禁魂。   作:カイバーマン。

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第二十一訓 原田右之助 乱舞

数十人の屈強な精鋭に対して教師と中学一年生のたった二人。

勝利に近いのは一見、前者だと思われていたが教師である銀時と中一の黒子は不利な状況をいとも容易く打破する事に成功。しかもあろうことか真撰組自体を半壊させかねない程の勢いを見せていた。

だがしかし、真撰組が密偵、山崎退が急遽こしらえてきたとある物で状況は一変する。

能力者を無力化する為に天人達が開発した対策武装兵器。それ一つで銀時達は苦戦を強いられてしまう。

 

その兵器の効果は

 

「一向に能力の使い方が思い出せませんの……」

 

己の能力、その能力の演算と使用意図の記憶喪失。つまりこの街に住む能力者ならだれもが持っている「自分だけの現実」の忘失であったのだ。

 

「ていうかホントにわたくし瞬間移動なんて使えますの? もしかしてあなたデタラメ言ってるのではなくて?」

「それをこの状況でボケで言ってんならはっ倒すぞ!」

 

小脇に抱えた黒子が頭の上に「?」を浮かべながらこちらに顔を上げるが、銀時はそれどころではなかった。

 

「行け行けぇ!! 何が起こったか知らねえがガキの方が参ってるみたいだぞ!」

「このまま押し進んで銀髪の侍の首を取れ!」

「テメェ等なんざコイツ(木刀)だけで十分だっつーの!!」

 

真撰組の隊士達が今こそ好機と士気が上がった状態で攻め寄せてくる。

襲ってくる彼等の刀に、銀時は木刀一本。まだ減らず口を叩けるぐらいの気力は残っているが、自分の身と黒子を護るだけで精一杯の様子だ。

 

「こんなろッ!」

「もしかしてわたくしの本当の能力……は! きっと同性でも妊娠出来る能力ですわ!」

「そりゃ能力じゃなくてお前の願望だろうが!!」

 

ツッコミを入れながら銀時はギリギリに避けながら目の前にいた隊士の顎に木刀を振り上げて跳ね上げる。しかしそれでも周りに集まる隊士達が一向に消える様子もない。

 

「さすがにやべぇか……」

「記憶の一部を失う……まさかこれは……」

 

後退しつつ銀時が小脇に抱えた黒子を護りながら木刀を振ってる間も、彼に腰を抱きかかえられながら黒子は小難しい表情でどうしてこうなったのか考察していた。

 

「常盤台の女王として君臨し、レベル5の第五位と認定されている最強の精神能力者。もしや真撰組の裏で彼女が暗躍しているとしたら……」

「いや違う、それだけはねぇ」

「え?」

 

記憶を奪うにはもってこい能力を持っているであろう人物に疑いを持った黒子に銀時は即座にそれを否定する。

 

「アイツは俺に危害を与えかねないような能力の使用は絶対にしねぇよ」

「散々あなたにイジられてる女王ならあなたを痛い目に遭わせようとするぐらい考えるでしょう」

「まあ常日頃から俺をぎゃふんと言わせてぇとは思ってるかもしれねぇが。アイツが俺自身に対してや俺の状況がヤバくなるような能力使用なんて真似は絶対にやらねぇ」

「その根拠は?」

「長年一緒につるんでた実績と俺とアイツの過去にあった経験だ。それにアイツはチンピラ警察なんぞに手を貸す義理もねぇよ」

「……」

 

防戦一方から遂に後退して撤退を始める銀時、器用に会話しながら隊士達に木刀を振り回す彼を見上げながら黒子は彼の言動が引っかかった。

 

「……女王がご自分に精神操作の類の能力を使わないというのがハッキリとわかりますのね」

「そりゃそうだろ、だってアイツは昔俺に初めて能力を使った時に病院で入院する程精神がやべぇ事に……っとオメーには関係ねぇか」

「能力を使った女王の方が精神に損傷!?」

「あ~もうゾロゾロとうざってぇ!」

 

遂には迫りくる隊士達に背を向けてがむしゃらに走り出す銀時。そして数十分ほど前に待機場所として使用していたコンビニの上に飛び乗ろうと積み重なれた瓦礫の上をジャンプしていく。

だが黒子はそんな時でも一つ気になる事が出来てしまった。

 

