mother2 ギーグの逆襲   作:黒まめちこ

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 文字数が膨らみ投稿ペースが少し狂いました……。
 では諸々は後書きに記すとしてかなりボリュームが膨らんだ本編どうぞ!


第五の音の番人とマグネットヒル

 追っていたポーキーの足取り。

 さらに自分たちがこれから向かわねばならない目的地の情報。

 その二つをサマーズのスカラビ文化博物館にて入手したネス一行。

 べんぱつ頭に白い道着が特徴の少年。

 東の果ての国ランマの王子であるプーを新たに仲間に加え、ついに敵勢力の宇宙人ギーグたちが恐れる『予言』の四人がこうして顔を揃えた。

 

 一人目は赤い野球帽に青と黄色の縞模様の服がお気に入りで、黒髪の短髪をした少年。

 仲間内で最も強いテレパシーを持ち、大人以上の根性と勇気があるリーダー、ネス。

 

 二人目は金髪のショートヘア―にピンク色の服を好む可愛い顔立ちの少女。

 お転婆な面も、少女らしい臆病な面も持ち合わせており、ネスに次ぐ強いテレパシーの持ち主であり、中でも遠くにいる人間の心に呼びかける程の強いテレパシーを持つポーラ。

 

 三人目は金髪の坊ちゃん刈りに低い視力を補う黒縁メガネがトレードマークの少年。

 仲間内で唯一テレパシーの力を一切持たないが、代わりに扱う機械に関する知識や知能面、また戦略や戦場を把握する観察眼が仲間内で飛びぬけているジェフ。

 かなりの臆病者ではあるが、戦闘中は冷静さを欠く事が非常に少ない努力家。

 

 そして四人目は今回加わったプー。

 ネスとポーラに比べると見劣りするが、長年の厳しい修行から会得したテレパシー、加えて肉体的にも精神的にも仲間内で一歩先をいく誇り高き武人肌の少年。

 

 ついに、自分たちの歩む冒険の歯車が勢いよく回り始めたのだ。

 情報も準備を整えた彼らが次に向かうべき場所はサマーズの南。

 船を用いて海を渡った先にある砂漠の大陸にある国スカラビ。

 その地にある古代文明時の建造物ピラミッドこそ、目的地なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フォーサイド恐竜博物館』

 と、通常であれば以前に彼らが夫婦仲の問題で助けた船乗り男性との約束で、彼が操縦するヨットに乗ってすぐさまスカラビに向かう算段だったのだが……。

 どうした事情からかネス達四人は前に宇宙人の手先から救った、イーグルランド最大の大都会フォーサイドへとテレポートのPSIを用いて戻ってきていた。

 さらに付け加えるなら大して用もない場所。

 過去にジェフがフォーサイドの情報収集に入った以外は、ネスもポーラも立ち寄っていない。

 悲しい事に、それ程一行からすれば興味どころか寄る意味さえも見いだせなかったフォーサイドの博物館に彼らは入館料を払って中をウロウロしている。

 

「知っていますか? 恐竜って実はまだ生きているみたいですよ」

「もしも恐竜をペットにしたら餌代が凄まじそうだ。こんなデカいんだからな」

 

 とある果ての地で発掘された巨大な恐竜の化石。

 それを基にして組まれた全身骨格のレプリカが目玉の博物館。

 サマーズのスカラビ博物館とは違い、こちらはピラミッドとはまた違う文化に興味を持った学者たち、または観光で訪れた来場客が場内を歩き回っている。

 

 そして客の中に混ざるようにネス達はある人物を探していた。

 それは……。

 

「君達、わざわざ私に話しかけてくるって事は何か知っているね?」

 

 探していたのは一人の恐竜博士だった。

 触れるとザラザラしていそうな髭を口周りに残している白衣の人物。

 周囲との関わりを好まない暗い雰囲気を漂わせるその男性の名はライスボウル。

 

「【とんでもないもの】ですよね……」

 

 ネスは彼の質問にそう核心を突いた答えを口にした。

 

 

 

 

 事の発端はほんの半時間ほど前。

 ネス達がまだスカラビ博物館に滞在していた時に遡る。

 次なる目的地であるスカラビへ向かうべく、ヒエログリフの写しも入手した一行。

 準備も整い、博物館を後にしようと入場口から外に出ようした瞬間。

 

 プルル……プルル……プルル……。

「? あれ、電話だ。一体誰だろう?」

 

 突然、ネスの持つ受話電話が鳴りだし思わずその場で出たのである。

 すると聞き慣れない男性が何やら息を切らせつつ早口で慌てるようにネスに告げた。

 

 

「ハアハア……もしもし!? スカラビ博物館のチャップスティック君かい!? すまないけど、僕は急ぐから自分の用事だけ言わせてもらうよ」

 

 

 それは掛け間違いの電話だった。

 受話器の奥から響いてきたのは全く知らぬ男性の声。

 さらに言えば自分はチャップスティックという人物でもない。

 

「あ、あの? 電話を掛け間違えていませんか?」

 

 流石に間違えた相手に話すのも気の毒だとネスはすぐにそう言った。

 ところが、相手は話すことに一生懸命で聞く耳を持たない人間だったのか、

 

「えっ、何? 少し声が違うみたいだけど、まあいいよ。実はね――」

「………………」

 

 自分が掛けている相手が、完全に無関係の子供とも知らずにペラペラと言葉を発し始めた。

 これに対してネスも自分の意見を潰された事で諦めたのか大人しく、電話の内容に耳を傾ける仲間と共に謎の男性の話を聞く事に決める。

 

 

「実はね、この私ライスボウル。君もご存じ大都市フォーサイドの博物館で働くこのライスボウルは今日『とんでもないもの』を発見したんですよ! それは、まるでファンタジーやゲームの様な信じられないものなんですよ! 因みにこれは自慢じゃないですからね!」

 

 

 言葉とは裏腹にやたらと大切な部分は威張る様な大声で告げる男性ライスボウル。

 口を止める事無く彼は哀れな事に間違い電話と知らずに話し続けた。

 

 

「見たんですよ、馬鹿でかいネズミの怪物をこの目で。多分アレは噂に聞く【パワースポット】に姿を現すという未知の生物に違いない。とにかく気になったら来てみてください。“私”が発見した物なので気軽に来てください! ガチャン! ツーツー」

 

 

 恐らく多くの人間から感想を言わせれば耳障りの一言に尽きる話し方だった。

 しかし、その内容をしっかり聞いた中でネス達はあるワードを聞き洩らしはしなかった。

 パワースポット。

 ギーグを討つ為に必要とされる特殊な力が集約する場所。

 

「思い出した……そういえば、この前は行方不明ポーラの捜索でてんやわんやだったけど、情報にパワースポットの事を指すような話があったよ。あの時情報交換していたネスとポーラも、そして僕も今まで忘れてたけど……」

 

 一方的な間違い電話を聞き終えたジェフは、ふと思い出す。

 それぞれが分かれて大都市の情報集めに勤しんでいた時に耳に挟んだ話。

 

 

「確かフォーサイドの何処かには大きな金属の塊があるんだって。その時に教えてくれた男性は俺だけの場所って言っていて、僕が見つけたら【おまえだけのばしょ】になるかもって変な冗談を交えていたんだった」

 

 

 ライスボウルという学者が言っていた馬鹿でかいネズミ。

 それが、もし彼が憶測で告げていたパワースポットの番人だったら?

