オレとギターとstardust   作:恥知らずの奥村悠時

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明けましておめでとうございます!
不本意ながら今回はオリキャラを出します。
アニメジョジョ4部も終わってしまいました……(・ω・`)
5部が待ち遠しい……。


ep16.怒りを叩き込め!①

side jojo

 

「雄二ッ!」

 

「うん?どうした、明久?脱走か?チョキでシバくぞ?」

 

補給 テストを受けていると、戦線に出ていた筈の明久が教室に飛び込んで来て坂本に詰め寄った。

 

「チョット聞きたい事が有るんだ。」

 

「……何だ?」

 

何時に無くマジな様子を察したのか、坂本は真剣な表情で明久の顔を見た。

 

「僕等の目標がAクラスで有る以上、今回の試召戦争も設備の交換はしないんだよね?」

 

「ああ、Bクラスに設備の交換をしない代わりに交換条件を持ち掛けるつもりだ。」

 

「交換条件の内容は?」

 

「それを聞いてお前に何の意味が有るんだ?」

 

「良いから答えてッ!」

 

明久の鬼気迫る様子に思わず坂本が一瞬たじろぐ。

 

「Aクラスに試召戦争の準備が出来て居ると宣告させる。それが今回Bクラスに持ち掛ける交換条件だ。」

 

坂本の答えに暫し考え込む明久。

 

「その交換条件に、代表の根本君にもペナルティーを与える事も付け加えたいんだ。」

 

「ほぉ……どんなペナルティーを与えるんだ?」

 

「それは僕に任せて欲しい。」

 

「ふむ……。」

 

明久の要望を聞いた坂本は顎に手を当てて考え込む。

 

「まあ良いだろう。勝利の暁にはそれ位何とかしてやろう。」

 

「それともう一つ。姫路さんを今回の戦闘から外して欲しい。」

 

何だとッ!?姫路を戦闘から外すだとッ!?

姫路は今回の作戦の要だぞッ!その姫路を戦闘から外すだとッ!?明久の奴どう言うつもり……。

イヤ待て。昨日俺が考えた通り設備を壊す事はカモフラージュで、敵の本来の目的が姫路の持つ『何か』を探す事だとしたら……。

俺は補給テストで戦況がどうなってるか解らねえが、明久が戦線を一時離脱して迄姫路を戦闘から外す様坂本に言いに来たって事は、姫路に何か有ったと見て良いだろう。つまりBクラスは俺達Fクラスの戦力の要で有る姫路を抑えるカードを手に入れたって訳だッ!クソッ!俺の悪い考えが的中しちまったッ!根本恭二ッ!何処までも腐り切ってやがるッ!畑に捨てられ、カビが生えて蝿もたからねえカボチャみてえに腐り切ってやがるぜーーーーーッ!!

 

「理由は?」

 

「理由は言えない。」

 

おそらく明久はその『何か』を知ったんだろう。根本がその『何か』を使って姫路の行動を抑えているからには、ソレは姫路に取っての弱味に成る物。おいそれと口外は出来ねえだろうな。

 

「どうしても外さないと駄目なのか?」

 

「うん、どうしても。」

 

明久の答えに再び考え込む坂本。

姫路抜きでBクラスと戦うと言う事は自殺に等しい行為だ。負ければ坂本が全責任を問われる事に成る。

 

「頼むッ!雄二ッ!」

 

坂本に深々と頭を下げて頼み込む明久。

明久の気持ちも解るが、坂本の考えも解る。この申し出はハイリスクかつノンリターンだ。事情を知らねえ奴からしたら理由も聞かずに「はいそうですか」と聞き入れられる様な物じゃ無い。

 

「条件が有る。」

 

「条件?」

 

「姫路が担う予定だった役割を、明久。お前がやるんだ。手段は問わない。必ず成功させろ。」

 

しかし坂本は明久の申し出を受け入れた。

 

「勿論やってみせるッ!絶対成功させるさッ!」

 

「良い返事だ。」

 

「それで、僕は何をしたら良いんだい?」

 

「タイミングを見計らって、根本に攻撃を仕掛けろ。科目は何でも良い。」

 

「皆のフォローは?」

 

「無い。しかもBクラスの教室の出入口は今のままだ。」

 

「ヤレヤレ……難しい事を言ってくれる。」

 

「オイチョット待て坂本ぉッ!」

 

俺は思わず立ち上がって坂本に叫んだ。

 

「何だ東城?」

 

「明久に姫路の代わりをッ!それも他の奴等のフォロー無しにやらせるだとッ!?幾ら何でも無茶が過ぎるぜッ!」

 

確かに姫路を作戦から外す申し出をした明久がケツを拭くのが筋だが、教室の奥に陣取ってるであろう根本に近付くには姫路の様な圧倒的な戦力が必要になる。そんな戦力を持たない明久に姫路の代わりを務めろだと!?無茶にも殆どが有るッ!

