ちょくちょく投下していきます。
よろしくおねがいします。
リリアナ・カントレアは、正真正銘の化け物だった。
まず彼女は、非常に美しかった。その容姿はあまたある宝石のどれもをも凌駕して美しく、一目見たものを惹きつけた。まるでシルクのような銀髪を腰まで伸ばし、サファイアをそのまま埋めたかのような碧眼が覗く。鼻、唇、ともに形がよく整っていてかわいらしい。プロポーションはまだまだ成長の余地が多いにあるが、それでも将来の絶世の美女たる輝きを垣間見ることができる。
天は二物を与えず。しかし、リリアナにその言葉は通じない。
リリアナはさらに、頭もよく切れた。リリアナの目にはいつも他人の見る景色の1歩先、否、100歩先を見通していた。その知力は、もし人の世界に彼女を放り込んだ時、何らかの改変がなされるほどのモノであるとここではっきりと明言しておこう。彼女は天才だった。
リリアナに出来ないことはない。それは運動においても同じことだ。山を歩かせればたった数分でそれを踏破し、海へもぐらせればリュウグウノツカイをもぎ取ってきた。空へ放り投げれば空気を蹴って地面へ華麗に降り立つし、地面へ叩きつけても怪我一つなく割れた岩の中から這い出てくる。リリアナは一族の中で最も優れた身体能力を生まれながらにして持っていた。
リリアナの両親はヴァンパイアである。それも純潔にほど近い、真祖にもっとも近いと言われている格の高い貴族でもある。そんな二人は生まれてきたリリアナを見て、それはそれは狂喜に打ち震えたという。
真祖に最も近いヴァンパイアだったからこそ分かる、リリアナの吸血鬼としての素質。否、彼女を初めて見たのが二人でなくてもよかったのだろう。リリアナは誰がどう見たって、真祖のーーーそれ以上の力を持って生まれてきていたのだから。
「なんという事だ!この子さえいれば、人類など一瞬にして塵の山だ!」
「鍛えるのです!何が何でもこの子を最強の吸血鬼にして、我々の手で憎き人類をぶち殺して差し上げるのですわ!」
そういう事で、二人はリリアナを赤ん坊のころから虐待し始めた。
時には山へ放り出し、時には海へ放り入れ、上空から落として地面に叩きつけて…そうすることでリリアナを鍛えに鍛えぬいた。
殴る蹴るの暴力は当たり前、時には太陽のもとへリリアナを晒して、その肌を焼いた。ニンニクを口に放り入れてそれを吐きだそうとする口を二人がかりで無理やり塞いだ。
しかし真に恐ろしいことは、それらすべてを、リリアナはことごとくクリアしていったことだ。今ではリリアナは太陽の光に触れてもなんともないし、ニンニクを食べても吐かなくなった。十字架を胸に打ち立てられようが、頭を銀の銃弾で吹き飛ばされようが、一瞬にして回復してしまう。吸血鬼としての弱点を、若干11歳になるころにはすべて克服していた。
リリアナは両親の思惑通り、従順でなんでもいう事の聞く最強の吸血鬼へと育て上げられていた。
しかし、ある日の事。彼女に思わぬ転機が舞い降りたのだったーーーーー
ーーーーーー目を、覚ました。
「…」
「どうした、リリアナ。そいつをとっとと殺してしまえ」
「リリアナ、何をぼおっとしているのですか。そこの人間を殺して、早く食べてしまいなさい」
後ろから聞こえてくる男女の声。目の前には足に怪我を負って気を失った小さな女の子。
リリアナはーーー否、普通の男子高校生であった彼はそれを一瞬にしてつぶさに見まわして、理解し、そしてつま先を後ろの二人へと向けた。
「…てめえら…」
「は?」
「ひょ?」
「こんな子供に、なぁにしとんのじゃあああああ!!」
「「ぎゃあああああ!?」」
その日、彼女はーーーリリアナ・カントレアはやっと誕生したのだった。