mother2 ギーグの逆襲   作:黒まめちこ

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 卒業旅行&帰宅直後に風邪のダブルアタックで期間が開きました。
 では諸々はまた後書きにて、かなりのボリュームになったオリジナル本編どうぞ!


影で支える者達(幕間の物語Ⅳ)

『幕間の物語Ⅳ』

 

 運命とは『縁』という不確定な要素を手繰り寄せ、複雑に絡み合い形を為すものだ。

 

 口にするのは容易いが、詳しい内容の説明となると千差万別の理を持ち、完璧に答えるのは難を要するこの言葉の例として『明日は明日の風が吹く』という諺がある。

 

 これは、先の事を案じても今は何も始まらない為、その都度起こる出来事に身を任せて生きていった方がよいという意味である。

 

 例えばの話、十年後の自分の姿を想像し、雄弁に語る事は出来る。

 

 仮に成人し、二十という年齢で働くと予想してみよう。

 であるならば十歳の時にこの働く姿をイメージして語ってみる。

 クラスの人気者である優しい少年は、動物が好きだから獣医になりたい。

 クラスの中でも泣き虫の少女は、パンが好きだからパン職人になりたい。

 クラスの変わり者の男の子は、絵を描くのが好きだから絵師になりたい。

 

 そう、まだ若いこの時期であれば夢や願望はいくらでも自由に語れる。

 

 時にはヒーローが登場する映像作品や漫画などに影響され、将来は皆から尊敬される様な英雄になりたいと朧げではあるが、可愛らしい希望を抱いて生きて行くかもしれない。

 

 そう、誰であろうと語るのは誰だって出来る。

 

 もしかしたら笑いを得るために誤魔化して答える人物もいるかもしれないが言える。

 

 だが、ここで先に述べた諺を用いて考えてみよう。

 まずは獣医を目指していた優しい少年。

 

 

 彼は五年後に家族と山登りをしていた際に現れた狂暴な熊によって家族を殺される。

 目の前で鋭い牙や太い腕で攻撃され、両親も慕ってくれていた妹も死んだ。

 

 

 唯一、振り回した熊の腕に当たり、突き落とされた崖下で命からがら彼は助けられた。

 天に助けられたとも呼べる貴重な命を拾った少年。

 けれども、彼はやさぐれ、その後毎日を魂の抜けた殻の如く生きた。

 生気を持たず、家に戻っても誰も迎えるものはいない。

 

 果たして彼は五年前の幼く何も失う事の無かった自分の言った希望をまだ抱き、二十という年齢までの残り五年間という時間を生きるのだろうか。

 

 恐らく無理に等しいだろう。

 

 彼は動物、特に熊という存在に激しい憎悪の感情を持ち、下手をすれば獣医という職業事態に【意思の疎通も出来ない、人殺しの獣を助けるなんて】と職自体を恨むかもしれない。

 

 

 では、次にパン職人を目指していた泣き虫の少女はどうだろう?

 十八になった彼女はまだパン職人になりたいという希望を捨ててはいなかった。

 

 必要な資格を取る為に毎日熱心に勉強をし、遂に念願のパン製品を主として扱う企業に採用。

 

 泣き虫だった性格はまだ変わることは無かったが、それでも感情が表に出るため正直であるという点で評価を貰い、夢だった職人になる事が出来た。

 

 

 ならばこのまま二年間続けば予想通りになるのではと思われるが、現実は違う。

 順風満帆な十九の歳を迎える頃には彼女は行方不明になった。

 誘拐事件だった。

 

 

 犯人は逮捕されたが、彼女は二十歳を迎える前に土の中で冷たくなっていた。

 発見された時にはもう手遅れだったのだ。

 彼女はその歳を迎える事すら許されなかった。

 

 

 

 さて、二人を終えトリを飾るのは絵師志望の変わり者の男の子。

 

 彼の十年後は、いや敢えて【二十年後】を覗いてみるとしよう。

 

 なんと、驚くべき事だった。

 彼は未だイラストや講師のオファーが止む事の無い超売れっ子になっていたのだ。

 

 別に専門の学校へ行ったわけでもない。

 ごく普通の、一般の高校、大学へと通い、学生生活を満喫していた。

 ただ絵は毎日の空き時間に練習し、時にはコンクールで最優秀賞を獲得していた。

 

 しかし本人も当時は予想していなかっただろう。

 世の中は厳しいものだと悟り、絵は趣味で生きて行こう。

 そんな思考を持ち始め、ある時から悟り夢を諦めた彼。

 

 けれどもまさか、まさか、最優秀賞を獲得したコンクールの中の来賓に様々なイラストや風景画などを専門に扱う有名企業の社長がおり、自分の絵や技術や明るい性格を大いに気にいりプロデビューを成し遂げるなど、周囲の人間だけでなく己ですら予想しない。

 

 結果として彼は思いもよらぬ歯車の介入により、願望を叶えたのだ。

 

 

 言ってしまえば、人生とは所詮こんなものである。

 

 

 先で何が起こるか分からない。

 

 一人は絶望し、一人は亡くなり、一人は諦めていた夢を叶えた。

 

 必然でも、確実でもない、確定事項も無い現実という運命。

 力を持った予言者でもない限り、それを言い当てるなど不可能。

 まさか? 嘘だろう? どうして? なぜ?