 番人は通常の生物とは別の進化を遂げた怪物。

 パワースポットが持つ強力な力を身に宿し、選ばれた者を待つ。

 

「スカラビは後だな、ネス。まずは用事を済ませてからだ。行こう、そのフォーサイドとやらに。俺もこの目でお前達がこれまでどんな苦難や強敵と渡り合ってきたのか見たい」

「よし、皆行き先変更だ。冒険としては戻るけど、パワースポットは大切だからね」

 

 こうしてひょんなことから掛かってきた一本の電話から、ライスボウルの待つ四人はフォーサイド博物館へと向かう事が決定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうした間違い電話の経緯を経て、博物館へやって来た四人。

 友人に電話をかけたと思い込んでいるライスボウルには、自分たちは本物のチャップスティックと知り合いで情報を聞きつけ、とんでもないものを見物したいと誤魔化してある。

 すると、彼はネスら四人を博物館の待合室へと案内したのだった。

 向かい合うように置かれたソファと質素なテーブルが置いてある小さめの部屋。

 そこに静かに付いて来たネス達を座らせると、窓のカーテンを閉じ終えた彼は口を動かす。

 

「悪いね、わざわざ移動してもらって。あそこで聞かれるとうるさい奴らもいるもんだから」

 

 ソファに腰掛けた子供に軽く笑みを含みながら、ライスボウルはそう告げた。

 

「何かマズい事があるんですか?」

 

 そう尋ねたのはジェフ。

 明らかな胡散臭さが漂う白衣の男性に向けて、疑問をぶつける。

 対してライスボウルは彼の問いに肯定する様に頷き、続けてその理由について触れる。

 何故か恥ずかしそうに頬を赤く染めて……。

 

 

「君達、とんでもないもの……ネズミの怪物を見たいんでしょ?」

 

 

 いい年をしたオッサンがもじもじと気持ちの悪い動きをしつつ、ジェフの質問の答えを口にする前に逆にネス達に尋ねる。

 

「はい。理由は複雑ですが、どうしてもその怪物に用事があって」

 

 パワースポットの番人と思しき怪物のネズミ。

 冒険の重要な目的……と彼に言っても到底理解が及ばないどころか。

 所詮子供の遊び、好奇心だけで自由に遊んでいると笑われるだろう。

 だから、あまり詳しい事情は告げずにネスはそう曖昧な答えを提示した。

 

「それなら仕方ない。私だけが知っているとんでもない場所への抜け道を教えてあげよう」

 

 表情を戻し、ネスの答えを真っ直ぐに受け止めたライスボウル。

 自分も学者という立場上、少年たちの抱く強い好奇心を無下には出来ない。

 好奇心無くしては何も真剣に学べない。

 そういった彼の持つ価値観から、特に少年たちを疑う事や悪用する恐れを抱く事も無い。

 何より話を聞いていた四人の強い眼差しを見ていて、彼も断れない。

 

「ありがとうございます!」

 

 相手の優しい一言にネス達一同はそうお礼の言葉を向けた。

 けれども、ライスボウルはまだはっきりと口にしていない。

 どうして、わざわざこの待合室を使用してまで彼らと話したかったのか。

 少年たちからの感謝の言葉を聞き届けた途端だった。

 

「ただし! 条件があるんだ……」

 

 そんな急なライスボウルの大声に一行がソファの上でビクッ! とする中。

 どうした事か再び頬を赤く染め直した彼は、ポケットの中から丸めてあったポスターをテーブルに大きく広げて条件とやらについて話す。

「この女性……知っているだろ? 私は彼女の大大大ファンなんだ。それこそ毎日毎日ずっーーーと考えていても全然飽きない位さ。だから君達には彼女のサインを貰ってきて欲しい」

 

 テーブルに広げられたポスターには金髪の美しい女性が載っていた。

 先端までキラキラと手入れの行き届いた美しい金色の長い髪。

 そして胸元が微かに見える、セクシーな黒いスパンコールドレスを身に纏う人物。

 男性ならばついつい見とれてしまうのも無理はないスタイルも顔も抜群に美女。

 

「この人は前に見た事があるわ。確かビーナスさんだったかしら?」

 

 ポスターの女性の名を口にしたのはポーラ。

 彼女が敵に攫われる前にフォーサイドで情報を集めていた際。

 

 ファンキーでぶっ飛んだカッコよさで男性客だけでなく女性客の心を掴みに行ったトンズラブラザーズと対を為すフォーサイド内にあるトポロ劇場の顔役。

 生まれ持った美貌と優しい歌声で多くの男性客を魅了する歌姫、それがビーナスである。

 

 その女性についての情報も微量ながら入手していた事もあり、覚えていた。

 すると他人から発せられた彼女の名を聞いたライスボウルは小さな声で話し始める。

 

 

「そう、ビーナスさ。そしてここからが君達をこの部屋に招き入れた理由なんだけど……実は私は、彼女がステージで歌っていた時に興奮を抑えきれなくて、ステージに昇ってしまったんだ……それで彼女に思いを伝えようと必死になっている内にガードマン達に力づくで止められてね……今じゃあトポロ劇場から出入り禁止の命令を受けているのさ……」

 

 

 度を越えた歌姫への思い。

 下手をすれば警察沙汰にもなる様な事案があった事を彼は口にした。

 確かに公の場で、劇場という公衆の面前で女性ににじり寄るわ、ましてやその女性の晴れ舞台である歌の場を滅茶苦茶にしたわ、など言える筈もない。

 

 それを彼らに伝える為に、こうして一般人が寄り付かない待合室に案内したのだ。

「頼む、サインする物は何でもいい。色紙じゃなくても消しゴムや鉛筆でもいい。貰ってきてくれたらすぐにでも君達に道を教える。もし破ったらそのバットで殴ってくれて構わない」

 

 テーブルに広げたポスターに傷がつかない様に慎重に丸めている彼はそう発言した。

 出入り禁止を受け、尚且つ彼女を怯えさせた事を反省しているのか、もう一度自分が乗り込むのに協力してほしいと言った愚かな提案は出さず、少年達にサインを懇願する。

 

(あんまり気乗りはしないんだけど……仕方ないよね)

 

 しかし、一度出入り禁止になる程の問題を起こした男性。

 流石のネスと言えどもこの人にサインをあげても良いのか?

