オレとギターとstardust   作:恥知らずの奥村悠時

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変則な勤務帯やら何やらで更新が大変遅くなりましたm(_ _)m。
では、どうぞッ!


ep14.『協定』と『覚悟』と『オラオラオラオラッ!!』

side jojo

 

「うーーーっす。」

 

「あっ、お帰りなさ……って吉井君ッ!?東城君一体何が有ったんですかッ!?」

 

島田にぶん殴られて気を失った明久を担いで教室に戻ると姫路が素っ頓狂な声を上げた。

 

「あ〜〜〜……。何つーか……その……。」

 

参ったな。この場合何て説明すれば良いんだ?

 

「あ、明久のヤツよお。教室に戻って来る途中に誰かが落としたテストの答案用紙踏んずけてスッ転んじまってよお。頭打って気い失っちまったんだよ。」

 

「そ……そうだったんですか。」

 

我ながら白々しい嘘だが信じてくれた様だ。

 

「そうなんだよ〜〜〜。な!?そうだよな!?島田?」

 

「フンッ!」

 

俺が島田に話を振ると島田は鼻を鳴らしてソッポを向いた。いい加減機嫌直せって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後俺達はBクラスの教室前に攻め込んだ。そして今は協定通り休戦中。一応事は坂本の計画通りに進んで居るが、こちらの被害もかなり大きい。廊下での戦いはコチラの圧勝に見えるが、それでもコチラが全戦力を注いだ結果だ。決して状況が良いとは言えない。何より敵の親玉はあの『根本恭二』だからな。

必ずまた何か仕掛けて来る筈だ。

 

「……(トントン)」

 

「お、ムッツリー二か。何か変わった事は有ったか?」

 

ふと土屋がやって来て坂本の肩を叩いた。

今日の土屋は戦闘には直接参加せず隠密活動に徹し、敵の情報を集めてくれていた。

 

「ん?Cクラスの様子が怪しいだと?」

 

「……(コクリ)」

 

土屋の情報によると、どうやらCクラスが試召戦争の用意を始めているとの事だった。

 

「漁夫の利を狙うつもりか。いやらしい連中だな。」

 

坂本の言う通りこの戦争の勝者を相手に戦うつもりなのだろう。

 

「で、どうするんだ?坂本?」

 

「ん~~~、そうだな……。」

 

チラリと時計に視線を向ける坂本。時刻は四時半。まだそれ程遅く無い時間だ。

 

「Cクラスと協定でも結ぶか。Dクラス使って攻め込ませるぞ、とか言って脅してやれば俺達に攻め込む気も無くなるだろう。」

 

なる程な。それにCクラスの奴等も、まさか俺達が勝つとは思っても無いだろうからな。俺達と協定を結ぶのはそう難しい話しでは無いだろう。しかし気になるのはCクラスが俺達FクラスとBクラスが休戦協定中に試召戦争の準備を始めて居たと言う事……。あまりにもタイミングが良すぎる気がするが……。

 

「よし。それじゃ今から行って来るか。」

 

「そうだな。」

 

「雄二。僕も一緒に行くよ。」

 

いつの間にか復活した明久が協定のメンバーに名乗りを上げた。

 

「ああ、分かった。秀吉は念の為に此処に残ってくれ。」

 

「ん?何じゃ?ワシは行かなくて良いのか?」

 

「お前の顔を見せると、万が一の時にやろうとしてる作戦に支障が出るんでな。」

 

「良く解らんが、雄二がそう言うのならば従おう。」

 

素直に引き下がる秀吉。何で万が一の時に秀吉が必要なんだ?さっぱり解んねえぞ?

 

「それじゃ、行くとするか。」

 

秀吉を残し、俺、明久、坂本、姫路、土屋のメンバーでCクラスに向かう。Cクラスの教室は、俺達Fクラスの有る旧校舎から渡り廊下を抜けた新校舎の一番奥の教室だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アキ。アンタの返り血こびり付いて洗うの大変だったんだけど。どうしてくれるのよ。」

 

「それって吉井が悪いのか?」

 

廊下に出た所で、ハンカチで手を拭っている島田と鞄を肩に担いだ須川に出会った。

 

「あ、島田さ(キッ!)美波様に須川君。丁度良かった。Cクラス迄付き合ってよ。」

 

明久が島田と須川を協定のメンバーに誘った。まあ確かに人数が多いに越した事は無いからな。

 