「どうして女王の方が倒れたんですの! あなた一体どんな事をしたと言うんですか!? 最強の精神能力者に対して無能力者のあなたが一体どんな小細工を!!」

「俺は何もしてねぇよ、ただアイツが無邪気な好奇心に身を任せて”覗いちまっただけ”だ、人の”過去”を好奇心で見るもんじゃねぇよな全く」

「……彼女はあなたの過去を見たというんですの、それだけでどうして……」

「は~い銀さんと女王の昔話はここまで、これ以上人の過去を追及するな」

「え?」

 

ダルそうにそう言いながら突然銀時は脇に抱えていた彼女を下におろす。

そこで初めて黒子はここがコンビニの上だと気付いた。

 

「とりあえず今回の件でアイツ本人は動いてないから、それだけ理解しとけばいいんだよコノヤロー」

「むぅ……」

 

またもや適当にはぐらかされた、黒子は全く持って面白くない表情をしつつもとりあえず今は大人しくその話の詳細は聞かない事にした。

 

銀時と女王。自分とまだ会ってない頃の彼は彼女と一体どんな経験を歩んでいたのだろうか……。

 

「……なぜこの男の過去が気になってしまうのか自分自身よくわかりませんの……」

「……どうしてこうコイツ相手だとベラベラと喋っちまうのかねぇ俺は……」

 

互いに聞き取れない声でボソッと呟いた後、銀時の方は下から必死にこちらまで昇ってこようとする真撰組を見下ろしながら抗戦に入る。

 

「テメェ等登ってくんじゃねぇ! ここは坂田軍の本陣だぞコラァ!」

「何言ってんだこの野郎!!」

「真撰組に刃向けた罪! その首寄越して償いやがれ!!」

 

這い上がってこようとする彼等に銀時は木刀を振り下ろすなり蹴りを頭上に入れるなどして激しく抵抗。しかしこれもほんの時間稼ぎにしかならないであろう。いくら銀時の腕がその辺の隊士じゃ敵わないほどであっても、これだけの人数相手に一人ではさすがに無茶だ。

 

(なにか……このガキの能力を奪った何かがある筈だ……)

 

迎撃しながら銀時は下にいる隊士達を見渡す。

この中で何か怪しい動作をしている者がいるか探している様だ。

こちらに不利な状況を作るのであれば、それはそれが一番欲っしている側、つまりこの連中が仕掛けたと思うのが普通だ。

 

(……そういやあのハゲ、このガキが記憶失ってる事に気づいていなかったようだな)

 

気になる違和感を覚えた銀時。確かに丸坊主の隊士は先程彼に向かって

 

『何が起こったか知らねえがガキの方が参ってるみたいだぞ!』

 

そんな事を言っていた。すると銀時は下にいる隊士達だけに集中せずに顔を上げて視野を少し広くする。

 

(コイツ等下っ端の耳には届いてねぇって事は、コイツ等の上司、もしくはその上司の側近がなんかがコソコソとやってるんじゃねぇのか?)

 

思考を巡らせながら銀時はふとある方向に目を向ける。

下にいる隊士達に混ざらないで少し離れた場所からこちらを観察している3人組。

 

「一人はゴリラ局長、もう一人は偉そうにタバコ吸ってるふてぶてしい瞳孔開き野郎。そんであの地味な奴は誰だ……?」

 

銀時の視界には局長である近藤勲と副長の土方十四郎。そして見覚えのない青年隊士が一人。

だがよく目を凝らしてみると銀時はある物に気づいた。

 

あれはテレビのチャンネルを切り替える時に使うような何処の家にもありそうなごく平凡なリモコン……

 

「おいおいどういう事だオイ、まさか……」

 

そのリモコンを見て銀時は眉間にしわを寄せる。あのリモコンは見覚えがある、自分に近しい存在の一人があの様な物を複数携帯しているからだ。しかもその人物がそれを持ってる意図は

 

 

銀時の頭の中で一つの結論が打ち出された。

 

「アイツ等”女王の能力”を使ってるっつうのか……」

「真撰組が女王の記憶改竄能力?」

 

彼が呟いた言葉に黒子がいち早く反応して駆け寄った。そのついでに彼女もまた下から昇ってくる隊士の一人の頭に蹴りを落とす。

 

「レベル5の能力を応用し、擬似搭載させた武装兵器ならわたくしも噂だけでは聞いた事ありますが……ホントに実在しますの?」

「現にテメェの記憶がすっぽり消えちまってんだ。そういう兵器が作られてそれが奴等の手に渡ってると考えた方がいいだろ」

 