 また、これに味を占めて何かロクでもない事を企むのではという疑念は捨てきれなかったが、

 

「分かりました、今から行ってきます」

 

 音の番人と対峙する事が何より先決。

 世界規模の危機を救う強力な力が眠るパワースポットの方がもちろん重要。

 よってライスボウルの頼みを断らずに、すぐさま劇場へと向かう事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大都市フォーサイドでも屈指の人気スポットトポロ劇場。

 その看板を背負っていたトンズラブラザーズはいなくなったものの、今では歌姫ビーナスが見事に代わりを務め、多くの客を魅了させ続けている。

 

 かつてトンズラ達を助けるためにオーナーを手に入れたダイヤモンド原石で買収した時以来。

 二度目の入場となるネス達は前と同じく、受付にてチケットを購入した後に館内に響く放送に従い、ビーナスが歌う会場へと入っていったのだった。

 

「オー、ベイビーベイビー! 俺をそんなに泣かせないでくれよん。キュートでセクシーでノスタルジックな君には俺達男はもうイチコロのメロメロのトロトロさ! ベイビー、俺の為に歌ってくれ! ビーナス! 是非歌って殺してくれ! 俺達の愛しのビーナス!」

 

 入場したゲストたちが静まる会場。

その中で初めに流れたのは開演の前の煽り。

 トポロ劇場の目玉である女性ビーナスの登場を盛り上げる前振りが会場の音を牛耳る。

 まるで白熱する戦いを見守っている実況席が飛ばす様な言葉の後、照明が次第に消えていく。

 続けて段々と暗くなる会場の照明とは裏腹にステージをハッキリ照らすライトが点灯。

 

 

(ドキドキするなぁ……オイラ初めてビーナスを見るんだよな)

(これ程もてはやされている女……一体どれだけの美女なのかしら……キィ―)

(写真撮影が出来たら最高なのになあ。とにかく何としても目に焼き付けなくちゃ)

 

 

 会場に座る数多のゲストたちのそれぞれが期待に胸を膨らませ、ステージを見守る。

 

 ネス達も含めて誰も声はあげなかったが、各々が頭の中で多くの思想を持ちながら主役の登場を心待ちにしており、ステージには歌う為のスタンドマイクと、歌い手のサポートを行うバックバンド達がライトに当たらない程度の場所で控えていた。

 

 そして……。

 

「うわあ、凄い綺麗な人だ」

「憧れるわね……私だっていつかは……」

 

 隣同士で座っていたネスとポーラは思わず声をあげる。

 

 さらにその前の二席で肩を並べて座っているジェフとプーも、

「生きる宝石みたいな人だ」

「不思議な魅力にあふれた婦人だ、美しいとはまさにこの事だな」

 

 運よく舞台から近い特等席に座っていた少年達は舞台袖から多くの観客の注目を集める中で現れ、静かにスタンドマイクへと向かう女性にそう率直な感想をこぼした。

 

 まさに女性の『美』を体現したとも言える女性。

 ライスボウルが広げたポスターに載っていた姿で一度確認したにもにもかかわらず。

本物を確認するとその迸る美しさのオーラに少年だろうが少女だろうが、男だろうが女だろうがあっさりと中てられてしまう。

 衣装は赤色のドレスとポスターとは誤差があったが、それでも輝く金髪と整いすぎている顔立ち、スラリとしているが健康的でセクシーな姿。

 

 袖から姿を見せた彼女が履いている黒いヒールがカツ、カツと音を立て、ステージのマイクを持つまでだけでも、既に会場中の殆どの客がネス達と同じく魅了されていた。

 

(やべぇ、なんか胸がキュンキュンしてきた)

(私、女性なんだけど……結婚して欲しいわね)

(俺、今日無事に帰ったらビーナスのポスター全部買うんだ……)

 

 所々からネスの耳には彼の持つ強いテレパシーを通じて、会場中でビーナスの虜になった人間達の秘める奥底の声が一斉に押し寄せてくる。

 登場だけでそれ程までに観客を魅了する歌姫ビーナス。

 

 そうした中でマイクをスタンドから取り外し、ビーナスは歌を始めた。

 様々な配色のライトが照らされ、輝く中で自身の持つ声を歌詞に乗せて歌い始める。

 

 ♪~~♪~~~♪♪~♪

 ♪~~~♪♪♪~♪~♪

 

 歌姫ビーナスと謳われているだけあり、歌声も抜群だった。

 

 ♪~♪~♪~~♪~♪♪

 ♪~~♪♪~~♪~~♪

 

 大人の女性らしい幼過ぎる声でもなく、逆に低い声でもない。

 耳にしっかりと届きながら、心地よい音楽でも聞いている様な安心感に包まれ疲れない。

 それどころか聞いている人間に安らぎだけでなく元気も与える優しい歌声。

 一応歌詞の方も女性の切ない恋や気持ちを語る歌詞ではあったが、初見であるネス達にとってはその歌声だけでも充分に満足のいくものだった。

 

 ♪~~~♪♪~♪~~♪

 ♪♪~♪♪~♪♪♪~♪

 

 トンズラブラザーズの観客をも自分たちのライブに巻き込んで大はしゃぎとは対照的。

 曲の始まりから終わりまで終始静かな雰囲気に包まれた彼女の歌。

 誰も騒ぐ事無く、ゲスト全員が眠っているのではと錯覚する程に皆が彼女の歌を聞く事に精神の十割を集中させ、黙って聞き届けていた。

 こうして静寂に満ちたビーナスの歌は、あっという間に時間が経過し終了するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これにて○○時開始のビーナスによるライブが終了です。次の演奏開始は××時からとなります。それまでは場内に入る事が出来ませんのでご了承お願いします。荷物をお忘れないように注意されつつ、お客様はご退場をお願い致します」

 

 歌を終えたビーナスがステージから去り、暫くの時間経過の後に会場の照明が復活。

「皆様、どうか走られる事なく静かに会場からの退場をお願い致します!」

 

 次第に明るくなる会場の中でスタッフがトンズラのライブの時と同じく去っていく大量の観客達に向けて退場についての先導を行っていた。

 そしてこちらも前の時と同じくネス達は大人たちの蠢く波に飲まれない為に、席に留まったまま会場から客が減っていくのをのんびりと待っているのだった。

 

「で、どうするの? ネス? 安請け合いしたのは良いけどサインは?」

 

 四角を描くように座って待機していた四人。

 

 その中でまず初めに口を開いたのはポーラだった。

 

 以前のトンズラの時は顔馴染な事もあり、サインは簡単に貰おうと思えば貰えた。

 ところが、今回は何の接点も無い見知らぬ女性。

 あっさりと引き受けたはいいが、彼女は何か策でもあるのかと隣で座るネスに問う。

 対して、ネスは彼女の質問に、黙ってパチパチと瞬きを繰り返すと、

 

 

「何も考えてなかった……なんかイケそうな気はしたんだけど……」

 

 

「……ネスと言えども、流石にそれは感心しないぞ……」

「ネス……僕はてっきり何か考えてるのかと思ったけど……」

 

 そんな頼りない返答には思わず後ろにいるジェフ、プーから大声が飛んでくる程。

ただ、何とかなるだろうという曖昧な考えから、只の無策だった事が露呈した。

 

 

「なんかそんな気はしてたけど……もうネスったら……大事な時に抜けているんだから」

「う、ううん、まあね? ハハ……」

 

 

 いきなり三人の仲間からダメ出しを受けて、苦笑いをするしかないネス。

 打って変わって三人も片手で頭を抱えて、どうしたものかと考え込んだ。

 