「美波で良いわよ。ん〜〜〜。別に良いけど?」

 

「ああ。俺も大丈夫だ。」

 

「急がんとCクラスの代表が帰ってしまうぞい。」

 

「そうだな。」

 

こうして更に島田と須川を迎えた六人でCクラスの教室に向かう事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜〜〜、悪い。」

 

渡り廊下の途中で俺は足を止めた。

 

「ん?丈也?どうしたの?」

 

「いやなに、チョイと用事を思い出したんでな。俺教室に戻るわ。」

 

「用事?」

 

「ああ。折れた卓袱台の脚とか、壊されたシャーペンとか色々有っただろ?『ゴミ掃除』だよ。」

 

「?それわざわざ今から戻ってやる必要有るの?Cクラスと協定を結んでからでも……。」

 

「明久。東城は『ゴミ掃除』がしたいって言ってるんだ。行かせてやれ。」

 

「おう。悪いな。」

 

そう言い残して俺は坂本達と別れ、一人旧校舎へと引き返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……。」

 

旧校舎に戻って来た所で足を止める。

 

「しっかしテメー等、マジで勝つ為に手段は選ばねえんだな……。出て来やがれッ!」

 

「チッ!」

 

「感の良いヤツだぜ。」

 

俺がそう言うと階段の所から数名の生徒が姿を現した。内何人かは昨日宣戦布告に行った時に見覚えが有る。間違い無いッ!Bクラスの『 ゴミ共』だッ!

 

「こんな旧校舎にお前等Bクラスの奴等が何の用だ?」

 

「テメー等Fクラスの方こそ何処行くんだ?『協定』により『試召戦争』に関する行為は一切禁止されてる筈だぜ?」

 

やはりな。俺達FクラスがBクラスと『休戦協定』を結んだ直後にCクラスが『試召戦争』の準備を始めるとか、道理でタイミングが良過ぎると思ったぜ。

 

大方協定を結びに坂本達が Cクラスに行った所に、Bクラスの奴等が『先に協定を破った』とか言って攻撃を仕掛ける。それで逃げて来た所を逃げ場の無い渡り廊下で挟み撃ちって所か?まさか『休戦協定』を結んだ段階で全部根本の手の平の上だったとはな。

だが折角の待ち伏せも見つかった時点でオジャンだ。敵の数は五人。何とか成らない人数じゃない。軽くのしてやれば尻尾巻いて逃げ帰るだろう。

そう思った矢先、階段を降りて来る人影。新手のBクラスの生徒か?いや、違うッ!アレはッ!

 

「先生ッ!Bクラス鈴木二郎が召喚を行いますッ!」

 

「承認します。」

 

なッ!?コイツ等ッ!待ち伏せがバレた時の保険に立会いの先生を連れてやがったのかッ!

 

「へへッ。悪く思うなよ。先に『協定』を破ったのはソッチだからな。」

 

「おッ!オイチョット待てッ!立会いの先生迄連れて待ち伏せしてたのはソッチだろうがッ!?」

 

「オイオイ俺達は偶々此処に居ただけだぜ?変な言い掛かりは止めてくれよ。」

 

クソッ!白々しい嘘をッ!しかしこの場で『どっちが先に協定を破ったか』何てのは水掛け論に過ぎない。言い争うだけ時間の無駄だ。

しかしどうした物か?この状況はコチラにとって明らかに分が悪い。今回敵の目的が坂本達の待ち伏せで有る以上、Dクラスの時みたいに逃げるなんて事は出来無え。加えて敵の数は五人。敵の攻撃を受けずに立ち回る自信は有るが、坂本達が戻って来るのも時間の問題だ。そうなったら敵の内何人かは坂本に標的を向ける筈だ。その上今現在教室に残ってるのは秀吉一人だけ。援軍の期待は出来無え。さてどうするか……。

ん?Bクラスの奴等が連れてる先生は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へッ……へへへッ……ハハハッ。」

 

「?どうした?追い詰められて遂に頭がおかしくなったのか?」

 

「いや、寧ろその逆だ。急に闘志が湧いて来たぜッ!」

 

『命』を『運』んで来ると書いて『運命』とは良く行った物だぜッ!

