特にキャラクターの心理描写を書いている時の自分が一番盛り上がっていたと思います。
『ハッピーハッピー村』
ツーソンから東へ進み、グレードフルデッドの谷を抜けた先にある谷の窪みを利用し、開拓された村。
元々住民の数は50人ほどであったが、現在ではある理由から訪れる者が多くなり、中には永住しようと考えるものが多いそうだ。
「何だか不気味な村だ……」
モンスターやロボットたちの包囲網を上手く掻い潜り、少女を救うべく谷を越えて来たネスは、村の様子を見てそんな率直な意見をこぼした。
普通であれば住民の家は余程の共通した意識や、規則に縛られでもしない限り、個性が出るものである。
木で組まれた小屋のような素朴な家、レンガで組まれた強固さが感じられる家、コンクリートで固められたような冷たいイメージの家、屋根においても様々な配色、赤や黄色、緑など気に入った家に住もうとなるものであるが、このハッピーハッピー村は全くと言っていいほど違った。
(村中の家だけじゃなくて、良く見たら牛さんまで『青色』に染められてる。どこもかしこも青色だらけだ……)
ネスの考えている通り、建造物から家畜までこの村の殆どは青色に染められていた。
家の屋根から土台に至るまで青や青紫など青を含んだ色をペンキで塗りたくられており、家の付近には大量のペンキの空き缶やペンキブラシが置かれている。
「ブルーブルー! 随分と奇抜な色の服を着た子ねぇ」
「おいおい、お前のその服、幸せそうじゃないな。もっとブルーな色にしねぇと不幸を呼んじまうぞ」
「まあ! おかしな子供! 近寄らないでくださる!」
異様なのは村の光景だけでなく、住民も同じだった。
青色の服、青色の靴、女性であれば青色の口紅、髪の色も青色、果てに一部の住人はそれぞれの手に青色のペンキ缶とペンキブラシをずっと持ち歩いている人物。
額にハッピーハッピー村のイニシャルであるHHと書かれた顔まで隠れる青一色のローブに身を包んだ者。
(ここでは、何があったんだろう?)
赤帽子だけでなく、黄色と青のストライプ模様の服まで着ているネスは、異質な住人達から色の関係で避けられ、話を聞いてもらえずにいた。
「出ていけ! このガキンチョ!」
「もっとブルーになってからこの村に入ってこい!」
中には言葉が乱暴な人間もおり、特にローブ姿の人間からは物を投げられるまでに至っている。
「村の人から聞くのはダメそうだ……とにかくポーラって子がいる小屋に繋がる場所を探そう」
村から北上した場所に少女ポーラが捕まっている小屋があるのはハッキリしているため、ネスは情報を聞かずに単独で動く。
青色に染まった村人たちから冷たい目線を向けられ、中には消えてしまえなど恐ろしい言葉が耳に入りながらも、ネスは村をくまなく散策し、北へと続く空洞を発見する。
(よし、これ以上ここにいては怖い……から、急ごう)
理不尽な罵詈雑言を浴びせられ、精神的にも影響が出ていた彼は逃げ込む様にして空洞内を一心不乱に走り、光が指す出口へと向かっていった。
空洞を抜けたネスは無事に少女が捕えられている小屋へとたどり着き、錠前といった物もかけられておらずに中へと侵入することが出来た。
先程の村とは違い、色合いも白が基調といった普通の小屋の中に入ったネスの目に入ったものは……。
「誰?」
内部の広いワンルームの半分を区分けするように設計された鉄格子の牢屋だった。
その奥でクマの人形を抱きしめながら、来訪者を怯える様に見つめる金髪の少女、ポーラの姿があった。
「君がポーラちゃん?」
鉄格子に近づきながら、少女の姿をネスは確認する。
親譲りの金髪に膝まで隠れるピンク色の服を着た可愛らしい少女、ネスは初めてその目で仲間の姿を見たのだ。
「初めまして……なのかな? ぼくはネス。君を助けるためにここへ来たんだ」
ポーラは牢屋の向こう側にいる少年の名を聞いた途端に表情を柔らかくして、クマの人形を置くとゆっくり近づいていった。