 大ブレイク中の女性ビーナス。

 

 子供とはいえ只の一般人がそう気安くサインを受けてしまったなら歯止めが利かなくなる。

 もしも誰か一人にサインをしたのなら、それを何処からか聞きつけた他の人間がその人物だけとは不公平だと語り、サインを迫ってくる。

 

 それ以降は同じことの繰り返し。

 だからこそビーナスは演奏が終わると同時にそそくさと舞台裏へと消えていき、スタッフしかいない一般人の立ち入り禁止のエリアへと姿を消すのだ。

 

「強引に貰おうとしたら、多分ライスボウルさんと同じになるもんね……」

 

 子供の身とは言え、礼儀は勿論気にする。

 通常の劇場から出入り禁止を受ける愚行を行った大人とは違い、強行手段は絶対にしない。

 どうにかして真っ向から彼女にサインをしてもらう訳にいかないのか。

 少年少女四つの頭を使って熱心に考えていた。

 

 

 

 そうしていつの間にか会場の殆どの観客が退場し、場に残された四人。

「ごめんね、坊や達。もう外に出ていってもらわないと困るんだ」

 

 客の先導を終えたスタッフから退場を急かされる羽目になり、仕方なくこの場を退き劇場の外で対策を練ろうと客席から四人が立った時だった。

 

「待ってくれ、この子供たちは私の知り合いだ。私が代わりに後でこの子達を導いておくから、君は会場の外に出て他の作業に取りかかってくれ」

 

 彼らの元に一人の男性が歩み寄り、そうネス達を引き止めた。

 スタッフに話しかける所から、少なくとも劇場の関係者と思われる人物。

 

「えっと、貴方は確か……トンズラさん達の……」

 

 ネス達が視線を向けた先に立っていたのは灰色のスーツを着た男性だった。

 

 

「良かった、覚えてくれていたんだね。そうさ、あの時のマネージャーだよ」

 

 

 そう、男性は以前にトンズラブラザーズのマネージャーをしていた。

 彼は軽く笑みを浮かべて、少年たちが自分の存在を覚えていた事に喜びつつ、

「今日は一体どんな用事なのかな?」

 

 スタッフたちを退かせ、男性は場に残されたネス一行に疑問を投げかける。

 打って変わってネスは別に彼に嘘をついても仕方がないと思い、

「ビーナスさんのサインがどうしても欲しいんです!」

 即座に断られると把握しつつも、彼は馬鹿正直に相手の目を見てそう訴えかけた。

 

 いくら顔見知りとはいえ、盛況のトンズラのマネージャーを務めていた男性。

 業界の掟や、避けるべきリスクなどは十分に承知している。

 内心では半分諦めてはいたが、それでも敢えてネスは発したのだった。

 

 すると……ネスの必死に見える思いが伝わったのか、男性はあっさりと頷き、

「いいとも、君達にはトンズラ達の自由な姿を見せて貰ったからな。それに私は今『ビーナスさん』のマネージャーを務めているのさ。去っていたトンズラ達のすぐ後にね」

 

 それは無策で劇場に乗りこんだネスにとっては一筋の光。

 この事を秘密にし、貰ったサインも人目に触れさせない事を条件に受理されたのだった。

 

 

 

 

 観客たちが場から姿を消した寂しい劇場から舞台裏へ。

一度通った事のある従業員専用通路をマネージャーの背中に続くように歩いていき、四人は歌姫ビーナスの控える楽屋へと案内されたのだった。

 

「あらー、可愛い子供達! マネージャーさんの子供かしら?」

 

 そして楽屋へ入った途端に先に声をかけてきたのは先程まで舞台で歌っていた女性。

 入って来たマネージャーの後ろからこそこそと付いて来た四人の少年少女に、メイクを丁度終えたビーナスは大声をあげて、近づいてきた。

 彼女は無邪気で子供が好きなのか、突然の可愛らしい訪問者に満足な表情を浮かべている。

 

「いやいや、僕は独身だって! この子達は君のサインが欲しくてやって来たんだってさ」

 

 マネージャーは彼女の冗談に反論をすると、目的をネス達の代理で告げる。

 理由としては男性は見慣れているから効かないが、ネス達全員は彼女の魅力にまたも魅了され、思わずあがってしまい何も話せないと考え任せていたのだ。

 

「…………モジモジ」

「…………モジモジ」

「…………モジモジ」

「…………」

 

 案の定、表情を一切崩さないプーを除いて、四分の三が緊張してしまいモジモジとしている。

 だがプーも男性に発言を任せているのか言葉を口にしなかった。

 

「ふふっ、サインね。良いわよ。えっとじゃあ……あれにしようかしら」

 

 信頼するマネージャーの頼みとあっては、歌姫より一人の人間として彼女はわざわざ足を運んでくれた子供たちの期待に添いたいと、ビーナスは部屋を見渡すと、自分が座っていたドレッサーの前へと向かった。

 そうすると彼女はそこから何かをすくい上げ、ペン立てに差していた油性のマジックを空いた片手に持ち、素早くペンを走らせた。

 部屋の中にマジックペンで物を書く際に鳴るキュキュキュという独特な音が響いた後に、ビーナスは、男性ならついつい見とれる様な美しい笑顔を浮かべながらネス達にそれを手渡した。

 

「坊やにも良く似合うサイン入りバッジよ。今は一つしか無いけど、また今度来てくれたら次は全員分用意出来るようにするわ。今日は私の歌を聞いてくれてありがとう!」

 

 恐らく人類の中の男という性別で今一番の幸せを勝ち取っているとも言えるネス。

 こうしてステージ以外でも優しい性格の彼女の厚意により、四人は何とかビーナスのサインが入った品物を獲得することが出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 今更ながら、ここまで来て手放すことが惜しくなったネスとジェフを押し切り、ポーラはリーダーから奪い取ったバッジを博物館で首を長くして待っていたライスボウルへと譲った。

 

 業務中であり館内に人がいる今は必死に冷静さを取り繕っていたが、十中八九、今日の仕事を終えた後に泣いて大歓喜する事が容易に想像できる。

 

 逆に人によっては宝石よりも価値がある物を失い、微かに涙ぐむ少年二人。

 

 まるで勝者と敗者を別った後の様な空気が仲間内に蔓延している中。

 条件をクリアしたネス達は約束通り、ネズミの怪物がいる場へ繋がる部分へと案内された。

 そしてその先は意外な場所だった……。

 

 

 

「まさか……こんな所を行く羽目になるなんてね」

「文句を言わずに進むしかないでしょ。女の子の私だって我慢してるんだから」

 

 ライスボウルとは入り口ですぐに別れ、ネス達のみで進んでいるこの場所。

 そこはネズミが生息しているという事に合点がいかざるを得ない。

 多くの人間であれば人生の中でその場所を目にすることは無いだろう。

 

 

「大丈夫だよ、ゲップ―のえげつない臭いに比べたら可愛らしいもんだから」

「「それは言えてる」」

 

 