 

「さあて、『ゴミ掃除』と行くかッ!」

 

side 美波

 

「Fクラス代表の坂本雄二だ。このクラスの代表は?」

 

教室の扉を開くなり坂本がCクラスの人達に告げる。

Cクラスには未だかなりの人達が残って居た。土屋の情報通り漁夫の利を狙って試召戦争の準備中って訳ね。

 

「私だけど、何か用かしら?」

 

現れたのはまじりっけ無しの黒髪をベリーショートにした気の強そうな女子小山優香さん。確かバレー部のホープだった筈。なる程。流石バレーやってるだけあってグンバツの脚だわ。オマケに出る所出て締まる所締まって……。クキ〜〜〜〜〜ッ!!羨ましい〜〜〜〜〜ッ!!

 

「Fクラス代表としてクラス間交渉に来た。時間は有るか?」

 

「クラス間交渉?」

 

「ああ、不可侵条約を結びたい。」

 

「はぁ……不可侵条約ねえ……。」

 

面倒くさそうにため息を付いて応える小山さん。

 

「それで?貴方はどうしたいのかしら?『恭二』?」

 

小山さんは気だるそう振り返り、教室の奥に居る人達に声を掛けた。

え?『恭二』?

 

「当然却下。だって必要無いだろ〜〜〜。」

 

「なッ!?根本君ッ!?Bクラスの君がどうしてこんな所にッ!?」

 

取り巻きを連れて教室の奥から現れた男の姿にアキが驚愕する。Bクラス代表『根本恭二』。短く狩り揃えたセンスの無い髪型と整えられていない無精髭。見るからに姑息で卑怯な手を使いそうな性格の悪い男って感じね。

 

「酷いじゃないかFクラスの皆さん。『協定』を破るなんて。『試召戦争』に関する行為を一切禁止したよな〜〜〜〜〜?」

 

「何を言って……。」

 

「先に『協定』を破ったのはソッチだからな?コレはお互い様だよなッ!」

 

根本が告げると同時に取り巻きが動き出す。そしてその背後にはさっき迄戦場に居た長谷川先生の姿が……。

 

「長谷川先生ッ!Bクラス芳野が召喚を……。」

 

「させるかぁッ!Fクラス須川が受けて立つッ!試獣試召ッ!」

 

Bクラスの芳野が坂本に攻撃しようとした所を、須川君が間一髪の所で身代わりになる。

 

「僕等は協定違反なんかしていないッ!コレはCクラスとFクラスの……。」

 

「無駄だ明久ッ!根本は条文の『試召戦争に関する一切の行為』を盾に白を切るつもりだッ!」

 

「ま、そゆこと〜〜〜♪」

 

「へッ!屁理屈だッ!」

 

「屁理屈も理屈の内ってな~~~。」

 

「どうでもいいけど貴方達ッ!やるなら何処か他所でやってくれないかしらッ!?」

 

「ご、ゴメンよ優香〜〜〜。坂本を倒したら直ぐに出て行くからさ〜〜〜〜〜。」

 

「フンッ!アホらしい。付き合ってられないわッ!」

 

心底どうでもいいと言った感じに吐き捨てると小山さんは教室の奥に引っ込んで行った。

はッ!腹立つ〜〜〜〜〜ッ!!!!覚えてなさいッ!何時かその澄ました顔をゲドゲドの恐怖面に変えてやるわッ!!!!

 

「明久、此処は逃げるぞッ!」

 

「クソッ!」

 

戦闘を行って居る須川君に背を向けてウチ達はCクラスから脱出しようと駆け出した。

 

「逃がすなッ!坂本を打取れッ!」

 

背後から聞こえて来る根本の指示と足音。

かなりヤバイ状況ね。立会いの先生が数学の長谷川先生だからウチはどうにか戦えるけど、アキや坂本の点数じゃあBクラスと勝負にならないし、何より頼みの綱の瑞希は数学の点数を消費してるわ。きっと根本は先の戦いで瑞希が数学を消費していると知っているから長谷川先生を呼んだのね。

 

「はぁ……ふぅ……。」

 

「姫路、大丈夫か?」

 

廊下を走って居ると瑞希が遅れ出した。運動が得意で無い上に、体の弱い瑞希にこの全力疾走はキツそうね。

 

「あ、あの……先に……行って……くだ、さい……。」

 

息も絶え絶えに言う瑞希。クッ!マズイわね。このままだと確実に追い付かれるッ!

でも此処で瑞希を失ったら、明日の戦争がどうなるか分からないッ!『希望』は守らなくてはッ!