 どれだけこんな疑問を浮かべようとも起こった事実は変えられない。

 運命というたった二文字であるにも関わらず、これほど奇妙で曖昧で正体の掴めぬ言葉。

 

 

 

 

 

『彼ら』も思っていた事だろう。

 一度は退けたはずの脅威と再び会い見え、戦う事になるなど。

 彼らを待っていた運命もまた、誰も予測できない様なものだった。

 

「本当に『僕達』がこうして顔を合わせている事に未だに驚きだ。何年ぶりだろう?」

 

 時はネス達が六番目の音の場所を巡った頃。

 四人はイーグルランドの辺境の地にてテントを張っていた。

 敵達との『戦い』を終えて休息を取ろうと動いていたのである。

 

「本当にそうだよ。私だってまさかこうしてまた君達と一緒に冒険するなんて思ってなかった」

 

 そう仲間に言葉を返したのは土色のコートに身を包む男性。

 妻子持ちで近所の人間にはパパさんやお父さんと呼ばれている彼。

 ニンテンという名前でこの四人のリーダーを務め、顔に若い頃の面影が残っている。

 

「ニンテンの言う通りね。冒険なんてあの時以来から全くだったもの。怖いけど、貴方達と再び会えたのはとても嬉しいわ。もう会う事も無い、思い出と写真だけの存在だと思ってたから」

 

 そう発しながら自分のテントを張り終え、付近の地面から露出した石に腰を下ろす女性。

 手入れの行き届いた美しい金のロングヘアーに、にこやかで優しい顔付き。

 桃色をした腰まで隠れる上着に青白いホットパンツという服装をしている。

 

 彼女もまたニンテンと同じく家庭を築いており、一人娘と不安症な夫がいる。

 名を『アナ』と言い、ニンテンたちと同じくパーティーの紅一点として強力な技で仲間たちを数々の場面でサポートしてきた。

 そんな旧友たちがこうして顔を合わせる事になったのはほんの一か月程前。

 物語はそこまで遡る。

 

 

 

 

 

 

 四人はフォギーランドの地、その北部にある雪国ウィンターズにて合流した。

 ニンテンは当時のパーティーメンバーだったテディによって大まかな現状の説明を受けた。

 かつて自分たちが地球から追いやった悪夢の存在『ギーグ』が再び来襲してきた事。

 そしてその準備は一年程までから預かりどころの知らぬ場所で着々と進んでいた事。

 テディの推測ではあったが敵の企みは恐らく地球人に対する『逆襲』である事。

 長期休暇を取り、元々休暇を使う予定だった家族と過ごす楽しみよりも、今、この時に地球に攻撃を仕掛けてくる敵の脅威から大切な家族を守るべく彼は動きだした。

 仲間の言っている事は的を射ている。

 この目で過去に見た敵船『UFO』の姿も目に焼き付けた。

 そうやって彼は再会した地にてテディから向けられた共闘の申し出を受け入れ、二人は交通機関を利用し、最後はウィンターズで先に待機していた仲間に迎えを頼んだのだった。

 

 そしてウィンターズの中でも人里離れた寒地にて合流し、全員が集まった場所は研究所。

 呼称としてはアンドーナッツ研究所とされる施設の中で改めて話していた。

 

「ロイド。随分と歳食ったな、お前。俺らの中でもダントツでジジィじゃねぇか」

 

 所内の研究机の空いたスペースに腰かけ、リーゼント頭が特徴の男性テディは、見違える程に老けた見た目をした古き仲間にそう笑みを含みながら皮肉を向ける。

 

「まあね、研究に没頭していると思っていた以上に神経を多くすり減らすからね。どうしても老けちまうもんさ。特に今、君に頼まれている代物はね」

 

 ロイドと呼ばれ慕われている人物。

 研究服に身を包み、机の引き出しに隠していたアンドーナツの入った新品の袋を開け、中身を取り出して口に含んでいる白髪が目立つ男性。

 

