Fate/Grand Mesopotamia   作:時計仕掛けのニャルラトホテプ

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なんというか……Fateを書きたかったんです。一回やってみたかったネタを文字にしたかっただけなんです。

不定期更新になりますが、それでもよければ読んでいってくださいm(_ _)m


第一話 王の導き手

ある日、ウルクの都市に一つの預言が授けられた。

 

曰く――――近い内に神と人の子が産まれるだろうと。

 

曰く――――その子は真の王たる資質を持つだろうと。

 

曰く――――その子はウルクに最高の繁栄を齎すだろうと。

 

曰く――――その子と共に、導き手も産まれるだろうと。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「おお……この子が……この方こそが……!」

 

ウルクの街のある場所で、一人の老人が感嘆の声を出す。それに続くように、周りを取り囲んでいた数多の人間が歓声を上げた。そこで行われていたのは、なんてことないただの出産。普通に産まれた、ただそれだけ。しかし、その熱狂の渦中にいる子供は、およそ普通とはかけ離れていた。

 

預言があったのだ。数年前、このウルクに王が産まれると。そして今、その示された座標で赤子にして唯一無二の存在感を放っていたのが、この子だった。

 

皆、それを喜んだ。だが――――

 

「……一人、足りなくないか?」

 

そう、預言では産まれてくるのは二人だったはず。しかし、今ここには王たる赤子一人しかいない。

 

――――何故?その疑問を等しく全員が抱いた時、握り締められていた右手からダラダラと溢れ落ちる()()()()()()()()()()()()()()が目についた。

 

恐る恐るその手を開けさせると、そこにはまだヒトの形にも成りきれていない小さな、とても小さな胎児がその身を丸めていた。

 

そしてそれに驚いて手を離すと、赤子はまた手をギュウと閉じ、プチリとその胎児を握り潰した。赤い体液がそこを中心に掌を濡らす。

 

 

「……まさか、貴方は()()()()()()()()()と申すのですか……?!」

 

〝王とは孤高なるもの〟

 

まさにそれを体現したかのようなその行いは、希望に満ちていた民衆に、ある恐れを抱かせた。

 

――――この王は、暴君として君臨する。そして、後世にまたとない英雄となるだろう、と。

 

ならばせめて、未来を見通し民を想う賢王になってほしいとの願いを込めて、彼らは赤子にこう名付けた。

 

〝全てを見た人〟――――ギルガメッシュと。

 

そして彼らは気づかない。

 

ギルガメッシュの右手の甲に、広がる血が蛇のような痣を作っていたことを。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

結論から言えば、彼の人生が本当の孤独に蝕まれることはなかった。確かに王としては誰かに頼ることもなく、残虐な暴君として映ったかもしれないが、拳を交わし、心の底からわかりあえる本物の親友とも言える人物に出会い、彼も少し丸くなったようにも思える。

 

エルキドゥ。それが、ギルガメッシュの友の名前。

 

神が作り、知性を持たぬ泥人形として生み出された怪物。それがギルガメッシュと闘い、聖娼の姿を真似て人となったもの。

 

傲慢と慢心が服を着て歩いているようなギルガメッシュとは正反対の、物腰柔らかな青年。

 

明らかに反りの合わなそうな二人が、王の座す玉座の間で相対す。しばしの静寂の後、ニコニコと微笑むエルキドゥが口を開いた。

 

「それで?何の用かなギル、突然呼び出したりしてさ。生憎、決闘ならもうやだよ?」

 

「いや違う。今回はお前に協力してほしいことがあってな」

 

「協力?なんの?」

 

「まあ暇潰しだ。……おい、そんな露骨につまらなそうな顔をするな」

 

「だってさ。態々ギル直々の呼び出しに応えて来てみたらこれだよ?君がいつも暇を持て余してるのは知ってるけど、それだったらあのペットのライオンに付き合ってもらいなよ」

 

「……その不敬な物言いには目を瞑ろう。しかし、暇潰しと言ってもきっとお前の想像するモノとは違うだろうな」

 

ククッと喉を鳴らすギルガメッシュ。頭の上に〝?〟を浮かべるエルキドゥは、どういうことと疑問を口にする。

 

「簡単なこと。これを見よ」

 

そう言ってギルガメッシュはエルキドゥに見えるように右腕を掲げた。その手の甲に、蛇のような形の赤い痣が見える。

 

「……それは?」

 

「わからん。しかし、我の誕生を見届けた者によると、どうやら俺は共に産まれるべき片割れをその時潰したらしい。しかもそれはまだヒトにも成りきれていない胎児だったそうだ。そして、それと同時にこの痣が現れた、と。全く、まさか最初の殺生が身内とはな」

 

「それで?それがギルの言う暇潰しと何の関係があるのさ」

 

「実はな、以前から〝声〟が聞こえるのだ」

 

「声?」

 

エルキドゥは不思議そうに首を傾げる。

 

「一番最初は我がまだ幼かった時。王であるためどのようなことをすればいいか、その何たるかを説いた。二度目は(オレ)が王になった時。民衆の騒ぎ立てる雑音の中、その隙間を縫うように我の頭に直接、驚くほど透明な声で問いかけてきた。『貴様はどのような王でありたい』とな。三度目は――――お前との闘いの時。宝物を無造作に撃ち出すなどと、何を言うかと思えば……なるほど、確かに破壊力だけはあったな」

 