此処は……。

 

「坂本ッ!」

 

「何だ島田ッ!」

 

「此処はウチが引き受けるわッ!坂本は瑞希を連れて逃げてッ!」

 

「みッ!美波ちゃんッ!?そ、そんな……駄目ですッ!」

 

「ウチの事は気にしないでッ!坂本が打取られたら元も子も無いし、瑞希はウチ等Fクラスの『希望』なのよッ!アンタを失ったら勝てる勝負も勝て無くなるわッ!だから行ってッ!」

 

「解った。此処はお前に任せる。」

 

流石坂本。感情に流されず冷静にこの場を見据えた対応。ディ・モールト・ベネよッ!

 

「……(ピタッ)」

 

「いえ、土屋も逃げて。明日は多分土屋が戦争の『鍵』を握るから。」

 

一緒に立ち止まった土屋。土屋にも重要な役割が有る筈。此処で失う訳には行かないわ。

 

「……(グッ!)」

 

土屋は親指を立てて走り去って行った。

 

「美波ッ!僕も一緒に戦うよッ!」

 

なッ!?アキッ!?瑞希と一緒に逃げたんじゃ無かったのッ!?

 

「バカッ!アンタじゃ足手まといよッ!さっさと逃げてッ!」

 

気持ちは嬉しいけどアキの点数じゃBクラスと勝負にならないわ。

 

「美波、僕は今迄自分一人の事だけを考えて生きて来た。だからDクラスとの戦いで君を見捨てようとしたんだ。後悔してるよ。そしてそれはとても不幸な生活だったんだ。そんな時、僕の心を救ってくれたのが丈也だった。丈也は教えてくれた。目の前の恐怖に屈しない『勇気』を……。仲間を思いやる『 優しさの心』を……。どんな困難をもはねのける『 精神力』を……。そして『観察処分者』としての宿命をありのままに受け入れたその『潔さ』と『覚悟』をッ!丈也の様に成りたい……。あの『黄金』の様な輝きに追い付く事は、僕にとって絶対に必要な事ッ!」

 

アキは何を言っているの?正直アキの言っている事は何一つ分からない。でも一つだけ分かる事が有る。今のアキには物事に立ち向かおうとする確かな『意志』が有るッ!

 

「それに美波。君は今!ヤケになって居るッ!自分の身を『犠牲にして仲間を助ける』……ってッ!」

 

なッ!何で解ったのよッ!?

 

「だがッ!追い詰められた根性じゃ無いッ!『覚悟』だッ!『覚悟』が必要なんだッ!」

 

 

 

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

 

 

 

 

「『覚悟』とは……………犠牲の心じゃ無いッ!『覚悟』とはッ!!暗闇の荒野にッ!!進むべき道を切り開く事だッ!!」

 

今のアキからは今迄に感じた事の無い『スゴ味』を感じる……。何?コレが普段オチャラけてるアキなの?

 

『居たぞッ!Fクラスの吉井と島田だッ!』

 

『ブチ殺せッ!』

 

正面から追手がやって来る。長谷川先生も一緒だ。

 

『とっとと片付けて別働隊と一緒に坂本達を挟み撃ちにするわよ。』

 

別働隊ッ!?東城の言ってた『ゴミ掃除』ってこの事だったのッ!?

 

「行くぞBクラスッ!『覚悟』は良いかッ!?僕は出来てるッ!!」

 

 side 雄二

 

「頑張れ姫路ッ!教室迄後もう少しだッ!」

 

「はあ……はあ……は、はい……。」

 

島田がBクラスの奴等を足止めしてくれたお陰でどうにか逃げる事が出来たが、敵が島田を倒して追い付いて来るのも時間の時間だ。

何より気掛かりなのは東城の方だ。東城は『ゴミ掃除』と言ってあの場に残った。おそらくBクラスの別働隊の存在に気付いたからだろう。別働隊の対処は東城がしてくれてる筈だが、敵もバカじゃ無い。立会いの教師を連れて来て居る可能性は十分に考えられる。

もしそうだったとしたら東城に勝ち目は無いッ!逃げ場の無いこの渡り廊下でBクラスの本隊と別働隊と挟み撃ちにされたら一巻の終わりだッ!

