mother2 ギーグの逆襲   作:黒まめちこ

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先日作品を見ていただいた方には本当に申し訳ございませんでした。修正も含めジャイアントステップ編の終了まで書きあげました。どうぞお楽しみください。

私自身のこのステージのコメントといたしましては、必殺技覚えないとボスを倒せないと思っていた小学生低学年の自分が懐かしい。




第一の音の番人とジャイアントステップ『改訂版』

 オネットホテル101号室。

 

 戦った後に芽生えた友情からフランクの厚意でホテルに宿泊させてもらったネスは慣れぬ枕に深く寝付けなかったまま、目を覚ました。

 

「あれ?」

 

 だがそれでも休息自体はしっかりとしていた為か、ネスはベットから体を起こしてすぐに旅立つべくリュックサックの中を確認していた。

 

 しかしそこに、ある物が無かった。

 

「折れたバットが無い……それになんだろう、これ」

 

 父親から貰ったバット……もといシャーク団の下っ端との戦いで二つに分離したバットの破片が見当たらず……ネスはその代わりに見たことが無い手紙の封を開いた。

 そしてその中に記入されていた内容は次の通りだった。

 

『ようネス。俺だフランクだ。勝手にリュックの中を漁るようなことして悪かった。さっきの戦いで感じたんだが、お前はバットを使いにくそうにしていたな。もしかしたら使い慣れたバットを持ってたんじゃないかと思って探させてもらった。すると使い古しの折れたバットを見つけたんだ。そこで俺は昔培った技術をもって直してみようと思てよ時間がかかるかもしれないが、後で届けようと思う。幸運を祈ってるぜ親友。ジャイアントステップ攻略を頑張れ』

 

 とそんな彼の置き手紙の他には、餞別としてなのか食料としてハンバーガーが三つとジュース入りのペットボトルが入れられていた。

 

「ありがとう、フランクさん」

 

 そうしてネスはリュックの中身の確認を終えると、ホテル専用のパジャマを脱ぎクリーニングサービスで綺麗に整えられたいつものストライプ模様の服装に袖を通す。

 

「よし! 出発だ!」

 

 意気込みと共に身支度を終えた彼は次の行き先『ジャイアントステップ』があるとされている山に登るための洞窟を目指すべく、ホテルを後にした。

 

 ―― ―― ―― ―― ―― ――

 

 

 

 オネット市役所。

 

 シャーク団を撃滅したという一件で一躍、時の人であるネス。

 先日ではシャーク団の悪さの影響で市長の多忙っぷりに拍車がかかっていたため市長には会えず、門前払いを喰らっていた……のだが?

 

「あら! この前の坊やじゃない。私の後ろをついて来て。すぐにピカール市長に会わせてあげるわ」

 

 しかし、世の中というのは単純であり事件を解決した有名人放ってはおかずに市役所に立ち寄ったネスを受付嬢の女性が発見するや否や、面会の許可が下りていたのか即座に市長の執務室へ案内したのだった。

 

 

「はは……はじめまして、ネスさん。私が市長のピカールという者です」

 

 そして……見事に前頭部が禿げている黒い髪型にチョビ髭。

 さらに小太りしている体した体を黒の正装で身を包み、市長の席に座っているこの男性こそがオネット市長のゲーハー・ピカールだった。

 

「シャーク団をまとめてボコボコにして、殴って、噛みついて、とにかくメッタメタのギッタギタにした挙句、小便までちびらせて……もう二度と悪さはしません、と謝らせてくださったそうで感謝しております!」

 

 ……にしてはやけにネスに対してへりくだった対応をし、市長の威厳という物が感じられず若干お世辞が気にくわなかったのか、ネスは困惑しつつも要件を伝える。

 

「市長さん。実はぼく旅芸人の小屋の鍵をお借りしたくてここへ来たのですが、お借りしてもいいですか?」

 

「えっ……ああ、旅芸人の小屋の鍵ね! 大丈夫ですよ! はい!」

 

 するとピカールは疑う事も無く彼の要望に二つ返事で了承すると、事務机の中から小さな鍵を取り出し慌ててネスの手元に差し出した。

 

