禁魂。   作:カイバーマン。

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第六訓 教師、スキルアウトで働く

白井黒子に”いちごおでん”などという不可思議極まりないもので釣られ、一般教師でありながらジャッジメントとしてスキルアウト討伐に参加することになった坂田銀時。

現在彼と黒子は、第七学区では有名なスキルアウトの巣窟を前にしていた。

 

そこは使われなくなった廃住居地区、妙な匂いと陰気くさい景色が交わり、その辺り一帯からしてちょっと先にある筈の活気ある街並とはまるで区切られた別世界のようだった。

 

「ここが連中のアジトですわ」

 

とても人が住めるような環境ではなさそうな寂れた団地地域。黒子は後ろからついてきている銀時に聞こえるように語りかけた。

 

「わたくしの計算通りスキルアウトの連中は随分少なくなられてる様子で」

「きったねぇ場所だなここ、なんで不良ってのはこういうアウトローな場所に憧れるのかねぇ」

「こういう人が寄り付かない場所だからこそ、大人達に隠れて色々悪巧みとかして楽しんでますの」

 

チンピラとはいえ攘夷浪士の一人の傘下に加わっている連中。そんな彼等がこぞって集まっているアジトを前にして呑気に呟く銀時。

 

「つうかチビ助、今までツッコまなかったけどテメェの服装……」

「はて、この制服がどうかしましたの?」

 

ふと思い出したかのように銀時は黒子の方に目をやる。

今の彼女の服装は常盤台で指定された制服ではなく他の中学の制服だった。

 

「それってどこの学校の制服だよ、ウチのじゃねぇだろ」

「”柵川中学”の制服ですがなにか?」

「なにかじゃねぇよ、学校の名前とかどうでもいいからなんでそんなの着てんのかって聞いてるんだよこっちは」

「無論潜入捜査をする為に決まってますわ」

 

自信満々に彼女は答えた。

 

「エリート育成を重視する名門常盤台の制服では上手く侵入できませんからね。この日の為に初春から借りましたの、無理矢理」

「潜入捜査?」

「ええ、今のわたくしは”退屈な日常の中でうっかり不良に憧れを抱いてしまい、過激な世界に足を踏み入れようとする愚かな女子中学生”ですわ」

「なにそのどこぞの二流少女漫画みたいな設定」

 

黒子は着馴れない様子で長いスカートをパタパタしながら説明する。

どうやら彼女、さすがに正面からスキルアウトにはぶつかるような愚策はせずにまずは内側に入り込もうと計画していたらしい。

 

「あどけない美少女を装って内部に潜入し、連中が隙を見せた瞬間に正体を現して一気に一網打尽に、ふふふ我ながらなんて優雅な作戦でしょう……」

「おい、じゃあ俺も潜入捜査するならそれなりの格好しなきゃダメだろ」

「あなたはそのみすぼらしい着物姿と見た目で、普通に”就職先の見つからない落ちぶれた浪人"を演じてるじゃないですか」

「誰が落ちぶれた浪人だ! 俺の着物はみすぼらしくねぇ! 2日洗ってねぇ奴だけど!」

「汚ッ! わたくしの半径3メートル以内に近づかないで下さいまし!」

 

敵のアジトを前にして堂々と声を荒げる二人。

しかし隠れもせずにそんな風にギャーギャーを喚いていたら……

 

「あのーこんな所で何してるのおたく等?」

 

騒ぎを聞き連れてやってきたのだろう。

アジトの門から着物姿の青年が困惑した様子で現れた。

スキルアウトと称するにはいささか年が行き過ぎている。もしかしたら彼等に加担している攘夷浪士なのかもしれない……

2人はいきなり現れた彼を前にその場にピタッと硬直する。

 

「もしかして道に迷って来たとか? ここ危ないし早くどっかいった方がいいよ」

「あ、あの……」

「ん、何?」

(マ、マズイですの……まさかこんな唐突に連中と顔合わせするとは……)

 

いきなり現れた少々親切そうな青年に内心動揺を隠せない様子の黒子、口をパクパクさせて何か言いかけようとしているが言葉が出ないらしい。

しかし隣でパニクっている彼女に横目をやった銀時が少年の方に向き直って

 

「あのー、実は俺等この廃れきったこの街に革命をおっ始めるとかいうそんなスゲーカッコいい組織があると聞いてここに来たんだけど?」

「へ? まさかウチの組織に入る為に来たのアンタ等?」

(よくやりましたわ白髪頭! さすが口から先に生まれた男!)