 

「はあ……はあ……も、もう駄目です……。」

 

息を切らせて渡り廊下の中腹で姫路が膝を着いて座り込んでしまったッ!同時に旧校舎の入口に人影がッ!クソッ!万事休すかッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお。思ったより早かったな。」

 

「東城ッ!?無事だったのかッ!?」

 

馬鹿なッ!Bクラスの別働隊は立会いの教師を連れて来て居無かったのかッ!?

 

「ああ。どうにかこうにかな。今頃Bクラスの別働隊の奴等なら補習室で西村先生にコッテリ絞られてる筈だぜ。」

 

なッ!奴等やっぱり立会いの教師を連れて来てたのかッ!

 

「『補習室で鉄人に絞られてる』って事は試験召喚バトルになったって事だろう!?お前良くBクラス相手に勝てたな。」

 

「勝てたのは偶然だ。偶々立会いの先生が得意科目の先生でよぉ。」

 

しかし幾ら得意科目とは言えBクラスの別働隊を全滅させるにはかなりの点数が必要だぞ。それこそ『腕輪』でも持つ位の点数が……。

 

「そう言えば明久どうした?」

 

東城に言われて気が付いたが明久が居ない。

 

「まさかッ!Bクラスの人達を足止めする為に美波ちゃんと一緒に残ったんじゃッ!?」

 

そう言う事か。まあ、島田一人じゃ心もとないからな。

 

「心配すんなよ姫路。明久だって俺と同じ『観察処分者』だ。無事に帰って来るって。」

 

「でも……。」

 

「東城の言う通りだ。アイツも伊達に『観察処分者』何て呼ばれて無いって事だ。」

 

『観察処分者 』の主な仕事は教師の雑用係。つまり誰よりも召喚獣を使う機会が多いって事だ。バカな明久の事だから東城と同じ様にって程じゃあ無いが、明久もそれなりに召喚獣の扱いには慣れてる筈。無事とは言わないが、これ位のピンチは切り抜けて来るだろう。

だがこの時俺は未だ過小評価していた。『吉井明久』と言う男の実力を……。

 

side 美波

 

 

『試獣召喚ッ!』

 

追手が四人とも声を揃えて召喚獣を呼び出す。

 

「Fクラスだからって甘く見ない事ねッ!試獣召喚ッ!」

 

『Bクラス   工藤信二    数学    159点』

 

『Fクラス 島田美波    数学    171点』

 

「お前、本当にFクラスか?」

 

ウチの点数を見たBクラスの男子の表情が驚愕の色に染まる。

ふっふ~~~ん。数学を選んだのが間違いだったわね。コレなら漢字が読めなくても解けるのよ。

 

「工藤君。フォローするわッ!こんなので補習室送りにはなりたくないでしょうッ!?」

 

「クッ……。頼むッ!」

 

悔しそうに唇を噛む工藤君に、真田さんが加勢に入る。マズイわねッ!鍔迫り合いで身動きが取れない今敵が増えたら勝ち目が無いわッ!

 

「試獣召喚ッ!」

 

ウチに続いてアキも召喚獣を繰り出した。

現れた召喚獣は学ランを見にまとった姿に、武器は……グラブ?

 

「吉井は構うなッ!見るからに雑魚だッ!」

 

「返せッ!僕の格好良い描写を返せッ!」

 

アキには悪いけど、工藤君の言う通りお世辞にも 強そうには見えないわ。

正直言ってキツいわね。勝ってるとは言え点数は僅差ッ!ウチの召喚獣も消耗が激しいッ!

 

「それじゃ、さよなら。」

 

ウチの召喚に向かって真田さんの召喚獣が切り込んで来るッ!

マズイッ!避けられ無いッ!そう思った瞬間……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美波ッ!」

 

突如アキの召喚獣がウチと真田さんの召喚獣の間に割り込んだッ!

 

「オラァッ!」

 

バキィッ!

 

えッ!?

 

「なッ!なにぃッ!?」

 

「はッ!速いッ!」

 

なッ!何ッ!?アキは今何をしたのッ!?速過ぎて全然見えなかったッ!って言っうか『召喚獣』ってあんなに速く動ける物なのッ!?

