side jojo
「ふう……皆!今日はご苦労だった!明日は消費した点数の補給を行うから、今日の所は帰ってゆっくり休んでくれ!解散!」
Dクラスとの戦いが終わって教室に戻った俺達に坂本が解散の号令をかけた。どうやらクラス奴等から随分と手荒い歓迎をされた様で、その顔には疲れが見て取れる。どうやら俺にチョッカイ掛ける気力は無い様だ。クラスの奴等が帰り支度を始め、俺も帰ろうと鞄とギターに手を掛けたその時……
「よおッ!この後暇な奴居るかッ!?初陣の勝利を祝して打ち上げやろうぜッ!!」
クラスメイトの武藤が打ち上げをしようと言い出した。
「オッ!良いぜッ!」
「やろうやろうッ!」
「姫路さんもおいでよッ!」
「わッ!私も良いんですかッ!?じゃあ……」
武藤の提案に次々と上がる参加の声の中には姫路の声も有った。坂本は疲れたのかもう帰ったみたいだな。
「東城!お前も来いよ!なんたって今回のDクラス戦一番の功労者だからな!」
ギターを担ぎ上げた俺に声を掛ける武藤。俺もバカ騒ぎは好きだから誘ってくれるのは嬉しいが、俺はこれからダチとスタジオで練習が有る。
「スマン、今回はパスだ。この後チト用事が有ってな。」
「え〜〜〜ッ!!マジかよォ〜〜〜ッ!!」
明らかに落胆の表情の武藤。武藤には悪いがこればっかりは仕方が無い。
「悪いな。またの機会に誘ってくれ。」
「はぁ〜〜〜。解ったよ。吉井、お前はどうする?」
大きくため息をついて今度は明久に声を掛ける武藤。
「ゴメン。僕もこの後友達と約束があるんだ。」
ほう。明久が参加しないとは以外だな。てっきり姫路が行くものだから参加すると思ったんだが……
「お前もかよ〜〜〜ッ!!」
再び落胆の声を上げる武藤の声を背に俺は教室を後にした。
「しっかし坂本は何であんな取り引きをしたんだろうな……」
自転車置き場に向かいながら、俺は坂本がDクラス代表の平賀に持ち掛けた取り引きの事を思い出して居た。坂本が平賀に持ち掛けた取り引き。それはDクラスの設備を奪わない代わりに、自分が合図を出したらBクラスのエアコンの室外機を壊して欲しいと言う物だった。当然の事ながら平賀はその取り引きに応じた。
「となると……次の標的はBクラスか……」
恐らく今回よりもハードな戦いになるだろうな……。しかしエアコンの室外機を壊す事がどうしてBクラスを倒す事に繋がるのだろうか?今回は坂本の意図が読めねぇ……
「ま、考えても仕方無えか。」
今はこの後のスタジオに集中しよう。
アイツと一緒に音を出すのも実に一年振りだ。 自転車置き場から愛車のMTBを引っ張り出し、下校中の生徒達が行き交う中俺は校門に向かう。
「待って居ったぞ東城!」
「にッ!西村先生ッ!?」
はやる気持ちを抑えきれずに校門に向った俺の前に、生徒指導の西村先生が腕を組んで仁王立ちして待って居た。
「な……何の用ですか?」
「『 何の用ですか?』じゃあ無いッ!貴様試召戦争の最中に火災報知器を鳴らした挙句、消火用のホースで廊下を水浸しにしたそうだなッ!」
しッ!…………しまった〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!
あの時は無我夢中だったからな。後先考えずに取った行動のツケがこうも早く回って来るとは………
「さあ来いッ!!」
「ど……何処へ?」
「さあて、先ずは何をやって貰おうか?トイレ掃除にグランドの草むしり。書類の運搬に大荷物の整理……『観察処分者』の仕事は沢山有るぞ。」
冗談じゃねーーーーーーーーッ!!今からそんな事してたらスタジオに間に合わ無えッ!
「勘弁して下さいよぉ〜〜〜。俺これから用事有るんスよぉ〜〜〜。」
「駄目だッ!あの後本当に火事が起きたのかと大騒ぎで、収拾を付けるのに大変だったんだぞッ!今度と言う今度は許さんッ!」
チキショーーーーーッ!!ヤッパこの先生面倒クセーーーーーーッ!!どうする!?この場をどう切り抜ける!?自転車でダッシュで逃げるか!?いや、相手はあの西村先生だッ!自転車如きのスピードなら走って追い付くなんざ訳ない。
ならばッ!
方法は一つッ!!
ガバッ!!
「お願いしますッ!!罰則を後日にして下さいッ!!」
本日二度目の土下座。
「これからダチと駅前のスタジオで練習なんですッ!!軽音部が潰れちまった今、学校外のスタジオで練習するしか無いんですッ!!予約入れてるんでお金だって発生してるんですよ〜〜〜〜〜ッ!!罰則は必ず受けますから、どうか後日に引き延ばして下さいッ!!お願いしますッ!!お願いしますッ!!」
地面に頭をぶつけんばかりの勢いで下げ続ける。下校途中の生徒達が足を止めてヒソヒソと話して居る声が聞こえるが関係無え。俺はなんとしてもこれから駅前のスタジオに行かなきゃならねえ。その為なら何だってやってやるッ!!プライドなんざクソ喰らえだッ!!