「ネス……来てくれたのね。ありがとう」
格子の隙間から手を伸ばし、彼女は自身を救いに来てくれた勇気あるヒーローに触れようと動いた。
「困っている人は助けるよ。例え捕まっていてもね」
ネスも不安で一杯だったであろう少女の手をしっかり握りしめ、励ます意味も込めて笑顔でそう返事をする。
「ありがとう……本当に私……怖かった」
救世主に温かい言葉をかけてもらい、ホッとしたのか彼女は溜め込んでいた涙を流しながら、しばらくネスに手を握ってもらっていた。
ポーラは家族から引き離され、見慣れないおかしな服装の連中とばかり顔を合わせていたため、怖かったのだろう。
ネスもそれを承知して、今は事情を聞かずに彼女の近くで恐怖が消えるのをゆっくり待ってあげていた。
こうして彼は運命で繋がれた仲間を見つけたのだった。
「ふぅ、ありがとう……もう大丈夫。ごめんなさい、詳しい話もせずに泣いちゃって」
少しの間、温かいネスの手を握り、感情を外へ出したせいか落ち着いた表情を取り戻したポーラ。
「ぼくだって、同じ事になったら泣いちゃうよ。だから気にしないで、君は今まで耐えて、よく頑張ったんだ」
こんな鉄格子の奥で食事等はしっかりとしていたとはいえ、外にも出られずに閉じ込められた状態だった彼女の事を思いながら、ネスはそう返した。
「貴方は本当に夢に見た通り、優しい人なのね。今顔を合わせたばかりだけど、貴方の事は良く知っている気がするの。まだ一緒に冒険できないけどよろしくね」
以前からネスとその仲間たちと世界を救うという事を、彼と同じ強力なテレパシーで感じ取っていたのか、そう口にした。
「ぼくの事はネスでいいよ。君の事もポーラ……でいいのかな?」
「ええ、これからの冒険を一緒に行くんですもの。それに、私はちゃん付けがあまり好きじゃないの」
二人の呼び方が決まり、ネスはすぐに質問を口にする。
「ポーラ、このハッピーハッピー村ってもとからこんなおかしな所だったの?」
明らかに普通とは言い難い、何かの異変があった村の現状に早速ネスは尋ねる。
するとポーラは首を大きく横に振り、否定すると理由を口にした。
「いいえ、ここは元々普通の村だったわ。でも私が攫われる少し前におかしな集団がやって来て、ここの村長だったカーペインターさんに金の像の贈り物をしてから、彼自身が青色こそ幸せの象徴というブルーハッピー教って宗教を始めたらしいの」
オネットの警察から聞いた話、ツーソンのトンチキから聞いた話などがここに集約する内容。
「それから私を女神って言って、少し太った少年と青色のローブの人達に強引にここに連れられてから、村長さんの言葉が何かの力を持ち始めたのか、住民の人達の心を次々に鷲掴みにしたらしくて、今では青色以外の存在は悪で滅ぼすべきだと過激な人も出てきているそうなの」
時折、彼女を女神と崇める村の住民達から聞いた情報をネスにそう伝えると、ポーラは部屋にある木箱の中から村の一部の人間、恐らく狂信者が着用する服だったであろうローブを取り出して、格子の隙間からネスの元へと置いた。
「金の像が何か、どうして私が捕えられたか分からないけど、とにかく村に馴染むにはこれを着た方が良いわ。元々少年用のサイズが残っていたから良かったわ」
「分かった、とにかくカーペインターさんという人に話を聞いた方が良いんだね」
新品の服独特の臭いを感じながら、ネスはローブに袖を通して、村人たちに拒絶されない青色の姿となった。
「そうね……。あっ、そうだわ。これを持っていって」
ローブに身を包んだ彼に向けて、ポーラは続いて小さなバッジを手渡した。
「これは?」
「フランクリンバッジよ、カーペインターさんは雷を使う事が出来るようになったって噂を聞いたの。そしてそのバッジは雷や光を反射できるようになるの。もし戦うような事になったら役に立つと思う」