「どうぞこちらです。町の英雄であるネスさんの言う事です。きっと町の平和のために役立つことでしょう。ただし、その奥の洞窟でどんなに危険な目にあっても市長である私の責任を…追求しないようにしてください」

 

 とはいえ市長の座になにがあってもしがみ付いて離さない為なのか、町の問題を解決したまだ小さな少年に向かって彼はそう脅迫に近い忠告を告げると、受付嬢へ外に送るように促した。

 

「ああ、ちなみに鍵は返さなくて結構ですからね! もしも私が受け取る所を見られでもしたら怪しまれますからね!」

 

 そしてネスはそんな相手の去り際までもはっきり保身を優先する市長の言葉を聞き流しながら受付嬢の女性に連れられ、市役所の外へとついて行った。

 

 ―― ―― ―― ―― ―― ――

 

 

 市役所を後にしたネスは北上した。

 まずは郊外と町の境目にある図書館へ、そうやってさらにそこから自宅のある北東では無く、北西にある今では無人の小屋と化している旅芸人の小屋へ続く道と向かった。

 

「さあ、覚悟を決めよう。怪物と戦わなくちゃならないんだ」

 

 なお道中では自身に意気込みをかけ、ジャイアントステップ付近に潜む『化け物』と称される生物との戦闘を控えている事を覚悟したり、

 

「知ってるかい? テレパシーってのはねピンチになればなる程すんごい底力を発揮するもんなんだよ。覚えておいてね!」

 

 他にも冒険のアドバイスをくれる事で有名な通称モグラ君や、彼自身がよく遊びに行く際に通っていた生い茂る木々の奥に建てられた秘密のツリーハウスなど、少し前までよく遊んだり話しかけていた存在を見ながら歩を進めて行き、

 

「おや?」

 

 そんなこんなで……歩く事、数分。

 彼は『山中の洞窟』に続く入り口の手前に建てられた、今では旅芸人の宿屋となっているボロい小屋へとたどり着く。

 

「ネス君じゃないか。ここに何の用だい?」

 

 小屋の前には二人の男性が立っていた。

 その二人は少し前にオネットへ参上した旅芸人だった。

 

「こんにちは、おじさん達。実はこの先の洞窟へ行こうと思って――」

 

 

「ダメだダメだ。あの洞窟は危ないぜ。それにこの先は進めねぇよ。フランクとかいう悪ガキが悪さをするってんで、市長が勝手に閉めちまいやがった」

 

「ああ、そうさ。おかげさんでここにこっそり居候させてもらってた俺達は荷物を回収する間もなく追い出しさ。ホテル代だって馬鹿にならないのに」

 

 そして彼らの話す事実としてはこの小屋は元々知り合いが住んでいたのだが、当の本人が別の町に移住してからは誰からも入居される事が無かったらしい。

 そこで家主の知り合いだった二人はオネットを訪れた際にそれを思い出し、警察の目を盗んで暮らしたらしい。

 

「大丈夫、ここに鍵があるから。それ!」

 

 ガチャリ!

 

 対してネスはそんな暮らす所を没収され、着替えや財布を取れずに野宿していたであろう二人の汚れた姿を見てすぐにドアをがっちり固定していた錠を外した。

 

「おお、ありがてぇ。今までポケットに入ってた小銭で生活していたからな。これで旨い物たらふく食えるぜ!」

 

 するとそんな旅芸人の片方が開いたドアに飛び込む様にしている傍ら、

 

「ネスありがとよ。代わりといっちゃあなんだがこのお守りを受け取ってくれ。冒険の何かの役に立つかもしれん」

 

 ネスの恩義を感じたもう一人は懐から取り出した黒色の封を為されたお守りを手渡す。

 

「ありがとう、おじさん。早速持っておくよ」

 

「おっ、そうだ。お前の行こうとしてる洞窟だがな。そこを越えたあの高台の上には大きな足跡があるって噂だぜ。まあ、俺は見た事ないが行くなら気を付けて行ってこいよ」

「確か『ジャイアントステップ』だって名前だったかな。ジャイアントにステップって中々粋な名前をしている場所があったもんだよな」

 