「今はアンドーナッツ博士だっけ? まさかロイドの事だとは思わなかったよ」

「博士なんてよしてくれ。ただ色んな発明をしていたら誰かがそう呼び始めただけの事さ」

 

 玄関のドア付近で立っていたニンテンの発したむず痒い呼称に、モグモグと好物を食べながら、彼は椅子に腰かけてそう返事をする。

 

「ねぇ、ロイド? これって貴方のお子さん?」

 

 雪が降り積もっていた外とは違い、暖房が効いている所内で暑かったのか、羽織っていたジャッケトを脱ぎ腕にかけて内部を歩いていたアナ。

 上がった二階にて壁に掛けてあった家族の写真を見て本人に尋ねる。

 ロイド側からすれば、家でもある研究所を勝手に見て回られるのはあまり好かなかったが、口の中のドーナツを飲み込むと上から一階をのぞき込むアナだけでなく、場の全員に向けて、

 

「そうさ。みんな驚くかもしれないけど僕は子供がいるんだ。名前はジェフって言ってね。まあ血は争えないって言うのかな。昔の僕みたいな機械いじりが得意な可愛い子なんだ」

 

 冒険をしていた頃はあまり笑わなかった彼だったが、自分の子供の話をしている時は少しだけ笑っていたようにアナ達からは見えたらしい。

 本人からすればまだ子供と分かり合う事は出来ておらず、悲しい気持ちを含みつつの話だったみたいだが、その内心ではぎこちなかったとはいえ元気な息子の姿を拝めたことに喜んでいたのだろう。

 

 

 そうして急遽、集められた過去の世代達は所内に集まって少しの時間の間。

 仲良く一階の中心にテーブルと椅子を用意し、互いが顔を合わせて集まった状態で自分たちの近況報告を話して、今はどうして生きているのかなどで談義をしていた。

 

 かつてのパーティーのヒロインで当時は金髪のツインテールが目立っていた少女アナ。

 彼女は宇宙人達を退け一度世界を救った後。

 

 故郷である雪の町スノーマンの教会にて、ギーグ達に攫われていた母親を無事救い出し、神父を務めていた父親と共に成人するまで仲良く過ごしていた。

 教会内の手伝いをしていたが、結婚はさせてやりたいと両親は彼女をシスターにする事なく、自由に人生を歩めるようにと配慮し、町の中でも有名人として楽しく生きていた彼女。

 

 そして大人になった彼女の元へある男性、人生の伴侶となる人物と運命的な出会いを遂げ、暫くの期間を経た後に、自分の生まれ育った教会にて結婚。

 さらには子宝にも恵まれ、田舎町ツーソンに引っ越した後で可愛らしい女の子を出産。

 

 名を『ポーラ』と名付け、後に両者の夢であった幼稚園を設けた際には、大切な一人娘の名前を冠し、『ポーラスター幼稚園』と園の名を命名し、毎日が幸せな日常を過ごしているのだ。

 

「まさかアナがツーソンで過ごしていたなんてね。世間は広いようで狭いもんだね」

 

 ロイドが入れてくれた温かいコーヒーを口にしながらニンテンは話を聞き微笑んでいた。

 皆が皆、こうして顔を揃えるまで様々な人生を歩んできている。

 

「じゃあ、次は私の話に付き合ってもらおうかな。そうだな、やっぱり別れた後からだね」

 

 彼らの親なわけでもないがしみじみとした気持ちに浸りつつ、彼もまた話し始めた。

 ニンテンのここまでの人生。

 戦いの幕が下りた後もマザーズデイの北部にある家に住んでいた彼。

 毎日の様に忙しく話せるのは電話だけだった父親の跡を引き継ぐように、彼は一般の会社に勤めるようになり、今ほどの忙しさでは無かったがセールスマンとして自宅から通いつつ、その優しさから周囲から親しまれる形で元気に働いていた。

 

 しかし、ある時ふと出会った女性に一目惚れし、女性は彼の持つ正直さと優しさに、ニンテンはどんな時でも明るく振ってくれる女性の性格に魅かれ、将来を誓い合った。

 

 その後、ニンテンは故郷を離れ、アナの住まうツーソンが隣町であるオネットで立派に家を構え、子供を二人儲ける。

 

 初めに生まれた父親譲りの黒髪が生える事となる長男をネス。

 次いでネスが生まれた一年程後に、母親譲りの金髪が特徴となる長女をトレーシー。

 二人の子供に恵まれた反面、毎日が仕事仕事の嵐で忙しいが、彼もまた大切な人が増えた今の人生を幸せに謳歌している。

 

「ネス? 何処かで聞いた事がある様な……」

 

 と、そうした他の仲間の幸せ話が続く中だった。

 

