side 秀吉
「木下ッ!相手はもう虫の息だ!このまま『二人』で押し切るぞッ!」
「了解じゃッ!」
「くッ……二人掛りとは卑怯だぞッ!」
「卑怯?お主何を言っておるのじゃ?これは立派な『策』と言う物じゃぞッ!!喰らえッ!!」
ザシュウーーーーー!!
「GUAAAAAAAAA!!!!」
良しッ!一人倒したぞッ!例え点数に差が有るとは言え、『二人一組』で『一人』に当たれば確実に敵を倒す事が出来る。どうやら他の皆も上手く『二人一組』で戦って居る様じゃ。
それもこれも…………
「ヘイベイベー、そんな単調な動きじゃ俺を捕まえる事なんて出来ないぜッ!!」
『野郎………コケにしやがって!!』
『相手は一人だッ!この人数相手に何も出来る訳無えッ!!』
『グチャグチャにしてやるッ!!』
「イイぜッ!!まとめて相手してやる!!掛かって来なッ!!」
あそこで大立ち回りを演じておるあの男のお陰じゃな。
〈Dクラス戦数分前〉
「秀吉。もう直ぐ戦闘開始だが、何か『策』は考えて来たか?」
戦闘開始前、jojoはワシにこんな質問をして来た。
「『策』とな?作戦なら雄二が考えた作戦が有るじゃろう?」
「そうじゃ無え。俺は『前線部隊』としてどう動くかって話をしてんだ。坂本の作戦はあくまで結果ありきの話だ。この場合大事なのは『過程』だ。荷物を目的地に届けるとして、車もガソリンも有るのに道が解りませんじゃあ話になんねえ。俺達の目的は『その時』が来る迄に『時間』を稼ぐ事だ。それ迄に部隊が全滅しちまったらお終いだ。部隊の消耗を極力避け、戦死者を一人でも少なくする事が今回の『作戦』の鍵だからな。」
なるほど。確かにjojoの言う事は最もじゃ。それ程高いクラスでは無いとは言えワシ等より戦力が上で有る事に変わりは無い。考え無しに正面からぶつかっては直ぐ全滅じゃろう。
「確かに。ではそう言うお主には何か考えが有るのか?」
「敵は俺達を舐め切ってやがる。『最下位クラスなんぞ取るに足らん相手だ』ってな具合にな。癪に障る話かもしれんがそこが狙い目だ。恐らく連中は考え無しに突っ込んで来るだろうからな。」
「どうしてそんな事が言えるのじゃ?」
「『敵の立場で物を考えろ』って事だ。演劇にも使えると思うから覚えとけ。」
jojoはまた演劇を引き合いに出して告げた。相変わらずjojoの言葉には不思議な説得力が有る。
「なるほどのう。して、具体的にどうするのじゃ?」
「敵『一人』に対して『二人』で戦う。それなら十分『時間』を稼げるし、相手の戦力をある程度削ぐ事も可能だ。」
「確かにそれならこちらにも勝機は出て来るじゃろうが……『一人』に対して『二人』で戦える程少数で攻めて来るとは思えんが?」
「その点に付いては考えが有る。」
ピンポンパンポーン
『これより二年Dクラスと二年Fクラスの試験召喚戦争を開始いたします。』
校内アナウンスが戦闘開始を告げると同時にバタバタと足音が聴こえて来る。
『居たぞッ!Fクラスの奴等だッ!』
『最下位クラスの分際で俺達Dクラスに楯突こうなんざ身の程知らずがッ!』
「おっと、敵さんのお出ましだ。試獣召喚!」
「試獣召喚!」
ワシらが呼びかけると足元に幾何学的な魔法陣が浮かび上がり、召喚獣が姿を現す。ワシの召喚獣の武器は薙刀で、jojoの召喚獣は……
ギターか。何ともjojoらしい。
「さ〜て、イッチョ派手にやるとするか。」
「ま、待つのじゃjojoッ!話しは未だ途中じゃぞッ!一体どうするつもりじゃッ!」
「こうするのよッ!!」
ダッ!!
何とjojoは召喚獣を単身敵陣に突っ込ませたッ!!馬鹿なッ!!一体お主は何を考えておるのじゃッ!?
