家にいなくて済むから
半年ほど経った頃、あたしは小学校に入学した
ママはお母さん
パパはお父さん
になった
朝は6時に起きる
目覚ましに起こしてもらうのだ
そして朝ごはんを自分で用意する
お父さんもお母さんも寝ている
ウインナーか卵焼きを作る
どっちもなければ海苔の佃煮
それと白ごはん
これが毎日のあたしの朝ごはん
決して二人とも起きてこない
お母さんは心臓が悪いから朝は起きれない
だからあたしは自分で食べる
食べ終わった頃、お父さんが起きてくる
そしてあたしの部屋を物色するかの様に眺めて
いきなり洋服ダンスを開ける
「この汚いたたみ方はなんだ!!!!」
そう怒鳴ってタンスの中身をぶちまける
タンスじゃない時は机の引き出しだ
そしてまた怒鳴る
「片付けが終わるまで学校へは行かせないからな」
だいたいが平手付だ
あたしは泣きながら片付けをする
毎日毎日片づけをする
だって学校に行きたいから
時間がないのに必死で片付ける
それでも髪の毛もちゃんとして学校に行く
でも・・・
どうしようもない時もある
何の前触れもなく
ランドセルがベランダから外へほおり投げられる
「お前なんか学校に行かなくていい」
どうしてどうしてどうして!!!!
ランドセルを取りに外に出ようとしたら
怒鳴られ殴られまくった
痛い痛い痛い痛い・・・・
あたしはその日、学校に行くのをあきらめた
お父さんが会社に行ってからこっそりと外に行って
ランドセルを取りに行った
何もなくてもこんな状態だから
何かあたしに落ち度があった時には大変なことになる
小学校2年の頃、こおろぎを捕獲する宿題が出た
あたしはバッタ類が苦手だ
ぐにゅっとした感覚が別の記憶に重なるからだ。。。
仲良しの小原さんと一緒に土手にこおろぎを取りに行った
彼女はすぐにあたしの苦手をわかってくれて
ひょいと簡単に数匹のこおろぎを捕まえてくれた
そうして虫かごに入れて5匹ずつ持って帰った
翌朝、お父さんは虫かごをあたしに突き付けてこう言った
「かごから1匹出してみろ」
どうしよう・・・
恐る恐る手を伸ばし震える手でつかもうとしたその時
「お前さてはつかめないなっ」
次の瞬間、なにが起こったかすぐにはあたしは理解できなかった
手を振り上げたと思うと何かが宙を舞った
こおろぎが部屋にばらまかれたのだった
「1匹残らずかごに戻すまで学校へは行かせないからな」
学校に行きたい
何とかして捕まえなきゃ。。。。
追いかけても追いかけてもこおろぎは逃げる
手を伸ばして必死で掴む
気がつくと
こおろぎの足があたしの手にあった
力が入りすぎてつぶれたこおろぎがあたしの手にあった
羽だけになったこおろぎがあたしの手の中にあった
何も付いてない動かなくなったこおろぎがあたしの手の中にあった
泣きながらこおろぎを追いかける掴む追いかける掴む。。。
すべてのこおろぎみたいなものをかごに入れた頃には
外は暗かった・・・
あたしはバッタがもっと嫌いになった