中央のギザギザの雷マークにフランクリンと書かれたその不思議なバッジを貰うと、ネスはローブの下に隠れた縞々服の胸部へ装着した。
「気を付けて……幸運を祈ってる」
自分の為に戦ってくれるネスへ、ポーラはネスとは違った特殊なテレパシーで祈りをささげた。
「……温かいや、ありがとう、ポーラ」
彼女の祈りの効果か、彼のPSIを使う際の源となる気力を回復してもらうと、必ず戻ってくるからと一言残し、小屋の出口へと向かい、ドアノブを捻ると外へと飛び出していったのだった。
「!?」
ポーラが幽閉されていた小屋を飛び出したのも束の間の出来事にネスは驚きの表情を浮かべる。
「や、やっぱり……君の仕業だったんだね」
中にいるポーラに不安をかけまいと、彼は扉をキッチリ閉めると、『小屋の前で待ち伏せしていた』者達の方へと歩いてゆく。
「太った子供……それにイタズラ好きな子供って言うと……ポーキー、ましてやオネットにいた人なんて君以外にぼくは知らないよ」
彼の発言通り。
脇にハッピーハッピー村の信者を従え、その間で堂々と口元に笑みを浮かべて出て来た異端者を見るのは、ネスの悪友、ポーキー・ミンチだった。
「ネス! 聞いたぜ。なんでもあのストロング署長を倒して、ツーソンへとやって来たそうじゃないか」
金髪で目元が隠れて詳しい表情までは読み取れないが、ポーキーはジリジリと距離を詰めながら話を始める。
「でも俺様だって強くなったんだ、前までビビりだったが今ではあのカーペインターさんに金の像をあげ、取り入ってから教団の幹部にまでしてもらったんだ、凄いだろう。世渡り上手とはこの事を言うんだぜ、へっへっへっへ」
彼の特徴のあり、何度も聞いてきた下品な笑い方でネスは、彼がポーキーである事を確信する。
いくらポーキーでも度が過ぎたイタズラをしない。
純粋なネスはそんな淡い期待を抱いていたのかもしれないが、目の前に立つ悪友はその期待を裏切った。
「どうして……ポーラをさらったり、村の人達をおかしくしたりしたんだ……なんで」
ネスは友人の汚い姿など見たくはなかったのだろう。
今までならば、一日経てば解決できる様な些事が多かったが、今回ばかりは誘拐で一人の少女を酷く怯えさせたり、暴力的な人々に変えたりと笑い事では済まされない。
だからこそ食いかかるようにして質問した。
すると……。
「俺様は……俺様の目的で動いている。お前に話しても分かってもらえないだろうがな。『あの時』俺を見捨てた優しくて卑怯なネス君にはね」
ポーキーのこの発言は……ネスの心に突き刺さった。
「!?、あ…………うぅ」
余程のショックな言葉だったのか、返す言葉を失う程に絶句したネスは俯き、胸を押さえつける。
「最高に強くなれる俺様の計画に、お前は不要なんだ。だから信者たちにボコボコにされた後、カーペインターさんに雷でも喰らって消えちまいな。行けっ!」
ポーキーの大声の合図と共に、ショックから立ち直れないネスに二人の信者が攻撃を仕掛ける。
友人が自分に危害を加える事実、そしてお互い水に流していたと思っていた悲しい過去の出来事、精神に強い影響を受けたネスは力を満足に震えずに、
「この野郎! 青色に姿を変えたからってごまかせると思ったか、オラオラ!」
「ガキンチョが! ポーキー様の言う通りにしていろ!」
ペンキの缶やブラシで一方的に殴られていた。
(…………悪いな、ネス。もう俺は……お前と友達の縁を切る事にするよ。その方がお互いの為ってもんだ)
友人がいたぶられる姿を目の当たりにしながら、ポーキーは傷つく彼の姿を尻目にその場から逃げるようにして立ち去った。
その時ネスが薄れゆく意識の中で確認した彼の背中は何処か寂しげで、何か大きなものを失い、悲しんでいるように見えたという。
(ゴホゴホ……ポー……キー……)
そしてネスの意識は完全に途切れたのだった。
体中に痛みを覚えながら、ネスは意識を取り戻した。
「ここは?」
仰向けに寝ていた彼は薄暗い照明に照らされた青色の天井へ視線を向けていた。
