オレとギターとstardust   作:恥知らずの奥村悠時

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思い付いたのでカキコします。反省も後悔もしていません。


ep0.私と彼の奇妙な出会い

「弦が5セットとピックが10枚で…合わせて4536円になります。」

 

 

「ありがとな、親父。」

 

「なに、気にするな。こっちこそ悪いな。折角の休日に付き合わせて。」

 

「良いよ別に。特に予定も無かったしな。」

 

とある休日、俺は親父の買い物の付き添いで街に来ていた。付き合わせたお詫びにと親父は楽器屋で切れていたストックの弦とピックを買ってくれたのだ。こういった消耗品は学生にとって地味に痛い出費なので、正直有り難い。ついでに外で飯も食えたし万々歳だ。

偶には親子水入らずのこんな時間も悪くない。

午後の3時を過ぎた辺りで暇を持て余し始めたので、親父の提案で喫茶店『カフェ・ドゥ・マゴ 』で時間を潰す事にした。仙台に本店が有るらしいが詳しい事は良く知らん。

「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」

表に設えられたカフェテリアに向かい、適当な席に腰を下ろした所で店員が注文を取りにやって来た。

 

「アイスコーヒー。」

 

「俺はコーラ。」

 

「アイスコーヒーが御一つと、コーラが御一つですね。少々お待ち下さい。」

 

注文を聞いた店員は足早に店の奥へと消えて行った。

 

「あ〜ッ!チキショーッ!7万もスッちまったぜ〜ッ!何が大当たりの日だよぉッ!大ハズレじゃねえかッ!」

 

「オレもだッ!クソッ!あの店ゼッテ〜にフカシコイてんよ〜ッ!マジムカつくぜ〜ッ!」

 

何だぁ?このお洒落な場所に似つかわしく無いデカくて下品な声はぁ?見るとパチンコか何かで大負けしたのであろう、柄の悪い男二人が店の前を歩いて行く所だった。

 

「お待たせしました。アイスコーヒーとコーラになります。ごゆっくりどうぞ。」

 

程なくして店員が飲み物を持って来る。

飲み物がテーブルに置かれると親父は煙草に火を付けてこう言った。

 

「学校はどうだ?もう慣れたか?」

 

「親父よお…流石に半年以上通えば良い加減慣れるって物だぜ〜。」

 

「そうか、友達はどうだ?仲の良い友達は出来たが?」

 

「まあクラスの奴等とは、それなりに仲良くやってるよ。もっとも、二年に上がるとクラスの『振り分け』が有るからな。そうなったらどうなるかな。」

 

俺の通っている高校は二年に成ると成績ごとにクラスが『振り分け』られる。クラスごとに教室や設備も変わって来る。人間は環境によって変わる物だ。流石にそうなったらどうなるか解らない。

 

「違う。俺は例え環境が変わっても繋がりが消えない様な友達が出来たかと聞いているんだ。そう言えばお前が良く口にしてた…確か坂本君と言ったか?彼も同じ学校だそうじゃないか?」

 

真剣な目付きで親父はそう言う。が、俺としてはソイツの名前だけは引き合いに出して欲しく無い名前だ。

 

「あのな。アイツとは違う中学だし、何より面合わせる度生傷が絶えなかった仲だぞ?只の腐れ縁だ。無い無い、そんな仲に成る事はゼッテー無えっての。」

 

「ハッハッハ、そう言うな。案外そんな相手こそ、意外と長い付き合いに成るって物だ。」

 

そう言って親父は煙草の火を燻らせながらケラケラと笑った。親父の人生哲学が間違ってると思った事は無いが、アイツと無二の親友に成るってのは正直ゾッとしねえぜ。

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました。」

 

その後適当に話しながら時間を潰し俺と親父は店を出た。

 

「さて、そろそろ良い時間だし帰るとするか。」

 

親父の言葉を聞いて携帯を見るともう4時を回った頃だった。

 

「そうだな……ん?」

 

それは本当に偶々目に止まった光景。

 

「悪いッ! ちょっと用事が出来たッ!先に帰っててくれッ!じゃあなッ!」

 

「お、おいッ!『丈也』ッ!」

 

俺は親父の呼び止める声を背に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『人生最悪の状況』とはどんな時の事だろうか?

