一話 漂着したのは異国の地
?「う……ん?」
彼女が目を覚まし、周りと自分の様子を見てまず思ったことは二つあった。
一つはここが見知らぬ浜辺であること、そしてもう一つはーー
?「何で…私、人間の姿をしてるの?」
そう、彼女は元々は人間ではなく、軍艦であった。彼女の名はアークエンジェル級強襲機動特装艦一番艦、アークエンジェル。二度の大戦に参戦し、争いを収め、不沈艦とも呼ばれた艦である。彼女は戦後数年ほど平和の象徴として活躍していたが、民衆から平和の象徴が武装してるのはおかしいと指摘の声が多数あがり、そのため非武装化し戦争博物館へ輸送される予定であった。彼女が最後に覚えているのは、非武装化を施すためオーブのドッグに入港したところまでである。そして気がついたら見知らぬ浜辺で人間の姿で倒れていた、という訳である。
彼女は今の自分の状態を確認する。
まず服装だが、艦の時の姿を模してるのか白い長袖の軍服と膝上くらいの長さの白いスカートと白のストッキング、またボディラインに沿って赤いラインがある。
体型はすらりとし、胸は艦長譲りか、それなりの大きさはある。
アークエンジェル(以後AA)「ま、それはどうだっていいわね。」
その後彼女は側にあった漂着物らしき鏡の破片を見つけ、覗き込んだ。
AA「……自分で言うのもあれだけど、綺麗な顔ね。」
肩くらいまでの長さの薄い金髪はストレートに少しだけウェーブがかかっており、整った顔立ちと相まりその名が示す通り、温和でやや生真面目な天使を思い起こしていた。
一通り自分の姿を見たあと浜辺を見渡した。見たところ何処かの島らしいがオーブではないことは確かであった。
AA「一体、何がどうなってるの…?」
その時であった。沖の方から六つの人影が海上を移動しながらこちらに向かってくるのが見えた。アークエンジェルは初めは見間違いかと思ったが、近づくにつれ、それは見間違いではなく、本当に海上を移動しているのがはっきり見えた。しかも、近づく人影はどれも少女である。
先頭にいるのは明るい茶髪のツインテールをした少女。その後に続くように白い帽子をした白髪の小さな女の子、青い長髪の女の子、黒とピンクが混じった髪の女の子、目元のほくろが特徴的な茶髪の女の子、最後にバニーガールのような格好をした女の子である。
彼女達の姿もそうだが、アークエンジェルが特に気になったのは彼女達の装備しているものであった。両腕に砲台のようなものを装備した者、ヤドカリのように装備を背負っている者もいるがどの装備も昔秘密ドッグに収容されてた時に休憩中の整備士の一人が読んでいた雑誌に載ってた
ツインテールの少女「え⁉︎何でここに人が⁉︎」
白髪の女の子「敵…ではないみたいだね。」
青い長髪の女の子「漂流者、とかでしょうか?」
黒とピンクの髪の女の子「だが、ここらで船が難破したっていう報告はないぞ?」
ほくろの女の子「とにかくさ、このままだと危ないから早く助けた方がいいじゃないの?」
バニーガール風の女の子「そうだね、おーーい!大丈夫ーー⁉︎」
バニーガール風の女の子がそう言いながらこちらに近寄ってくる。それに続き他の五人も近寄ってきた。
ツインテールの少女「大丈夫ですか?怪我とかはありませんか?」
AA「え、ええ…。あの、貴女達は?」
阿武隈「私は阿武隈と言います。この先にある鎮守府に所属する艦娘です。」
AA「艦娘?それって何?」
それを聞いた六人は驚いた表情を浮かべた。
バニーガール風の女の子「え⁉︎あなた艦娘を知らないの?「え、ええ。」」
白髪の女の子「こんなこともあるのか…。」
阿武隈「えっと、艦娘というのは昔の戦争で活躍した軍艦の魂が人型となって生まれ変わったものです。私は正確には長良型軽巡洋艦の六番艦阿武隈の魂がこの姿で生まれ変わったものです。」
響「ちなみに私は暁型駆逐艦二番艦、響だ。とは言っても今はヴェールヌイだが、呼ぶ時は響と呼んで欲しい。」
五月雨「私は白露型駆逐艦六番艦、五月雨です。」
秋雲「私は陽炎型駆逐艦十九番艦秋雲だよ。」
長波「私は夕雲型駆逐艦四番艦長波よ。」
島風「島風型駆逐艦一番艦島風です。と言っても私しか同型艦いないけどね。」