「起きたかね、少年よ」
「!?」
大人の男性の声が聞こえるとネスは慌てて飛び起き、部屋の内装を確認しながら、声のする方へと目をやった。
その部屋は祭壇の間なのか中央に大きな台があるだけのシンプルな内装、後は複数の階層の建物なのか下へと続く階段がある位で、ハッピーハッピー村内の建造物とよく分かる全体青色以外に特に目立った部屋では無かった。
一部を除いて……。
「貴方がカーペインターさん?」
祭壇の台の上に建っている青髪、青髭を蓄えた顔を隠していない初老の男性に対してネスはそう尋ねた。
「そうさ、私がブルーハッピー教の始祖にして教団の長、カーペインターだよ」
この教団の掟なのか、彼もまた青色のペンキが付いたブラシを大切そうに握りしめて話をしていた。
「ふふふ、教団の者に手酷くやられたようだね。流石に私も傷だらけの者を処刑する訳にはいかないからね」
「傷……あれ?」
その言葉を受けたネスは着用しているローブの中に隠れている体に触れて、傷薬の臭いや包帯など手当ての痕跡を見つけ、敵からの温情、慈悲らしきものを感じた。
「いやはや、このポーキー君が持ってきてくれた金の像のおかげで私は凄い力を手に入れることが出来たんだ」
そう部屋の特徴である一部とは、噂やポーラの話でもあった、カーペインターの背後にある金の像だった。
さらにその像は……。
(あれは、あの夜にライヤ―さんが見つけたっていう冷たい気配の像だ……)
以前に彼が見た鞘に納めた剣を両手で支えるようにして正面に構える金の像そのものだった。
(あの像が皆をおかしくしてしまったに違いない……)
加えて、彼が以前に見た時に感じた寒気よりも、さらに不気味で禍々しい紫色のオーラを放っている。
(アレを壊さないと!)
テレパシーでその怪しげな気配を悟ったネスは、奪われずに近くに置いてあったリュックサックからバットを取出し、すぐさま戦闘の準備を整えた。
「むぅ……只でさえ我々教団の装束を着ているだけでも、腹立たしいがこの像まで壊したそうにしているな」
カーペインターも彼の抵抗する姿を見ると、
「もう容赦はいりませんね。さあ死になさい。死んでこのゲームを、マザー2を終わりにしようじゃないか。次に君が見るのは開始画面の『NINTENDO』と『APE』のロゴマークだ!」
邪悪な像に操られているのか、目を血走らせながら、意味の分からない言葉を口にして、彼は持っていたペンキブラシを高く掲げると、
「これでも食らいなさい!」
能力の雷を纏わせ、ネスへと振り落としたのだ!
バシッ!
通常であれば黒こげになるはずの激しいイカヅチだったのだが、ネスの場合は着ていたローブだけが一瞬で消し炭に変わり、
「効かないよ、そんな雷は」
羽織ったものが無くなり露わになったネスの縞模様の服の胸部につけていたフランクリンバッジが輝いた。
すると……。
バチィ!
「ぐあっ!?」
攻撃を放ったカーペインターの元へと雷が反射され、整えられていた髪の毛がチリチリと音をあげながら、体を壁へと飛ばした。
「ンギギギ! 教団は私の物だ! 誰にも邪魔はさせんぞぞぞぞぞ、それっ! バチバチ攻撃だあああ」
正気を失い、最早欲望の為に操られているカーペンイターは技を反射され、傷を負っても知らぬふりでネスへと攻撃を仕掛けて来た。
「どうして跳ね返すんだ!? この最強の雷をぉぉぉ」
思考能力も失っているのか反射されると分かっていても、雷を何発も撃ち、その自身の身を傷つける。
(このままじゃあ、カーペインターさんが死んでしまうよ……どうしたらいいんだ……)
一応技として扱ってる以上、雷の耐性こそあるのか体からブスブスと煙をあげながら、狂うように攻撃を続けるカーペインターを止める方法。
「谷の戦いで覚えた技だけど使うしかない!」
谷でロボットやUFOに追われた際に、敵の目を暗ませる目的で発現した彼の新特技。
「PKフラッシュ!」
ピカリッ!!!!