恋人と別れた時だろうか?

雑踏の中財布を落とした事に気付いた時だろうか?

試験当日に受験票を忘れた時だろうか?

成人はおろか高校すら卒業していない私に思い付く所はこんな所だろう。社会に出たら

もっと辛い事は沢山有ると私の親はきっとそう言うかもしれない。しかしその前に『今迄生きて来た中で』と言う言葉を付け加えるならば、正しく今私が直面しているのは『人生最悪の状況』だった。

 

「オイコラ、てめぇチョット可愛いからっていい気になってんじゃねえぞーーーーーーッ!!」

 

私はガラの悪い男二人に絡まれていた。

 

とある日の休日、私は街に買い物に出掛けていた。お目当ての服と参考書の類を買い揃え、気ままにウインドウショッピングなんかをしたりして休日を楽しんだ。気が付けばそれなりに良い時間だった。近道をしようと人気の無い路地に足を踏み入れたのが事の始まりだ。

 

「ねえねえ、君何してるの〜?」

 

不意に後ろから声を掛けられ振り返ると二人の男が私の直ぐ後ろに立っていた。。1人は体重が100キロを余裕で超える程の太った男で、もう一人は背の高い体がガッシリとした男だ。二人共如何にもチーマーと言った感じのガラの悪い格好をして居り、その下卑た表情からは下心が有り有りと伺える。

 

「暇なら俺達と一緒にどっか遊びに行かね〜?カラオケとか…カラオケとか…カラオケとか…」

 

「おめぇーさっきからカラオケしか言ってねえじゃねえかwww」

「あっるぇ?そうだっけwww?」

「「ギャハハハ〜〜〜〜www」」

 

要は個室に連れ込みたいのだろう。表情どころか話の内容も下心ダダ漏れだ。

 

「すいません、急いでるんで。」

 

私は出来る限り相手を刺激しない様に作り笑いを浮かべ、やんわりとした口調で告げるとその場を立ち去ろうとした。が、ーーーー

「大丈夫だって。ほんのチョットの時間だけだからwww」

 

「ーーーーーーーッ!」

 

背の高い男が道を塞いで来た。しつこいッ!

 

「ほ、本当に急いでるんです!失礼します!」

 

ガシイッ!!

 

「ーーーーーーーーッ!」

 

「連れないな〜。ほんのチョットだけだからさ〜www」

 

脇をすり抜けて逃げようとした所背後から腕を掴まれたッ!本当にしつこいッ!!

バシーーーン!!

 

「いい加減にしてッ!!」

 

思えば軽率な行動だった。自分で言うのも何だが私はルックスは悪く無い方だし、スタイルだって良い方なのでナンパも何度かされた事は有る。この手のナンパのあしらい方には馴れている筈だったが、余りのしつこさと腕を掴まれた事、何より身体を舐め回す様な視線から来る嫌悪感に思わず頭に血が上り、カッとなってつい平手打ちをしてしまった。

男の顔が見る見る内に怒りの表情に歪む。

 

「このアマァ、人が下手に出てりゃあ付け上がりやがってよぉーーーーーーッ!!」

 

ガシイッ!!

 

「ムグッ!!」

 

ズドン!

