長くなりましたので分ける事にしました。
かなり無理くりな所が多いと思いますが、読んでやって下さい。
では、どうぞ!
side明久
「てめえ新学期早々人をウジ虫呼ばわりするたあいい根性してんじゃねえかぁ。えぇ坂本よお。お陰様でチコっと頭に血が登っちまったじゃねえか…」
床に疼くまって悶絶する男子生徒を見下ろしながら丈也は明らかにイラついた態度を取っていた。当然だ。此処に来る道中言っていたいい事を全部台無しにされたのだから。
「ウゴォォ…東城…テメーいきなり何しやがるっ…」
「てめえが何しやがる。人の人生哲学木っ端微塵に破壊してくれやがってよぉ。どうしてくれんだぁ?あぁ!?」
不味い!このままだと殴り合いになりそうだ!
慌てて間に入って二人を仲裁する。
「止めなよ丈也!雄二も大丈夫?」
「ーーーチッ!」
「イテテ…明久、お前東城と知り合いだったのか?」
余程綺麗に入ったのだろう、お腹を抑えて立ち上がりながらその男子生徒、坂本雄二は僕に問いかけた。
「知り合いって言うか、さっき校門の所で知り合ったって言うか…所で雄二は何やってたの?」
「先生が遅れているらしいから、代わりに教壇に上がってみた。」
「先生の代わりって?雄二が?」
「一応このクラスの最高成績者だからな。」
「お〜〜〜いお前等、帰りは気をつけろよ!!きっと異常気象が起きてカタツムリが大量発生するぜ!!」
「東城、テメーどうやらマジで地獄を見てえらしいな!」
「もうッ!一々突っかかんないっ!丈也も煽んないのっ!」
「えーと、ちょ〜っと通してもらえますかね〜?」
不意に背後かスットロイ声がした。
するとそこには寝癖の髪にヨレヨレのシャツを着たいかにも幸の薄そうなおじさんが立った居た。どうやらこのクラスの担任の先生みたいだ。
「それと席に着いて貰えますか?HRを始めますので。」
そう言うとその先生はスットロイ動きで教卓に上がった。
「はい、わかりました。」
「うーす。」
「へいへ〜い。」
僕等はそれぞれ返事をするとその辺の卓袱台に腰を下ろす。
「えー、おはようございます。二年F組担任の福原慎です。よろしくお願いします。」
先生はスットロイ口調で自己紹介をすると黒板に名前を書こうとして、止めたっ!!チョークも無いのかっ!こんなんで本当に勉強が出来るのかっ!
side jojo
「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されてますか?不備があれば申し出て下さい。」
俺達生徒が座っている教室に机は無い。有るのは埃だらけの畳と古ぼけた卓袱台とくたびれた座布団。
「先生。俺の座布団に綿が殆ど入って無いです。」
「あー、はい。我慢して下さい。」
いやはや改めて見るとなんっつー教室だ。その設備の悪さもさることながら、蜘蛛の巣にヒビ割れに落書き。いよいよ持って廃墟じゃねえか。
「センセ、窓が割れていて風が寒いんですけど。」
「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう。」
まあ、住めば京か…。人間は環境に慣れるからな。
そう思って俺は頬杖をついた。
「うわああああ!!!!」
「いかがなされましたか?」
「い…い…いい、『 いかがなされましたか?』じゃないッ!俺の卓袱台が…し…信じられん。」
俺は卓袱台を指差して叫んだ。
「俺の卓袱台がっ!頬杖ついただけで脚が折れちまったぞ!」
見ると明久が眉間を押さえている。ヤレヤレと言った表情だ。
「木工ボンドが支給されていますので、後で自分で直して下さい。」
(ゴクリッ)
「必要な物があれば極力自分で調達する様にして下さい。」
何処からともなく漂うカビ臭い独特の空気の中俺は思った。
こいつあ…一生馴染めん様な気がするな…
「では、自己紹介でもはじめましょうか。そうですね。廊下側の人からお願いします。」
先生が言うと廊下側の一番前の席の生徒が立ち上がった。
「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。」
ほー、アイツが木下秀吉か。実はちょいと訳あってアイツには目を付けてたんだ。いや、別に変な意味じゃねえよ。
面も悪くねえし何より良い『 声』してんな。
「ーーーと、言うわけじゃ。今年一年宜しく頼むぞい。」
おっ、終わったみてえだな。次はどんな奴だ?
「……土屋康太」
何だか口数の少ねえ男だな。いや、物静かっつーの?ま、あーゆー奴ってのは大概自分の世界を持ってる物だ。そう言う奴は好きだぜ〜。俺ってよ〜。
それにしても野郎ばっかでむさ苦しい教室だなあオイ。女子は居ねえのか?女子は?
「島田美波です。海外育ちで、日本語は会話出来るけど読み書きが苦手です。育ちはイタリアだったので。趣味はーーー」
おっ!女子じゃねえか!どんな掃き溜めにも一人は居るんだな。さてさてどんな趣味だ?
「趣味は吉井明久を殴る事です☆」
ーーーッ!!なんつー物騒な事をサラッと言う女だッ!!
明久がゲロを吐く位の勢いで怯えてんじゃねえかッ!!