 ライスボウルが案内を終えた場所は博物館の裏口。

 勿論そこがパワースポットな訳も無く、向かうべき道は足元だった。

 彼らもこうして現場を目にするまでは気付きもしなかっただろう。

 

 まさか……マンホールを抜けた先の【下水道】が今回のダンジョンだったとは……。

 

 場に漂う異臭だけでなく、上流から流れているのは綺麗と決して言えない澱んだ水。

 どこから迷い込んできたのかゴミ袋や自転車などの汚物で溢れかえった沼の様な水路地帯。

 

「…………何とか番人を倒したら、みんなで気持ちよく体を洗い流そう。このフォーサイドにはニッポンから伝来した『セントウ』っていう風呂屋みたいなのがあるらしい。絶対に勝って帰ろう! 流石に臭い所でゲームオーバーにはなりたくないし」

 

 初めは汚れた水路の脇の通路を通っていたのだが、巨大ネズミはライスボウル曰くひたすら先へ先へと進んだ場所で居座っているらしく、途中から建造された通路は途絶えていた。

 いかんせん他に進める通路も道も無い以上、僅かに変色している汚水で溢れかえった水路をこうしてわざわざ泳いで進む羽目になっていたのだった。

 

 

 けれども……ネス達をあっさりとボスの場所まで向かわせてくれる程、この下水道ダンジョンは甘くは無かった。

 

 

 

 

 

 プーンと鼻に着く嫌な臭いに耐えつつ、水路を昇ってくる彼らを待つ者が現れる。

 それはこの下水道を住処としているモンスター達だった。

 

「チュチュチュチュ!」

 

 まず初めに遭遇したのは体中がばい菌で、体毛が黄色く染まってしまったネズミ。

 人間達に住処を奪われ、憎しみと憎悪で未だ仲間と共に逞しく生き残っている『悪のネズミ』

 その生命の強さはちょっとした毒素にも抗体を持ち、蓄えた毒が紫に輝く牙となって姿を変えている、牙を用いた毒攻撃を得意とし、勢いよく噛まれた際には大きな被害を受ける威力。

 かつてジャイアントステップにいた、下位種であるぐれたネズミとは比べ物にならない。

 素早く、硬く、強いという三つのバランスを兼ね備えた強敵。

 

 

 さらに五番目の音の場所というだけあり、手ごわい敵はネズミだけでは無い。

 

 

「嫌あああああああ! 来ないで気持ち悪い!」

「うわっ!? いきなり飛んで来るな!」

 

 

 目の前に姿を見せた敵に思わず叫ぶポーラ、気味悪がる男性陣。

 

 そうしてネス達を精神的に苦しめるのは『あのあれ』という一匹いれば三十匹はいると覚悟する程の恐るべき繁殖能力を持ち、首を落とされても死なず、食物を取り込む口を失った果てに餓死で死ぬというとんでもない生命力を持つとされる素早い動きをする虫。

 

 サターンバレーへ向かう途中の洞窟にて現れた『あれ』の上位種。

 

 体中をコケやカビなどの緑色で汚し、これまた見るだけで食欲を失いそうな姿の敵。

 カサカサと素早く動き、何度も体当たりを仕掛ける連続攻撃だけでなく、突然バサバサと羽ばたき近づいた人間を驚かせる飛びかかり攻撃を仕掛けてくるのだった。

 

 

「PKファイアーγよ! お願いだからもう二度と出てこないでぇぇぇぇ!」

 

 

 倒しても、倒しても何処からか姿を出すあのあれ達にポーラはついにそう叫びながら、ウsぐらい周囲一帯が明るく照らされる程のPKファイアーを放ち、敵を一掃する。

 温存しておきたい技用の精神力ではあるが、余りに汚れたこのエリアを抜けたいという気持ちは満場一致だった為、水から湧き上がる臭いに堪えつつもひたすら上流を目指していく。

 

 他にも、もう一匹の敵が潜んでおり、名前を『悪臭ゴースト』とするモンスター。

まだゾンビに支配された板スリークにてネス達を阻んだゴミ箱に宿った不潔幽霊ちょっとくさゴーストの上位種でこちらも汚い黄緑色をしていたものの、ビジュアル的には只のゴミ箱から這い出たゴーストだったせいか、

 

「何だろう、臭いはここの敵の中で一番強烈だけど、見た目がまだマシっていうこの感じ……」

 

 ゴキ……緑色に変色した虫の大群。

 素早く動き回り毒の攻撃を仕掛けてくるばい菌まみれの獣。

 それらと比較すると打撃攻撃に対する防御力が異様に高い強敵だったものの、ある種のマスコット的な扱いを受けていたのだった。

 

 道中、そう言った三種の敵ばかりに水路の行く先を妨害され、途中何度か強力なPSIを打たなくてはならないまでの苦戦を強いられつつも何とか四人はそれらを退けていった。

 厳しい戦闘の経験もあってか、初参戦のプーを筆頭に全員がレベルを上げていく。

 特にプーに関してはポーラの会得している『PKフリーズ』やまだ使う機会に恵まれない『PKサンダー』といった攻撃系だけでは無く、ネスに任せっきりだった回復技『PKライフアップ』も順調に会得していき、万能型の戦士として育っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 そうして戦闘の最中で完全に鼻が慣れてしまったのか、いつからか下水道の臭いにも慣れ、只無言でざぶざぶと汚れた水を掻き、水が流れてくる奥へ奥へと泳ぎ進んでいく。

 すると……。

 

「ゼェ……ゼェ……ついに見つけたよ」

 

 およそ一時間以上生ぬるい排水で浸った下水道を泳いで来たネス達一行。

 

 そこには大きく開けた足場があり、その脇には格子で塞がれた水路が続いている。

 戦闘や環境で疲弊しきった体を一時的に癒すようにして建造されたその広々とした場所に、四人はずぶ濡れの体で水路からよじ登り、それを見つけた。

 

 地上へと繋がる梯子を。

 

 天井の開いたマンホールから太陽の光が差し込む形で鉄の梯子が設置されていた。

 

 そして彼らが最もこの場で注目したのは、梯子のふもとに控える神々しい光。

 恐らく、この梯子を昇った先にはあるのだろう。

 五つ目のパワースポットが……。

 

「あれが音の番人という奴なんだな?」

「そうだよ、プー。アイツがここの大将さ」

 

 プーは初めてその敵の気配と姿を感じ取った。

 これまで自分以外の仲間が死力を尽くして戦ってきたという難敵。

 真の姿こそ蟻だのモグラだの根っこだの違うが、その気配だけは常に同じ。

 周囲のモンスターの気配など消し去り、食いつぶす程の圧倒的なオーラ。

 本能的にこの眩い光に包まれた何かが『ヤバい生き物』と彼は認識したのだ。

 

「皆、休憩は済んだ? ここまで来たんだ。油断せずに最後まで全力で戦おう!」

 

 自分たち側から戦闘を申し入れない限り、襲ってこない番人を前に一行はある程度の時間を休憩を挟み、手失った体力を取り戻していく。

 そして全員が休憩を済ませた事をネスはその目で確認すると、番人の元へと歩み寄っていた。

 すると……。

 

 

「よく来た。ここは5番目の『お前の場所』だ。しかし、今は私の場所だ。奪い返せばよい。……できるものなら」

 

 

 冒険を始めてもう五度目となる番人の言葉。

 ネス達が明確に戦闘の意思を持って近付いてきた事を認識。

 そうして選ばれし運命の物と対峙すべく、番人は纏っていた光を消し去る。

 自分に立ち向かう四人の少年達にその姿を現したのだ!