 そうして旅芸人の二人はネスがその危険な場所へ向かおうとすることも知らずにそう助言すると、日が空きくたびれていた荷物を背負って旅芸人の小屋から去っていった。

 だがネスは荷物をまとめた旅芸人たちが去っていくのを見送ると、小屋の先にある洞窟めがけて進むのだった。

 

 ―― ―― ―― ―― ――

 

 

『ジャイアントステップへと続く洞窟』

 

 そこはまるで洞窟とは思えない場所だった。

 異様なまでに天井が非常に高く、まるで山中の殆どをくりぬいたのではと疑わしい程に広々とした場所。

 さらに所々で隙間から日が差し込んでいるせいか、先の景色は確保できるが……。

 

「チューチュー!」

「うわっ!?」

 

 だが、それでも警察が危険地帯と認定し閉鎖していた場所。

 よってそんな危険地帯に足を踏み入れたネスは当然……。

 

「いてて……回復をしないと」

 

「チュチュチュ……」

「ニュルニュル……」

 

 その洗礼を受けていたのだった……。

 洞窟の環境に適応し強くなった二足歩行の凶悪なネズミ『ぐれたネズミ』とこのジメジメとした洞窟の環境を好んで、数を増やし続けている『むこうみずなナメクジ』の二匹がタッグを組み、見慣れぬ来訪者のネスの前を阻んでいたのだ。

 

「ぼくは戦うぞ!」

 

 しかしネスも覚悟を決めた身。

 力強く握ったバットを前に構えると、ぐれたネズミの一か八かの飛びかかり噛みつきに対してすぐさま回避を行って反撃にネズミの頭めがけてバットを振るった。

 

「キュッ!? キュキュ……」

 

「くそ……上手く当たらなかったか」

 

「チュッ! チュチュ!」

「ニュルルル!!」

 

 だが手応えが薄く、大人しくならずにネスへの攻撃を再開。

 さらにナメクジたちも微力ではありながらも数で圧倒している為、同志たちがネスに殴られ撃退されようとも果敢に敵へと攻め込む。

 

「なんて数なんだ……これじゃあキリがない」

 

 そしてさらに悪い事に反響の大きいこの洞窟内という事もあり、敵を倒しても倒しても洞窟の奥から騒ぎを聞きつけた敵達がどんどん押し寄せてくる為にネスの体力はみるみる失われていき……敵を全滅させる事が出来ずにヤキモキとしていたのだが……。

 

「何か良い手段は……あっ!」

 

 するとその瞬間だった。

 敵達から視界を逸らした彼は上層へと繋がるロープを発見する。

 

「よし……戦いはこれくらいで大丈夫だ。急がなくちゃ」

 

 そしてネスは敵を倒していく中で敵の勢いが収まってきたところを見計らいダッシュ!

 ロープめがけて一目散に走っていき、敵が呆気に取られている内に掴んで上層へと上がって行った。

 

「チュチュ……」

「ニュルニュルリ……」

 

 さらに幸福にもネズミ達は戦線を離脱したネスを深追いせずに、これ以上の戦闘は不要と諦めたのかロープを伝い上がる彼に何か妨害をする事も無く撤退していったのだった。

 

「ふう……良かった。これで先に進める」

 

 こうして敵の襲撃を逃れ、危ない目に遭いながらもなんとか危機的な状況から離脱出来た彼はロープを昇りきった後に、ネズミの噛みつきなどで傷ついた体を『ライフアップ』で回復させて、ジャイアントステップのあるとされる頂上へと続く道を歩んでいった。

 またその後についてもネズミやナメクジはいたのだがネス自身も少しは成長(レベルアップ)しているようで、次第に敵の攻撃の仕草を把握して勢いよく洞窟を進んでいくのだった。

 

 ―― ―― ―― ―― ―― ――

 

『山の中腹部』

 

 続く戦闘の数々でくたびれたネス。

 そんな彼の頑張りに対するご褒美というべきなのか、ロープを上がり進んだ場所には屋外の開けた場所があった。

 

「ふう……どうやらここには敵、いやここはぼくの好きなRPGでいうならモンスターが出てこないみたいでよかった」

 

 なお洞窟の構造としてはこの二階に位置する屋外のエリアから、また別の入口を経由して洞窟を進み山頂に向かうという形であり、

 

「さて、一旦休憩だ」

 