 

焦る黒子の代わりに変な口調で青年に説明しだす銀時。

黒子が青年からは見えない角度でグッと拳を握ってガッツポーズ。

 

「ほら俺もこんな風にみずぼらしい格好してて、就職先も無いしやんなっちゃったんだよー」

「へー、そうなんだ。実は俺も同じ口でさー、流れに流れていつの間にかこんな若い連中のいる組織に来ちゃったんだよね。不景気だからってやんなっちゃうよねホント」

「そうそうそう! だからお前らと一緒にこの国にいっちょ復讐してぇなと思ってさ」

「いやいや兄さん、そんな弱気になっちゃダメだって」

「え?」

 

へらへら笑いながらでっち上げた身の上話をしていた銀時の話を突然青年が折る。

 

「就職先無いからって俺等みたいなバカやってる奴等の所に行くって考えはちと短絡過ぎるよ」

「あ、うんそうだね……」

「俺の知り合いにさ、田舎からはるばる上京して学も何もない状態で。裸一貫から幕府直属の組織として認められる程出世した凄い人がいたんだよ」

「へーそうなんだ……こんな不景気なのに頑張ったんだねその人……」

「だからアンタみたいな奴でもどうにかなるって。だからここに来たことはもう忘れて、明日からは生まれ変わった気持ちで就職先探してみな。こんな時代でも救ってくれる人がアンタにもいるよきっと」

「……」

 

目を瞑って優しく問いかけてくる青年に言葉が出ずに絶句する銀時。そして隣にいる黒子に声を潜め

 

「おいヤベェよ、なんかすげぇいい事言われた気がすんだけど、チンピラの仲間のクセにすげー人間出来てるんだけどアイツ、俺もう本当に明日から生まれ変わりたい気分なんだけど……?」

「なに説き伏せられてるんですの……! あなたみたいな腐ったミカンが輪廻転生繰り返そうが永久に腐ったミカンに決まってますでしょ……! せっかく連中の所に潜り込めるチャンスですのに……!」

「無理だって……! 俺もう生き方改めるわ……! とりあえずトイレの後は手ぇ洗う事にする」

「それってつまり今まで手を洗っていなかったんですの……!」

 

小声で口論を始めてしまった銀時と黒子。

それを尻目に青年が申し訳なさそうに歩み寄る。

 

「あ、あのーもしもし……なんか盛り上がってる所悪いんだけどいい加減もう帰って……」

「うるせぇ! あーもうめんどくせぇからいいわ! いいから俺とコイツを仲間にしやがれってんだよッ!」

「そうですわ! さっさと中にいれて下さいましッ!」

「い、いやそんなの無理に決まって……」

 

急に態度をガラリと切り替えて乱暴ににじり寄って来る銀時と黒子に青年は頬を引きつらせて困惑。

しかし銀時は彼の言い分も聞かずに彼の両頬に食い込むほど掴んで

 

「うるせぇ! こちとらこのガキと関係出来ちまってもう社会的に抹殺されてんだよ! 引き返せねぇんだよ! どこへ逃げてもアグネスの魔の手から逃げられねぇんだよ!」

「えぇェェェェェ!!どういう事それぇぇぇぇぇぇ!? え、マジで!? マジなのそれ!?」

「マジですわ、最近の法律なんてクソくらえですの」

銀時のとんでもない発言に慌てふためく青年は黒子の方へばっと振り向く。

すると彼女はキッとした強い使命を負ったような目つきで顔を上げて

 

「だからこんな国一度リセットして新しい王国を作り上げますわ! 年の差や性別など関係なく恋愛出来るそんな夢のような国を!」

「なんかもう色んな人を敵に回すような野望を暴露しちゃってんだけどぉぉぉ! もういいから! もう仲間になっていいからとりあえず叫ぶの止めてぇぇぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第六訓 教師、スキルアウトで働く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、こっちです……足元注意して下さい」

「ったく手間取らせやがって」

「きったない所ですわねぇホント……」

「……」

 