そう言いながら銀時は苦々しい表情で舌打ちする。

窮地に立たされたことで機嫌が悪くなったのではない。

自分の知らない所で女王がそんな怪しげな兵器開発に加担してたのが無性に腹立つのだ。

 

「あのガキ……また変な実験に参加してやがったな、挙句の果てに自分の能力の一部を利用できる兵器なんざ開発させやがって……」

「しっかり見てないあなたが悪いんですのよ」

「今度会ったら痔になるぐらいケツ引っ叩いてやるわ」

「お姉様にそんな真似するなら許せませんが、女王相手ならどうぞお構いなく」

 

洒落にならない暴言を口走る銀時に黒子は言葉を返しつつも徐々に悪化しているこの状況にいよいよ危機感を覚え始める。

 

 

「ていうか女王にお尻ペンペンする前にまず、この状況どうにかなりませんの?」

「前にやった攘夷浪士の連中程度なら俺一人でもなんとかなったが、コイツ等相手だとさすがにキツイんだよ」

 

真撰組はただの荒くれ者の群れなどではない。一人一人が真撰組という一本の旗を護る為に幾多の死地を乗り越えてきた真の荒くれ者なのだ。

そんな連中に能力を使えない黒子を連れたまま戦うなど無謀もいい所

 

「くそ……!!」

 

忌々しく思いながら言葉を吐き捨て、とにかく彼等が黒子に近寄らないよう必死に本陣を死守しようとする銀時。

 

だが

 

「うおぉぉぉぉ!!! 十番隊隊長・原田右之助≪はらだうのすけ≫!! 一番槍ぃ!!」

「しまっ……!」

 

豪快な名乗りを上げながら一人の隊士が銀時の隙を見て飛び上がって来た。

そのまま銀時達のいるコンビニの上に着地してきたこの丸坊主の男。

この戦いが始まってから何度も倒してる筈なのに不屈の精神で起き上がっては立ち向かい、とにかくタフ度は他の隊士よりも一線引くほどの豪の者。

そんな彼の侵入を許してしまった事に銀時が焦ってるのも束の間。

彼は抜いた刀を振り上げて能力の使えない黒子に襲い掛かる。

 

「でやぁぁぁぁぁぁ!!!」

「チッ!!」

「あなたッ!」

 

黒子に刀を振り下ろした原田の前に銀時が彼女の盾となる様にすかさず間に入る。

身を顧みずそんな行動に出た彼の姿に銀時が黒子が驚いた次の瞬間。

 

彼の振り下ろす刀は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時の頭上数センチの所でピタリと止まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

突然の事に銀時と黒子は目をぱちくり。

 

真撰組の隊士の男が突然攻撃を止めたのだ、わかるのはそれだけ。

 

銀時の頭の寸での所で刀を止めた男は微動だにしない、しかし数秒後

 

原田は口元に似合わない微笑を浮かべるとゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「”……フフフ、危ないわねぇ、急に飛び込んでこないでよぉ”」

「「!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原田の様子が明らかにおかしい、先ほどまでの男気溢れる口調から一転して妖艶なおネェ口調にガラリと変わっているではないか。

銀時は彼の反応に何かを感じたのか目を見開き、黒子は背筋からゾクッと感じて震え上がる。

しかしそうしている内に彼はこちらに微笑を浮かべたまま顔を上げて

 

「”せっかくチビさんを怖がらてチビる所が見たかったのにぃ、チビさんがチビる……フフ”」

「その背筋も凍る様なクソつまらねえギャグセンス……お前まさか……!」

 

おっさんの声のまま変な口調で喋り出し、更にとてもユニークとは程遠い洒落を言って自分で笑う原田。

銀時は戦う姿勢を解いて歩み寄る。すると原田は彼の方へ改めて顔を上げた。

 

男の両眼には先程まで無かった筈の”キラリと光る星”みたいなものが輝き

 

「”あなたの行動はお見通しなんだゾ☆”」

「ギャァァァァァ!! キモイ! キモイですの!」

「”私は肝でも胃でもないわよぉ、ブフッ”」

「キモイ上に物凄くつまらないギャグかまして自分で笑ってますの!!」

「”あらヤダ、別に笑わせるつもりで言ったとかそういうのじゃないから。それに私お笑いとか興味ないからぁ、ホントのホントに興味ないから、だから別に笑ってくれなくても別に傷つかないから私”」

 

いきなりキャラが大きく変わってしまった男に黒子が素っ頓狂な声を上げて本能的恐怖を覚え、思わず銀時の腰元に抱きついてしまうも、男は彼女を無視して銀時との会話を続けた。

