。
加えて、現場に立ち寄る人物達ですら見なくなるのであれば存在価値すら危ぶまれる。
「マジックケーキ売りの早く探しましょう。こんな所にいるくらいなら、ダンジョンで敵と戦っている方がまだ緊張感もあって、生きているって実感できるわ」
危険が及ぶ筈の敵地の方が良いというえげつない発言も仲間の中から飛び出したが、ネスは彼女の口にする通りに相手に伝わらない一方的な会話をしている大人たちを放って、十数人しかしいない会場を見て回っていた。
すると……。
「さあて、今日も新たな価値観を発現させて見せるわよ」
壁際に設けられた化粧室から件の女性が現れた。
場の雰囲気に似つかわしくないやる気に燃えている状態で。
どこにそんな闘志を燃やす部分があるのか問いてみたい気持ちもあったが、
「あの、マジックケーキ売りのおねぇさんですか?」
先を急ぐ上に、このクラブにいる意味が見いだせないネス達はそう尋ねる。
対して女性はマジックケーキという単語に反応したのか、
「ええ、そうよ。私はマジックケーキ売りの『おねぇさん』よ。今はこの素晴らしいクラブで自己という概念について深く追及しているミステリアスな女……そう現在の私の心はクジャクの羽の様に美しく広々とした心地よさに包まれているの」
他の大人と同じく、ネス側からしてみると心底、果てしなくどうでもよい言葉を連ねながら、長々とした自己紹介を行った。
「そうねぇ、さらに言わせてもらうならば、会場の人達は皆自己という存在を強く認識してそれを自身の人生観に影響させて語っているのよ。そんな中で私も最高の自分とい――」
「お願いです! マジックケーキをまた販売してくれませんか? 僕達はある人に聞いてそのケーキを食べたいと思ってイーグルランドからやって来たんです」
これ以上語らせると、いつ自分たちの意見を言えばいいか分からなくなる。
そう瞬時に勘付いたネスは彼女の言葉を遮って意見を述べた。
すると別の地方であるイーグルランドからの来客。
さらにわざわざ自分の扱っていた商品を味見する目的って来訪。
「まあ、そんな遠い所から私のケーキを食べに? それは失礼な事をしたわね。じゃあこのクラブを出て道路を跨いだ場所に私のワゴンがあるからいらっしゃい」
対して彼女からすれば可愛らしい子供三人のお願い。
無下に断れるわけも無く、ケーキ売りの女性はそう言い残すと建物から即座に外へとケーキ作りを再開する事を決めたのであった。
ネス達の行動は船乗りの男性の為だけでは無く、女性の為にもなった様だった。
女性の後を追うようにストイッククラブから出てきたネスら三人に対して、
「誰に聞いたのかも気になるけど、遠い所からわざわざ私のケーキを食べに来てくれるなんて……やっぱり私はケーキを作っている時の方が生き生きしているし、性にあっているわ。さあ食べてみて、残っていた材料をすべて使った特別なマジックケーキよ!」
自分の生きがいを再認識したらしく、子供たちに感謝の言葉を述べていたのだった。
これにて夫婦のいざこざも解消されていくだろうと安心したネス達。
そういった一連の流れを終えて、小腹が空いていたのだろうか。
ネス、ポーラ、ジェフの三人は皿に乗せられたマジックケーキに目をやった。
イチゴのショートケーキの様な白いスポンジの上に、ブドウ味を彷彿させる紫色のゼリーのようなトッピングがクリームの代わりにたっぷりと乗っており、そのゼリーの中には詰めるだけ詰め込まれた果物がぎっしりと収まっていた。
マジックと冠するだけあり、あまり嗅いだ事の無い不思議な匂いが溢れ出ていたものの、甘い物が食べたい三人は受け取ると、笑顔の女性に礼を言いつつ砂浜に降りていき、設けられている無人のベンチに腰掛けると。
「じゃあ、早速いただきます」
「なんだか珍しい見た目のケーキね、いただきます」
「いただきます!」
女性からフォークも同時に受け取っていた彼ら。
海の眺めに目をやりながら、貰ったケーキを口に頬張っていた。
フワフワとしたスポンジの触感、フルーツの甘さ、ゼリーの甘さ。
子供の彼らでも充分に気に入る美味しさのあるケーキ。
だが……。
「美味しいけど……ガクッ」
「何だろう……体が……ガクッ」
「目眩がする……なんで? ガクッ」
食後、数秒待たずして見える景色が激しく歪み、座ったまま全員が気絶。
なんと食べ終えた三人の意識が突然途絶えたのである。
酔っぱらいの如く顔全体を赤くして、まるで『眠る』様にして三人は寄り添ってベンチの上で静かに瞳を閉じて、気を失っていたのだった。
ここから一気に長くなるサマーズ編以降。
少しオリジナルの展開も増えてくる中で何とか冒頭を書き終えました。
文字数もさることながら、物語もそれなりの場面まで来ている事に我ながら感動しています。
正直早く書いてギーグたちとの戦いで盛り上がる起承転結の『転』の部分を書きたくて、最近ウズウズしています。一気に小説が進められれば一週に二話(ボリュームはそのままで)の投稿をしたいのですが、中々難しいのが現実です(涙)
名前入力の点についてですが、正直言うと完全に悪ふざけです。
原作でもプレイヤーの名前を聞かれる場面なんですが、私はこのシーンが妙に記憶に残っているので、ここはノリノリでえがかせていただきました。
でも、ちゃんと展開には組み込むつもりなので安心してください!
さあ、次は原作では装備品は限定され、PPも少ない癖に燃費の悪い技を覚える事からアイテム持ちという汚名を背負っているあの方が登場致します。
もし可能であればこの先の物語で『挿絵』を描いてみたいとも考えておりますので、これからもこのMOTHER2の同人小説をお願い致します。