アジトの内部に無事に潜入する事に成功した銀時と黒子。

今はリーダーと顔合わせする為にスキルアウトの一人である青年の後をついて行ってどんどん奥へと進んでいた。

中に進めば進むほど本当に大勢の人がスキルアウトがここにいた事のかと疑うぐらいひどく殺風景な景色が続いた。

 

そして一つの団地の前に差し掛かると青年は二人を連れてその中へと入っていく。

 

「すみません、ちょっと前にエレベーター故障しちまったもんで。直す奴もいないから階段で登るしかなくて……」

「フッフッフ、階段なんて使わなくてもわたくしのテレポートで……! うごッ!」

 

黒子が何か言いかけた途中でグーで彼女の頭に鉄拳を落とす銀時。

ここで彼女が高能力者だとバレたら作戦は全て水の泡である。

 

「お前本当に潜入捜査する気あんの?」

「く……当り前ですの! 連中の内部に潜入して一網打尽にするなどこの白井黒子であれば容易く……! あだッ!」

 

再び銀時の鉄拳を食らう黒子。

後ろで騒いでる二人に青年が不振そうに振り返る。

 

「あのーさっきから二人で何騒いでるんですか?」

「気にすんな、ただのスキンシップだ」

 

銀時の説明にどこか腑に落ちない表情を浮かべつつも青年は階段を登りはじめた。

二人も急いでその後を追いながら小声で今後の事を相談し始める。

 

「……とりあえずお前は喋らない方がいいな」

「いえ、大丈夫ですわ、これからはもう少し言葉を選びますので……」

「おい、俺今日お隣さんと飲み行く約束してんだけど、これ夜までに終わるよな?」

「ジャッジメントの歴史を変えるかもしれない大功績を立てるチャンスを前にしてなに言ってるんですかあなたは……!」

「バカヤロー、お前等の功績なんざより俺は酒飲む方がずっと……」

「……いちごおでん」

「正義の為に悪を討つって素敵だよね、主人公だよね、なら銀さんがやるしかないよね」

「……あなた扱いやすいんだか扱いにくいんだかよくわかりませんわね……」

 

耳元で呟いた黒子の言葉で簡単に態度を変える銀時に彼女がボソッと感想を呟いていると前を登っていた青年の足が一つの部屋の前で止まった。

 

「えーとここに俺達のリーダーがいます」

 

青年は3人の方に振り返ってそう言うとその錆びて小汚いドアをガチャっと開ける。

 

「まずは俺が行って話してくるから。ちょっとここで待っててください」

「わかりましたわ」

「……多分中で叫び声とか聞こえるかもしれないけどそこは無視しといてね」

「え?」

 

意味深なセリフを吐いた後疑問に思う黒子を残して中へと入ってしまう青年。

そして部屋のドアが閉まってるのか閉まってないかぐらいのタイミングで

 

『イヤァァァァァァァァァ!! すんませんすんません! ホントすんません!! 生まれて来てホントすみません! 今度生まれ変わったらアメンボになるんで許してください!!』

『落ち着いて下さい! 俺が帰ってきただけですから!』

『俺も無理だってわかってるんですよ! けどなんか周りに押し付けられて勝手にリーダーに仕立て上げられちまっただけで……! だから命だけはご勘弁を!……ってあれ?』

『えーまずは土下座止めましょうねリーダー……ほら、このツラ覚えてます?』

『な、なんだと……! だってお前さっき下の様子見に来るとか行って出て行った筈じゃ……! どうやってここまで生きて帰ってこれたんだ!!』

『え? まさか俺って今までアンタの中で既に死んでた事にされてたの? 様子見に行っただけで?』

『だってもう俺達は連中に命狙われる身だぜ!! そりゃ外に行く=天国にゴーって考えるのが当たり前だろ!』

『いや外出ただけで死んだと思われたらたまったモンじゃねぇよリーダー!』

『だぁぁぁぁぁぁぁ!! だからもうそのリーダーって止めてくれぇぇぇぇぇ!!! ガラじゃない!! ガラじゃないんだよ俺はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

部屋の中から聞こえるのは慌ててなだめようとする青年の声とは違うえらく必死な様子で叫んでる別の男の声。

 

待機していた二人は同時に顔を合わせる。

 