 

「”私の能力を応用し開発されたあのデバイスで大ピンチらしいけどぉ、大丈夫銀さぁん?”」

「……”本体”はどこにいやがるんだ」

「”探しても無駄よぉ、結構離れた場所にいるから私ぃ、ウフフ”」

「なんなんですの一体! いきなり気持ち悪い喋り方になるし訳の分からない事口走るし! さっぱり理解できませんの!」

 

丸坊主のオッサンには不釣り合いな微笑を浮かべる光景に黒子は全身から鳥肌が立つのを実感した。

しかし彼女が困惑しているも束の間、銀時達が彼(彼女?)に気を取られてる隙に他の隊士達がわんさかとコンビニの上へと上がってくる。

 

「なにやってんだ原田! なんでそいつ等と仲良くしゃべってんだコラァ!!」

「”あらぁ、無粋な客がぞろぞろと湧き出てきちゃったわぁ”」

「原田ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「なんだそのキモイ喋り方! お前自分のキャラどこ行ったぁぁぁぁぁぁ!!」

 

振り返り様にこちらにウインクして見せる男に隊士達の表情が強張る。

きっとこの原田という男は漢の中の漢と呼べるような隊士達に厚い信頼を寄せられていたような男だったのだろう。今はもう見る影もないが

 

目の前の恐ろしい光景を見て、隊士達の視界にはもう銀時と黒子は入らなかった。

 

「”しょうがないわねぇ、ここは特別に私がこの人達を引きつけておいてあげるゾ♪”」

「おえ……もうわけがわからないやキモイやらでただでさえ記憶喪失の頭が爆発しそうですの……」

 

銀時の腰にしがみつきながら黒子が舌を出して吐きそうな仕草をしていると。

様子の可笑しい原田に銀時は眉間にしわを寄せる。

 

「テメェがそんな事する理由あんのか? この件はテメェが大嫌ぇな”あのガキ”が関わってる事なんだぜ」

「”フフ、理由なんて必要ないでしょう。”御坂さん”の事はどうでもいいわぁ、あなたと私は古い付き合いなんだからぁ~困った時はお互い様、仲良く助け合うのがセオリーでしょう?”」

「絶対なんか企んでんだろお前」

「ちょっとあなた! まさかこんな丸坊主のおっさんと特別な関係を築きになられて……!」

「ちげぇよバカ、つかいい加減離れろ」

 

原田の様子がおかしくなってからずっとしがみついていた黒子を、やっと銀時は仏頂面で彼女の後ろ襟を掴んで引き剥がす。

 

「ここはコイツに任せろ、俺達はこのまま敵本陣まで突っ切る」

「何を言ってるんですかあなた! あの数十人の精鋭達はどうする気ですの!? ていうか私の記憶もどうするんですの!? お姉様は大丈夫ですの!? ていうかこの丸坊主キモイですの!」

「落ち着けバカ、こいつに任せとけばなんとかなる」

 

冷静さを失ってパニックになっている黒子をたしなめると、銀時は彼女の後ろ襟を掴んだままひょいと体ごと簡単に持ち上げて

 

「んじゃ行ってくるわ」

「”頑張ってぇ~”」

 

あっさりとした別れのセリフを原田に吐くと銀時は黒子を掴んだまま床を蹴って下へと降りて行った。

 

残された原田(?)の方は、こぞって集まっている隊士達に向かって気味の悪い笑みを浮かべる。

 

「”も~暑苦しい男たちが相手とか嫌になっちゃうわぁ~、でもでも~ここであの人に借りを作ればなにかに役に立ちそうだから私頑張っちゃうゾ☆”」

「うわァァァァァ!! 原田がぶっ壊れたぁぁぁぁぁぁ!!」

 

自分の頭をコツンと拳で軽くたたきながら口からペロッと舌を出す丸坊主のおっさんの姿に隊士達は悶絶。

 

「もしかしてあの銀髪の野郎に頭を何度もぶっ叩かれたせいか!?」

「”あの程度全然大したことないわよぉ、私の方がもっとあの人に頭に叩かれてるのしぃ……全然誇れることじゃないけど”」

 

意味深なセリフを吐きながら原田は突然動き出した。

 

「”さぁて脱ぎ脱ぎタイムよぉ~”」

「「「「「脱ぎ脱ぎタイムゥゥゥゥゥゥ!!??」」」」」

 

 