 

「東城。これは明久が言い出した事だ。作戦の要である姫路を戦線から外す以上、誰かがその代わりを務める必要がある。なら言い出した明久が責任を持って代わりを務めるのが筋だろ?」

 

「し……しかしだな……。」

 

「そこまで言うなら東城、お前が手を貸してやるんだな。良いか?失敗はするなよ?必ず成功させろ。それじゃ、上手くやれよ。」

 

何時に無く強い口調でキッパリと言い放つと坂本は教室を出ようと立ち上がった。

 

「オイ何処行く気だッ!?話しは未だ終わってねえぞッ!」

 

「話しはもうお終いだ。俺はDクラスに例の件で指示を出しに行かなくちゃならんからな。何時までもお前に構ってられん。」

 

「何だとッ!?」

 

「明久。」

 

坂本は俺達に背を向けたまま立ち止まると、明久にこう言った。

 

「確かに点数は低いが、秀吉やムッツリーニ、そして同じ『観察処分者』の東城の様に、お前にも秀でている部分が有る。だから俺はお前を信用している。」

 

「雄二……。」

 

「上手くやれ。計画に変更は無い。」

 

そう言い残して坂本は教室を出て行った。ケッ!ホンット昔からいけ好かないねえ野郎だ!

 

「……少しだけだけど解った気がする……『観察処分者』の戦い方が……。」

 

俺の隣に居た明久がグッと拳を握り締めて呟いた。その目から強い意志を決めた光が感じられる。間違い無い。アレは『覚悟』を決めた男の目だッ!

 

「美波ッ!武藤君と君嶋君も協力してくれッ!」

 

明久は教室内で補給テストを受けていた三人に声を掛けた。

 

「どうしたの?」

 

「何か用か?」

 

「補給テストが有るんだけど……。」

 

明久が指名した三人は俺と同様、昨日の時点でかなり点数を消耗しているから、当分は補給テストを受けるのが任務になっている。

 

「補給テストは中断。その代わり、僕に協力して欲しい。Bクラスの根本君に奇襲を仕掛ける。」

 

「……随分とマジな話しみたいね。解ったわ。」

 

明久の表情からただならぬ雰囲気を察したのか、島田は快く明久の頼みを了承した。

 

「ありがとう。恩に着るよ。それから丈也。君にも協力して欲しい。」

 

「言われる迄もねえ。協力するぜッ!で、何をすれば良いんだ?」

 

「それは……。」

 

side 明久

よし!作成は決まったし人員も確保出来た!後は立ち会いの先生を探すだけだ。だがこの作戦は内容が内容だけに立ち会いの先生を誰にするかが重要だ。それこそ余程寛容な先生か、新しい事や物珍しい事に対して体当たりで実行する様な『変人』である事が必要になって来る。作戦開始迄余り時間が無い。探す時間を省く為にもある程度居る場所が限定されていなくてはならない。一体どうしたら……。

 

「あ……。」

 

一人だけだが心当たりがある。 新しい事や物珍しい事に対して体当たりで実行する様な『変人』。そして試召戦争の真っ最中の今、あの先生は必ず職員室に居る筈だ!

 

「皆ッ!先に行っててッ!立ち会いの先生を連れて来るからッ!」

 

そう言い残して僕は教室を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「岸本先生ッ!」

 

僕は職員室のドアを開けると一人デスクに座って居た岸本先生に向かって声をかけた。

 

「あのねーーーーー!吉井君……ノックの後の『失礼します』も無しに職員室に入って来るってのも学生としてNGなんだが、扉を開けて開口一番に人を名指しで呼ぶなんて礼儀知らずって物なんじゃあないのかッ?」

 

怒られた……。明らかに不機嫌そうな顔をしている。だが此処で機嫌を損ねてしまうと召喚の立ち会い人になって欲しいと言うお願いを聞いて貰え無くなってしまう。此処は謝っておこう。