 ネスはその半時間ほど前に見た旅芸人の小屋を見下ろせる場所で腰を落ち着かせていたのだった。

 すると……そんな敵の襲撃から免れた事に気が抜けたのか、

 

 ぐうう……。

 

(ふう、少しお腹すいちゃったな……そうだ、フランクさんから貰ったハンバーガーを食べようっと)

 

 そう見事な腹の虫が鳴らしたネスはリュックサックからハンバーガーを取出し、普段は誰も7立ち寄らない高所からオネットの絶景を堪能して空腹を満たすのだった。その口周りをソースで汚しながら味と景色の両方を満喫していた。

 

 

(モグモグ……でもフランクさんの言った通りだ。ずっと使ってみて分かったけどこのバットは少し重たいや……)

 

 すると二つ目に手が伸びた頃だった。

 彼は長年使ってきたバットでは無く、昨日購入した新品のバットについての違和感を改めて覚える。

 現在フランクが修理中の父親から貰ったバットに似ているとはいえ、流石に愛着や慣れが影響しているせいかその違和感は拭えなかったのだった。

 

(でも……今はそれを深く考えている場合じゃないね)

 

 だがそこは彼の今思った通り。

 ここで喚いてもバットが戻る訳では無い為、口に含んでいたハンバーガーをジュースで流し込むと、

 

「ごちそうさまでした! よしじゃあ冒険を再開――」

 

 ジューシーなお肉たっぷりのハンバーガーを食べて体力(HP)を回復した彼はすぐに活動。

 先へ進む為の入口を目に入れて向かおうとした……のだが?

 

「うん? 何だろう、あの蝶々の群れ?」

 

 そんな意気込んでいた彼の前に『ある生き物』が現れた。

 綺麗な紫色なその輝きを纏う不思議な蝶の大群が……。

 

(ゴクン……これは確かマジックバタフライ?)

 

 ネスに魅かれるようにして、彼の頭に止まりしばらくの間逃げる事無く羽を動かしていったのだった……そうすると?

 

(ひゅう…………なんだろう……凄くリラックス出来る……)

 

 マジックバタフライ。

 それはまるで優しい母親の子守歌のような癒しをもたらしてくれる事で有名な蝶だった。

 頭や肩など乗った箇所に応じて回復を促すという天然の回復ポイントとなるという。

 

 だが……彼らは同時に非常に臆病な面も持ち合わせており、癒しを与えた後はすぐに姿を暗ませることでも知られているため数匹の群れを成していること自体が稀なのだが、少なくとも邪気の少ない子供であるネスは警戒されなかったのだろう。

 

「うーん! 一晩寝たみたいに楽になった!! ありがとうマジックバタフライ!」

 

 パタパタパタパタ……。

 パタパタパタパタパタ。

 

「うんうん、それじゃあね! 君達も達者で!」

 

 そうしてネスはマジックバタフライのおかげでとてもリラックス出来たネスはテレパシー技を使う際の精神力(PP)精神力を回復させ、改めてその場から頂上へ繋がる洞窟へ進んでいくのだった。

 

 

 ―― ―― ―― ―― ―― ――

 

 

 ……先の休憩所でリラックスしたのも束の間だった。

 

「こいつ……もしかして同じ回復の力を使えるのか!?」

 

 ネスは拳くらいの大きさしかないような、強そうには見えない小さな相手の持つ実力に驚かされていた。

 噛み傷、ひっかき傷など力もあり、自身の傷を癒せる相手。

 黒い体に、緑色と赤色の球体を先端に付けた触覚が特徴の相手はなんと『アリ』だった。

 

「痛っ! さっきのネズミと同じくらいの力だ!」

 

『アリアリブラック』と呼ばれるその生命体は、仲間で行動する事が多く、少ない場合は周囲から呼び寄せる事で常に数をキープする特徴があった。

 そして不思議な力を持っているのか、ネスと同じでそれらは連携して回復を行う事が可能なのである。

 戦闘不能状態まで弱らせなければ、決して倒れぬアリアリブラックたちにネスは先程回復したはずの体力を奪われて苦戦していた。

 

「よし……これで終わりだ!」

 

