ご了承ください。
とある貿易会社の社長室にて一人の男が座っていた。
彼の名は青井
彼の会社は主に海洋貿易を中心にし、順風満帆であったが、深海棲艦の登場によって経営状況は悪化。艦娘達が現れた事によって護衛付きで貿易が再開したが、最盛期の半分にも満たない経営状況になっている。しかも、護衛となる艦娘を所有する鎮守府や大本営に報酬を与えなければならないので今の経営状況を保つので精一杯であった。
そのうち彼にはある考えが浮かんだ。深海棲艦と艦娘はグルなのではないかと。双方が結託して自分らの経済を疲弊させるのが目的ではと。実際、海洋関係の仕事をしていた者にはこういった考えをする者は多かった。
そう思った日から、彼は表向きでは鎮守府や大本営に友好的な態度をしていたが、裏ではどうやって艦娘を根絶できないか模索していた。一部の反艦娘派を扇動して何度か小規模な暴動を起こさせた事もある。わざと危険な海域への輸送任務を頼んだ事もある。だか一向に艦娘は減らず、むしろ増えている現実に苛ついていた。
そんな時であった。ヴェサリウスと名乗る深海棲艦から協力を持ちかけられたのは。幸い彼は大本営の上層部とは知り合いであり(特に反艦娘派が多かった)時々こっそり情報を貰ったりしていた。それ故彼は協力をした。深海棲艦は嫌いだが、よりヒトに似ている艦娘の方が彼は嫌いだったからだ。
彼は事あるごとに彼女に遠征の予定などの情報を売り渡した。そして今回アイオワの情報を入手した時は迷わず売り渡した。これ以上艦娘が増えるのは彼にとって我慢ならない屈辱に他ならなかった。
青井「ヴェサリウスとやら、早くあの海のバケモノどもを駆除してくれ…!」
青井は一人、唸るようにそう言った。
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鎮守府
野井「ふぅ…。」
野井は先程大本営から送られた文書をみてため息をついた。その内容は、アメリカでようやくアイオワ級戦艦アイオワの建造が一人だけ成功し、その貴重な一人をこの日本に明け渡すとの事だった。譲渡後は彼女を分析し、言い方は悪いが量産が出来次第各鎮守府に着任させる予定だそうだ。
問題は彼女がアメリカ艦、つまり今現在着任している艦娘達のかつての敵対国家だという事だ。
アメリカと日本は現在は互いに関係は良く、今の所たった一人しかいないアイオワを譲渡するのもその表れである。だが艦娘達、特に日本艦の者からすれば敵だった艦である。思うところはたくさんある。協力できるかが心配である。
だが、野井はその心配は無いのではと同時に思っていた。
確かに昔は敵だったが、今は深海棲艦を倒すという同じ目的を持っている。それに、元々敵だった艦と打ち解けている例はアークエンジェルとドミニオンがそうである。アイオワと艦娘達は姉妹ではないが、打ち解けるだろうと野井は思っている。ちょうどその時、工廠から執務室に連絡が入った。
明石「提督、
野井「わかった。すぐに行こう。」
野井は工廠へと向かう。事の始めは今朝の出撃からドミニオンが帰還した時である。ドミニオンの全身が輝き、ドミニオン自身もパニック状態になっていたが、他の艦娘からそれは改装の前兆だとなだめられ、改装を行ったのだ。改装の際に大型戦艦並みの資材を使ったが現在の備蓄量からしてそれほど手痛いものではない。野井が工廠に着くとドミニオンの姿が見えた。
野井「ドミニオン、調子は平気かい?」
ドミニオン「ええ。大丈夫です。けれど、どこが変わったかわからないんです。」
すると、ドミニオンの艤装を見ていたアークエンジェルが、彼女の艤装に魚雷発射管があるのに気づいた。
AA「もしかして…!ドミニオン、ちょっと外に出て。」
ドミニオンに外に出て水面に立つ。するとアークエンジェルはドミニオンに水中に潜って泳ぐよう指示した。ドミニオンはそれにやや訝しんだが、恐る恐る水中に潜る。すると、ごく普通に泳げた。
野井「これは…?」
