(見つけたッ!Dクラス代表の平賀君だッ!)
敵味方入り乱れての乱戦の中、明久の目は Dクラス代表の平賀の姿を捕らえた。平賀の近くには現国の竹内と古典の向井。明久は『これなら打ち取れないにしても少しはダメージを与えられる』と考えた。
「吉井に続けッ!Dクラス代表の平賀を討ち取る絶好の機会だッ!!」
「ヨッシャーッ!!」
明久と同じく平賀の姿を捕らえたFクラスの生徒達が平賀を討ち取ろうと動いた。しかしッ!
「 Dクラス玉野美紀。試獣召喚ッ!」
「なッ!?近衛部隊ッ!?」
突如明久達の前に平賀の近衛部隊が立ちはだかったのだ!
「残念だったな。船越先生の彼氏君?」
近衛部隊が出て来た事で絶望の淵にたたき落とされた明久達を見て、勝ち誇った様な笑みを浮かべる平賀。
「ち……違うッ!あれは雄二が勝手に………」
「そんなに照れなくても良いじゃないか。さ、玉野さん。彼等に祝福を……」
「分かりました。」
玉野は既に、古典の点数で武装した召喚獣を呼び出していた。
「くッ……クソッ!」
「後一歩でDクラスを落とせるのにッ……」
明久だけで無く平賀を討とうとしたFクラスの生徒達も、近衛部隊の存在に怖気づいて居た。
「何を言うと思えば彼氏君。流石にFクラスの人間が近付いたら近衛部隊が動くに決まっているだろう?ま、近衛部隊が居なくともお前達『落ちこぼれ』じゃあ無理だろうけど。」
フンっと鼻を鳴らして明久達を一瞥する平賀。その時ッ!
「ビビるんじゃあねえッ!!」
しりごみする明久達をjojoが一喝した。
「平賀。テメー俺達の事を『落ちこぼれ』と言ったが、俺達Fクラスの中に『落ちこぼれ』は一人も居ねえぜッ!!」
jojoの告げた言葉にその場に居た全員が「何を言っているんだコイツ?」と疑問の表情を浮かべる。
「 『落ちこぼれ』と言うのは……いいかよく聞けッ! 真の『落ちこぼれ』とはッ!前に進む事を忘れ! 困難に挑戦する事に、無縁のところにいる奴等の事を言うんだッ!俺を寄ってたかって痛ぶろうとした、テメーんトコの中野達みてえになッ!このクラスに『落ちこぼれ』なんか存在しねえッ!存在するのは、挑戦者だけだッ!」
『ーーーーーッ!!』
再び告げられたjojoの言葉にFクラスの生徒達がハッとなったッ!
『そ……そうだッ!!俺達は落ちこぼれなんかじゃねえッ!!』
『俺達は挑戦者だッ!!俺達が目指すはAクラスッ!!Dクラス如きにビビってたんじゃあ話にならねえぜッ!!』
Fクラスの生徒達が次第に士気を取り戻し、彼等の目に消えかけていた光が蘇るッ!
「きッ……貴様等ァ……言わせておけばァ………」
息を吹き返したFクラスの生徒達の言葉に怒りを露にする平賀。
「へッ!怒るかい?Dクラス代表としての誇りに傷が付いたって訳かい?………いや!傷は付かねえな……… 自分より下の奴を見下して安心する、困難に挑戦する事に無縁の所に居る『落ちこぼれ』に誇りなんて無えからなッ!」
プツン
「もういいッ!!貴様余程死にたいらしいなッ!!貴様はこの僕が直々に葬ってやるッ!!僕を怒らせた事を後悔させてやるぞッ!!」
「だ……代表……」
「うるさいッ!!現国の竹内先生ッ!! お願いしますッ!!試獣召喚ッ!!」
jojoの挑発を受けて激高した平賀は、近衛部隊である玉野の制止を振り切りjojoの前に立ちはだかった。
「上等だッ! 試獣召喚ッ!」
『Dクラス 平賀原二 現代国語 129点』
『Fクラス 東城丈也 現代国語 52点』
「ハッ!大口叩いた割に全然大したこと無いじゃ無いかッ!」
『はッ……半分にも満たないッ!』
『もう駄目だ〜〜〜〜〜!!』
jojoの点数を見たFクラスの生徒達の顔が再び絶望の色に染まる。理系科目よりかは心得が有るとは言え、jojoと平賀の点数の差はそれほど迄に大きかったのだ。
「うるせえッ!!泣き言ばっか抜かすテメー等に一つ教えといてやるッ!」
しかしjojoの目から光は消えないッ!この状況でjojoはFクラスの生徒達に『教える』と言ったのだ。一体何を教えようと言うのか!?