「止めんか馬鹿者ッ!!下校中の生徒が見とるでは無いかッ!!もう良いッ!!事情は理解出来たから頭を上げろッ!!罰則は『明日の朝』にしてやるッ!!」
「マジッスかッ!!ありがとうございますッ!!」
やったッ!切り抜けたッ!これで駅前のスタジオに行けるぜッ!ん?待てよ?『明日の朝』?あさ〜〜〜〜〜ッ!?
「明日はいつもより早く登校して来い。もし遅れたらどうなるか解って居るだろうな?」
冷たく言い放つ西村先生。もうそれ脅迫じゃねえかよ。
「わ……分かりました……」
力無く返事をして俺はその場を後にしようとMTBに跨った。
「それと東城。」
「な……何すか?未だ何かあるんですか?」
「 貴様『補習や罰則が怖くて『観察処分者』なんかやってられるか』とか抜かしとったそうだな?」
「ゲッ!」
ば……バレてた?
「望み通りたっぷりと罰則を与えてやるから覚悟して置くんだな。」
そう言い残して西村先生は去って行った。
トホホ……マジかよ〜〜〜。勢いであんな事言うんじゃ無かったぜ。 まあでも、この場を切り抜けれたんだから良しとしよう。くよくよ考えてもしょうがねえか。
俺はペダルに足を掛けると目的地に向った。
side 明久
「しまった〜〜〜〜〜〜ッ!!教科書を卓袱台の上に置いたままだった〜〜〜〜〜ッ!!」
夕暮れ時、僕は忘れ物を取りに学校から来た道を猛ダッシュで駆け戻って居た。待ち合わせの場所にもう少しで着こうとした所で、明日の補給テストの科目の教科書を忘れた事に気付いて慌てて取りに戻ったのだ。暫く走ると部活をやって居る以外は人気の無くなった学校に着く。整然と建ち並ぶ三階の二年生の教室はシンと静まり返っていた。時計を見ると今は午後5時半。もう皆打ち上げの真っ最中だろうか?そんな事を考えながら僕は教室の扉を開けた。
「よ、吉井君!?」
「あれ?姫路さん?打ち上げに行ったんじゃ………」
誰も居ないと思った教室には姫路さんが居た。
「ちょッ……チョット教室に忘れ物をしてッ!そッ……それより吉井君はッ!………どうしてここにッ!?」
何やら慌てて居る様子。何だろう?
姫路さんが座って居る席を見ると、其処には可愛らしい便箋と封筒が……それはまるで……
「あッ!あのッ!これは……ふあッ!」
コテン
卓袱台につまづいてコケる姫路さん。その拍子に隠そうとしていた手紙が僕の目の前に飛んで来て、その一文が目に入る。
『あなたのことが好きです。』
「………」
それは紛う事無きラブレターだった。相手は誰だろう?雄二だろうか?いや、ひょっとすると丈也かもしれない。
自分の好きな人が誰かにラブレターを書いている……
しかしそんな状況にも関わらず、僕の心が落ち着いて居るのは、きっと丈也のお陰だろう。今迄の僕なら現実を受け入れる事が出来なかった筈だ。でも今の僕には、自分の『運命』を受け入れる『覚悟』がある。例え姫路さんが誰を選んだとしても、それが『運命』だと言うのならそれに従おう。
僕はその手紙を拾い上げると丁寧に折りたたみ……
「その手紙、良い返事が貰えると良いね。」
僕は姫路さんにその手紙を手渡した。
「はい。」
にっこりと笑う姫路さん。あ〜〜〜〜〜もう本当に可愛いな〜〜〜〜〜ッ!誰だか解らないけど心底羨ましいよッ!!
「あ……あの、吉井君?」
「ん?何姫路さん?」
「そ……その、お友達との約束はどうしたんですか?」
ーーーーーッ!!しまったッ!!もうこんな時間だッ!!すっかり忘れてたッ!!
「いけないッ!!完全に遅刻だッ!!それじゃあまた明日ね、姫路さんッ!!」
姫路さんに別れを告げて大急ぎで教室を飛び出した。廊下を走りながら次第に込み上げて来るモヤモヤとした気持ち。何故か目も霞んで来る。
駄目だッ!気持ちを切り替えろ吉井明久ッ!
今日はこの後友達とゲームの話しで盛り上がるんだッ!大好きなゲームの話しで盛り上がってこの陰鬱な気分を吹き飛ばすんだッ!
畜生ッ!泣いてなんかいないぞッ!!
あれ?何か忘れてる様な………
今回はここまで!
次回はオリジナルの展開を挟みます。