 小さい体の敵を相手に数分にも及ぶ戦いを繰り広げた果てに、ネスは何とか最後の一匹を撃退して、戦闘は幕を下ろした。

 しかし苦戦が続いたおかげか戦闘にも慣れただけでなく、ガッツや防御能力やパワーにも僅かながら成長していた。

 自身では自覚は無かったものの、確実に彼の精神や肉体には変化を及ぼそうとしていた。

 

「恐らく、ここの上に行けば……頂上へ着くはず」

 

 戦闘を終えて、洞窟を進んだネスの前には休憩スペースへ入る前に昇っていたロープと同じものが垂れており、上へと進むことが可能だった。

 彼が頂上へ着くと考えていたのは、ロープを伝った先が高いはずの天井に近い場所へと繋がっていたからである。

 

「ジャイアントステップまでもう少しだ……頑張ろう」

 

 ロープを伝いながら、次第に頂上へと距離を埋めながらネスは気合いを入れ直し、進んでいく。

 

 そして……。

 

「ハァハァ……着いた」

 

 上がって来た場所を見返すと、少し寒気がする位の高さを無事に昇りきった彼は息切れを起こしながら、進む方角へ視線をやる。

 

「えっ?」

 

 その瞬間、ネスは思い出した。

 

「これが怪物?」

 

 視線の先にある頂上へ続く出口を通せんぼしている存在。

 神々しい光に身を包み、正体をおぼろげにしている神秘的な存在こそジャイアントステップのパワーを吸い取った怪物だった。

 

「どいてはくれる訳ないよね……」

 

 光を放つ生命体にネスは語りかけると、相手はなんと人語を解して返答を行った。

 

「よく来た。ここは1番目の『お前の場所』だ。しかし、今は私の場所だ。奪い返せばよい。……できるものなら」

 

 言葉に反応したネスはすぐさま武器を構え、戦闘態勢に移った。

 

 バシュッ!

 

 すると何かを打ち消すような音を上げると生命体を覆っていた光が消え去り、相手の姿が鮮明な形となって現れる……そしてその番人の正体とは、

 

 

「なんて……大きなアリなんだ」

 

 

 そう銀色と黒色の縞模様をした巨大な蟻だった。

 そしてその見る者に威圧を与えるギラリとした眼光、そこで生息していた生物がジャイアントステップの力を吸い、異形となした魔物である事を裏付ける特徴。

 

「コイツ、さっきのアリの王様みたいな奴なのか……」

 

 さらにネスがそう考えるに至った根拠は、さっきまで戦っていた蟻たちと同じ緑色と赤色の球体が先端に付いた触覚からだった。

 

 

「ギシュウゥゥゥ……」

 

『巨大アリ』

 

 

 そんなどこかの有名なコピーライターが名を付けたのかは不明だが、それこそがこの生物の名称であり、ジャイアントステップのパワーを吸い取り、進化を遂げたアリアリブラックの親玉にしてパワースポットの番人。

 

 その異様に発達した太い二本の足で全身を支え、まるで人間のように立ちはだかる姿はまさに怪物。

 さらに移動する際に不要となった残った六本の太い腕を自由に動かし、ネスがいつ攻撃してくるかの動向を伺っていた。

 

「行くしかない! 怯えていたって何も始まらないんだ!」

 

 けれどもネスは決して怯む姿勢を取る事無く自分よりも一回り大きな肉体を持つ番人にバットを握って、勢いよく立ち向かう。

 

 バゴッ! と鈍い音が戦場もとい洞窟中に響き渡る。

 それはネスのバットが巨大アリの腕に命中した音だった。

 鋼で出来た棒に変貌したその逞しい腕に命中したが……。

 

「うわっ!?」

 

 ダメージは僅かだったのか、巨大アリは腕を大きく振り回しバットごとネスを吹き飛ばした。

 さらに鋭い牙を携えた口を大きく広げて、彼へ飛びかかる。

 

「くそ……これでも喰らえ!」

 

 ネスはすぐさま体制を整えると、まともに受ければ致命傷になりえるその噛みつき攻撃へ対抗した。

 

「グギッ!?」

 

 ネスの決死の対抗手段により頭部を前に突き出した巨大アリの噛みつきは完全に決まることなく失敗する結果となる。

 