 

瞬間私は口を塞がれ勢い良く背中を壁に叩き付けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在に至る。

 

「よお、この女どうするよ?」

 

「ああ?そこ入った所なら誰も来ないからよぉ〜。そこ連れ込んで犯っちまおうぜ。」

 

路地の中の細い道を顎で指して太った男は言った。その言葉に私の中に戦慄が走る。自分でも恐怖で顔がこわばっているのが解る。

嗚呼、何て事だろう。近道をしようと路地に入っただけでこんな目に合うなんて。しかもよりにもよって『アイツ』が居ない時に!普段付いて来なくても良い時に付いて来る癖にこんな肝心な時に『アイツ』は居ない。『アイツ』は普段強ぶっているが根は小心者だ。こんな奴等と面と向かって喧嘩なんかする度胸は無いだろうが、助けを呼ぶ位の事はしてくれる筈だ。だが今、そんな唯一の頼みの綱もこの場には存在しない。

嗚呼これから私はこの男達に慰み物にされるんだ。今迄トラブルとは無縁の人生を送って来たつもりだったのに、どうしてこんな事に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの〜…」

 

「「あん?」」

 

男達が声のした方向に顔を向けた。私は顔をガッシリと押さえつけられているので視線だけをそちらに向ける。歳は私と同じ位だろうか?茶色のツンツンした髪にヘアバンドを着けた男の子が立っていた。

 

「何だテメーは?今取り込んでんだよ。邪魔だからどっか消えろッ!」

 

「いえ…何て言うか…あのですね…僕…その子と一緒に遊びに来てたんですが、はぐれちゃいましてね。」

 

「「「ーーーーーッ!!」」」

 

何と、その男の子は有ろう事か私と『遊びに来ていた』と言ったのだ!

 

「だから…その…その子を放してもらわんと困る。」

 

「んだとコラッ!」

 

「いえ、一緒に遊びに来てたんですよ。友人なんですよ…彼女は。放してあげて下さい。」

 

あくまで私を自分の『友人』だと言い張るその男の子。助けてくれるつもりなのだろうか?だがこんな奴等とマトモに話した所で通じるとは思えない。

 

「ほ〜〜〜、じゃあその連れの名前を言ってみろや!」

 

そう言って鼻をほじりながら太った男は男の子に………

あ〜〜〜〜〜〜ややこしいッ!もう『デブ』と『ノッポ』で良いやッ!

鼻をほじりながらデブは男の子との距離を詰めて行く。男の子は黙っている。当たり前だ。彼は私の名前を知らない。こんな時、テレパシーか何かで彼に私の名前を伝えられたらどんなに良いだろうか…

 

「フカシこいてんじゃね〜ぞ。ああ〜ん?ボコボコにされたく無かったらとっとと失せろや?ウスノロよぉ。」

 

ピトッ  グリグリグリ

 

「「ゲェッヘッヘッヘッヘッヘッwwwwww」」

 

最ッ低ーーーー

人の顔にハナクソ付けるなんて………

ゲテゲテと笑う二人には怒りを通り越して吐き気を催す。

 

「聞いていいか?解らんのだ。何だってこんな事をする?この行為にどんな意味が有るって言うんだ?」

 

「意味なんてねーーーーー!!スカッとするからしてるだけなんだよこのボケーーーーー!!こちとらパチンコで大負けしてムシャクシャしてんだーーーーー!!誰かボコるか女犯るかしねえと気が「ドラァッ!!」」

 

 

ギャゴンッ!!

 

「図に乗るんじゃあないッ!!このブタ野郎がッ!!!!」

 

ついさっき迄紳士的な態度を取って居たその男の子は突然人が代わったかの様に激高し、余裕コイてまた鼻をほじり出したデブの顔面を殴り飛ばしたッ!

 

「アンギャーーーーー!!抜いて!抜いて!イてえよーーーーッ!!」

 

「プハッ!」

 

デブが倒れて悶えている所でノッポは不意に私を開放したかと思うと、後ろから私を左腕でガッシリと抱きとめた。

 

「は……ーーーーーッ!!」

 

「放してッ!!」と言いかけた瞬間首筋に押し当てられた感触に私は思わず言葉を飲みこんだ。それが何なのか解った時、私は背筋が凍り付くのを感じた。

ノッポの右手に握られていたのは、冷たく光るナイフだった。

 

「動くんじゃねえッ!!コイツがどうなっても良いのかッ!?」

 

歯がガチガチと音を立てる!恐怖で震えが止まらない!本当に何て一日だ!