まず制服の上着を乱暴に脱ぐ、続いてシャツを脱ぎ捨て上半身裸になって屈強な肉体を公の場で見せつけると、今度は腰元のベルトに手を伸ばして、カチャカチャと音を立てて外し始める。

 

「”ここに集まってくれたみんなの為に”」

「おい、なんで脱ぎ始めてんだよ原田……」

「”原田右之助くんの特別ストリップダンスショーをお披露目しちゃうんだゾ☆”」

「「「「「原田ァァァァァァ!!!!」」」」」

 

ズボンも脱いで靴も捨ててパンツ一丁になった原田からの茶目っ気溢れるに一言に遂に隊士全員が声を揃えて彼の名を叫んだ。

 

「どうしたんだよ一体! お前に何があった!? 何がお前をそこへ導いた!!」

「”同僚の前で生まれたままの姿を晒すと興奮しちゃうんだゾ☆”」

「原田ァァァァァァァ!!」

「もう止めてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

こちらにウインクして遂に最も人前で脱いではいけないパンツに両手で掴んでしまった原田に隊士達がやっと走り寄って彼の行動を制止させようとする。

 

するとそこで

 

「テメェ等何やってんだぁぁぁぁぁぁ!!!」

「局長!!」

 

事の一部始終を見ていたのか、真撰組局長である近藤勲が鬼気迫る表情でこちらに走って来たのだ。

 

「良かった局長が来てくれた!」

「俺達の大将ならきっと原田の目を覚ましてくれる!!」

「頼む局長! 俺達の同志に侍として本当にやるべき事はなにかと導いてくれ!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

隊士達の厚い信頼を受けながら、近藤はコンビニの前に積まれた瓦礫の上を飛び越えて行く。

 

 

身に着けている衣服や刀を捨てて行きながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「”真のストリップショーのスターはこのゴリラさんなんだゾー☆!!”」

「「「「「「局長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」

「”負けないんだゾー☆!!”」

「「「「「原田ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」

 

互いに生まれたままの姿を晒し、両手を広げて羽ばたくようなポーズで飛翔しながら交差する近藤と原田。

 

隊士達にはもう銀時や黒子、今行っている任務の事などもうどうでもいい事であった。

目の前で醜態を晒し合っている同僚と組織のトップ。今の彼等が最もなんとかしなければいけない事はこれ以外無いのだから

 

隊士達の阿鼻叫喚が止む気配は無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンビニの上でそんな地獄絵図が展開している一方で。

副長である土方とこの戦場に重要な兵器を持ち込むことに成功した山崎は少し離れた場所からそれを遠い目で眺めていた。

 

「副長……原田の野郎が急におかしくなったと思ったら、駆けつけに行った局長までおかしくなっちゃったんですけど……」

「そうか? あの人は元からあんなんだろ」

「……いやさすがにアレはおかしいでしょ」

 

思いのほか冷静に眺めている土方に山崎はか細い声でツッコミを入れると、ふと自分が持っているリモコンに視線を下す。

 

「もしかしてコレが原因じゃないよな……でもコレって能力者の記憶の一部を奪って戦闘不能状態にするだけの道具だし、無能力者の俺達や局長にはなんの効果も出ない筈なんだけど……」

 

冷や汗をかいたままリモコンを見下ろして山崎がボソッと呟いていると

 

「なるほどねぇ、あくまで女王の能力の一部しか使えねぇって訳だ。それがわかって安心したぜ」

「!!」

 

すぐ傍から聞こえたやる気のなさそうな呑気な声。山崎が慌ててバッとそちらに顔を上げると

 

「そんなおもちゃじゃ”本物”には勝てねぇよ」

「あぁぁぁぁ!!! いつの間に!」

 

能力が使えない黒子を引き連れて、既に木刀を抜いている銀時が風で着物をなびかせながら颯爽とこちらに歩いてきているではないか。

他の隊士達は近藤と原田のストリップショーに釘づけ(誤解を招く言い方だが)なので全く彼等に気づいていない。

彼の登場に驚く山崎に黒子が睨み付けながらフンと鼻を鳴らす。

 

「わたくしの能力を奪ったのはそこのモブですわね、大人しく返して下されば”殺す”だけで勘弁してあげますわ」

「いや殺すだけってそれ全然妥協してないじゃん! つかモブじゃねぇし!」

「うるせぇぞ山崎」

「あ、すみません副長……」

 

能力を奪われながらもこの高慢な態度。山崎はツッコミを入れていると隣に立っていた土方が彼の前に手をスッと差し出して大人しくさせる。

 