「ノミって居るよなあ………ちっぽけな虫けらのノミだッ!あの虫は俺達巨大で頭のいい人間にところかまわず攻撃を仕掛けて戦いを挑んでくるなあ!巨大な敵に立ち向かうノミ……………これは『勇気』と呼べるだろうか?ノミどものは『勇気』と呼べねえなあ………それじゃあ明久ッ!『勇気』とはいったい何だッ!?」
「えッ!?えと………」
今迄呆然とその状況を見ていた所を突然話しを振られて答えられずに居る明久。
「『勇気』とは『怖さ』を知ることッ!『恐怖』を我が物とすることだッ!テメー等の怖い物は何だ?補習室がそんなに怖いか?補習室送りになった位で明日死ぬ訳じゃあねえんだぞッ!!人間賛歌は『勇気』の賛歌ッ!!人間のすばらしさは勇気のすばらしさ!!いくら俺達より強くともこいつらは『勇気』を知らねえッ………」
jojoは平賀の攻撃を軽々と避け……
「ノミと同類よォーーーーーーーッ!!!!!!!!」
ドゴォッ!!
掛け声と同時に平賀の召喚獣に攻撃を叩き込んだッ!
「貴様ッ!!ノミと抜かすかッ!!このDクラス代表の平賀をノミと同類と抜かすのかーーーーーッ!!」
ドガァッ!!
攻撃を受けたその状態からどうやって反撃をしたと言うのかッ!?平賀の召喚獣はjojoの召喚獣に攻撃を仕掛けたのだッ!!
「ぐうッ!!」
辛うじてギターで防御したものの、jojoの召喚獣は後方に吹っ飛ばされる。
「このクソカスがァァァーーーーーッ!!!!!!」
吹っ飛んだjojoの召喚獣に追撃を仕掛けようと平賀は鬼の形相で召喚獣を前に出した。
ドギャッ!!
「ぐああああうッ!!」
直撃は免れた物の攻撃を庇った召喚獣の右腕が有らぬ方向にへし折れ、フィードバックで発生した痛みからjojoが悲鳴を上げる。その光景を見て明久は思った。
(何で……腕が折れて召喚獣はもう武器を持てない……点数だってギリギリな筈だ……もう戦え無い……なのに………)
「どうして君の目は未だ死んでいないんだーーーーーッ!!!!丈也ァァーーーーーッ!!!!!!」
絶望的なその状況にも関わらずjojoは不敵な笑みを浮かべていたのだッ!
「平賀ァッ!テメーの次に吐くセリフは『思い知ったかこの落ちこぼれが』だッ!」
「 思い知ったかこの落ちこぼれがッ!!……ハッ!」
「前に出たなッ!逆上して俺をぶちのめそうと近衛部隊から離れた所迄よぉッ!テメー等ッ!!近衛部隊を足止めしろォッ!!」
『承知ッ!!』
怒りに我を忘れていた事で平賀は召喚獣を近衛部隊から離し過ぎて居た。jojoの指示を受けてFクラスの生徒達が近衛部隊の前に立ちふさがる。最早平賀が近衛部隊の手を借りる事は不可能だ。
「次のセリフは『だからどうしたって言うんだこのド低脳が』と言う。」
「 だからどうしたって言うんだこのド低脳がッ!……ハッ!」
「『道』は切り開いたぜッ!!ぶちかませッ!!『姫路』ッ!!」
「はいッ!!」
突如帽子を被った男子生徒が平賀の前に立ちはだかる。そして次の瞬間、その男子生徒は被っていた帽子を脱ぎ捨てた。露になったその顔を見て平賀の顔が驚愕の色に染まる。
「馬鹿な〜〜〜〜〜ッ!!お前はッ!!お前はッ!!」
心の中心に保護欲を掻き立てる様な可憐な姿。桃色の頭髪。透き通る様な白い肌。それでいて同い年の女子とは思えない様な色気。
「姫路瑞希ーーーーーーーッ!!!!!!何故お前がFクラスにーーーーーーーッ!!!!!!」
「秀吉、チョイと頼みが有る。」
「何じゃ?」
「演劇部の備品から男子の制服を一着と、帽子を一つ借りて来てくれ。」