「うぐっ……ハア……ハア」

 

 腕に牙こそ突き刺さったものの、彼の渾身の力で振るったバットは見事に相手の脳天に直撃した。

 グチャリと頭部にめり込んだ痛々しい音と手ごたえもあり、

 

「ぼくは……勝てたのかな……痛っ!」

 

 相手の狙ったであろう体ではなく、致命傷になる可能性が高い胴体を防ぐと同時に、武器を振るう為に彼は腕を犠牲にした。

 しかし、そのおかげで巨大アリは激痛を感じたのかネスの腕から牙を外し、今ではフラフラとして意識が朦朧となっていた。

 

「か……回復しなきゃ……」

 

 腕に残り、血が滲み出ている噛み傷の治療にネスは専念していた。

 

「ぐっ……むぐぐ、ハア、ハア、でもこれで……あとは止めを」

 

 一時的ではあったが、バットの攻撃で頭から緑色の体液を出す巨大アリから目をそむけ、酷く膿んだ傷口に消毒液を当てる様な回復の痛みに耐えていた。

 そして穴の開いていた傷口は、ネスのライフアップにより瞬く間に治癒させると、ネスは視線をあげてもう一息で倒すことが出来る番人の方を見た。

 

 

「あ……え? 嘘でしょ……」

 

 

 すると……ネスの目に映ったのは絶望そのものだった。

 まるで時が遡った、はたまた全く同じ姿の双子か。

 

 

「傷が治ってる……そんな」

 

 

 巨大アリは仲間を呼んでいたのだ。

 勿論、同種族であるアリアリブラックを……。

 ネスと同じ『回復』を行えるアリアリブラックを……。

 

「はは、ははは……そうだよね。親分だもんね、部下も呼べるよね」

 

 巨大アリと戦う前のアリアリブラックとの前哨戦において、技を使う為のテレパシーの元となる精神力、体力も消費していたネスは最早敗北を悟りつつあった。

 今さらロープを降りて逃げる隙など無い、だが目の前の強敵は呼び出した二匹のアリアリブラックを率いて、完全に戦闘前同然の状態にまで戻っている。

 

「ギギギギ!」

 

 戦闘開始と共に人語を扱う知能を失ったのかは不明だが、巨大アリは腕を勢いよく振り回して、戦意を喪失したネスへ近づいてきた。

 恐らく、鉄棒のような腕の連続攻撃を受ければ彼は弾き飛ばされ、果てにはローブで昇って来た高さ十数メートルのこの場所から叩き落とされ、ひとたまりも無くなるだろう。

 

(ぼく、負けるのか)

 

 ネスはジリジリと警戒しながら、腕をブンブンと乱暴に回して近づく巨大アリの巨躯を見た後に、目を瞑った。

 何もかも諦めたその時……彼にある変化が起こる。

 

 

『お主たちは前だけを向いて真実だけを追い求めるのじゃ。挫折や……悲しみで歩みを止めてしまう事もあるじゃろう。だが絶対に途中で諦めて……来た道を戻ってしまう事だけは止めるの……じゃ』

 

 

 彼の脳に直接語りかけるかの如く、メッセージは伝えられた。

 

(これは……ブンブーンさんの……)

 

 それは命の恩人の遺言だった。

 走馬灯というわけではないが、絶望に達した彼は自身の奥に残っている強い意志が込められた言葉を思い出すと、

 

「諦めちゃ……ダメなんだ。そうだ、ぼくは託されたんだ。ブンブーンさんから託された大切な未来を守るため、家族を守るための手段を!」

 

 ガツン! と戦場に一つの音がこだました。

 

「グギャ!」

 

 ネスはジャンプすると同時に、向かってきた巨大アリの体めがけてバットを横に大きく振るったのだ。

 巨大アリは彼の重みのある一撃に部下のアリアリブラックがいる方向へ飛ばされ、壁に激突するとバランスを崩していた。

 

「キキ……キキ!」

 

 アリアリブラックの二匹は飛ばされた親分の姿に驚きの様子を見せながら、また治癒を行っていた。

 よって少年の決死の攻撃は無駄に終わり、戦況は仕切り直し。

 

 ……に思われたが、この回復の隙こそが戦闘の勝敗を別った。

 

 

(なんだろう……負けたくないって気持ちから凄い力が湧いて来る。ぼくの体全体に何か強い力が湧き上がってくる)

 

 

 戦闘の訓練と強化されたテレパシーの力がネスを進化させた。

 そして体の底から湧き立つ力を感じた彼は広げた手を相手に向けて、最も自分の中でカッコいい言葉を技名として言い放った!