 

「ケッ!女の子にナイフ突き付けて人質に取らねえと喧嘩も出来ねえってか!?やってみろよッ!だが覚悟が要るぜッ!そのナイフをチョイとでも動かした瞬間、テメーの指をへし折るッ!マッチみてえになッ!」

 

この状況で更に相手を挑発するなんてッ!何を考えているんだッ!?この男の子はッ!

 

「ーーーんだとぉ……」

 

ナイフを持つノッポの右手が怒りでプルプルと震える。突如何を思ったのかノッポは私を解放した。

 

「キャッ!」

 

咄嗟の出来事に対応出来ずに尻餅をついてしまう。解放されたッ!早く逃げないと…………

駄目だッ!足が竦んで動かないッ!

 

「舐めてんじゃねーぞコラァーーーーーッ!!!!」

 

ノッポがナイフを構えた。瞬間ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラン…

「ぎぃやああーーーーーーーーーーッ!!!!!!」

 

一体何が起こったのだろう?

ノッポはナイフを落とし、右手を押さえて悲鳴を上げていた。見ると親指が有らぬ方向に折れ曲がり、傷口からは鮮血が噴き出している。ノッポの傷口に突き刺さっている黒い物……あれはッ!ギターのピック!?

 

ダッ!!

 

その隙に男の子はノッポとの距離を一気に詰め…………

 

「ドォラァーーーーーーーーッ!!!!」

 

ゴシャアッ!!!!

 

「ガファーーーーッ!!!!」

 

見事なアッパーカットをキメていた。チンピラ二人は真夏の道路で干からびたカエルの様に伸びている。重傷だ。起き上がっては来れないだろう。

 

「ハッ!思わずカッとなってまたやっちまった!!ま………参ったな…お…親父にぶん殴られるぜ!」

 

なんと、その男の子はチンピラ二人をこんな目に合わせたのにお父さんに叱られる事だけを恐れていた。

 

「おい!そこのねえちゃん。早いとこずらかろうぜ!」

 

「あ……」

 

男の子に言われて立ち上がろうとしたが、完全に腰が抜けてしまって立てない。

 

「なんだ〜〜〜?腰が抜けちまったのか?しょうがねえなぁ〜。」

 

そう言って男の子は私に近付き…………

 

 

 

 

 

「ヨット!」

 

「キャッ///////////////////!!!!!!」

 

私を抱き抱えるとその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路地を抜けた駅前のロータリー付近で私と彼は衆目の的にされていた。彼は私をずっとお姫様抱っこで運んでくれたからだ。

 

「/////////////////////////////」

 

生まれて初めてされるお姫様抱っこ………

私の顔は火が出んばかりに火照り、心臓は口から飛び出そうな程バクバクと高鳴る。

 

「あ………あのっ///////////////」

 

「ん?どうした?」

 

「も………もう、大丈夫ですから………だから………そろそろ………下ろして///////////////」

 

「おっと、悪い悪い。直ぐ下ろすから、チョイと待っててくれ。」

 

そう言ってバス停に向かうと、彼は私を優しくベンチに座らせた。

 

「アンタ何でまたあんな所に居たんだ?あの辺りこの時間に成ると、変な奴等多いからよ。もうあんな人気の無え路地なんかに入るんじゃあねえぞ。じゃあな!」

 

「あッ!」

 

そう言い残して彼は雑踏の中へと消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はバス停のベンチに座りながら、暫くの間物思いに耽って居た。嵐の様な獰猛さとイギリス紳士の様な優しさを持った彼の事を考えながら………。

名前も聞けなかった。名前は何と言うんだろう。歳は幾つだろう。何処の学校に通っているんだろう。好きな食べ物は何だろう。靴下は右か左かどっちから履くんだろう。キスをする時どんな顔をするんだろう。

そんな事を考えて居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それっきりその男の子とは会っていない。

 

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