「それは別に構わぬが……どうする気じゃ?」
jojoの頼み事に疑問を持った秀吉が問いかけた。
「姫路に着せるんだよ。」
「わッ!私がですか!?」
唐突に話の矛先を自分に向けられた事で慌てふためく瑞希。そんな瑞希応えてにjojoは続ける。
「姫路は秀吉が用意した制服を着て俺達と一緒に行動してくれ。その長い神はブレザーの中に入れて隠してろ。俺が呼ぶ迄は上手い事男子に紛れ込んでてくれ。」
これこそがもう一つの問題で有る『 姫路を敵の本隊に近付ける方法』。男子生徒の数が圧倒的に多いFクラスに置いて、女子であり学年上位一桁になる程の成績保持者でもある瑞希の存在は明らかに目立つ。瑞希の存在がDクラスの生徒達に気付いて警戒される事を恐れた jojoは、瑞希を男子生徒に変装させてFクラスの男子生徒達に紛れ込ませたていたのだ。
そして平賀を挑発し近衛部隊から遠ざけ、確実に瑞希を平賀と戦わせることが出来る状況を創り上げる。全てjojoの計算した通りだったのだッ!!
「Fクラス姫路瑞希!Dクラス平賀君に現代国語勝負を申し込みますッ! 試獣召喚ッ!」
瑞希の呼びかけに応じて現れる召喚獣……それは身の丈の倍は有ろうかと言う程の巨大な剣を携えていた。
『Fクラス 姫路瑞希 現代国語 339点』
『 Dクラス 平賀原二 現代国語 93点』
召喚獣の頭上に表示された点数を見てもその差は歴然である。
「行きますッ!えいッ!」
ドバアァァァーーーーーーーー!!
「なッ……なにいッ!!MMMMMMOOOHHHH!!!!!!!!」
掛け声と共に瑞希の召喚獣は平賀の召喚獣を一撃で葬り去った。その様子を見てjojoはしてやったりとニヤリと笑う。
こうしてFクラスとDクラスの戦いは幕を閉じたのだった。
Dクラス 平賀原二 討死
『うおーーーーーーーーッ!!!!!!!!』
Dクラス代表の敗北の知らせを聞いてFクラスの生徒達から勝鬨の歓声が上がる。
「とッ……東城ッ!!テメーよくもッ………」
「お〜〜〜いお前等ッ!!今回の作戦を考えた我等がFクラス代表の坂本雄二のご登場だぜッ!!めいっぱい歓迎してやんなッ!!」
遅れてやって来た雄二がjojoに詰め寄ろうとした所をjojoはFクラスの生徒達に雄二を歓迎する様に言って回避する。
「オッ!我等が代表坂本のご登場だぜ!」
「凄えよッ!本当にDクラスに勝てるなんてッ!」
「坂本雄二様々だなッ!」
「皆ッ!坂本を胴上げだッ!」
「チョッ!チョット待てお前等ッ!!」
『ワッショイッ!!!!ワッショイッ!!!!』
Fクラスの生徒達にもみくちゃにされる雄二。
カラン……
その光景を呆然と見つめながら、明久は雄二を殺る為に隠し持っていた包丁を取り落とした。
吉井明久が思う事…………
それは雄二への怒りでは無かった。確かに船越を呼び出すエサにされた事で雄二に対して怒ってはいたが、目の前に立つ男の姿を前に、雄二への怒りは頭から吹っ飛んだ。
自分を戦場から逃がそうと自分に代わって三人掛りもの敵を相手にしたその『勇気』。
自分を殴ろうとした島田さえも気にかかるその『優しさ』。
如何なる困難にも屈しないその『精神力』。
そして『観察処分者』としての宿命をありのままに受け入れたその『潔さ』と『覚悟』。
夕日を浴びて光輝くその姿は、さながら『黄金』…………明久はjojoの中に『黄金』の様な輝きを見て居た。
吉井明久の中で『何か』が変わり始めた瞬間だった……
続きます。