「お父様そっちに逃げましたよ!今まで上手かった射撃の腕を見せる時では!?」
「うるせぇ!ルーンで攻撃とかした事ねぇから反動も何もわかんねぇんだよ!というかお前は元々持ってた武器あるだろ!それでぶん殴れば終わりだろうが!」
「いやちょっとあのネチョネチョ具合は…」
「死体殴ったら同じだわ!もしかしてお前あれから死体殴ってないのか?!墓守なのに!?」
俺の言葉にアイが叫びながら目の前の蛙をスコップで斬り付ける。
…スコップで斬るなんて普通ならあり得ないのだが、この蛙はどうやら打撃が効かないらしい。
もし神様に願うなら大量の銃が欲しかった所なんだが…
「もうお父様!ちゃんと狙って当てて下さい!」
「分かってるっての!
ルーンの二重掛けの結果、俺は漸く蛙に氷の弾丸を当てる事が出来た。
本当に直線上に飛んでくれた方がまだ楽なんだが…どうやらこいつは少しだけ周囲の敵にホーミングする様な軌道をするらしい。
その所為で他の敵の方に移動して外しまくった訳なんだが…
「後何体ですか!?」
「だぁぁぁもう分かんねぇって言ってるだろ!お前何体倒した!?」
「自慢じゃないですが10より先は数えられませんね!」
「本当に自慢じゃねぇなお前!っと、
周囲の敵を停止させながら、俺はルーンを更に幾つも召喚する。
「
四つのルーンを自分の左手に移動させ、氷の剣を召喚してつかみ取る。
…本当ならマグナムやサブマシンガンの一つでも欲しいが、どうやらルーンで作れるのは剣だけらしい。
一匹、二匹、三匹…繰り返す度に心が冷えていく。
それは死者を殺している様な感覚、自分が
…何度も何度も急所を狙う為に斬り、刺し…突き殺す。
最後の敵を倒し、俺は次の敵に向かって剣を振り下ろそうとして……
「お父様。もう敵は居ませんよ」
「…そう、か」
アイの言葉と同時に、ルーンで作った武器が水となって消えていった。
…それを見て俺は武器を持っていた手と目の前の敵…ではなくアイを見て…思わず目をぱちくりとさせた。
「アイ。お前…強くなったな」
「逆にお父様は弱くなりました?銃持ってないと周りすら見えないんですか?」
「…すまない」
アイの姿を見ながら、俺は少しだけ諦めた様に頭を掻いた。
…ああ、本当に俺は弱いな。
今まで一人で戦っていたのもあるが、もしこれで俺の仲間が別の奴だった場合……俺は人を殺していた事になる。
生者を殺しかける元死者ってのは、中々に皮肉が効いている。
「…ま、良いんですけどね」
「俺に殺される訳ないってか?」
「はい!お父様は優しいですからね!」
そう言いながらアイは小さく微笑みながら、俺の方に背伸びして…そのまま背が届かないのか少しだけ頬を膨らませた。
…それを見て俺が苦笑しながらしゃがみ込むと…アイは嬉しそうに微笑んでから俺の頭を優しく撫で始める。
「…お父様、帰りましょう?」
「……そうだな。所でお前は俺よりも強いんだよな?」
「勿論です!下手な人間…というよりお父様よりは絶対強いと思いますよ!」
自らの墓穴を着々と掘り進める墓守を見ながら、俺はそうかそうかと小さく嗤う。
それを見たアイが小さく首を傾げるが、俺は気にせずに後ろに積まれまくった蛙に指を差して微笑んだ。
「そうか!じゃあ俺の代わりに大量にある蛙を持ってきてくれよ!後ギルドまで競走な!」
そう言いながら蛙を三匹程度持って走り出す俺を見て、アイの顔がポカーンとし始める。
そのまま俺が戻ってくる気が無いと分かった瞬間、大量の蛙の足を掴んで俺の方に走ってくるアイを見ながら…冷や汗を掻きつつ門を走り抜ける。
「ちょ、なんだ!?」
「うわっ蛙が走って…えっ!?女の子が掴んで走ってるんだけど!?」
「おーとーうーさーまー!負けませんよー!」
「じゃあもし勝ったら何でもしてやるよ!ま、俺に勝てる訳ないだろうけどな!」
そう言いながら三匹の蛙の内一匹を地面に置くが、アイは器用に指の間に足を挟んでそのまま追いかけ続ける。
思わず器用になったアイに感動して目頭が熱くなりそうになるが、取り敢えずギルドの前まで辿り着いて俺はアイを待つ。
「まーてー!」
「ほい」
「むぎゃ!?」
「うぐぉ!?」
このままだとアイがギルドの扉にぶつかる気がして足払いを掛けると、蛙を手から離したアイが俺のお腹にぶつかった。
思わぬ反撃を喰らってお腹を抑えるのと同時に、アイはニコニコとしながら俺の蛙の隣に今まで持っていた蛙を置いて俺の手を握る。
「…う…ぐぉ」
「ほら蛙を沢山倒したんですから報告しますよ!お仕事終わったらホウレン草が義務です!」
ユーキが言ってて色んな人が育ててましたよ!という一言を聞きながら、俺はアイの手を掴み返しながらゆっくりと歩き始める。
…それを見た受付の方が少しだけ微笑ましそうに見ながら、俺達が持ってきた蛙の処理をさせつつ一枚の紙を持ってくる。
「お疲れ様です。ですが次からは依頼を受けてから討伐をお願いいたしますね!」
「「依頼?」」
俺達が首を傾げるのと同時に、パンフレットを見せながら説明をしてくる受付嬢と…アイが眠そうに首をカクンとさせるのを見て…俺は小さくアイにチョップをした。