 

「吉井明久ッ!貴様今何をしたーーーーーッ!?」

 

「……さあな。てめえらBクラスの召喚獣も、口程じゃあねえって事だろうぜ。」

 

「なッ!?何だとッ!?」

 

「……強いて言うなら『観察処分者』の唯一の利点って所かな?それ以上は言う必要は無いね。」

 

「ぐぬうぅぅッ!減らず口を叩きやがってッ!」

 

「だッ!だが今の『スピード』ッ!下手にコイツの召喚獣に攻撃するのはヤバイぜッ!」

 

Bクラスの生徒達は皆アキを警戒して居る。一人を除いて……。

 

「よ……よくも!私の召喚獣に疵を付けたなァ…………!ヌヌヌ…………。」

 

攻撃を受けた真田さんがアキを睨み付けて居た。

 

「カエルの小便よりも…………下衆なッ!下衆な『観察処分者』の攻撃なぞをよくもッ!よくもこの私にッ!」

 

「フンッ!怒るかい?『観察処分者』に攻撃されてBクラスとしてのプライドに傷が付いたって訳か。随時と安いプライドだ。」

 

「いい気になるなよッ!KUAAッ!てめえ等全員補習室送りだッ!青ちょびた面を鉄人の元に送ってやるわッ!」

 

鬼の形相で真田さんの召喚獣がアキの召喚獣に襲い掛かったッ!その瞬間……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアァァァーーーーーーーーッ!!!!!!!!」

 

『Fクラス   吉井明久   数学   51点』

 

『Bクラス   真田由佳   数学   0点』

 

アキの召喚獣が真田さんの召喚獣に強烈な『ラッシュ』を叩き込み、あっという間に全ての点数を削り取ってしまったッ!

何ッ!?何なの今の動きはッ!?攻撃を目にも止まら無い速さで、しかも全て防具を着けていないむき出しの部位に叩き込むなんてッ!なんて『スピード』と『精密な動き』なのッ!

アキは『観察処分者』の唯一の利点と言って居た。そう言えば東城も『観察処分者』だった筈……。

なら『観察処分者』って何?ウチ達は一体、何と一緒に戦ってるの?

 

side 明久

 

 

「馬鹿なッ!真田がやられただとッ!?」

 

「これはッ……本気でやった方が良いな……。」

 

「だがあの『スピード』ッ!まともに戦っても真田の二の舞いだぞッ!」

 

マズイな……。手の内を晒した事で余計に警戒されてしまったッ!

『召喚獣』の操作と言う物は皆が思って居る以上に難しい。力が異常に強い上に、自分よりも手足の長さが本来の自分とは違う召喚獣を扱うのはそう簡単な事じゃ無い。『観察処分者』として幾度と無く『召喚獣』を使い、痛みや疲労のフィードバックを受けて感覚を共有する事で僕は『召喚獣』を驚異的な『スピード』で『精密に動かす』と言う『技術』を身に付ける事が出来た。この『技術』さえ有ればBクラスのモブ程度なら余裕で勝てる。しかし、ソレは事一対一の状況に限った話しだ。点数が低いので一撃一撃の威力は弱い。一撃で敵を仕留める事が出来ない以上複数の敵に囲まれたら勝ち目は無い。何より敵の警戒が僕に向けられている以上、敵の狙いは必然的に僕より召喚獣の扱いに慣れていない美波に向けられる筈だ。つまり美波を守りながら戦わなくてはならないッ!援軍なんか呼ばれたら一巻の終わりだッ!と、その時……。

 

 

 

 

 

 

「0点になった生徒は補習うゥーーーーーッ!!!!」

 

「てッ!鉄人ッ!」

 

0点になった真田さんを補習室に連れて行く為に鉄人がやって来たッ!

 

「 ヤッダーーーーーバァアァァァァアアアアアッ!!!!」

 

悲痛の声を上げながら鉄人に引きずられて行く真田さん。そしてその光景を唖然とした表情で見送るBクラスの生徒達。

チャンスだッ!

 

「今だ美波ッ!」

 

「OKッ!一気に畳み掛けるのねッ!」

 

「そうじゃ無いよッ!」

 

美波は僕の『召喚獣』の動きを見て勝てると思ってるみたいだけど、正直言って囲まれたら勝てる見込みは無いッ!

 

「?じゃあどうするのよ?」

 

「逃げるんだよォッ!美波ーーーーーッ!!どけーーーッ!ヤジ馬共ーーーーーッ!!」

 

「わあ~~~~~ッ!!何なのこの男ーーーーーッ!?」

 

僕と美波は一目散にその場から逃げ出した。

ヤレヤレだね……。

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