オレとギターとstardust   作:恥知らずの奥村悠時

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遅くなりました。今回は少々専門用語が出てきます。解りにくいかもしれませんが読んで下さい。ではどうぞ。


ep10.ダチとスタジオとクラスメイトの以外な趣味

夕暮れ時の駅前。カラオケやファーストフード店等が立ち並び、会社帰りのサラリーマンや学校帰りに遊びに行く学生達が行き交う中を、俺は自転車で走り抜けて居た。タクシーや迎えの車が並ぶロータリーの直ぐ真向かいにそれは有る。俺の目的地である『studio・ Purple Haze』。

名前に経営者の趣味がモロに出ているのが解る。俺もジミヘンは好きだが、流石にこんな直球投げた名前付けるか普通……?

俺は入口の横にMTBを止めて中に入り適当なテーブルに座ると、途中コンビニで買ったペットボトルのコーラの蓋を開けて口をつけた。店内を見渡すと俺と同じ制服姿の学生や、如何にもバンドマンと言った格好の人達の姿がポツポツと伺える。

暫くすると店の扉が開き、背中にベースを担いで待ち人がやって来た。

 

「ヤッホー、jojo。」

 

俺の姿を見つけたソイツが手を振って挨拶をして来たので、俺も軽く手を上げて返す。

『工藤愛子』。俺の中学からの付き合いの連れだ。水泳が得意で県大会にも出た事が有る程の実力の持ちだが、音楽も好きで趣味でベースを弾いていると聞いて俺から絡んで行ったのがきっかけで意気投合し仲良く成り、何度も一緒に音を出して遊んだ仲だ。互いに別々の高校に進学してからは電話で連絡を取り合うだけだったが、一年の終わりに文月学園に転校して来ると連絡が有って驚いた。「何でまたウチに転校して来る事になったんだ?」と聞いたら………

 

「jojoと同じ学校に通いたかったからだよ☆」

 

と言って居たので、「ああそうかい。」と軽く流しておいた。

因みに俺は女の子に興味が無い人では無い。

むしろ大好きだ。それなのに俺がコイツに対してドライな態度を取るのには理由が有る。

コイツは中学の頃から男子に思わせ振りな態度を取ってからかう癖が有った。俺も何度か「あれ、コイツ俺に気が有るんじゃね?」と思った事も有ったが、勘違いした思春期真盛りの男子共が軒並み告白して振られていると言う事実を知って、その考えを改めた。以来コイツとは只の友達以外の何者でも無い。

 

「聞いたよ聞いたよ!新学期初日から早速やらかしたんだって!?」

 

同じテーブルに着くなり俺がDクラス戦で起こした騒動の事を聞いて来る愛子。

 

「あれはまあ、ヤバイ状況だったから後先考えずに体が動いちまったっつーか何つーか……っつーか何であの騒動が俺の仕業って分かったんだよ?」

 

「もう何年の付き合いだと思ってるの?今どき火災報知器鳴らすなんて小学生みたいな事する人、jojoしか考えられないよ。」

 

確かにコイツとは中一からの付き合いだ。俺がどんな人間かは良く知ってるだろう。コイツは成績は良いのに俺みたいな喧嘩っ早いバカとつるんでても、先生に目を付けられた事は一度も無い。おそらく要領が良いんだろう。

そう言えばコイツAクラスだったか?いずれコイツとも戦う事になるのかな………

 

「そ・れ・よ・り〜〜〜。」

 

感傷に浸る俺に愛子はやらし気な笑みを浮かべながら告げた。何だよ?

 

「去年チンピラから助けた女の子とはどうなったの!?あれから連絡来た!?」

 

またその話しかよッ!観察処分者になった経緯を話してからコイツは事ある事に聞いて来やがるッ!