「……なんか変なバカが叫んでるような気がするんだけど」

「きっと下っ端ですわね、声がもうそんな感じですわ。一生負け犬人生歩むであろう敗者の声ですの」

「そうだよな。どこの組織がこんな小物っぽい叫び声を上げる奴をリーダーにするんだよ、北斗の拳の世界じゃあるまいし」

「もしこんなマヌケな声を上げる男がリーダーであったら、こんな小細工せずともわたくし一人で真正面から叩き潰した方が手っ取り早いですのよ」

 

そんな風に二人で淡々と話していると、しばらくして先ほどの青年がドアを開けてこちらにヒョコッと顔を出した。

 

「あーウチのリーダー落ち着いたから中に入っていいですよ……それと半べそかいてるけどツッコまないで下さい、本気で泣くから」

「「……」」

 

その言葉に何とも言えない表情で凍り付く二人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青年に言われて二人は部屋の中へと入っていった。

廃団地の中でここだけ人が住んでる部分が見える所からして、本当にここがリーダーの住む場所らしい。

もっと大規模な場所に拠点を置いてあるであろうと期待していた黒子は「こりゃないですわ……」と虚ろな目で呟きながら奥へと進んで行った。

 

そして奥にあるリビングに辿りついたとき、そこにいたのは……

 

「ど、どうも……」

「あ、どうも」

 

金髪の妙に冴えない顔をした少年が一人用のソファに寂しくポツンと座っていた。

ぎこちなくこちらに頭を軽く下げてきた彼に対して銀時はつい反射的に返事する。

 

「あのー、ちょっとここのリーダーに会いたいだけど、どこにいんのかわかる?」

「……俺がリーダーっす」

「いやいや、そういう冗談いらないから」

「いや本当に俺がリーダーっすから……」

 

銀時にどこか申し訳なさそうにそう言うと少年はアハハと困笑しながら後頭部を掻く。

 

「ここで頭張ってる浜面仕上≪はまづらしあげ≫です……」

 

浜面と名乗るこの少年に対し銀時と黒子はいよいよやる気がなさそうな表情になって行く。

 

「……頭ってどこの頭? 公園の砂場エリア?」

「いやだからここの頭です……ここのスキルアウト連中のリーダーやってるんですよ俺……」

「それマジですの?」

「これマジなんですハハハ……」

ソファに座ってヘラヘラ笑いながらそう答える浜面を前に、銀時と黒子はやるせない気持ちで目を合わせた。

 

「……こりゃダメだ。俺達がどうこうしなくても自然に消えちまうわこんな組織」

「……この日の為に長い間練りに練ってたと思うと悲しくなりますわねホント……」

「あぁぁぁぁぁぁぁ!! 今お前等俺の事ダメだとか情けない奴だとか小声で話してただろ!!」

「「!!」」

 

聞こえない声量で話していたにも関わらず、どうやら浜面は二人の反応を見て自分の悪口を言ってるのだと認識したようだった。

いきなり声を荒げて立ち上がる彼に銀時と黒子は思わずビクッと反応する。

 

「どうせお前等の考えてる通りだよ!! 所詮俺なんて今まで駒場の後ろで威張ってただけの狐だよ! 得意なのはピッキングと車上荒らしと運転技術! こんな小者にでも出来る技術しかない俺がリーダーとかマジあり得ないよな!!」   

「い、いやいやいやいやそんな事ないよリーダー! ピッキングも車上荒らしも出来るなんてすごい事だよ! なあ!」

「え、ええ! 普通の人ならまず真似できませんわ! 普通の人ならまずそんな真似しませんしねぇ……」

 

両手で頭を押さえて金切り声を上げ始める浜面に慌ててフォローに入る銀時と黒子。

なんか情けないを通りこして見てて悲しくなってきた……。

 

そんな二人の心境をよそに先程の着物姿の青年がリビングへと戻って来た。

 

「えーとまず自己紹介を……俺は少し前にこの組織に加入した山崎退≪やまざきさがる≫って言います……一応補給担当やらせてもらってます……」

 

山崎と名乗った青年は叫んでいる浜面の方に目をやりながら話を続ける。

 