「聞かせてもらおうか、ウチの大将と部下一人が全裸で踊り狂ってる。アレはなんだ」

「俺は知らねぇよ。お前の所のゴリラとハゲが勝手にストリップやってるだけだ。こりゃアンチスキルが来るのも時間の問題ですなぁニコチンお兄さん」

「俺を相手に下手な誤魔化しは通用しねえぞ」

 

瞳孔の開いた目が一際鋭くなる土方。銀時の安い挑発に応えるかのような殺意を放っているが頭の中は冷静だ。

 

「お前、そのガキだけじゃなく他にも能力者を持っているのか、しかもあんな芸当が出来るたぁかなりの上玉も持ってるみたいじゃねぇか。一体何者だ」

「俺はただの教師だ、安月給でコキ使われてガキの面倒を見る事を仕事とするただの一般社会人よ」

 

腰に差す刀に手を置いて尋問するかのように話しかけてくる土方に対し

銀時は右手に持った木刀を肩に掛けてニヤリと笑って見せる。

 

「ま、その辺の教師と少し違う所があるとすれば、”侍やってる”ってとこぐらいだな」

「廃刀令のご時世に侍だぁ? ますます訳の分からねぇ奴だ。まあいい」

 

自分を侍だと名乗る銀時に土方は遂に腰に差す刀を鞘から抜いた。

 

「誰が相手だろうがたたっ斬るだけだ、これ以上お前から情報を聞く意味はねえとわかったしな。山崎、行くぞ」

「は、はい!」

 

いよいよ抜刀した土方は振り返らずに山崎に命令。それに素直に従って彼も腰に差した刀を抜いて銀時達と対峙する。

対して銀時はだるそうにふわぁっと大きな欠伸をすると黒子に向かって

 

「んじゃお前はここにいろ、後は俺がやる」

「お断りしますわ、あなたなんかの命令をわたくしが聞くと思って?」

「は?」

 

即座に拒否した黒子に銀時は口をへの字に曲げた。

 

「能力も使えないお前なんざ正真正銘ただのガキんちょじゃねぇか、邪魔だからここで体育座りして待ってろ」

「能力を使わずとも、今ここであなたと共に戦えるのはわたくしだけですわ」

 

黒子がいまだまともな状態ではない事を悟ってか、戦いに参加させないように配慮する銀時に対して彼女はムッとした表情で反論する。

 

「わたくしはあなたとどのようにして戦っていたのかは記憶にありません、ですがこれだけは覚えていますの」

「何をだよ」

「わたくしとあなたが組めばどんな相手でも勝てると」

 

急に真っ直ぐな視線を銀時に向けながら黒子は真顔でそう答えた。

 

「それはわたくしの能力があってこそ生まれた過程なのかもしれませんが。たとえ能力使えなくてもあなたと共にお姉様をお助けするのがこの白井黒子の使命であり、一生背負うと決めた定めですの。あなたなんかに言われた程度でそれを簡単に止めるわけにはいきませんのよ」

 

ハッキリとした口調でそう宣言する黒子に、銀時はやれやれと言った風に髪を掻き毟りながら深いため息を突いた。

 

「お前に怪我でもさせちまったら、あのガキ(美琴)に怒られるのは俺なんだけど?」

「あら、わたくしだってあなた一人で行かせて怪我なんてさせたらお姉様に怒られますの」

「それじゃあ俺達両方が怒られない為には」

「わたくしとあなたが共闘し」

 

会話しながら銀時と黒子は顔を上げて同じ方向に目をやる。

 

真撰組の鬼の副長、土方十四郎と。密偵として影の如く暗躍する事が主体の山崎退が刀を抜いてこちらをじっと見つめている。

 

交差する四人の視線。そんな中で黒子は相手を小馬鹿にするようにな小さな笑みを浮かべながら

 

「あの連中をコテンパンにブチのめしてやればいいだけの事ですわ」

「へ、そうだよな」

 

黒子に釣られて銀時もつい笑ってしまう。

 

「それが俺とお前のいつものやり方だ。ちゃんと覚えてるじゃねぇか。いいぜその案」

 

こちらに向かって顔を上げている黒子に対し銀時は右手に持った木刀を強く握りながら答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「乗ってやるよ」

 

例え片方がなんらかの支障があったとしても関係ない

この二人がやる事はいつも一つだけだ

 

自分自身で決めた武士道(ルール)を貫く為に戦うと

 

 

 

 

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