 

 

 

 

 ライスボウルの言っていた通り、敵の正体はネズミだった。

 こんな暗くジメジメとした下水道に長く住んでいた悪のネズミ。

 その一匹が今回の音の場所『マグネットヒル』の力を吸収し変貌した生物。

 

 名は体を表すとはよく言った通りで、番人の名は『巨大ネズミ』

 悪のネズミとは違い、青い剛毛に身を包まれた丸みを帯びた巨体。

 顔はまるで人間の様なニヤニヤとした嫌らしい顔付きで、目じりが上がったしまりの無い表情で終始こちらを嘲笑っているようにも取れる。

 他には背中にびっしりと生えたカビがこの不潔な環境で長期いた事が見て分かる。

 そして……最もコイツの中で一番恐ろしい特徴だったのが、

「ネス! プー! そいつの攻撃を僕達の誰かが受けたらすぐに治療して! そいつの牙と爪は異常なくらいの毒素を含んでいるみたいだ!」

 悪のネズミを変色した紫の牙を遥かに凌ぐ毒素を含んだ爪と牙だった。

 さらにどす黒くなった赤紫色の牙と爪が巨大ネズミの最大の武器。

 

「ヂュヂュヂュア!」

 

 顔つきは相変わらずニヤニヤとしているが、戦いぶりはまさに真剣。

 少しでも隙を見せれば、爪や牙を光らせ対象に向けて素早く近づき攻撃。

 他にも突然天井へ這い上がり、自身の武器を振り下ろすように落下する奇襲攻撃。

 巨体らしからぬ素早い動き、高い攻撃性能を兼ね備えた難敵。

 

「くそ……喰らってしまった、すまないネス、治療を頼む」

「分かった! 毒を取り除け、PKヒーリングβ」

 

 前線でPSIを交えつつ、バットや拳で応戦するネスとプー。

 少し距離を開け、敵の動きを凝視しつつ合間にPSIで応戦するポーラ。

 戦況を把握しつつ、時折さらに強化したバンバンガンを発射する遠距離型のジェフ。

 

「ヂュヂュ! ヂュヂュ!」

 

 そんなそれぞれの特性や弱さを補った万全の態勢で敵に挑んでいる……。

 

「ぐあっ!? 敵もSMAAAAASH! を出してくるのか……ゲホッ、ヤバい……」

「ネス! 今回復してやる、PKヒーリングβ! PKライフアップβ!」

 

 筈だったのが……。

 

「全然、倒れる気配が見えない……何度も必殺のPKフリーズβを当てているのに……」

 

 前線の二人は敵の猛攻に時折態勢を崩され回復に追われてしまう。

 大きなダメージ源であるポーラのPSIも敵の飛び抜けた耐久力の前ではジリ貧となり、長期に続く戦いで精神力を削るのみで思っていた以上にダメージを与えられない。

 ジェフに至ってはバンバンガン自体の威力こそ上がっているが、反射神経も周囲の雑魚モンスターの比では無い巨大ネズミに対しては弾速が遅く、あっさりと見切られ避けられる。

「ヂュッ! ヂュッ! ヂュッ!」

 対して常に愉悦の表情が顔にありありと現れている巨大ネズミ。

 四対一という数の不利をものともせずに、自由に動き回り敵を翻弄した後。

 

「また天井からだ! 気を付けて、皆!」

「ヂュエ! ヂュエ!」

 

 すかさず自分の最強の武器と心得ている鋭く伸びた牙。

 そして俗にいう出っ歯の様な異様に前に伸びきった牙で攻撃していく。

 常にこちら側の成長を見透かした上で、持つ強さを生かし全力で潰しに来る音の番人。

「ゼェゼェゼェ……こいつ、どうやれば……」

「ハア……ハア……もうこれ以上攻撃用PSIは止めよう、俺の残っている精神力だと後はヒーリングかライフアップを数回使えるくらいしか残っていない」

「私ももう数えるぐらいしか打てないわ……せいぜいフリーズβが六発くらいかしら」

「用意してきたボムもスーパーボムもペンシルロケットも全部避けられた……くそぅ」

 少年少女の必死の攻撃をことごとく耐える巨大ネズミ。

 

 これまでの番人と同じく、一時間程に及ぶ苦戦を彼らは強いられていたのだった。

 

「ヂュ♪ ヂュ♪ ヂュ♪」

 

 まるで自動的に体力を回復する様な性質を備え持ったように、強力な冷気の爆発を受け大きなダメージを負おうとも、

「ヂュル♪ ヂュル♪」

 

 ネスのPKキアイで強烈な念導波による大爆発に巻き込まれようとも。

 プーとネスの連携による打撃攻撃で頭部を殴りつけられようとも効果は薄かった。

「ヂュヂュヂュ♪」

 

 加えて敵前だというのに、疲弊しきっている四人の前で余裕綽々で毛繕いをし、体中を覆う固い毛をやたらと優しく掻いている。

 爪を立てぬように、自身の体を撫でる様に繕い敵が動き出すのを待っているのだ。

 

「ハア……ハア……アイツめ……戦いを侮辱するとは……絶対に許せない」

 

 息を切らせつつプーはそんな敵の行動に苛立ちを覚えていた。

こちらを舐め腐ったように毛繕いまで始め、戦いに似つかわしくない笑顔を崩さない敵に。

 

 だが……。

(うん!? もしかしてコイツは…………)

 

 そういった敵の動きを見て、プーは何かに気が付いた。

 そうして余裕を見せている状態から戦闘態勢に戻った巨大ネズミの様子を見ると、

「三人とも俺に考えがある。少し戦場から離れるがその間に時間を稼いでくれ。俺が小さい頃から出来た『ある技』を試してみたい。だが、それにはかなりの時間と集中力が必要なんだ」

 

 恐らくこうして普通に戦っていても埒が明かない。

 底が見えない、疲れる様子を見せない巨大ネズミとの戦闘。

 無限に続くのではと恐れるまでの耐久力を備えた怪物との戦い。

 四人全員は重々その厳しい事実を目の当たりにし、把握していた。

 

 だからこそ、この窮地に何か思いついたプーに向けて、

「オッケー。回復は任せて」

「私たちが囮になるわ」

「僕も近くでサポートするよ。まだアイテムは残ってるしね」

 三人は突然の彼の頼みを快く受け入れた。

「ありがとう。では頼んだぞ!」

 

 仲間を信じたプーが礼を言葉を発し、場を離れようと動いた瞬間戦闘再開の合図だった。

 

「ギュギャ!」

 

 巨大ネズミは本能から不穏な空気を感じ取ると、即座に得意の毒攻撃を仕掛けようと怪しい挙動を始めてプーに向けて牙と爪を立て、飛びかかった。

 しかし、ネス側も彼を守る事が今の最重要任務。

 