「で、この人が……ウチのリーダーです……」

「ああ、さっき聞いた本人に。まあどうなんだ実際? コイツってリーダーの素質あんの?」

「あーまだ俺も日が浅いから詳しく知らないんですけど……リーダーの特技はピッキングと車上荒らし、あと運転が上手い事でして。趣味は強い奴の陰に隠れて威張る事です……」

「どう考えても下っ端クラスじゃねぇか」

 

人の卑屈な趣味をサラッとバラしてしまう山崎に銀時が口をへの字にした後、すっかり落ち込んでしまった浜面の方へ足を向ける。

 

「ほらシャキッとしろよリーダー、俺達お前の手下になる為にここまでやって来たんだぜ? 頑張って俺達と一緒に攘夷活動おっ始めようじゃねぇか」

「いや攘夷活動なんて本当は色々訳があったからやってただけだし……俺なんかじゃ絶対無理だし……駒場達がいなかったら俺ただのショッカー戦闘員Aだし……」

「ショッカーの戦闘員がなんですの」

 

銀時がなんとか浜面を励まして立ち直らせようとしていると、黒子も会話に加わり始めた。

 

「あの全身黒タイツで堂々と人前に出れるのは尋常じゃない勇気がいる筈、あんな姿で胸を張って生きていけるなんてすばらしいと思いますわ戦闘員は」

「そうだよ、偉いんだよショッカーは。いつもイーイー叫んでライダーにぶっ倒されてるけどアイツ等は鋼のメンタルを持っているんだよ、倒されても決して挫けない堅い魂をテメーの体に持っているんだよ戦闘員は」

「……なんか俺じゃなくてショッカー戦闘員の励ましになってね?」

 

うなだれる自分の両サイドに立ちながらうんうんと頷いている二人に浜面は複雑そうな表情を浮かべた。

 

「やっぱ俺なんかじゃだめだわ……新入りの山崎ともう一人以外はみんなどっか行っちまったし……あの時駒場の野郎を止めとけば……あ、イタッ!」

「なぁに落ち込んでだコラ!!」

 

体育座りのポーズでブツブツ呟き始める浜面に、ついに銀時がキレて鉄拳を振り下ろした。

頭を殴られた事に気づいて涙目になりながらこちらに顔を上げる浜面に彼は叫ぶ。

 

「テメェそれでもリーダーか! こんな所に引きこもってウジウジしてるのがリーダーの仕事なんですか!? ああ!?」

「い、いやだって……ていうかアンタ俺の部下になりに来たんじゃなかったの……? なんで殴られたの俺?」

「リーダーならリーダーらしく俺達を先陣切って導け! リーダーってのはみんなの希望じゃなきゃだめなんだよ!」 

「き、希望……」

「そして俺達のリーダーはお前しかいねぇ! そうだろチビ助!」

「はいですの! この白井黒子! いつまでもリーダーのお傍に付き従う所存ですわ! さあリーダー! わたくしにどんな任務でも言って下さいませ!」

「お前達……」

 

銀時の演説に手を上げてノリノリで便乗する黒子。二人の姿に浜面はジンジンする頭を押さえながら思わずグスッと鼻をすする。

そんな彼らを傍にいる山崎はジト目で見つめる。

 

(……な、なにこの茶番……)

 

っと冷静なツッコミを心の中で呟いていたりしていた。

だがそのアホな浜面はというと二人の励ましが効いたのかようやく立ち上がって

 

「よ、よしやろう……! 攘夷だろうがなんだろうがやってやる……!」

「良く言ったリーダー! その言葉を待ってたぜ!」

「我らのリーダーが遂に決心しましたわ! さあいざ攘夷を! この学園都市を焦土と化す革命を今!」

「お、おう!」

 

決心した浜面にすっかり攘夷浪士の気持ちで歓声を上げる黒子と銀時。

しかし浜面は「あ……」と何かに気づいたように口から小さな声が出る

 

「そういや攘夷活動ってなにやればいいんだ……」

「そうですわね……」

 

困ったように早くも助けを求める表情を浮かべてきた彼に黒子はうーんと考えた後にポンと手を叩き

 

「それではまずあの武装警察とかほざいている真撰組の連中を潰しましょう」

「えぇぇぇぇぇぇぇ!? あの真撰組ぃぃぃぃぃ!?」

「でぇぇぇぇぇぇぇ!! 真撰組ぃぃぃぃぃ!?」

 

