この作品はクトゥルフが混ざるのでダメな人は回れ右してくださいな。
そして、挑むは私の手持ちの探索者の恭弥くんです。
結構な場数を踏んでおりますゆえそんじょそこらのやつには負けません、多分。
では、『偽善者』の異界譚を始めましょう。キャラ紹介はいずれ致します。
ある日の夜の住宅街
九条恭弥は依頼相手を尾行していた。重要な尾行だった。そのせいか、後ろから音もなく走り込んでくる相手の差し向けた車に気づかなかった。多分、どこかから情報が漏れて依頼相手に勘づかれていたのかもしれない。トップスピードで殺しに来ているくせにまったく音もしないし気配も分からなかったから。
十中八九魔術だろう、それも恭弥の知らないタイプの。そして恭弥が振り向いた時にはもう……間に合わなかった。愛用している防護魔術も、使う時間もなかった。
んでもって、そのまま……トップスピードの衝突でぐちゃぐちゃになってついでに爆発四散.そこまではぎりぎり意識があったからそこで死んだ。死んでないとおかしい
………はずなんだ.
なのに、なぜ、俺は辺り一面何もない場所にいる?
奇跡的に生きていたとしても、それなら病院だろ?いやまず死んだはずだし三途の川のはずでは?なぜこのような場所に?ニャルが助けたのか?いや、あいつは確実に見棄てる。
「……ん?目覚めたか。よかっ……「………!?」
いきなり声をかけないでもらいたい。
「ん?驚かせてしまったか、これはすまない。始めまして、訳あって車に轢かれて死んだ九条君。君をこちら側に引き込ませて貰った『先代巫女』という者だ」
「待て、引き込んだとはなんだ?」
『引き込んだ』
ある意味、どうしようもなく耳慣れた異常を示すキーワードが聞こえ、頭が一気に冴えてくる。そして、そのまま自身が死んだことをもう一度再確認する。だが、それ自体は今は関係ない。引き込むなどと言われたらそっちが気になる。探偵の性かどうかは知らん。
「ああ、引き込んだ、引き込ませてもらった。わけを話してもいいかな?こちらも生憎と時間がない。」
「……分かった。話してくれ」
先代巫女の話は有り得ないと、そう断じてしまいたかった。死んでなお、俺は『神話生物』に関わるのか?この女の言うことによると、俺のいるここは『幻想郷』という忘れられたものが集まる場所らしい。ただし、今いる場所はそのなかでも特殊な場所だという。その幻想郷で『神話生物』が悪さをしているようなのだ。特殊な魔術を使うため、手をこまねいているときに俺が死んだため、専門家のような形で引き込まれたようだ。だが、なぁ……
「俺は詳しくはわからないぞ?対処できる者もいるが、できない者の方が格段に多い」
「それでも対処できる者がいるんだろ?なら、それで構わない。人里を守ってくれればいいんだから。他の場所は個人個人に対処させる」
「なら、最初からそいつらにやらせたほうがいいのでは?」
「生憎、彼らにも各々の事情や思惑があってな。どうしても各方面にたいしての『示しになる専門家』がいるのだよ。まあ君より優れた専門家もいたかもしれない。だが、直ぐに呼び込めるのが君だけだった、それだけだよ。」
「そうか」
まあ、確かに『納得させる材料』と『安心させるための人柱』は必要なのかもな。
「それにその個人、集団は総じて人ではない、人であっても結構な割合で人の枠内からは外れてしまっている」
「どう言うことだ?」
「彼らは私のような『巫女』から、鬼や烏天狗といった『妖怪』や、『妖精』、『吸血鬼』、『神様』まで様々だ。各々が各々の事情、思惑を抱え、この幻想郷に存在している」
「なるほど。人には彼らへの恐怖心があるからそいつらに守らせることが出来ないのか。確か妖怪や神様は人の畏れによって存在するからな」
「一部例外はあるがその認識で構わない。その上、人間に対する友好度にも違いがあり、尚更厄介だ」
「うわ、それは面倒だな」
「だろう?だからこその専門家だ」
ふむ、確かに筋は通る。だが……
「だが、断る」
「……なぜ?」
「俺が基本そういった立ち位置には居たくないんだ。しがらみを嫌う気質でね。頭脳労働も出来るが基本的に俺は現場主義、やるなら俺だけでけりをつける」
ああ、そうだ。それが『九条恭弥』、俺だ。
「馬鹿か?犬死にしたいのか?」
「そうかもな」
「イカれてる」
「誉め言葉を有難う。なにせ俺の本質は『偽善』なものでね」
『偽善』
それが俺の本質だ。少なくとも俺はそう思っている。
「…………はぁ」
「あまりため息は吐かない方が良いぞ?他人がよく思わないからな」
そのセイで俺は碌な目に遭ってない。
「わかってやっているんだが?」
「だろうな。さて、どうする?頼みの綱には断られたが?」
「そのまま幻想郷にぶちこむだけだ」
「怖いな」
「そうすれば君はどうせ助けるだろう?なにせ君は『偽善』なんだろう?」
「御明察。単に俺は自分の行動を縛られたくないだけだからな」
「自分自身では縛るくせにか?」
「ああ」
「確かに偽善だな」
「だろう?」
「ふふふっ、君は……面白いな」
「はは、よく言われないな」
「この捻くれものめ」
そんな調子でからかい合いしばらく経ったあと、ゆったりとした口調で先代巫女は問いかける
「この依頼…………引き受けてくれないか?」
「好き勝手に無責任に無秩序に救っていいのであれば」
「やはり偽善だな。自身のことを、その行為をすることで悲しむ人のことを考えていない」
「いちいち考えていたら、救えなくなる」
「それでも、考えるべきだよ、君は。いつか死ぬよりも苦しい後悔をする」
「しているさ。だが、もう止まれない。それこそが救えなかったものに対する俺の『狂気』だ」
ああ、そうだ。それが俺の狂気。悪魔的なまでの『偽善』だ
「…………そうか、なら止めない。存分に私の分まで救ってくれ」
「言われずとも」
「人里に着いたら、『上白沢 慧音』を訪れるといい。話を通しておく」
上白沢か、記憶しとこう。
「了解」
「ああ、そうそう」
「ん?」
不意に呼び止められる。
そして、頭を撫でられた。
「な!?」
「無理はするな。それが出来なくても心には…………留めておけ」
「…………ああ」
目を合わせれない。母親のような妙な感じだ。照れくさい。
「行くといい。そこから先は君の戦場だ。異能にあふれる幻想へようこそ」
「ああ、行ってくる」
恭弥はどこからとも無く現れた『スキマ』に入る。
その時の恭弥の顔は…………ほんの少し、ほんの少し笑っていた。
これは、『偽善』を振るう男の物語
さて、これから始まる偽善譚。
この男、どう壊れていくのやら?