「させるか!」

 ネスは場を離れるプーに飛びかかる巨大ネズミの体を勢いバットで殴りつける。

 手ごたえはあったが、ただ命中しただけで巨大ネズミにはあまりダメージは無い。

 だが勢いに乗った殴打の衝撃は受けており、戦地から退くプーとの距離を開けさせた。

 

「少しでも行動不能にできれば良い。PKフリーズ『γ』!」

 弾き飛んだ巨大ネズミへすかさずポーラは渾身の力を込めたPKフリーズを放つ。

 α、β、γの三番目となるこれまでとは違うPKフリーズ。

「ヂュ!?」

 βよりも巨大な氷の塊が眼前に発生し、即座に大爆発を巻き起こる。

 そして狙った対象者の周囲ごと凍り付かせる様な凍てつく冷気が氷塊の中に含まれており、爆発と同時に猛吹雪の様な極寒の地獄が敵一体を襲うという新技。

 

「ヂュ……ヂュヂュ!?」

 

 

 流石にポーラの進化した新技の前では巨大ネズミも驚いた。

 肉体面にも微かにダメージはあったが、何より凄まじかったのはその氷結効果。

 急激な体温の低下で体の機能が一時的に麻痺し、体が動かなくなったのだ。

 それでも超が付くほどのタフさを持つ巨大ネズミに対する止めにはならなかったが……。

「ヂュ……」

「よし! ポーラ良いぞ!」

 現在必要とする時間稼ぎにはもってこいの効果。

 体をビクビクと震わせ、凍結状態を解こうと躍起になっている巨大ネズミ。

 

「ヂュヂュ……ギギギギ!」

 

 その表情には怒りが現れ始めているのか、ニヤニヤとした顔つきから一転。

 鋭く敵を威圧する目つきに変貌し、ここから本気を出してくると予想できる。

「多分、氷結効果はそう長くは持たないわ。ここからが正念場よ」

 本気を出した生物の警戒心の事も考えてだろう。

 ポーラはもう一発PKフリーズγを当てれば、もっと時間を稼げるかもとは言わなかった。

 いつ凍結状態から抜け出すかも分からない巨大ネズミを前にプーを除く三人は身構えて、相手の動きをじっと待って伺っていた。

 

「…………」

 

 自分たちがプーの元から離れた途端に、素早く後ろへ回り込まれでもすれば。

 無防備なプーは真の力を出した強烈な一撃に倒されてしまうだろう。

 そして何より仲間が自分たちを頼って任せてくれた事に応える為にも、人間側であるネス達もより警戒心を強めて、音の番人と対峙していた。

 

「ヂュジャアァァ!」

 

 まず仕掛けたのは巨大ネズミ。

 厳しい環境で育った逞しい身体能力とパワースポットの力が合わさり進化した代謝能力でPKフリーズの氷結効果を解除し、再び動き始めた。

「なにっ!?」

 それも怒りの影響かこれまでの倍程の速度で三人に向けて体を動かす。

 素早い身のこなしで、ネス達へと攻撃を仕掛ける。

 

 

 ガキンッ!

 

 

 そんな金属同士がぶつかる様な音をあげて牙の一撃を受けたのはネス。

「うぐぐ……気を抜いたら潰されそうだ……」

 毒々しい赤紫色を帯びた牙を正面から、武器のバットで受け止めたのである。

 けれども言うまでもなく底力は巨大のネズミの方が大きい。

 

「ぐぐぐ……」

 

 怒りで大きく目を見開き、敵をそのまま牙で押しつぶそうと力を強めていく巨大ネズミ。

 対してネスも必死で力が込められた牙による鍔迫り合いで、後ろへズルズルと押されていきながらも、何とか耐え忍ぶ。

 

「や……ばい……」

 

 しかし、こうして競り合っている間にも相手の力はさらに強まっていく。

 

 恐らくこのままだと力負けし、潰されてしまうだろう。

 眼前で牙を光らせ、鬼気迫る表情を浮かべる巨大ネズミ。

 

 体中の力を腕と踏ん張っている足の二点に集中させ、抵抗するネス。

「よし、ポーラ! PKフリーズの準備をしといて、僕がネスのサポートに回る。ネスがアイツを弾き飛ばしたらすぐに怯んだ隙にすかさず打ち込んで!」

「分かったわ!」

 そうした中でリーダーが奮闘する中で残っている二人はそう指示を出し合い、すぐさま仲間の補助に回るべく、各々が残していた武器を持って巨大ネズミへ立ち向かう。

 

「ネス! 今助けるよ」

 

 そして、段々と追い詰められるネスの元へジェフは駆け寄っていった。

 逆に巨大ネズミとネスの両者は彼が目前まで迫るまで気が付かなかった。

 番人側は邪魔者を消すために。

 ネスは負けぬように耐え忍ぶために。

 お互いが要らぬ考えを全て放棄し、この場だけに集中していたからである。

 

 ところが、それがジェフにとっては最大の好機だった。

 彼はリュックの中に残っていたアイテムを片手に、武器で競り合っている二人へ近づく。

 そうして巨大ネズミの見開いた目へ向けて使用する。

 

 ブシュ―!

「ギゲェ!?」

 

 鍛える事の出来ない目という生物の弱点に彼は吹き付けた。

 中身が残っていた殺虫スプレーを直接放射したのである。

 流石の巨大ネズミも激痛だったのか悶えるしかなく、声をあげて怯む。

「ネス今だ! 思いっきり敵を殴り飛ばして!」

「よし! 分かった!」

 そこへすかさずジェフのアドバイスが飛ばされ、ネスは全力でバットを振るい敵の巨体を殴り飛ばし、バコッ! と場に響く鈍い音と同時に巨大ネズミは衝撃で飛ばされる。

「PKフリーズγ!」

 直後に再び凍らされるとも知らずに……。

「ヂュヂュ……」

 加えて怯んでしまい警戒心を解いた所で、彼女の攻撃をロクに回避できずにまともに冷気の大爆発を受けたせいか、体中の殆どを氷に包まれ活動を抑制されてしまう。

 

 

「ありがとう、三人とも。何とか成功した!」

 

 

 さらに……タイミングが丁度だった。

 

 プーは言っていた技を完成させたのだ。

 そして三人に礼の言葉を述べると、離れていた場所から姿を現す。

 すると……仲間たちは思わず唖然とした表情で迎えた。

 何故なら……。

 

 

「えっ!?」

 

「貴方、プーなの!?」

 

「……君のその声が無かったら、死を覚悟したよ、【双子】かと思った」

 

 

 彼の姿は変貌していたのだ。

 それは目の前で氷漬けになり、もがいている生き物と同じ。

 青い剛毛の巨体、背名のカビなど見た目が一致。

 なんとプーは巨大ネズミに変わっていたのである。

 

「所謂『変身』ってやつだ。短い間しかもたないけどな」

 