そして高く飛び上がり……
「ドオラアーーーーーッ!!」
敵陣の中央目掛けてギターを振り下ろした。
Dクラスの召喚獣達がその大振り過ぎる攻撃を一斉に避けたので、jojoの召喚獣を取り囲む様にしてサークルが出来上がる。
『ヘッ…何だコイツ。思わせ振りな事しやがって。』
『敵陣の真ん中に突っ込んで来るとはトンだマヌケだぜ。全員でフクロにしちまえッ!!』
Dクラスの召喚獣達が一斉にjojoの召喚獣に突っ込んで来たッ!!イカンッ!!jojoがやられるッ!!しかし攻撃が当たる寸前の所で……
ドーーーーン!!!!
jojoの召喚獣は天井高く迄跳躍したッ!!当然攻撃が当たる筈も無く………
ガッシャーーーーーーーン!!!!!!!!
『ギャーーーーーーッス!!!!!!』
召喚獣達は違いにぶつかり合った。なんと無茶をする男じゃ。しかしjojoの言った通りじゃ。jojoの動きに翻弄される様は作戦が有って動いて居る様には見えぬ。
『テメーッ!!ちゃんと避けろよ馬鹿ッ!!』
『お前こそ良く狙えッ!!点数が減っちまったじゃねえかッ!!』
挙句仲間割れ迄始める始末。どうやら部隊を指揮する者も居らぬ様じゃ。そして読めたぞお主の考えが。自分を囮にして敵の注意を引き付け、その隙に背後から『二人一組』で敵『一人』を攻撃しろと言うのじゃな!
「皆の者ッ!!jojoが敵の注意を引き付けてくれて居る今がチャンスじゃッ!!『二人一組 』となって敵『一人』に当たるのじゃッ!!行くぞーーーーーッ!!」
そして現在に至る。お陰でワシ等は難無く『二人一組』となって敵『一人』に当たる事が出来て居る。時折後方に抜けて行く者も居るが、その辺は中堅部隊が食い止めてくれて居る筈じゃ。
「ほらほらどうしたどうした?俺をグチャグチャにするんじゃ無かったのか?」
『野郎チョコマカとッ!!』
jojoは召喚獣を扱うのが上手かった。何をどうしたらそんな動きが出来るのか、攻撃を全て避け、トリッキーな動きで敵を翻弄して居る。jojoの『策』は完璧じゃった。しかしッ!!
「さあ来い!この負け犬がッ!」
『て、鉄人!?嫌だ!補習室は嫌なんだ!』
「黙れ!捕虜は全員この戦闘が終わる迄補習室で特別講義だ!終戦迄何時間掛かるか解らんが、たっぷりと指導してやるからな。」
『た、頼む!見逃してくれ!あんな拷問耐え切れる気がしない!』
「拷問?何を言うか。補習が終わる頃には趣味が勉強、尊敬するのは二宮金次郎、と言った理想的な生徒に鍛え直してやるから覚悟しておけ。」
『鬼だッ!誰か助け……イヤーーーーーッ!!』
『おいッ!いつの間にか何人かやられちまってるぞッ!』
『見ろッ!コイツ等二人一組になって一人と戦ってるぞッ!』
『しまったッ!ソイツは囮だッ!俺達はソイツにまんまと一杯食わされたんだッ!』
鉄人が戦死者を連れに来たタイミングでワシ等の『策』がバレてしまった。
『五十嵐先生、布施先生ッ!コッチですッ!』
どうやらいち早くワシ等の『策』に気づいた者が化学教師を連れて来た様じゃ。奴等、立会人を増やして一気に片をつけるつもりじゃなッ!しかし幾らか敵の数を減らす事は出来た。少しは戦闘が楽に成るじゃろう。
「jojo!戻って来いッ!もう十分じゃッ!」
「了解!」
『おっと、そうは行くかッ!』
再びDクラスの召喚獣がjojoの召喚獣を取り囲んだ。
グッ!
jojoの召喚獣が飛び上がろうと身を屈める……が……
バババッ!!!!
召喚獣達が一斉に飛び上がったッ!!イカンッ!!読まれておるッ!!
ビシィッ!!
「次にお前は『二度も同じ手を食うかよバーカ』と言う。」
「二度も同じ手を食うかよバーカ……ハッ!」
jojoの召喚獣がとっていたのは………クラウチングスタートッ!!