サラリととんでもない事を言ってのける黒子に浜面は絶叫を上げる。

そして何故か傍にいた山崎も絶叫を上げる。

 

「真撰組って泣く子も黙ると言われるあの真撰組のこと!?」

「奴等は警察とは称されても実態はすぐに刀を抜いて問答無用で斬り殺す外道集団。ここはわたくし達が恐怖で屈服されて怯える市民に代わって奴等に天誅を食らわすべきですわ」

「いやいやちょっと待て! さすがに幕府直属の警察組織に俺達チンピラ数人で殴りこむのは無謀だろ! そんなの絶対できっこ……!」

「この臆病者!」

「おぶ!」

 

この人数で敵うはずないと弱腰の浜面に黒子がキツイビンタを一発。

 

「今この時間も連中はこの学園都市を好き放題に暴れまわっているのですのよ! そんな連中を野放しにしている事など正義にあらず! いざ奴等に正義の一撃を! 偽善をまとった悪の権化にこの手で制裁を与えるのです!」

「……すげぇこれが本当の攘夷派の意見なのか……まるで攘夷浪士だ」

「さあ今すぐに支度なさい! まずは連中の頭である局長と司令塔である副長の首を取って民衆たちの前に晒してやりますわ! 正義は我らにありですの!!」

 

血走った目で高々と腕を上げて号令を上げる黒子に浜面は口をあんぐりと開けて何も言えない状態。

そんな彼を尻目に黒子は凄みのある表情で他の二人の方に振り返る。

 

「さああなた達も支度して奴等に天誅を! この国を変えるんですの!」

「お、落ち着いてお嬢さん! 真撰組は駄目! 真撰組は敵に回したらマズいって! 主に俺がマズイ!」

「戻って来いチビ、お前もう完全に攘夷浪士になってるぞ」

 

真撰組壊滅をもはや己の使命だと言わんばかりの黒子に対し感想を呟いた後。

銀時は彼女を無視して浜面の方へ歩み寄る。

 

「まあ攘夷にしろなんにしろ、やる事あったらそん時は俺に任せろや。相手がなんだろうが俺が倒してやるから、金次第で」

「え、金取るの? 俺の部下なのに金取るの?」

「いやそりゃ出すもん出さなきゃやらねぇよ、ビジネスだよビジネス、ビジネスマネーは大事だろ?」

 

指で丸をかいてゼニ寄越せという仕草をする銀時に唖然とする浜面。

真撰組に喧嘩を売る事に怯えている山崎と、この世の全てに怯えてるんじゃないかと思われる浜面が浮かべる表情には不安と恐怖しか感じない。

 

「金はまあ……攘夷の連中に頼めばなんとかしてもらえるかもしれないけど……おたくマジで使えるの? 目も死んでるし……」

「目が死んでるのは関係ねーだろ、言っとくがたまにはキラめくんだからな。つうかお前俺のこと疑ってるのか?」

「う~ん、だって今日出会ったばかりじゃん……」

「わかったよ、んじゃ今から……」

 

目を細めて半信半疑の様子の彼に銀時が不満気に何か言いかけたその時……

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? 今日は何でこんなに人が多い訳?」

「あ、どうも姐さんお疲れ様です」

 

不意にドアから聞こえた声に山崎がサッとそちらに振り返る。銀時達も反射的にそちらに目を泳がせた。

その声の持ち主はあまりにもこの場には相応しい身なりをした少女だった。

ちんまりとした体形だがそのスタイルはキチンと整っており長いブロンドヘアーを流すその姿はまるで外国のお人形。

 

「なに? もしかして連中側の人? 結局またキモイ浜面を脅しに来たって訳?」

「ああ違う違う、コイツ等は連中寄りじゃなくて俺達寄り、つまり俺達の仲間になりにきたんだよ」

「ふーん、このタイミングで新入りって怪しいわね。私の名前は”フレンダ”よ、どうせ短い間だろうけどよろしく」

 

フレンダと名乗るその少女は特に隠そうとせずに疑ってる表情を浮かべて二人を一瞥しつつ奥へと入ってくる。

 