 

「何度も言ってるだろ〜〜〜。あれから何も無えぜ。」

 

「ちぇ〜〜〜ッ。つまんないの……」

 

不貞腐れた様に唇を尖らせる愛子。本当にこの手の話しには目が無い奴だ。

そんなこんなで馬鹿話をしてる内に予約した時間になったので、俺達は受け付けで金を払い部屋に入った。愛子がFenderの黒と茶色のサンバーストカラーのジャズベを取り出して

チューニングとセッティングをする傍ら、俺はMP3プレイヤーをミキサーに繋ぐ。中には俺が作った清涼祭で演る曲のドラムのオケが入っている。コイツが朝西村先生に取り上げられていたらヤバかった。今日の練習が出来なかった所だ。

 

「あれ?Gibsonなんか持ってたっけ?」

 

MP3プレイヤーをミキサーに繋ぎ終え自分のセッティングを始めた俺に、愛子が俺のギターに興味を示したのか聞いて来た。

 

「ん?ああ、親父が若い頃使ってたヤツでな。くれたんだよ。」

 

高校の入学祝いにMTBを買いに行ったその日、親父は「そろそろ良いだろう。」と言って俺に長年使っていた自分のギターを俺にくれたのだ。1978年製 Gibson Flying V 。親父が現役だった頃でも十分ビンテージの域に達していた代物。正直今の俺には勿体無い。親父から受け継いだこのギターは一生モンの宝物だ。

 

「凄いッ!年代物じゃんッ!売ったら幾ら位になるかな!?」

 

「売らねえよッ!ほれッ!下んねえ事言って無えで始めるぞッ!」

 

 

早々に話しを切り上げてMP3プレイヤーからオケを流して練習を開始する。

 

「もう少しドラムの音量を上げて。」

 

「解った。愛子はもう少しlowを削ってくれ。チョイトばかり音が丸いぜ。」

 

「OK。」

 

一曲目サビ終わり迄合わせた所でボリュームやセッティングを調整し、またトラックを頭に戻して練習を再開。やはり家で一人で弾くよりもスタジオで合わせるのは楽しい。家庭用の小さなアンプと違って100wのスタックMarshallのチューブサウンドは、年代物のギター本来のサウンドを存分に引き出してくれる。加えて愛子はベースが上手い。おそらく水泳と同じで好きな事にはのめり込むタイプなんだろう。音と音が絡み合いハーモニーが生まれ、その空間が俺の心を高揚させる。

強いて文句が有るとすればドラムが電子音で有る事と曲がチャラい事だ。前者はドラムが居ないから仕方が無いが、曲目に関しては少々不満が有った。俺の意見を全て却下して愛子が決めた物だったからだ。最初愛子と曲目の話しをした時、俺は折角だからオリジナルをやろうと持ちかけたのだが……

「学園祭でオリジナルなんかやったって皆分かんないから盛り上がら無いよ。コピーにしよ。」

と言われてしまった。確かに愛子の言い分はもっともだ。そこでいくつか曲を提示した所……

 

「却下。」

 

俺はキレた。

 

「テメーッ!古き良き時代のハードロックをやろうって俺の意気込みが解んねえのかよッ!」

 

「だ・か・らッ!それが駄目なんだってばッ!jojoの選曲は古過ぎて皆分かんないんだよッ!」

 

と返されてしまいぐうの音も出なかった。別にこの手の曲は嫌いじゃ無いが、俺はもっと男臭い曲がやりたいぜ。

一曲目が終わった所で一旦オケを止める。お互いに所々ズレたりミスも有ったが、まあ一発目はこんな物だろう。演奏が止まる事無く最後迄やれただけでも上出来だ。

 

「すっご〜〜〜〜〜いッ!!メチャメチャギター上手くなったじゃんッ!!」

 

オケを止めた直後に愛子が大きな声を上げた。

 

 

「そ……そうか?/////?」

 

 

そう大袈裟に褒められると少し気恥しい。一年前に比べて成長している自覚は有ったがここまで驚かれるとは思わなかった。

 

「うんうん!流石振り分け試験前日にテスト勉強ほったらかしてギター弾いてるだけはあるよ!」

 

半分は褒めてるがもう半分は完全に馬鹿にしてやがる。いや、流石に振り分け試験前日は俺だって勉強しようとしたさ。でもチョイト小休止入れようとした所でついついギターに手が伸びちまったんだよ。

 

「やかましいッ!続けるぞッ!」

 

二曲目のオケを流して練習を再開。二曲目もなんとか通し、続けて三曲目に取り掛かる。

清涼祭で演る曲はロック調の曲が二曲とバラードが一曲の合わせて三曲。ラストのバラードは出だしがキーボードから入るのだが、俺が作ったオケはドラムのみの簡単な物だ。前奏のキーボードの部分はカットして有るのでその事を愛子に説明してから三曲目のオケを流す。何回か通した所で休憩を挟み練習を再開。退出時間の5分前になった所で俺達は片付けをして部屋を出た。流石に二人だけだと合わせ安い。最後の一回には大分まとまって来ていた。