 話で笑いを挟みつつもチラチラと腕時計で刻まれた時間を気にしている人物がいた。

 

 この次はロイドが身の上話を話そうかと、隣に座っていた『彼』のそんな様子に勘付き、ニンテンとアナの二人に比べると若干暗い話になると自覚していたせいか、口を閉じ、促す。

 

 

「テディ、僕の話はいいよ。そろそろ本題に移ろう」

 

 

 座ったまま椅子に空になったアンドーナツの袋を丸めると、彼は隣で時間を確認しているテディにそう話題を切り替えるように仕向ける。

 

 すると、テディは彼にも自分のここまでの経緯を語ってもらいたかったが、時間が惜しい現状では和やかな話もいいが今は少しでも現状を取り巻く話をしたい。

 

 その意思を汲み取ってくれた彼にテディは、

「すまねぇ……ロイド。正直『あの時』勇気が無いなんてと軽はずみにも罵ってしまったお前の話を一番聞いてやりたかったんだが……また今度聞かせてくれ。必ずな」

「ああ、『全てが終わったら』、聞いてもらうよ。絶対にね」

 

 過去の犯してしまった過ちの責任を未だに引きずっていた彼だったが、ロイドの優しい言葉に静かに頷くと、正面の二つの席で会話を聞いていた仲間に向けて話を進める。

 

「じゃあ遮って悪いが、話の主題に移らせてもらうぜ。分からなかったら質問してくれ。可能な限りは答えられる。幾つかあるからよく頭に叩き込んでくれ」

 

 そして彼は温まっていた空気から少し息苦しくなりそうな真剣な雰囲気へと場の空気を変え、今回こうして遠路遥々仲間たちを招集した内容を口にし始めた。

 

 まず一つ目は全員が把握しているギーグ再来について。

 

 技の正体が一切不明で強力なPSIを所持していたこの地球外生命体を倒す事は敵わなかったが、ニンテンたちが様々な地域、時には不思議な空間にて入手した八つの音。

 それは、かつてニンテンの曾祖母にあたる人物で尚且つ異星人に拉致され、後にギーグの世話役をしていたという女性マリアが歌っていたとされる子守歌のメロディーだった。

 彼らはこれら全て集め、敵の親玉ギーグと対峙し、死闘の末に歌の全てを歌いきると、育ての親とも呼べるマリアから向けられた深い愛情を思い出したのか、戦闘の意思を失い、

【ニンテン! また、あおう!】

 そう告げて、母船であるマザーシップと共に地球から退散していった。

 

 

 筈だったのだが……明確な意図は不明だがこうして再び地球へと現れている。

 

「とまあ、ここまではお前達に話した通りだが、次からはロイド以外にとっては新しい話だ」

 

 言ってしまえば『ギーグが帰ってきた』と伝えるだけで、この経緯は覚えている為、敵の狙いは逆襲の意味は? など疑問に残るぐらいでまだある程度飲み込めている。

 

 そうやって簡単な概要の説明を終えたテディは持ってきていた一枚の地図を机に広げる。

 それはイーグルランドの地方を記した地図。

 中でも人里離れた山奥の内容が記載された図だった。

 

「まずはこの地図よりも俺の話を聞いてほしい。これは少し前の話になるんだが」

 

 すると彼は一人だけ座っていた椅子から離れて、場に立って話を始めた。

 一年前、故郷にて宇宙人を見つけてからの自分の行動の一部を語り始める。

 

「言った通り、俺は地元でスターマン達の持っていた資料と己の推測を基にロイドにある装置の開発を頼んだ。それはまあ言ってしまえば『スペーストンネル』って言うSFチックな物だ。もしかしたら必要になるかと思って、メカに強いコイツに頼んだわけだ」

 

 彼は皆が話す自分の方へ視線を向けて、集中し聞く姿を見てさらに言葉を続ける。

 

「だが……問題が起こった。ロイド、これはお前から話をしてもらってもいいか?」

 

 そうしてテディは、考案した計画の中で起きたトラブルについて当たり障りのない部分まで口にすると、話の指揮権を座っていたロイドに移した。

 

「分かった。ニンテン、アナ、聞いてくれ」

 

 注目の矛先が切り替わり、スペーストンネル開発の当事者である博士は仲間からの発言のバトンを受け取って、まだ甘いドーナツの香りが漂っている口を動かした。

 

「あれは僕が一度、テディと会う為に研究所から離れた後だった。そして用を終え僕が研究所から帰って来た時、完成寸前だったスペーストンネルの設計図が丸ごと無くなっていた」

 彼曰く、留守にする際に起動させる隠しカメラで無人となった研究所を監視する。

 一応、中に人がいると見せるために電気は付けっ放しにしていく事にしているが、それでも見知らぬ人間が自分の発明品を悪用する為に無断で侵入するかもしれないと警戒して。

 