 

「し……失礼しました。」

 

「全く……僕だから良かったな。」

 

相変わらず偏屈な先生だ。

現国教師の『岸本飛呂文』先生。文月学園始まって以来の『変人』である事で有名だ。その理由は彼の教師としての肩書き以外のもう一つの顔に有った。

彼は教師でありながら小説家と言う二足の草鞋を履いている。その小説を書く事に掛ける情熱は凄まじい物で、小説のネタの『取材』と称してあちこちを飛び回ったり、また小説のネタの為なら生徒同士のイザコザであろうと首を突っ込むらしく、他の先生方も頭を抱えているとの事。そして試召戦争が始まると授業が自習になるのを良い事に、職員室に引き篭もってずっと小説を書いていると言う。

その破天荒振りと試召戦争中は確実に職員室に居るであろう事から僕は岸本先生を立ち会いの先生に選んだのだ。

 

「ほら、何時までもそんな所に突っ立ってないでこっちに来いよ。わざわざ職員室迄僕を訪ねて来たって事は、僕に何か用が有ったんだろう?」

 

「あ、はい。」

 

言われるがままに岸本先生のデスクに向かう。

 

「それで、用件は?」

 

「はい。実は……。」

 

「あ……済まない。チョット待ってくれないか?」

僕の言葉を遮ると岸本先生は眉間に皺が寄る位力一杯目を閉じた。

 

「5秒間、力一杯グッと目を閉じる……1、2、3、4、5。」

 

パチッ

 

「今度は5秒間、限界まで目を見開く…… 1、2、3、4、5……コレを5回繰り返す。」

 

グッ……

 

パチッ

 

グッ……

 

パチッ

 

グッ……

 

パチッ

 

グッ……

 

パチッ

 

「次にうなじの髪の生え際の少し上辺り……此処にツボが有る。親指の腹をポイントにあて、頭の中心に向かって押しこむように刺激する。」

 

グリグリグリグリ

 

「あの……岸本先生?何をやっているんですか?」

 

「目のストレッチだよ。パソコンに向かってデスクワークをしていると目が疲れるんでね。」

 

嘘だ。また小説を書いていたんだろう。全くこんな自由気ままに振る舞っていてクビにならないのが不思議な位だ。

 

「ふうゥ〜〜〜、それで、どんな用なんだい?」

 

「はい、実はお願いが有って……。」

 

「イヤだね。」

 

断られたッ!未だ何も言って無いのにッ!?

 

「先生ッ!僕未だ何も言って無いですよッ!」

 

「フンッ!『観察処分者』の君の事だ。どうせ禄なお願いじゃあないんだろぉ〜〜〜〜〜ッ!?」

 

「違いますッ!僕はただ……。」

 

「それに君さっきッ!僕の事蔑んだ目で見たよなあーーーーーッ!?『デスクワークとか言ってるけどどうせ仕事サボって遊んでたんだろ』って顔してたぜッ!知ってるか?『目は口ほどに物を言う』ってことわざをッ!?人の事をバカにしておいてお願いを聞いて貰おうなんて虫が良すぎるって物じゃあないのかッ!?」

 

しまったッ!考えた事が顔に出てたのかッ!

完全にヘソを曲げてしまったッ!こうなったらこの先生はテコでも動かない。だがしかしッ!だからと言って此処で引き下がる訳には行かないッ!

 

「……どうしたら……お願いを聞いてくれますか?」

 

「フンッ!そうだな……どうしてもと言うのなら、君に誠意って物を示して貰おうか。君、僕が教職以外にもう一つの仕事をしてるのを勿論知ってるよなあ?世の中ギブアンドテイクだ。此処迄言えば頭の悪い君にも、僕が何を言いたいのか解るよなぁ?」

 

ーーーッ!間違い無いッ!この先生……僕に自分の書いた本を買わせようとしているッ!この人、本当に教師なのか!?

「……岸本先生の書いた本を買わせて頂きます……。」

 

「交渉成立だな。で、どんなお願いだい?」

 

ホッ……どうにか機嫌を直してくれたみたいだ。これで……。

 

「なあんて言うと思ったのかマヌケがぁーーーーーッ!口だけなら何とでも言えるんだよッ!君、本当は僕の本を買う気も読む気も無いんだろォーーーーーッ!?その場しのぎでご機嫌取ろうって魂胆が見え見えだぜッ!」

 

馬鹿なッ!?全部見透かされているだとッ!?