ネスは相手に対して眩い閃光と耳をつんざくような強烈な音をあげる技を使用したのだった。
「う、がががが……」
そして効果はてきめんだった。
ダメージこそないものの相手の意識を一瞬にして奪い、カーペインターは開けた口をガクガク震わせながら、白目をむいてそのまま倒れたのだった。
「よし、次は怪しい像を破壊……」
すぐさま狂気の原因である金の像を破壊すべく、ネスは閃光がおさまり、視界が確保できた状態で目を動かす。
けれども……そこに金の像の姿は無かった。
PKフラッシュを唱える直前までは存在していたはずなのだが、全体を包む光に紛れ、姿を消していたのだった。
「……うんむ……いたた。儂は一体何をしていたのだ?」
ネスが金の像を探している間に、カーペインターは早くも気絶から立ち直り、頭を押さえるようにして立ちあがった。
「君はネス君かね……なにやらとんでもなく失礼で危ない事をしてしまったようだね……本当にすまない」
血走っていた目は元に戻り、口調も非常に丁寧になっていた事から、ネスは像が消えた事で彼も正気に戻った事を悟った。
「どうして……こんな事に」
正常に戻ったカーペインターに対して、ネスは何としても聞きたかった質問を投げかけた。
「全てはあの像の瞳を見たのが始まりじゃ。儂はこのハッピーハッピー村をもっと有名にしたかった。その欲をあの像に気取られたのか、いつの間にか、全てを青色にすれば幸せになれるというおかしな宗教を作り、為すがままになっておったのじゃ」
村長として村を大切に思い、大きくしたいという願い。
何処かに消えた像はその願いを利用し、彼は像が発したとされる言葉で操られ、特別な力を与えてもらい、次にその力に中てられた住民達も含めて村全体が異様な事になってしまったらしい。
さらに彼は話を続けていく中で、驚くべき言葉を口にした。
「そうじゃ、あの像が放った言葉の中にこうあったのじゃ。『ポーラという少女を捕まえて外には出すな! そして後に来るであろうネスという少年は消せ!』と……まるで警告のような発言じゃった」
それは誰の仕業かはネスには分かっていた。
(絶対にギーグって奴の仕業だ……恐らくあの像もぼくがカーペインターさんを倒した瞬間に危険を感じて逃げ出したに違いない)
像の正体、そして送り主の元にたどり着いたネスは、相手の話を聞いた後に雷で傷ついた体をライフアップで回復させ、彼と『元』教祖の戦いは幕を下ろした。
数分後、お互いが落ち着いた状態となった頃にカーペインターは慌てて監禁していたポーラの身を案じて、ネスに鉄格子を開くための鍵を渡し、解放してあげるようにネスに頼んでいたのだった。
「おうおう、よくも俺の計画の邪魔してくれたな、ネス」
ポーラの救出に向かうべく、今ではブルーハッピー教がとっくに解散され、もぬけの殻になった村長の家から出て来たネスを待っていたのは、ポーキーだった。
「あんな恐ろしい物を送るなんて……本当に君は何を考えているんだ。君の送ったものはギーグっていう悪の親玉が作った物なんだぞ!」
他言してはいけなかったかもしれない内容だったかもしれないが、金の像を計画の一部として使っていた彼であればその存在を知っているはず。
そう考え、ネスは言葉を発したのだが……。
「ギー……グ? 何を言ってるんだ、お前は? 一応言っておくが俺はそんな変な名前の奴とは関わっちゃいないぜ。まあこれ以上は何も言う気も無いがな……」
計画を邪魔した文句をわざわざ言いに来たのか、そう言葉をこぼすと、ポーキーはその場から立ち去ろうと足を動かした。
すると……。
「ポーキー!」
ネスはもう彼に会えなくなるのではと恐れを感じて、彼を大声で呼び止め、続けた。
「『あの時』はごめんなさい! 謝れって言うなら何度でも謝る! だから……だから……」
友人が去る事に怯え、口を震わせ、悲しげになりつつネスは今思っている純粋な気持ちを口にした。