AA「やはり、ドミニオンの改装は私と同じように改装されるものなんですよ。だから潜水ができたんです。たぶん、ローエングリンの方もそうなってると思います。」
ドミニオン「本当に⁉︎でも、どうして?」
ドミニオンの問いに野井はある心当たりがあった、
野井「おそらく、翔鶴や瑞鶴のようにif改装のようなものだろう。もしドミニオンがアークエンジェルと一緒に行動していたら、というのが改装に反映したのだろう。」
その後、ドミニオンを詳しく調べると艦載機もカラミティ三機は変わらなかったが、ダガー隊がより上位機であるダガーLやウインダム、さらにはロングダガーやバスターダガーに選択で変えられるようになっていた。アークエンジェルと一緒に行動してたらそんな機体は入手できないはずだが、そこのところの矛盾はわからなかった。どちらにせよ、戦略に幅が出る事は間違いなかった。
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アイオワは太平洋を扶桑ら西村艦隊に囲まれ、ボートに運ばれる形で太平洋を横断していた。
アイオワ「何でmeだけボートなの?」
操舵士A「仕方ないだろう。お前に何かあったら大変だし、何より、譲渡しておいて初めに相手方に補給させるのは嫌だとのお達しなんだ。」
操舵士B「海を航海したい気持ちはわからなくはないが、ま、我慢してくれや。」
操舵士達の言葉にアイオワは不機嫌そうにそっぽを向いた。その様子を見て扶桑は微笑んだ。
彼女達は数週間前からアイオワの護衛として来た。初めはやや不安があったが、彼女のフレンドリーな性格のおかげですぐに打ち解け、だいぶ仲良くなっていた。
アイオワ「フソー達は日本に着いたらどうするの?」
扶桑「しばらくはあなたと一緒にいるように指示されてるから離ればなれにはならないわよ。」
アイオワ「良かった〜。me一人だけになったらと不安だったからフソー達と一緒ならnoproblemね!」
扶桑「ふふ、ありがとうアイオーー」
最後まで言おうとしたその瞬間、一つの光条が彼女の頭を吹き飛ばし、艤装を貫いた。そのまま艤装は爆発し、頭部を失った扶桑の体は海深く沈んでいった。
全員「っ⁉︎」
山城「姉様⁉︎」
姉に起きた出来事を理解する間もなく今度は山城に無数の砲撃が襲いかかった。その一撃一撃が彼女の艤装と体力を奪い、やがて限界を迎えた彼女は力尽き、姉と同じく沈んだ。
時雨「扶桑、山城‼︎」
最上「あれだ‼︎あの深海棲艦がやったんだ‼︎」
見ると三人の深海棲艦らしき者が砲台を構えてこちらに向かって来ていた。そして再び砲撃を加えてくるが先ほどと違い当てるためでなく撹乱させるための砲撃であった。
その様子を見て操舵士はアイオワに告げた。
操舵士A「アイオワ!早くボートから降りてくれ!」
アイオワ「え?」
アイオワがそう聞き返すのも当然だった。今の彼女は武装こそしてるが、安全の為に砲弾は入っていないのだ。これでは戦力にならないのは明らかであった。だが、その答えをもう一人の操舵士が返す。
操舵士B「奴ら相手にこのボートはいい的だ!このまま俺らと心中させるわけにはいかない!早く降りろ!」
アイオワ「…ok。わかったわ。」
アイオワが海上に飛び降りてすぐの事であった。光条がボートを貫き、ボートは操舵士を巻き込んで爆発した。
アイオワ「ああっ‼︎」
朝雲「よくも!」
すると深海棲艦達は何かを空に向けて大量に射出した。そしてそれは朝雲と山雲に向かって接近して来た。
山雲「あれはミサイル?なら…!」
山雲がミサイルを迎撃しようと上を見た時、深海棲艦の一人が山雲に向けて砲台を構えているのに朝雲は気づいた。
朝雲「山雲、危ない!」
朝雲が山雲を突き飛ばした瞬間、深海棲艦から放たれた光条が朝雲を撃ち抜いた。
山雲「朝雲姉ぇ…⁉︎」
すぐに朝雲に近寄った山雲だが、大量のミサイルが彼女達に降り注ぎ、辺りは爆煙に包まれた。やがて爆煙が晴れると彼女達の焼け焦げた衣服の一部や靴が海面に浮いているだけであった。それを見た満潮は激しい怒りと殺意を感じた。
満潮「……っ‼︎こいつらぁぁ‼︎」