そしてリーダーである浜面の前に立つと彼女は両腕を腰に当てて不敵な笑みを浮かべ

 

「仲間に入れるのは別にいい訳だけど、もしこいつ等が裏切る動作を少しでもしたら殺していいわね」

「お、おう……一応言っておくけどマジで言ってるんじゃないよな……」

「マジな訳だけど?」

「さいですか……」

「ったく、ところで結局浜面は今まで何をしてた訳? もしかしてまた連中に脅され……」

 

フレンダが浜面にしかめっ面で何か言いかけたその時

 

彼女に向かって銀時が突然……

 

「危ないリーダーァァァァァァァ!!」

「んごぉッ!」

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

いきなりフレンダの顔面にドロップキックを食らわす銀時に浜面はビックリして叫んでしまう。

狭い部屋で大の大人の一撃を食らわされた彼女は頭から壁に激突、その場にズルズルと崩れ落ちるが、倒れる彼女に銀時は容赦なく飛び掛かる。

 

「テメェさては敵側のスパイだな! 単身でリーダーの首取ろうとするなんざ100年はえぇぞゴラァ! おいリーダー! 後で俺の口座に金振り込んでおけ!」

「ギャァァァァァァ! ちょ! 浜面! これ結局どういう訳!?」

「おいオッサン! そいつスパイじゃねえから! 俺達の仲間! フレンダ!」

「誰がオッサンだコラァァァァァァ!!」

「うげ! いやオッサンって言ったの私じゃなくて浜面! ぐふ!」

 

パッと見綺麗な少女をなんの躊躇もせずにボコリ出す銀時に浜面が違うと叫ぶも彼の耳には届かない。

その光景に新入り山崎はアタフタしながた咄嗟に

 

「し、白井さんッ!」

「わかってますわ」

 

銀時を止めてくれという前に理解してくれたのか、黒子は頷いてすぐに銀時とフレンダの方に近寄って

 

「くおらぁぁぁぁぁ!」

「あべし!」

「って全然わかってねぇんだけどこの子!」

 

華麗な飛び蹴りを倒れている少女にお見舞いする彼女に山崎が叫ぶが、そんな声など銀時同様聞いちゃいない様子の黒子。

 

「さてはあの腐れ外道集団真撰組が差し向けたくのいちですわね! リーダーを誘惑しようとする魂胆だったのでしょうがわたくしの目は誤魔化せませんわ!」

「い、いや誰が浜面なんかを……!」

「さあリーダー、ここからが始まりですわよ! まずはこのわたくしがこの女に天誅を食らわして! そして次はこの女の首を奴等の本部に送ってやりましょう! グヘヘヘヘヘ!!」

「白井さぁぁぁぁぁん! なんかもうアンタ戻れない所までいっちゃってるよ!! サイコキラーだよッ!」

 

 攘夷浪士どころか映画に出て来る猟奇殺人鬼みたいなアイディアを提案しながら下品な笑い声を上げる黒子。もう既に本来の目的など見失ってしまっているのは明白である。

 

「おら吐けゴラァ! テメェの所の親玉は誰だぁ!」

「いや浜面だから! イダダダダダ! 足は踏まないで! お願いだから足は踏まないで!」

「首だけより上半身と下半身を切断させて送った方がインパクトありますわね……革命の火ぶたを切るのですから最初は派手に……」

「ちょっと浜面この銀髪天然パーマ止めてぇぇぇぇぇぇ!! しかもこのツインテールもニヤニヤしながらすんごいイカれた事を……! って浜面ァァァァァァ!」

 

容赦なく攻めかかってくる二人に遂に浜面に助けを求めてくるフレンダだが。

助けを求められた方はというと現実を見る事を放棄して、何事も無いような表情で浜面は

 

「俺あの二人まとめる自信ないんだけど、もうリーダー止めていい?」

「大丈夫ですよリーダー、きっとやれますって」

「そうかやれるか、じゃあ頑張ろう」

「俺も一緒に頑張りますから」

「浜面テメェェェェェェェ!! あとで殺すッ!」

 

すっかりハイテンションでフレンダをシメている銀時と黒子

目の前の現実を無視してほのぼのと会話している浜面と山崎

 

スキルアウト潜入任務は初っ端から波乱を迎える事となったのであった。

 

 

 

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