 

 

「行け! ()()()()()!」

 

 

 それは数日前に見た宇宙人のスターマンがネス達に放ってきたファイヤー、そしてブンブーンを殺害したビームと同じ強力な攻撃技。

 バチッ! バチッ! と青、赤、黄色の三色が入り混じった不思議な配色の火花が幾重にも相手の眼前で現れては消えるを繰り返す。

 

「終わりだよ。全部の力をこの技に注ぎ込んだ」

 

 直後……彼の言葉は現実となった。

 その粉塵爆発のように散っていた火花自体が次第に集約されていき……やがて。

 

 ボボボボンッッッ!。

 

「ギギッ!? ギギャアアアアアア!」

「「キキキキキィィィ!!」」

 

 そんな破裂音と共に強烈な大爆発が発生。

 目の前に巨大アリは勿論の事、後ろに隠れていたアリアリブラックごと焼き払われるようにあっと言う間に消えさり一瞬で戦闘は終わったのだった……。

 

「今度こそ……勝てた」

 

 そうしてネスは初めてとなる強力な必殺技を使い切った反動からか、酷い疲労感に見舞われながらも番人がいなくなった洞窟を後にして外の光が差し込む出口へと向かっていった……その()()()()()に繋がる出口へと。

 

 

 ―― ―― ―― ―― ―― ――

 

 

『ジャイアントステップ』

 

 それはネスが暗い洞窟から太陽の光差し込む外へ出て目撃した場所であり、草地の上にくっきりと残った巨大な足跡だった。

 なおこの足跡が発生した経歴はいまだ謎であり、学者たちの中でも議論がなされているが巨人の足跡(ジャイアントステップ)巨人の足跡に似ているとされた事からそう名付けられたそうだ。

 

「ここがジャイアントステップ?」

 

 疑問を発しながらネスはミニサイズのクレーターの如く地を抉った足跡へ近づく。

 すると……。

 

《ワンワン!(初めまして、僕は君が生まれる前から君のパパやママに飼って貰ってたポチって言うんだ。確か名前はネスだったね、これからもずっとよろしくね!)》

 

「………………」

 

 すると……ネスは()()を黙って見ていた。

 ただ……先程の疲れが嘘のように静かに見ていた。

 

 ジャイアントステップに近づいた影響なのか、彼の中に浮かぶ映像。

 ボヤーっとではあるが、脳裏に浮かぶその記憶の片鱗を。

 ♪~♪~~♪と鳴り響く不思議な音の波長に乗った記憶を。

 ネスの目には確かに一瞬、小さなむくイヌの姿が見えたのだ。

 

「はっ……今のは、ぼくの……」

 

 そして……ネスのリュックサックの中にある『音の石』は巨大なエネルギーが眠るジャイアントステップの音を記憶した。

 

 

 特定の人間に反応するパワースポットというフランクの言葉通り。

 まだ眠ってこそいるもののジャイアントステップはネスの失われた体力や精神力を全快させるだけでなく、覚醒の手助けとなるパワーを与えたのだった。

 

「ブンブーンさんから貰った音の石。確かに今聞いた微かな音が記憶されてる」

 

 するとネスは一度意識を集中させ、音の石に耳を傾けると先程の記憶と共に聞いた音楽の切れ端のような部分の音が入力されている事を確認したのだった。

 その何処か懐かしさすら覚える奇妙なメロディーを……。

 

「よし、オネットへ戻ろう」

 

 こうして……無事にパワースポットの恩恵により体を完全に回復させたネスは洞窟へと入っていった元来た洞窟へと入っていくのだった。

 




家のスーパーファミコンの影響もあり、時々ここをクリアした辺りで画面がバグったり、起動時に上手くいかずに何度もやり直していたら記憶が消えたりという事が多かったので、ここは何度もやり直した記憶があります。
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