「もうこんなこと止めよう! また帰ったらオネットで楽しく遊ぼうよ! 野球をしたりサッカーをしたり、町を探検したりさ! だから……もうこんな酷いイタズラはお終いにしようよ」
口は悪く、下品……なんてことはネスにとっては些細な事に過ぎず、隣人として親友として仲良くしてきた彼を失わないためにそう言葉を向けた。
「ネス……」
ポーキーは動かしていた足を完全に止めて、その一言一句を聞き届けた。
親友の思い、自分に向けた思いを受けとったポーキー。
「また、やり直せるかな……俺達」
千切れかけた友情という糸が再び戻ろうとしている瞬間だった……。
「なあんてな! あっかんベー! 嘘だよん。いつか見てろよ、今度こそはギャフンと言わせてやるからな」
なんて残念ながらそんな感動的なことは起こらない。
親友の思いをすぐに切り捨てると、小馬鹿にするように舌を出して、ネスの言葉も聞かずにポーキーはそそくさと谷へ繋がる道へ逃げ出し、ハッピーハッピー村から姿を暗ましたのだった。
(……ポーキー……)
最早、彼に親友の言葉が届かないのであった。
ヒビが入った友情はもう戻らない。
砕けた破片を戻しても完全に元の形に戻らず、少し歪になるように……。
「……ポーラを助けに行こう」
黒に染まりつつある友人を止められなかった後悔に苛まれながらも、ネスは自身がするべき事を成し遂げるために、牢屋の鍵を持って小屋への道を辿っていった。
「ネス、ありがとう」
その後、ポーラはネスの手によって無事に救出され、誘拐事件は収束へと向かう形となった。
「……何か悲しい事があったのね。隠していても分かる」
捕らわれていた少女を救出し、拘束された場所から解き放ったにもかかわらず、ネスの何処か浮かばれない顔を見てポーラはテレパシーでそう察する。
「ごめんね……せっかくポーラを自由にしてあげたのに……素直に喜んであげられなくて」
するとショックから立ち直れていないネスの帽子を取り、黒髪の頭をポーラは優しく撫ではじめた。
「ママのおまじない。こうすると悲しい気持ちがどこかに行っちゃうのよ」
まるで母親に撫でて貰っているかのように、ネスは彼女の優しさに触れて、少しずつだが元気を取り度す。
「ぼくは……さっき友達を失うような気がしたんだ。もうあの背中を見られないような怖い気配がしたんだ」
再会したポーキーとの別れに、何か恐ろしい嫌悪感を感じていたのか、彼は怯えた様子を見せながらそう伝える。
「私のママもね、昔ある事情から一緒に行動していた気弱な友達と別れる事になったらしいの」
ポーラは彼の話に似た事を以前に母親から聞いていた。
そこで励ましになればと、同じ境遇だった母親の過去を話し始めたのだった。
「でもね、そんな気弱な人だったけど、最後には振り絞った勇気で自分たちの前に助けに現れて、最後には一緒に冒険したいって言ったんだって。だから友情っていうのは時にはヒビが入るかもしれないけど、また修復してより強いものになるんだって」
ポーラはそこまで口にするとネスの頭を撫でる事を止めて、玄関の扉を大きく開き、日光を小屋に入れる。
そうするともう一つ言葉を付け加え、彼にやる気を出させた。
「きっと、その友達も絶対に貴方の元に戻ってくるわ。だからネス、私たちは私たちのやるべき事をやりましょう。大切な友達が返ってくる世界を救う為に!」
「そうだね……ポーラ、ありがとう。そして行こう!」
こうして運命に導かれた二人は光差し込む出口へと歩き、小屋の外へと出ていった。
カーペインターさんの戦闘は自分の中でもバッジのおかげでチュートリアルのような戦いだったので、そこをメインとして書きました。
他にもポーキーとの接触に特に力を入れて書いたので、自分自身でもここは満足できています。
ハッピーハッピー村はプレイしてた当時は音楽が怖かったですね。
乱暴な信者とかは弱かったから印象は薄かったですけど。
もうオリジナル展開や伏線を張っていますが、次はリリパットステップ編です。
またよろしくお願いします。