 そうして彼は荒らされる前から問題が起こる後の研究所の様子を調べ、二人に事実で告げた。

 

「犯人はスターマン達だった。どこから湧いて出てきたかは知らないが、ここへ入ってきて、迂闊にも僕が机の上に纏めていた装置の設計図だけを持っていった挙句、腹立たしい事に足跡一つ残さずに綺麗にテレポートしていった」

 

 敵の手に重要な物品が渡ってしまった。

 相手の動きが周囲に現れ始めている脅威。

 

 

「………………」

「………………」

 

 その後、本人とテディが目にしたカメラの映像を確認したニンテン、アナ。

 映るのは見覚えのある形をした忌々しい銀色の人型宇宙人の姿。

 覚悟はしていたとはいえ、またこの姿を見る羽目になるとは。

 そういったショックと蘇る苦々しい記憶に挟まれたせいか、今は黙り込み、テディまたはロイドが次の話題を提示してくれるまで、椅子に体をもたれかけて待っている。

 

「よし……、じゃあ地図の話に戻そうか。端的に言えばこの地図に書かれた山は俺とロイドが情報をかき集め何とか見つけた敵のアジトがある地区を記した場所だ」

 

 そんな重苦しい雰囲気が場を包み始めた最中、再び話し手をロイドから自身へと戻すテディ。

 彼は地図を机の上に置き直し、仲間に伝える。

 

 すると彼は置いてあったペン立てから一本の赤いボールペンを取り出すと、地図の中央。

 山中に広がる巨大な森がある部分に丸の印を記した。

 

「この森の中に開けた平原がある。ここに小型ではあったが奴らの基地らしき建物があった。さらには時々、奴らの船であるUFOが離着陸を繰り返してやがった。核心は無いが、フォギーランドとイーグルランドは滅茶苦茶離れた土地じゃねぇ。それにアナと俺で調べてみたが、この近くにあるフォーサイドって都市じゃあ大元へは辿れなかったが、変化が生まれていた」

 

 ニンテンの息子であるネス達がフォーサイドの情勢を狂わせた元凶『マニマニの悪魔』を倒す前の話で、これはテディがこの一帯を詳しく調べるきっかけにもなった異変だったのだ。

 

「それで、俺は様々なメディアから発行されている新聞に目を通した時に見つけたんだ。『深夜に山奥へひっそりと消えるUFO!?』ってフレーズだけがな。まあ、恐らく読んでいる人間の殆どが気付きもしないような、新聞の端の端もいいとこの小さな部分に書かれていた」

 

 そうやって近辺を洗いざらい調べ尽くそうとした途中で、彼はそのニュースの詳細も記されないような極小の文面を決して見逃さずにガッチリと喰らいつき、本格的に動き出す。

 

 手がかりが得られそうなあらゆる場所。

 まずは記事を記載した人物、情報源となった人物と目撃情報。

 空中に光っていた『何か』はどの方向を浮遊していったかなど。

 新聞記者と嘘吹いていなければ、部屋のベランダからそれを目撃したという相手もまともに取り合ってくれなかっただろうと、テディ自身が後に感じ取る程に細かな情報まで得ていった。

 

 

「それで情報通りに動いてみれば、さっき言った場所にぶち当たったって訳さ。まだ乗りこんでない、結構な敵の数がいやがるからな。ロイドには外部との連絡を絶てるようにジャミング装置の準備と起動をしてもらう。乗りこむとするなら残ったこの三人だ。勿論、危険は承知してもらわなくちゃならねぇ。嫌なら降りてもらってもいい。自由だ、どうする?」

 

 

 テディは地図を畳みながら、既に覚悟の出来ているロイドは置いて置き、此度招集されたニンテンとアナの二人に説明を踏まえたうえでもう一度、確認を取る。

 けれども、両者の返事はとうに決まっていた。

 

「勿論、行くさ。これは私達の戦いだ」

「私も。人間の強さってものを分からせてやりましょう」

 

 何も躊躇う事なくあっさりと承諾する。

 そうして彼らはイーグルランドに敵が基地らしき建物を設けたという場所へ向かう為に、テディが事前に用意してくれたそれぞれの武器を受け取り、戦いの準備を整える。

 

 ニンテンは金属製の『スーパーのバット』。

 アナは殴っても変形しにくい『スーパーなフライパン』。

 アンドーナッツ博士もといロイドは前線に立たないサポート役だが、護身用に金属のモンスターに特攻性が備わった『サビサビーム』

 テディは過去にギーグの配下と戦った際に使用していた刀を研ぎ、より鋭く、より切れ味を上げた『KATANA2』を持ち、戦地へと動き始めていった。

 