ダッ!!!!
瞬間jojoの召喚獣はDクラスの召喚獣達の下を全速力で走り抜けた!!当然Dクラスの召喚獣達は……
ガッシャーーーーーーーン!!!!!!!!
『ギャーーーーーーッス!!!!!!』
再びぶつかり合った。
「マヌケがッ!!同じ戦闘で二度も同じ手を使うバカが居るかよッ!!」
「jojo。敵に『策』がバレてしまった。作戦変更じゃ。中堅部隊と合流して敵を迎え撃つぞッ!!総員退避じゃッ!!」
ワシ等前線部隊が後退を始めたその時……
『 イヤーーーーーーーーーッ!!!!!!!!』
!?今の声は……島田かッ!?
「チッ、面倒事の予感がするな。悪いが先に中堅部隊の所に行くぜ!!」
「解った。お主、先の戦闘で点数よりも体力を随分消耗しておる様じゃから、無理はするで無いぞ。」
恐らく『観察処分者』特有のフィードバックの影響じゃろう。少々疲労の色が見て取れる。
「おうッ!!お互い無事に生きて帰ろうぜッ!!」
そう言い残してjojoは走り去って行った。
side 明久
『言葉』とは重要だ。この世で唯一相手に自分の意思を明確に伝える『方法』。
「ちょっと!いい加減ウチの事は諦めてよ!」
「嫌です!お姉様は何時でも美晴のお姉様なんです!」
「来ないで!ウチは普通に男が好きなの!」
「嘘です!お姉様は美晴の事を愛している筈です!」
ならば言葉が通じない相手にはどうしたら良いのだろう……
僕と島田さんは中堅部隊の隊長と副官を任されて居た。恐らく秀吉と丈也が健闘してくれているお陰だろう。こちらに流れて来る敵は殆ど居なかった。だが一人の女子生徒が来た事で状況が変わった。『美晴』と名乗るその女の子は化学の五十嵐先生を伴って、島田さんに戦いを挑んで来たのだ。
「行きます、お姉様!」
二人の召喚獣が近付き戦闘が始まる。
「はあぁぁッ!!」
「やあぁぁッ!!」
それぞれの召喚獣の武器がぶつかり合い、鍔迫り合いの状態になる。他にDクラスの生徒は居ない。二人の戦いに割って入り島田さんに加勢する事も出来るのだが……
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
女の子が放つ無言のプレッシャー。『手を出したら殺す』と言う意思が有り有りと伝わって来る。
僕等は誰も手を出せずに居た。
「ここ迄ですッ!」
「くうッ!!」
突如均衡が崩れ、島田さんの召喚獣が武器を落とすと女の子の召喚獣は勢い良く島田さんの召喚獣を押し倒したッ!!
『Fクラス 島田美波 化学 53点』
『Dクラス 清水美晴 化学 94点』
「さ、お姉様。勝負は付きましたわね。」
清水さんは勝ちを宣言すると島田さんの召喚獣の喉元に刀を突きつけた。
「い、嫌あッ!補習室は嫌あッ!」
「補習室?フフッ……」
清水さんは不敵に笑うと島田さんにゆっくりと歩み寄る。
「ある生徒が保健室に行くと、そこに居た保健委員の女子生徒が何も言っていないのに服を脱ぎ始め……『今保健の先生職員会議で留守なの』そう言った。あなたならどうする?最高だった……」
「 イヤーーーーーーーーーッ!!!!!!!!許可しないイィィィーーーーーッ!!!!!!美晴が近付く事は許可しないイィィィーーーーーッ!!!!!!吉井ッ!!早くフォローをッ!!」
「殺します……。美晴とお姉様の邪魔をする奴は、全員殺します。」
ヤバイッ!!この人は本気だッ!!『殺る』と言ったら『殺る』……『スゴ味』が有るッ!!
「島田さん。君の事は忘れないッ!」
「よ、吉井!?このドグサレがァァーーーーーッ!!」
「ドラァッ!!」
突如一体の召喚獣が現れ、清水さんの召喚獣を吹っ飛ばしたッ!!ギターを持ったあの召喚獣は……ひょっとして丈也の召喚獣ッ!?