「ブォンジョールノ。」
「…あぅ、し、島田さん。」
「吉井、今年も宜しくね」
し、知り合いなのか?何か『知り合い 』っつーより『苦手な人 』って感じだな〜。
お前ソイツに苛められてたりしてねえだろうな〜。
「ーーーです。宜しくお願いします。」
ーーーっと、次は俺か。
「あーーーっ。東城丈也だ。趣味は見て解る通りギター。親しい奴は俺の事を『jojo 』って呼んでるが…まあ好きに呼んでくれ。これから一年宜しく。」
まあこんな所だろう。その後は淡々と名前を呼ぶだけの紹介が続く。次は明久か。
「ーーーコホンッ。えーっと、吉井明久です。気軽に『ダーリン 』って呼んでくださいね♪」
『 ダーーリーーーーン!!!!』
むさ苦しい野郎共の大合唱。うわぁ、流石の俺もこの歓迎のされ方はキツいぜ…
明久は作り笑いを浮かべて席に着いた……と言うか倒れ込んだ?
「な……何だ!?いったい……こ…こんなバカなッ!?あ…脚に…力が…脚に力が入らんッ!たっ立ち上がれないッ!頭痛がする。は…吐き気もだ…くっ…ぐう。な…何てことだ…この吉井明久が…気分が悪いだと?」
オイオイ予想以上に調子悪そうだな。大丈夫か?
その後も名前を告げるだけの作業が続く。
オイオイ、コレ自己紹介よ自己紹介。自己アピールよ自己アピール。お前等名前以外言う事無いの?
いい加減退屈になって来た所で教室のドアが開いた。
「あの、遅れて、すいま、せん…」
『えっ!? 』
クラス全体から驚いた様な声が上がる。そりゃそうだ。俺だってぶったまげたさ。
「丁度良かったです。今自己紹介をしている所なので姫路さんもお願いします。」
「は、はいっ!あの、姫路瑞希と言います。宜しくお願いします。」
心の中心に保護欲を掻き立てる様な可憐な姿。桃色の頭髪。透き通る様な白い肌。それでいて同い年の女子とは思えない様な色気。
だが皆その容姿を見て驚いたんじゃあねえ。
俺は思わず彼女に『質問 』していた。
「おいッ!あんた確か学年上位一桁に成る位の成績保持者だったよな!何でこんな所に居るんだ!?」
「そ、その…振り分け試験の最中、高熱を出してしまいまして…」
ああ〜そう言う事か。試験途中の退席は0点扱いだからな。そんな姫路の言い分を聞き、クラスの中からチラホラと言い訳が聞こえて来る。
『そう言えば、俺も熱(の問題が)出たせいでFクラスに。 』
『 ああ。化学だろ?あれは難しかったな。』
『俺は弟が事故に遭ったと聞いて実力を出し切れ無くて… 』
『黙れ一人っ子。 』
『前の晩、彼女が寝かせてくれなくて… 』
『今年一番の大嘘をありがとう。』
ハハハッ、面白れえわコイツら。
ん?『姫路 』?『試験の最中に高熱を出した 』?
へ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
side 明久
「でっ、では一年間宜しくお願いします!」
そう言って姫路さんは僕と雄二の間の卓袱台に着いた。こうして同じクラスになると思うと、あたたかい輝きの中に居るように見えるぞ…
「き、緊張しました〜…」
自己紹介が終わって緊張が解けたのか安堵の表情を浮かべて机に突っ伏す姫路さん。
よしッ!席も近いし、これは話しかけるチャンスだッ!『 決断』しろ吉井明久ッ!
「あのさ、姫…」
「よっ!姫路ッて言ったよな?さっきは悪かったな。いきなりデケえ声出しちまってよぉ。」
ーーーッ!丈也!?何するんだよッ!せっかく僕が『覚悟 』を決めて姫路さんに話しかけようとしたのにッ!
「いっ、いえ。大丈夫です。えーっと…」
「東城丈也だ。それにしても試験中に熱出してぶっ倒れたんだって〜?明久が心配してたぜ〜。」
「よっ、吉井君が〜ッ!!」
じょッ、丈也ッ!何て事言うんだよッ!姫路さんが驚いてるじゃないかッ!でもナイスだッ!グッジョブ丈也ッ!
「姫路。明久がブサイクですまん。」
「坂本よお〜。俺はお前が言う程明久はブサイクとは思えねえぜ〜。」
雄二の冷たい一言にも丈也はフォローを入れてくれた。ウウッ…丈也…君と出会えて僕は嬉しいよッ!
「そ、そうですよ!目もパッチりしてるし、顔のラインも細くて綺麗だし、全然ブサイクなんかじゃ無いですよ!その、むしろ…」
「『 カッコイイ』かあ〜〜〜〜〜?(笑)」
前言撤回!友達が告白される現場見〜ちゃった〜みたいな顔してるよ!絶対面白がってるよね!?
「そう言われると、確かに見てくれは悪くない顔をしているかもしれないな。俺の知人にも明久に興味を持っている奴が居たような気もするし。」
「え?それは誰「そ、それって誰ですか!?」
「へ〜〜〜〜。モテるんだな、明久。」
僕の台詞を姫路さんが遮り、丈也がにやけながら茶化して来る。男子女子に限らず皆この手の話題には敏感だ。
「確か久保ーーー」
久保さん?どの久保さんだろう?
「ーーー利光だったかな?」
「…………」
「クックックックックックッ クックッ フヒヒヒフッフッフッホハハハフホホアハハハ フハハッ ケケケケケノォホホノォホッ!!!!」
姫路さんが思考が追い付かなくなったのかフリーズしている。一方丈也はお腹を抱えて笑い転げていた。
「あんまりだ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!救いようがい〜〜〜〜〜ッ!!」
「はいはい。そこの人達、静かにして下さいね。」
丈也が大声で笑ったせいで、パンパン、と教卓を叩いて先生が警告して来た。
「あ、すみませーーー」
バキィ!バラバラバラ…
突然教卓が只の『 材木』と化した。
「え〜…替えを用意してきます。少し待っていて下さい。」
気まずそうに告げると、先生は教室から足早に出て行った。
続きます。