 ニンテンとテディを迎えに行った際に使用された、研究所外に停めてあるロイド発明のスカイウォーカー二世に乗って、懐かしの四人は向かって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 そうして時は戦闘後、夜も更け各々がテントを張り終えた現在に戻る。

 その後、支部とも呼べる複数の拠点を見つけ日数を費やし、潰して回っていったのである。

 森の中にあった拠点から他の基地の位置を特定し、向かい、制圧した基地で他を捜索。

 

 この循環を繰り返し、十程の基地を停止させ、一か月ほど経過したのだった。

 正直な所、彼らの突然の奇襲はどれも大成功の一言だった。

 ニンテンたちは衰えやブランクがあったとはいえ、小さな頃にずっと戦っていた四人の勘はすぐに取り戻され、相手側は一方的に倒されるばかりであった。

 一番難を要したのが、敵地で暴れる中で情報の収集に必要な敵が設置した端末や、文字は安易に解読できないとはいえ情報の資料を傷つけない様に立ち回ることだったという。

 さらに敵が丁寧に保管してくれていたスペーストンネルの設計も無事回収。

 幾つもの地にそびえていた発電所に似た四角い建物の内部、そして隠し階段から地下に伸びていた広い下層部を制圧し、誰も深手を負う事なく、次いでに今までハズレを引かされていたが、今回は多くの資料を獲得でき、まさに大金星だった。

 

 しかし……。

 

 全員が明かりのたき火を中心にして、集まっている中。

 

 

「嘘だろ!? テディ! 私は『この話』は知らなかったぞ!」

「私もよ……しっかりと私たちに説明して!」

 

 

 テディとロイドが敵地より回収したデータの解析を始めた瞬間、ある問題が浮上した。

 それは、数枚に渡って綴られた資料の記述について。

 責められつつも頭を抱えているテディを含め、全員がその資料の内容に目を疑い、あまりの出来事に信じたくもない様な事が写真を含め書かれていた。

 

 

 その内容とは解読できた部分を地球の言葉で訳して並べると、こうなった。

 

 

『現在、目標、子供四人、名前、ネス、ポーラ、ジェフ、プー、予言通り、集まっている。敵、我々スパイ向かった、ピラミッド、魔境へ近づいている。警告、警告、奴ら、我ら、『核』、近づく、至急、軍を向かわせる準備、子供を殺せ! 絶対に! この報告、受けたら、すぐに『三兄弟様』へ連絡! 絶対! 殺せ! 殺せ!』

 

 

 資料と共に同封されていた写真も、記述してある内容にあった通り。

 ニンテンの子供であり、赤い野球帽をかぶった少年ネス。

 アナの子供であり、自分譲りの金髪をした少女ポーラ。

 ロイドの息子であり、自分と同じ黒縁メガネをかけた少年ジェフ。

 べんぱつ頭のプーという少年は見覚えが無かったが、確かに四人が仲良く並んでフォーサイドの博物館へと歩いていく姿が映し出されていた。

 

 それは報告書に似たものだったのだろう。

 自分たちの最大の障害である存在を消滅させるための決断を下す重要な内容だった。

 

「すまない……そうか、ネスか……。そうだ、あの時谷で助けたアイツの名前だ……」

 

 書類に書かれていた過激な内容からギーグ達から狙われている。

 そして写真に写っていた先頭を歩く少年の姿を確認したテディは思いだした。

 そうだ、自分はかつてツーソンにあるグレートフルテッドの谷にてスターマン達に襲われ窮地に立たされていた少年と少女を救ったじゃないかと。

 

「落ち着いて、ニンテン……アナ……多分、原因はこれだと思うよ」

 

 仲間たちがパニックに陥る中で何とか感情を押し殺し、残っていた資料の解析を終え、資料を手に持ったまま、自分の子供たちが危険な戦地に足を踏み入れているショックを受けている二人に話した。

 

 

「我ら、予言装置、知恵のリンゴ、告げた、ギーグ様、少年少女四人、揃う時、敗北する。お告げ通り、奴ら、我らが同胞、倒して進んだ、これ以上は危険、運命の勇者達、倒す!」

 

 

 宿命と呼べるような何とも奇妙な【運命】だろうか。

 まさかギーグ達を退けた自分たちの『子の世代』が、今度はギーグを倒す役目を担うとは。

 

 

「………………」

「………………」

 

 