 ドスドスと足音が下水道中に響かせる中で、プーは傷ついた仲間たちにそう言い残すと、まだ身動きが取れず、さらに言うなれば自分と瓜二つの姿をした存在に驚いていた。

 打って変わって彼は這うようにして凍っている番人を見下ろしながら、仲間にも聞こえるように少し声を大きくしながら告げた。

 ネス達に詳しく伝えなかった巨大ネズミの対策法を。

 

 

「【毒】だ、コイツの弱点は自分の持つ【猛毒】だ。コイツは毛を触る時爪を立てずに触れていた。確信は無かったが全てをコピーし変身して分かった。コイツは今以上の毒素を体内に取り込めない、これ以上取り込むと暴走するみたいで蓄えられていた毒が全身に回るみたいなんだ。少し意味は違うが、毒を以て毒を制すとはこの事みたいだな……」

 

 

 時間こそかかるが相手の全てをコピーする『変身』によって確証を得たプー。

 激しい戦闘法とは裏腹に毛繕いをやたらと丁寧に行っていた巨大ネズミ。

 爪を立てずに行っていたのは、もし爪が自分の身を傷つければ付着している毒素も一緒に体内になだれ込んでくる事となり致命傷となってしまう。

 だからこそその自分の体質を理解していた番人は丁寧にしていたのだ。

 そんな些細な点に気が付き、思いついたプーの発想は凄まじいもの。

 逆に油断で弱点の断片をさらけ出してしまった巨大ネズミの敗北とも取れる。

 

「ヤバい……もう変身が解けてしまうが、すまないな番人よ。これで終わりだ!」

 

 プーは同じ毒素を備える爪でたった一撃。

 氷から露出していた手の一カ所を鋭い爪で軽く引っ掻いただけだった……。

 

 

「ヂュギェェェェェェェェェェェェェェ!?」

 

 

 しかし効果はこの戦いで類を見ない程の抜群振りだった。

 身に取り付いた氷で抑制されている事など知らぬように体を悶えさせ、断末魔をあげる。

 耳の奥を突くような甲高い叫びをあげ続け、即座に消滅した。

 

「ふう……何とか終わったな」

 

 直後に封印が解け、元の凛々しい姿に戻ったプー。

 彼の奇策とも呼べる行動により、信じられない耐久力を誇った巨大ネズミとの苦しい戦闘はこうして幕を下ろしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マグネットヒル』

 巨大ネズミが消えた場所にあった梯子を昇った先。

 

 地下と地上を繋ぐマンホールから外に出た四人を待っていた景色。

 

 そこは周囲を高く積み上げられたレンガの壁で覆われた芝生の地。

 

 有名な大都市フォーサイドの中にありながら、その存在は近くに寄る者にしか反応を示さないのか確認できず、噂だけが一人走りする謎に包まれたパワースポット。

 

 そうやって人間の住む世界から隔離された丘がそこにあった。

 

「あれが金属の塊なんだね」

 

 緑色に染まった地の上にはアイテムボックスと思しき玉手箱。

 そしてネスが注目する中央部には日の光でキラキラと輝く金属の塊。

 マグネットという名の通り磁気を帯びた塊が置かれてあった。

 自然現象の産物か、または遥か昔に住んでいた生命が創造し、奉ったのか。

 ドンと芝生の上に腰を下ろす磁石については完全に謎だった。

 

「じゃあ、ネス。パワースポットの力を」

 長期戦に及んだ巨大ネズミとの戦闘で消耗した体力、精神力の全てをパワースポットという大地が放つ癒しの力による恩恵を受けた四人。

 不思議な力が漂うこの空間で気持ちを落ち着かせる中でポーラはネスにそう告げた。

 

「分かった、じゃあその間に誰かあの玉手箱の中身を回収しといて」

 彼女の言葉通り、自分にしか出来ないパワースポットの力を引きだそうと動くネス。

 一応自分が引き出している間は待機してもらう羽目になるせいか、彼はこんなパワースポットに明らかに不自然に置かれた玉手箱へと目をやり、中身を回収する様に頼んだ。

「よし、俺が回収に行こう」

 彼の頼みを請け負って、今回の戦闘のMVPであるプーが歩いていく。

「ありがとう、じゃあ行くよ」

 続いてネスも三人が見守る中で力の源であるマグネットへと近づいた。

 すると……。

 

 

「………………!!」

 

 

 金属の塊に近づき、目を瞑り集中したネス。

 

 今まででは、ハンバーグの香りや母親の声などが微かに感じられた、彼の経験を蘇らせる様な変化が起き、これまでの音の場所と同様にマグネットヒルでも変化があった。

 

 それは、過去の記憶に刻まれた映像。

 

 赤ん坊の自分を抱く父親の姿、ベビーベッドで初めて赤い帽子を被った時。

 

 二カ所で見てきた映像とはまた違う物。

 

 

 今回彼の瞳に一瞬だけ映り込む形で現れたのは哺乳瓶だった。

 赤ちゃんだった頃の自分が好んでいた熊の絵が描かれた可愛い哺乳瓶。

(懐かしいな……)

 そうしてネスの目には一瞬だが、確かに哺乳瓶が見えたのだった。

 

 

 ♪♪♪~~~♪~♪♪♪

 

 

 そしてネスは続けて『音』を聞き届けた。

 眠ってしまうような優しい『メロディの断片らしき』音を。

 ネスの持っている音の石が確かにマグネットヒルの音を記憶したのだった。

 

 

 

 




 ここまで読んでくださりありがとうございました。
 ヒント→フォーサイド博物館→サイン受け取り→ダンジョンにて戦闘→マグネットヒル。
 この流れだけで二万文字近く行くとは自分でも予想だにしていませんでした。
 さらに好きなゲームの販売もあったせいで少しサボっていたのも理由の一つです、興味を持ってくださっている方には本当に申し訳ないです。
 
 逆に次の物語ではは一ヶ所しか行かないので、ボリューム不足になる感じが100%です、出来る限り内容は深い物にしたいのでまた構成を考えながら書いていきます。
 ボスの巨大ネズミについては徹底的に強化して書かせていただきました。
 この作品オリジナルの強さで描いたので原作とは大きく離れる形です。
 
 勿論原作ではPKフリーズγもかなりのダメージですし、ここまで苦戦はしません。
 私的にこいつはかなり弱いボスの部類の一匹でしたので、面のボスらしいあっさりと倒れない強さを備えさせるに至ったのが理由です(笑)

 
 ライスボウルについても色々とオリジナル展開を加えさせていただきました。
 ゲームの時は只の不審者かストーカーにしか見えなかったので。


 ここでのゲームの感想はよくもまあネス達は嫌な顔一つせず、文句も言う事なくにゴミが浮かぶ下水道を泳いでいく場面が今の大人となってその凄みが伝わってきますね。
 冒険といえども今の二十歳を越えたこの年齢で汚い場所にはあまり寄りたくないので。

 では、このあたりで長い後書きを締めさせていただきます。
 また次のお話でお会いしましょう!
 ではでは失礼いたします! そしてさらば! 今年も一人寂しく市販のチョコをかじっていたバレンタインデー! リア充共がいちゃついていた地獄のバレンタインデー! 


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