アークエンジェルは彼女達の話を聞いて自分が何故人間の姿をしてるかある程度納得した。が、生まれ変わったという言い方に少し疑問をもった。その言い方だとまるで自分が死んだーー轟沈、または解体処分されたような感じである。確かに軍艦としての役目は終えているが艦としてはまだ生きている。彼女達が名乗ったのだから、自分も名乗られければ失礼だ。そう思ったアークエンジェルは先ほどの疑問を後にし、名を名乗ることにした。
AA「自己紹介ありがとう。私はアークエンジェル級強襲機動特装艦一番艦、アークエンジェルです。」
六人「え?」
彼女達はアークエンジェルの名を聞いた瞬間、きょとんとした顔になった。
阿武隈「えっと…もう1回艦種を言ってくれますか?」
AA「はい。アークエンジェル級強襲機動特装艦です。」
阿武隈「強襲…、機動…特装…艦?」
響「名前と言い艦種と言い、聞いた事がないな…。」
五月雨「と言うより、艦娘?なんでしょうか?艤装が見当たらないのはただ展開してないからでしょうけど、よくわからないですね…。」
秋雲「この人どうする阿武隈さん?」
阿武隈「とりあえず、提督に報告してからね。」
阿武隈は通信機を使い、連絡を取り始める。
阿武隈「提督、阿武隈です。はい、私達は無事です。ですが、キス島の浜辺にて妙な艦娘と遭遇しまして。ええ、敵意はないみたいです。が、艦娘の自覚もないみたいです。アークエンジェルと名乗っていますが…はい、はい、わかりました。」
通信を切った阿武隈はアークエンジェルに向き直る。
AA「あの、私はどうすれば?」
阿武隈「とりあえずあなたは私達の鎮守府に連れていきます。話はそれからです。ついてきてください。水上を移動するので艤装を展開してください。」
AA「艤装を展開?どうやればいいのですか?」
長波「ん〜なんていうんだ?自分の武装を出すって感じでやればいい思うよ?」
長波のアドバイスをもとにアークエンジェルは目を閉じ武装を展開するイメージを浮かべ、集中する。すると、自分の体から何かが現れる感覚がよぎった。アークエンジェルはそのままゆっくりと目を開いた。
AA「…これが、私の艤装…!」
まず目に付いたのは彼女を挟み込むように突き出た艦時代の彼女の特徴である脚部状の艦首であった。今は格納されているがローエングリン発射口が設置されてる点は同じだが、違う点が二つあった。一つは内側に恐らく手で持って構えて撃つためであろうグリップがあること、もう一つは艦首両舷にあるはずのゴットフリートが両腕上腕部に装着されてるところである。もしかしたら、とアークエンジェルはゴットフリートだけを格納するイメージを浮かべると、ゴットフリートのみが消失した。
AA(なるほどね…。ローエングリンを撃つときはこれをしまうって訳ね。)
アークエンジェルが後ろを振り返って見るとさすがに全体図は見えないが格納状態のバリアントや後部翼が確認できた。また、彼女自身はわからなかったのだが、阿武隈らから見ると主翼がV字になっており、天使の翼のように見えていた。その姿に阿武隈らはしばし見惚れていた。
そうとは知らずアークエンジェルは艤装の確認を続けていた。艦首部分にはイーゲルシュテルンが両舷四つずつ確認できた。残りの八つは後部にあるのだろう。他には艦首に多目的射出機、ふくらはぎ外側には魚雷発射管らしきものがあった。武装の位置が違うのは人型になった影響だろう。
AA「お待たせしました、確認終わりました。案内お願いします。」
阿武隈「…はっ!わ、わかりました。では、ついてきてください。」
阿武隈らが海上を移動し始めたのでアークエンジェルは
長波「待て待て待て‼︎あんた、飛べるのか⁉︎」
AA「ええ、そうですが?一応海上航行もできますが、そちらにした方が良いでしょうか?」
長波「じゃあ、そうしてくれるかな?」
アークエンジェルは海上へ降り、海上航行へと移り再び後をつき始めた。
阿武隈「不思議な方ですね…。」
秋雲「ねね、 後でスケッチさせてもらってもいい?」
この奇想天外な出会いが、彼女の艦娘としての人生の始まりであった。
アークエンジェルの顔立ちと髪については艦これの方のザラとビスマルクを足して2で割った感じだと思ってください。少なくともマリューさん似ではありません。(胸以外は)
次回は鎮守府での話を書きます。
ではお楽しみに。