 絶句する。

 解読を終えたロイドの発言後に本人を含め、全員が黙り込む。

 鳴り響くのは中央に焚いた木々がパチパチと燃えて弾ける音だけ。

 ニンテンは頭を抱え、アナは両手で顔を押さえ、テディは燃える火をじっと眺める。

 ロイドは落ち込みながらも、資料の続きに目を通して解読を続けていた。

 落ち込んだ表情ではあったが、何か家族の足取りまたは敵の情報を探るべく。

 それでも暫しの時間、沈黙は続いた。

 

 

 誰が話の舵を取ればいいかも分からなくなる程に……。

「今日は休もう。今回は俺のミスだ、あの時ニンテンによく似た子供に会った事を忘れていた。それを覚えてさえいれば……何か変えれたかもしれねぇ……皆悪かったな」

 

 とりあえず今日はショックから立ち直れそうに無い三人を見兼ねて、テディはそう告げた。

 夜も耽り、休んでいないせいで戦闘に消費した体力も満足に取り戻していない。

 疲れが溜まって、その上に精神面に大きな心配事という負担が乗っかった。

 そう彼は思い、今日はこれ以上の会議や話の進展は見込めないと判断し、切り替えたのだ。

 

 ところが……その直後に責められるかと思ったテディに向けられた言葉は。

「すまない、テディ。大声で責めてしまって。君はこれまで頑張ってくれていたんだ。それにどこでかは分からないけどネスを助けてくれたんだろう? とても怒れないよ……ありがとう」

「私も取り乱してしまったわ。その……上手く……言えないけど、頑張りましょう。私たちの決着の為にも、今も戦っているであろう子供たちの為にも戦いましょう」

 

 休息を取ろうと席を外し、テントへと戻っていく二人は場に立って頭を下げていたテディにそう優しい言葉をかけると、これ以上彼に苦しい気持ちになって欲しくないと、必死で取り繕ったであろう笑顔を向けて床に就いていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日。

 

 四人は今朝方に目を覚ますと、スカイウォーカー二世に乗って空を舞っていた。

 どうやらテディが『忘れ物』をしたらしく、ウィンターズへ向かう形で。

 

 元々早起きだったロイドが運転を任される中で、睡眠を挟み気持ちを新たにした所で昨夜の敵地にて得た情報公開をすぐに再開された。

 

 球体の中に広がる少し手狭な空間にて、中央に一つ置かれたテーブルの上に必要な資料を置いていき、テディは眠気覚ましに温めておいたミルクを飲みながら、口を動かす。

 

「まあ、なんだ。とにかく『俺達の為』に戦おう。大切な物も守りたいもの全部ひっくるめて、この星に悪さをしに来た奴らを全員追い返してやろうぜ」

 

 パーティーを励ます為にサングラスを付けたままだったが、彼はそう笑って告げる。

 そして手に持っていたコップの中身を飲み干すと、口周りに残った白い跡をハンカチで拭きとり、ロイドのみ耳を傾ける形で集まった仲間たちに説明を始めた。

 

 

「物事の全容が何となく見えてきた。長いからしっかり聞いてくれ。ギーグの持つ予言装置の知恵のリンゴってやつが四人の少年少女が計画の成就の妨げになると判断を下した。まだ推測の域だが奴の企みは地球への逆襲、そして宇宙の征服だと考えられる。それで奴らは地球へ降り立ち、子供の正体を探っていた。だが『あちら側にいた反逆者の宇宙人』の一人がオネットに降り立ち、リーダーとなる子供の元へ現れた。そう、ニンテン……お前の子供の元へだ」

 

 

 彼はショックから立ち直り、昨日とは別人の様に冷静に話を聞いているニンテンへ視線をやりながら、軽く息を吸い込み言葉を続ける。

 

 

「どうやらその宇宙人。ブンブーンって言う名の宇宙人はネスに予言の事を全部話したらしい。それからネスは地球の凄まじいエネルギーが手に入るとされる『音の場所』というパワースポットを仲間を増やしつつ、今もなお巡っているそうだ。そしてその道中、出会った宇宙人の幹部達を見事に討ち取り、尚且つ順調に冒険を進めていた。だからだろうな、これ以上は『傍観できない』、容赦ない一斉攻撃で倒さねばなるまいと焦り始めた」

 

 

 初めは未熟と脅威にすら感じず、ただ観察でおかしな様子を見せる事があれば、味方を送り込み、小さな芽を摘んでいまえばいいと高を括っていた敵。

 だがネス達の予想以上の活躍のせいで、ゲップ―、別名デパートの怪人ことドムーク・リーダー、マニマニの悪魔まで倒され、人間の脅威が明るみとなった。

 

「しかしだ。俺達にとって幸運だったのは、昨日の攻撃命令が下る前に止められた事だ」

 