駄目だ……。この先生にはどんな嘘を付いても見抜かれてしまう。

 

「……ちゃんと買って読みます。後日感想文も書いて提出します……。」

コレも姫路さんの為だ。背に腹は代えられない。クソーーーーーッ!唯でさえ生活費が苦しいのに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カパッ

 

すると岸本先生は鞄を開けて中から一冊の本を取り出した。

 

「あげるよ。」

 

差し出された本を手に取って見てみる。夕暮れ時の教会を右斜め下から見上げる様にして撮られた写真が表紙だ。タイトルは『懺悔室』。作者の名前は……。

 

「……岸辺……露伴?」

 

「僕のペンネームだ。その様子だと僕が実名で本を書いてるって思ってたみたいだな。それに君、本のタイトルは知っていたのか?作者は実名で本を書いていないし、タイトルも知らない本をどうやって探すつもりだったんだい?」

 

先程とは打って変わって優しい口調で岸本先生は僕に言った。

 

「……良いんですか?僕にその本をくれるって事は、先生の所にはお金は入らないって事で……。」

 

「オイオイオイオイッ!君は僕が金の為に本を書いていると思ってたのかい?」

 

お金の為じゃ無いだって?だとしたら何の為に?

 

「僕はね、『読んでもらう為』に本を書いている。『読んでもらう為』。ただそれだけの為だ。単純なただ一つの理由だが、その為ならどんな努力も惜しまない。その努力に比べたら、本の一冊位安い物さ。理由はどうであれ、君は僕の本を『読む』と言ったんだ。小説家にとって読者が増える事程喜ばしい事は無いからね。」

 

そう言った岸本先生の目はさっき迄の意地悪な目では無くとても真っ直ぐな目をしていた。何て事だ。僕はこの先生の事を偏屈で意地悪な先生だとばかり思っていた。この人は本当に小説家と言う仕事に誇りを持っている。

 

「それに君、困ってるんだろう?金に……。仕事クビになって『明日から生活どうしよう。』って考えてるサラリーマンみたいな顔してたぜ。さっきも言ったろ?『目は口程に物を言う』ってな。君が金に困ろうが知ったこっちゃないが、『金が惜しい』って理由で『図書館で借りよう』とか『古本屋で探そう』ってセコイ事される方がムカつくからな。だったら本をあげた方が未だマシだぜ。」

 

フフン、と笑う岸本先生。う〜〜〜ん……僕ってそんなに顔に出やすいタイプかな……?

 

「良いか?特別に君にあげたんだからな。感想文は提出しなくても良いからちゃんと読めよ?」

 

ビシッと僕を指差して岸本先生は念を押した。

「さて、気分も晴れてスッキリした事だし……伺おうか……君のお願いを……。」

 

前言撤回。やっぱりこの先生は意地悪な先生だ。でもこれでやっとお願いを聞いて貰える。

「はい、岸本先生。試召戦争の立ち会い人になって欲しいので一緒に『Dクラス』に行ってくれませんか?僕達は何としても今回の戦争に勝ちたいんです。」

 

「確か君達2年Fクラスは2年Bクラスと試召戦争の最中だったな。2年Bクラス……代表は『根本恭二』……あまり良い噂は聞かない生徒だな。2年Cクラス代表の『小山友香』とは幼なじみで恋人同士だとか……。」

 

なるほど。Cクラスに協定を結びに行った時にBクラスに待ち伏せされた事にはそんな裏が……って何で岸本先生はそんな生徒のプライバシーに関わる事を知ってるんだ?

 

「しかし君達Fクラスには学年上位一桁になる程の成績保持者の姫路瑞希さんが居る筈だ。こう言っちゃあ何だが成績の低い君の出る幕じゃあ無いと思うが?」

 

「姫路さんは体調不良の為今回の試召戦争に参加していません。」

 

「オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイッ!君達は姫路さん抜きで戦ってるのか?それってどう考えても『無謀』ってヤツだろうッ!?」

 

「はい。ですから僕が姫路さんが担う予定だった役割を、僕が代わりにやる事になりました。後は僕達が勝手にやりますので貴方は召喚を承認してくれるだけで良い……。」

 

「ナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアッ!『後は僕達が勝手にやります』だってッ!?……何をするつもりだか知らないが僕は健全な少年少女の為に教鞭をふるっている人間だぜ……社会的な立場って物も有るんだッ!しかも!召喚をする場所はDクラスだって言うじゃないかッ!?大概の学生は自習と聞くと喜ぶかもしれないが、中には真面目に勉強しようって生徒も居る筈だッ!そんな生徒達に迷惑は掛けられ無いッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Dクラスの『壁』を破壊してBクラスに居る根本君に奇襲を仕掛けます。」

 

「だから気に入った。」

 

ドンッ

 

ーーーーーッ!やったッ!引き受けてくれたッ!『物理干渉』が可能な『観察処分者』の召喚獣を使って隣りの教室の壁を破壊して奇襲を仕掛ける何て前代未聞の作戦にこの先生が興味を示さない筈が無いッ!

 

「良し。そう言ってくれると思ってました。」

 

「単なる好奇心だけだよ。だが、問題が有るのを解っているのかい?DクラスとBクラスが有るのは新校舎。災害に備えての為にその壁は鉄筋のコンクリートで出来ている。いくら召喚獣のパワーが強いからと言っても、簡単に壊せるとは思えないな……。」

 

過去、文月学園の生徒に『観察処分者』は居なかった。試召戦争で教室の壁を壊して奇襲を仕掛けた何て前列は無い。前列が無いと言う事は成功するかどうか解らないと言う事だ。確かに僕一人では鉄骨で出来た壁を壊せるかどうか解らない。でも……。

 

「2年Fクラスには『観察処分者』がもう一人居ます。僕一人では難しいでしょうが二人なら確実に壁を壊せます。」

 

「『東城丈也』……あの音楽バカか。確かに『物理干渉』が可能な召喚獣が二体居れば壊せるかもな。だが、なあ……『吉井明久』……。」

 

そう言って短くタメを作ると岸本先生は射抜く様な視線で僕を見た。

 

「君は僕に言って無い事が有るだろう?ストーリーの辻褄が合わないぞ……。分かるんだ。君は僕に嘘をついている。2年Fクラスの代表は『坂本雄二』……かつて『神童』と呼ばれた男。噂では振り分け試験の時にわざわざ点数の調整をしてFクラスの代表になったとも聞く。そこまで頭の回る男が、姫路さんが『体調不良』で戦闘に参加出来ないと言う理由だけで、成績の低い君を代役にする筈は無い!君はとても重大な何かを隠している。」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「………。」

 

夏でもないのに頬をイヤな汗が伝う。先のやり取りでこの先生にはどんな隠し事も通用しない事は解っていたが、まさか姫路さんが戦闘に参加出来ない理由迄疑って来るなんてッ!

 

「言えよ……!姫路さんが戦闘に参加出来ない本当の理由は何だ?」

 

ダメだッ!これ以上は隠し通せ無いッ!この先生は雄二と違って明確な理由を求めている。雄二にも代表としての責任があるが、それでも雄二は学生だ。岸本先生は教師で社会的にも立場の有る人間……。『観察処分者』の召喚獣の能力を使って教室の壁を破壊するなんて事を知ってて召喚を承認したなんて知れたら、職員会議の末減給なんて可能性も有る。明確な理由を知りたがるのは当然だろう。何よりそんなリスクを犯して迄岸本先生は立ち会いの先生になる事を引き受けてくれたんだッ!これ以上の隠し事は出来ないッ!

 

姫路さん……ゴメンッ!

 

「どうしても勝たなくてはならないんだ……Bクラスに……。姫路さんには、好きな人が居る……。それが誰かは解らない……。ラブレターを、彼女は想い人の為に書いていた。そしてそれを奪われてしまった。根本君に……。彼女はソレをネタに試召戦争に参加しない様、根本君に脅迫されているんです……。『屈辱だ』……。僕はその場面を偶然見てしまった。何としてもラブレターを取り返してあげたいんです。彼女の『名誉』の為にも……だから……。」

 

思わずグッと拳を握る。

 

「だから僕は姫路さんを戦闘から外して、彼女の代役を引き受けたんです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな泣きそうな顔で行くのか?それも辻褄が合わないぜ?」

 

暫しの沈黙の後、岸本先生はデスクから立ち上がった。

「だが、行こう……好奇心だけだがな……。」

 

「……はい。」

 

僕と岸本先生は職員室を出てDクラスへと向かった。




続きます。
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