ギルガメッシュはフッと鼻で懐かしむように笑い、ここからが本題とばかりに面持ちを変える。

 

「さて、ここまで言えばわかると思うが、()()()()()()()()()()()()()()()()。王としてやるべきことは終わらせたつもりだ。暇潰しがてら、其奴の顔を拝んでやろうと思ってな」

 

「まあ言いたいことはわかったよ。でもさ、なんで僕が必要なの?そんなの、やりたいなら君一人でやればいいじゃないか」

 

エルキドゥのその言葉に、ギルガメッシュは肩を竦めて、

 

「察しの悪い友よの。我一人の身体から生み出される物なぞ、結果は当に見えている。そこにお前(エルキドゥ)というモノを混ぜたらどうなるのか、見てみたくはないか?」

 

そう言って笑うギルガメッシュは好奇心の強い子供のようで、不意にエルキドゥの顔も綻ぶ。――――どこまでも、自分勝手で手前勝手な友人だな、と。

 

「ふふっ……いいよ、面白そう」

 

エルキドゥの答えは肯定。ならばよしと言いたげに、ギルガメッシュはより一層口の三日月を大きくした。

 

「お前ならばそう言ってくれると信じていたぞ、エルキドゥよ。では、早速やるとしよう」

 

ギルガメッシュは左手で取り出した剣を構えると、何の躊躇いもなく右手の痣を切りつける。夥しい量の血が流れ、光を反射して輝く床に赤い水溜まりを作り出した。

 

「わわっ!ちょっと何やってるのギル?!」

 

エルキドゥは突然の友人の奇行に慌てふためき、あれやこれやと手当ての手段を行使しようとする。が、ギルガメッシュは何もなかったかのようにそれを制すると、

 

「何をしている。お前も早くしろ。そうだな……髪を一房寄越せ」

 

そんなことを宣った。

 

――――全く、どこまでも自分勝手だなぁ。

 

エルキドゥは苦笑して、そんなことを考えながら指先を刃に変えて髪を切り、ギルガメッシュから流れた血にハラハラと落とす。すると――――

 

「……何これ?」

 

血の池に浸された部分から徐々にエルキドゥの髪は素材である泥そのものへと変貌し、赤と混ざる。その全てが溶けきったと思ったら、今度はボコボコと泡立ち始める。やがてそれは一点へと収束して縦へと伸び、そして、

 

――――……なるほど。()()()()()()()()()()()()――――

 

()()()()()()()()()

 

驚愕するエルキドゥに、喜悦に染まった笑みを浮かべるギルガメッシュをそれぞれ視界に収め、その女は跪き、言う。

 

「初めまして。いえ、()()()()()()()、兄上」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

――――大変なことになった。

 

エルキドゥが抱いた第一の感想はそれだった。

 

それは目の前の彼女が血と泥から生まれたから――――()()()()

 

エルキドゥは元々は泥だ。神が作り、神に作られた意思持たぬ傀儡だ。だから別に、誰が何から生まれようと驚いたことではない。

 

真に驚いたのは、彼女から漂う気配。捉えどころがなく、それでいて強烈な、おかしな雰囲気。ギルガメッシュもそれに気づいているのか、さっきからその表情には笑みが絶えない。

 

笑うギルガメッシュと、困惑するエルキドゥ。そして傅く女の不可思議な集団が支配する空間で、一番最初に口を開いたのは、女だった。

 

「初めまして。いえ、お久しぶりです、兄上」

 

凜として、それでいてよく通る声。肩甲骨の辺りまで伸びた、数本の薄い緑のメッシュが入った鮮やかな金髪。右目は緑、左は赤の潤んだ優しげなオッドアイが、彼らを映す。

 

その出で立ちは、まるでギルガメッシュとエルキドゥを足して2で割ったかのようだった。

 

「……一つ、問おう」

 

ギルガメッシュの威厳に満ちた声が、静寂の中を駆け抜ける。

 

「貴様は何者だ?」

 

女は答える。

 

「私は貴方の片割れです」

 

「そうか」

 

たった一言の問答。それだけで、ギルガメッシュは女の正体を理解した。

 

〝片割れ〟、女はそう言った。それはつまり、自分と同じ胎で育つはずだったもの。そして気づく、精神の一部にぽっかりと穴が空いた感覚。恐らく、今の今まで一つの身体に入れていた二つの人間の意思を、片方排出したせいだろう。とにかく、ギルガメッシュは違和感を感じたのだ。

 

――――そして、あの声も今は――――

 

いや、違う。聞こえなくなったのではない。語りかけられなくなったのだ。内側からではなく、外側から導くために。語るのではなく、諭すために。

 

「……貴様、名は?」

 

一瞬の沈黙の後、ギルガメッシュは聞いた。その問いに女は答える。かつて名付けられるはずだったその名を、誇らしげに。

 

「カツム。導き手、カツムでございます」

 

カツム――――ギルガメッシュ()に殺され、ギルガメッシュ()を導いてきた者が今、ギルガメッシュ()によって生を受けた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

そして、その時彼女が何を考えていたかというと――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(うっしゃあああああああああ!!!!!第二の誕生キタコレェェェェェェェェェェ!!!!!)

 

完全に場違いなことを考えていた。




最後アレですけど、神様転生要素は一切無いのでそこらへんご了承ください。では何故?理由もちゃんとあります。その辺りの事情は、また次回。
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