 さらにテディの口にした通り。

 攻撃命令が出る直前に彼らは基地を制圧し、連絡手段を潰した。

 ギーグ率いる宇宙軍がこの襲撃に気が付くまでは少なくとも時間稼ぎにはなる。

 それまでに出来る事を彼は続けて話す。

 

「次はこれを見てくれ。敵の基地からパクってきたもんだ」

 

 敵地より持ち帰った両手で抱えられるサイズの携帯端末をいじくり、広がる資料の上に乗せると、立体の図面らしきものを表示させ、仲間たちに見せた。

 それはまるで見取り図の様な物だった。

 

「これは? 何だい?」

「恐らく『地球に潜伏しているスターマンの巨大基地』だな」

 

 映されていたのは昨日制圧した基地の大きさとは比較にならない。

 これも何処かの地下にある物なのか。

 蟻の巣の様に複雑に入り組んだ通路が二層、三層と続き、深部には機械や鉄の壁であちこちが覆われたシェルターの様な場所が広がっている人工的な場所が端末から映されている。

 

 

「!? こんなに大きい基地を奴ら作っていたのか……」

「スターマン達……そこまで手を伸ばしていたのね……」

「驚くのはまだ早いぜ。居場所も突き止めたんだが『これ』何処にあったと思う?」

 

 

 地球でのうのうと基地を建造されていた事に驚きを覚えていたが、テディが苦笑いで投げかけた問いの答えを告げると、最早笑いすらこみ上げてくる程の驚愕っぷりを見せる。

 その答えは……。

 

 

「灯台下暗しとは良く言ったもんだ。まさか『ウィンターズ』の『アンドーナッツ研究所』から少し北に歩いた『ストーンヘンジの真ん中の穴』にあったなんてな。笑うしかねぇよな!」

「「「へっ!?」」」

 

 

 なんと敵の拠点は、ついこの間までお互いが笑いながら身の上話をし作戦会議を開いていた筈の場所から、ものの数分と掛からない地点にあったのだ。

 言ってしまえば隣の家がスターマンの基地の様な感覚だった。

 玄関のドアを開けて外を眺めれば、顔を合わせるぐらいの近さ。

 やろうと思えば気軽に挨拶にも行けるようなそんな距離。

 何故今の今まで遭遇しなかったのだろうと馬鹿さを嘆くほど。

 

 

「まあ……まさかご近所さんがスターマンなんて思わないよね……」

 

 

 ニンテンのフォローもどことなく外れる中で、皆が何とも言えない表情でうんうんと頷くと、テディは、操縦に集中できなさそうなロイドの元へ寄って行くと、

「ロイド、行き先は変更なしだぜ。お前も『忘れ物』あったよな?」

「ハハハハハ……そうだね。僕もとんでもないものを忘れていったみたいだ」

 

 

 

 そうして、その後大人たち四人は敵の大きな拠点であるストーンヘンジ地下へ乗り込むべく、ウィンターズへ到着の後に気合いを入れ直すと、準備を整え戦場へ向かった。

 どれ程の脅威が潜んでいるかも分からずに……無謀に攻め込んでいくのだった……。

 

 

 

 

 




 
 ここまで読んでくださりありがとうございます。
 毎度の長い後書きです。
 今回は身の上話が冒頭に混じっておりますので、苦手な人は無視して他の部分を読んでいただいてOKです。一応これからの投稿ペースについても書いてありますので……もし興味がある方はそこさえ読んでくだされば大丈夫です。
 
 まず初めに無事、先日卒業式も終えてまいりました。
 そして恐らく今回の話か次の話を書く中で学生という休みが無くなり、四月から社会人として働いていくので、その分忙しくなり定期的に小説を投稿できなくなると思われます。投稿ペースとしましては、一か月、下手をすれば数か月の間、この作品から離れる事になるかと思われますが完結はさせるのでまた読みに来てください!
 
 では、ここで話を切り替えまして今回の物語。
 連載当初から書きたい部分でしたので、今回はかなり展開を大きく動かしました。
 そろそろ書かないと『原作本編』との帳尻が合わなくなるので書きました。
 あくまでオリジナルの展開なので、原作をより楽しむ形で読んで頂けたのであれば光栄です。
 挿絵も入れていきたいと考えてはいるのですが、小説を書くと時間的や気力的に絵が描けないので、中々難しい所ではあります。
 大好きな作品の絵を描くのも楽しみ方としては全然アリと思っているので早く追加していきたいです!
 
 さて、それではここまで読んでくださった読者の皆様、今回もありがとうございます。
 この後、期間が開いてしまう可能性が非常に高いですが、また近いうちにお会いできることを願っております!
 ではでは失礼いたします、また次の話にて! それではグッドバイ!

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