「面倒事の予感がして来てみりゃ、予想以上に面倒臭え事になってるみてえだな。」
か……カッコイイッ!!やっぱり丈也は正義のヒーローみたいだッ!!でも……
「…よ……よくも邪魔してくれましたわね……」
ギギギ………
背後から現れた丈也に清水さんがゆっくりと振り返る。こ……怖いッ!!
「ブチ殺してやるッ!!このド畜生がァァーーーーーッ!!!!」
プツン
「うおッ!?」
ガキィーーーーンッ!!
清水さんの召喚獣が一気に丈也の召喚獣との距離を詰めて切りかかったッ!島田さんの時と同じく鍔迫り合いの状態になる。
この『清水美晴』まともじゃ無い……………異常だ!嫌がる島田さんを保健室に連れ込もうとした事を邪魔されて怒っているのか!言葉が通じない何て物じゃない!自分に都合の悪い事を全て飲み込んでしまう、例えるなら『暗黒空間』だ!コイツの心の中がバリバリ裂けるドス黒いクレバスだ!
『Dクラス 清水美晴 化学 75点』
『Fクラス 東城丈也 化学 42点』
駄目だッ!!丈也の方が点数が低いッ!!でも……丈也の目は未だ死んでいないッ!!
「島田ァッ!!今の内に一気に片をつけろッ!!」
「ーーーーーッ!グラッツェ東城!美晴ッ!!覚悟ッ!!」
島田さんの召喚獣がサーベルを構えるッ!そして……
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリッ!!!!!!」
鍔迫り合い状態の清水さんの召喚獣を背後からこれでもかと言う程切りつけた。
『Fクラス 島田美波 化学 46点』
『Dクラス 清水美晴 化学 0点』
「アリーヴェデルチ。」
?どう言う意味だろう?兎に角島田さんの勝ちだ。
「助かったわ東城。補習の鉄じ……西村先生、早くこの危険人物を補習室へ。」
「おお、清水か。たっぷりと勉強漬けにしてやるぞ。こっちに来い。」
「お、お姉様!美晴は諦めませんから!このまま無事に卒業出来るなんて思わないで下さいね!」
とても危険な捨て台詞を残し清水さんは補習室へと連行されて行った。ヤレヤレだ。
「ふう……嵐みてえな女だったな。」
「吉井。」
「島田さんお疲れ様。とりあえず一度戻って化学のテストを受けて来ると良いよ。」
「吉井。」
「丈也!戦争はまだまだこれからだよ!」
「お、おい明久……」
「吉井イィッ!!」
「は、はいッ!!」
「………」
「………」
ち………沈黙が辛い………
「ブった切ってやるッ!!試獣召ーーー」
「なッ!?お、落ち着け島田!!何が有ったんだッ!?」
丈也が島田さんを羽交い締めにして止める。
「離してッ!コイツ、ウチを見捨てて逃げようとしたのよッ!!」
「なッ!?明久、幾ら何でも女の子見捨てて逃げようとするなんざ男のする事じゃねえぜぇ。」
「だ……だって……」
「だってじゃねえッ!お前島田に謝っとけ!島田もそれで許してやれ!な!?」
何だか丈也がお父さんみたいだ。
「う…うん……島田さん、ゴメンネ。」
「わ……わかったわよ。ハア、もう良いわ。」
島田さんは呆れた表情を浮かべてため息をついた。ホッ……丈也のお陰で命拾いだ。
「明久ッ!!」
秀吉率いる前線部隊が後退して来た。嗚呼秀吉、いつ見ても可愛いな……
「あれ?何だか皆随分元気そうだね?」
「jojoのお陰じゃ。jojoが囮役を引き受けてくれなければこうは行かんかったぞ。中堅部隊と前線部隊、共に協力して敵を迎え撃つのじゃッ!!」
前線部隊を一人も欠ける事無くかつ点数を消耗させずに中堅部隊と合流させるなんて、丈也は一体どんなマジックを使ったんだろう?
心做しか秀吉の丈也を見る目がキラキラしている気がする。ちょっと丈也にジェラシー……
「よっしゃッ!!このまま戦況を維持するぞッ!!テメー等、敵を一歩も進ませるんじゃあねえぞッ!!」
前線部隊と中堅部隊、一つとなった部隊に丈也が激を飛ばした。
今回はここ迄。
次回またちょっと手こずりそうなんで、更新遅れるかもです。