 

「そう言えばボーカル見つかったって言ってたけど、どんな人?」

 

ロビーのテーブルに腰を下ろした所で愛子が口を開いた。

 

「ああ。『木下秀吉』って奴でな。演劇部のホープで歌唱力はかなりの物らしいぜ。」

 

「『木下』?ひょっとして優子の双子の弟さんの事かな?」

 

「ん?知ってるのか?」

 

「うん、ウチのクラスにも『木下』って苗字の女の子が居て、確か双子の弟が居るらしいんだよね。」

 

アイツ姉ちゃんなんか居たのか……

 

「それにしても、ボーカルが見つかったのは良いけど、残りのパートは探すの大変そうだね……」

 

確かにバンドのメンバー探しでドラムやキーボードは人口が少ないので見つけるのが難しい。親父も若い頃はドラムを探すのに苦労したと言って居た。

 

「ねえ、軽音部だったjojoの先輩で協力してくれそうな人は居ないの?」

 

「声は掛けてみたが部活が潰れてから学校の外でバンド組み出したみたいでな。忙しいって断られちまった。」

 

「そっか〜〜〜。何で軽音部って潰れちゃったの?」

 

「中心になってた三年の先輩が卒業してから部員が激減してそれで廃部だ。」

 

「そうだったんだ。あ〜あ、jojoの居る軽音部だったら絶対に入ってたんだけどな……」

 

またコイツはそうやって思わせ振りな事を言う……。そんな事ばっかやってるから勘違いした野郎共に言い寄られた挙句、変な奴に付きまとわれたりするんだぜ。中学の時に何回かそんな事が有って助けてやったのに未だ懲りねえのか?

そんな事を考えていると入口の扉が開いた。

 

「え?」

 

自然と其方に視線が動き入って来たその人物を見て思わずマヌケな声が出てしまった。キャリーを引いて現れたソイツは俺の知っている奴だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「土……屋?」

 

「ーーーーーッ!」

 

俺の存在に気付いてハッとなる土屋。

 

「お前ッ!……ドラムやってたのかッ!?」

 

「……!!(ブンブン)」

 

「テメー見えすいたウソ付いてんじゃねえぞボケーーーーーッ!!そのペダルケースとスティックは何だーーーーーッ!!オマケにスネア迄自前じゃねえかーーーーーッ!!」

 

「まあまあ。土屋君って言ったっけ?jojoの知り合いなの?」

「……クラスメイト。」

 

「そうなんだ。僕は工藤愛子。よろしくね☆」

 

「(コクリ)」

 

愛子が自己紹介をすると土屋は頷いて応える。コイツがドラムやってたとは以外だった。しかしこのタイミングドラムやってる知り合いが現れた事はラッキーだ。

 

「土屋。見た所個人練習で叩きに来たって感じだな。良かったら俺達も見学させてくれないか?」

 

「(フルフル)」

 

「土屋君。ほんのちょっとで良いんだけど駄目かな?」

 

「(コクリ)」

 

こ……この野郎ッ!俺の頼みは断わって愛子の頼みは了承するたあ何て現金な野郎だッ!まあ何はともあれ見学する事を許可してくれたんだ。此処は我慢しよう。俺と愛子は店員の

許可を貰って土屋の練習を見学する事にした。大抵のスタジオは個人練習の見学等は部外者の立ち入りを禁じて居るのだが、此処は割とそう言った事に寛容だ。俺達が知り合いで有る事を説明すると店員は快く許可してくれた。

土屋のドラムの腕は中々の物だった。パワフルで重量感の有る音は『Korn』や『Evanescence』と言ったニューメタルからの影響が見て取れる。安定感も有るしテクニックも申し分無い。どうにかして引き入れたい所だ。

「いや〜堪能させてもらったよ。土屋君ってドラム上手いんだね。僕ビックリしちゃった。」

再びロビーのテーブルに腰を下ろした所で愛子が口を開いた。おそらく土屋は今迄人前で叩いた事が無かったんだろう。愛子に手放しで褒められて顔を赤くしている。

 

「土屋。俺達は清涼祭に出ようと思ってるんだが、未だメンバーが集まって無えんだ。協力してくれないか?」

 

「(フルフル)」

 

「お願い土屋君!」

 

「任せて置け。(キリッ)」

 

イラッ

 

「土屋ッ!テメー歯あ食いしばれッ!」

 

「(ビクッ!!)」

 

「もうッ!やめなってばッ!折角引き受けてくれるって言ってるのに何やってるのッ!?」

思わずカッとなって土屋に殴り掛かろうとした俺を愛子が制止した。イカンイカン。チャンスを棒に振る所だった。癇に障るが我慢だ我慢。

 

「はあ……悪かったな土屋。これから色んな意味でよろしくな。」

 

「よろしくね☆」

 

「……よろしく。」

 

何はともあれドラムの確保が出来た訳だ。後はキーボードだ。 キーボードはドラム以上に探すのが難しい。その場合DTMソフトを使って作ったオケをMTRなんかに入れて流すのが主流だが、生憎と俺はそこ迄の技術は持ち合わせていない。まあその辺りは親父の知り合いに作れそうな人が居るかもしれないので頼むとして、問題は別に有った。

「土屋。お前動機とクリックに合わせて叩いたり出来るか?」

「(フルフル)」

だろうな。一人でスタジオ入って叩いたりしてる分にはそんな練習する事なんて無いだろう。動機をMTRで流す場合、別トラックにドラムがカウントを刻み出す為の部分と実際にドラムがカウントを刻む部分とをずらしてクリックを流す必要が有る。清涼祭迄まだ時間は有るが、オケが出来上がって土屋がオケとクリックに合わせて叩ける様になる迄は時間が掛かるし、学生の俺達がスタジオに入れるタイミングは予算的に限られて来る。

 

「キーボードか〜。せめてピアノでも居ればな〜。」

 

俺の考えてる事を察したのか愛子がぼやく。曲決めたのお前じゃねえかよ。その辺の問題は考えて無かったのか?

 

「……明久。」

 

「ん?明久がどうかしたのか?」

 

突如土屋が呟いたクラスメイトの名前に俺は思わず反応した。

 

「ピアノやってた。」

 

何ッ!?あの野郎何でそんな大事な事を黙ってやがったッ!明日シバキ倒してやるッ!

 

「?ねえjojo。『明久』って誰?」

 

「ん?ああ、俺のクラスメイトでな。俺と同じ『観察処分者』だ。」

 

「へ〜〜〜〜。jojoの他にも『観察処分者』が居たんだ。jojoの周りには面白い人がいっぱい居るね☆」

 

明久の事を簡単に説明してやると愛子はケラケラと笑った。

「ところで……」

 

俺達の会話に割って入る土屋。

 

「ん?どうした?」

 

「二人の関係は?」

 

「ん〜〜〜〜〜?し・り・た・い〜〜〜〜?僕とjojoの関係は「コイツとは中学の頃からの付き合いのダチだ。」ちょっとjojoッ!」

 

愛子の言葉を遮って土屋に俺達の関係を説明した。どうせお前土屋に碌でもない事吹き込もうとしたんだろうがそうは行くか。

 

「後何故『jojo』?」

 

俺のアダ名に疑問を持ったのか土屋が俺に目を向けて言った。

 

「ん?『城』と『丈』をくっ付けただけだよ。」

 

「そう……」

 

愛子の説明に納得したのか土屋は小さく呟いた。

互いに連絡先を交換して俺達はスタジオを出た。携帯の時計を見るともう結構な時間だった。

 

「じゃあ音源は明日渡すわ。改めてよろしくな、土屋。」

 

「よろしくね。」

 

「……よろしく。」

 

「はあ、俺はもう行くぜ。明日朝早いからな。」

 

「あれ?明日の朝何か有るの?」

 

俺のぼやきが気になったのか愛子が聞いて来た。

 

「『観察処分者』の仕事だよ。」

 

「ふえ〜〜〜。大変だね。」

 

「まあな。今日のやらかしのペナルティだから仕方無えよ。それじゃあまたな!」

 

「バイバイ!またね!」

 

「バイバイjojo。」

 

「お……オウ。またな!」

 

土屋が俺をそのアダ名で呼ぶとは以外だった。挨拶も程々に俺はMTBに跨りスタジオを後にした。

しかし同じクラスからメンバーが三人も見つかるとは思わなかった。ヤッパこのクラス面白えぜ。さ〜てこれから楽しく成りそうだ。

 




暫く使って無かった7弦引っ張り出して弾いたらまたバンドやりたくなって来た。またバンド始めようかな……
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