満潮は怒りに任せ突撃し、砲撃を行なった。
最上「満潮っ!前に出過ぎだ!戻って!」
その言葉も聞かず、彼女は仮面を被ったリーダーらしき深海棲艦に向かっていく。砲撃も加えるが、寸前で避けられるか当たってもほんの少ししかダメージを与えられなかった。すると急にその深海棲艦が速度を上げて満潮に向かう。
満潮「速っ…⁉︎」
気づくと目前まで迫られ、満潮は腹部を殴られ、そのまま掲げるように持ち上げられた。その時満潮は深海棲艦の砲塔が腹部に接しられているのに気がついたが、遅かった。
満潮は腹部を撃ち抜かれ、動かなくなった。そして無造作に海に投げ捨てられた。
その様子を見て最上、時雨、アイオワは戦慄した。あっという間にボートと五人の艦娘を目の前の三人は屠ったのである。それと同時に思った。自分達に勝ち目は無いと。そして最上と時雨はある決断を下す。
最上「アイオワ、ボクと時雨で時間を稼ぐ。だから君だけでも逃げてくれ。」
アイオワ「そんな⁉︎あなた達を置いてなんてできない!」
反論するアイオワに時雨は続けた。
時雨「僕達の任務は君の護衛だ。ここで君までやられたら、扶桑達も浮かばれない。だから、早く逃げてアイオワ!」
そう告げると二人は深海棲艦に向かっていく。最上が艦載機を飛ばすが、深海棲艦達からCIWSが現れ、次々に撃ち落とされる。が、それは想定済みであり、その隙を突き一人に砲撃を集中させる。砲撃は命中し、その深海棲艦はよろめいた。
最上「よしっ!」
だが喜んだのも束の間、別の深海棲艦が放った光条により、最上は喉元を撃ち抜かれ、沈んでいった。
時雨「最上っ‼︎…何やってるんだアイオワ!早く逃げるんだ!」
まだ逃げていないアイオワに時雨は怒鳴りつける。そうしてるうちに深海棲艦の一撃が時雨に当たり、砲塔の一部が吹き飛ばされる。
アイオワ「シグレー‼︎」
時雨「僕に構わず、行け!アイオワ!」
アイオワ「……!ごめんなさい………!」
アイオワは涙を流しながらその場から立ち去った。それを見届けた時雨は安心した。
時雨(そう…それでいい…。)
その後、時雨は深海棲艦に立ち向かい、最期まで勇敢に戦い、そして散っていった。
アイオワ「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……!」
アイオワは悔しかった。友人がその命を散らしていく中、自分は何も出来ずにただ逃げているが悔しかった。だがそんな悔しさもすぐに無くなる。彼女に追いついた三人の深海棲艦がその背を撃ち、後悔をしたまま沈めたからだ。
そのうちの一人、ヴェサリウスは呟いた。
ヴェサリウス「…以外と呆気ないものだな。」
ヘルダーリン「そうですね、さっきの小娘の方がまだマシでしたね。」
ホイジンガー「それより、ガモフ達は平気でしょうか?同志達も参加させた方が良かったのでは?」
ホイジンガーの問いにヴェサリウスは首を振った。
ヴェサリウス「いいや。彼女達だけで充分だ。要塞を陥す訳ではないのだからな。」
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アメリカ アイオワ建造及び研究施設
施設は既に火の海と化していた。ガモフ、ハーシェル、フーリエの三人の襲撃により、多少の防衛設備しかない研究施設は徹底的に破壊されてしまっていた。
ガモフ達の目的は施設の完全破壊、そしてアイオワに関するデータの抹殺であった。襲撃直前に妨害電波を発信したので、襲撃中にデータを送信することは不可能であり、今は破壊されていない機材の破壊や研究員を殺していた。
ガモフの視界に逃げようとする研究員が見えたので、ガモフは躊躇わず左腕の単装砲を撃った。人間に対し過剰な威力を持つそれは研究員に命中し、研究員の体を吹き飛ばした。
ガモフはこの行為がアメリカや大本営、鎮守府に対し宣戦布告の意味を持つことを知っていたが、自分らが負けることなど微塵も考えていない。少し前なら思っていたが今は違う。
ここ最近見つかったたくさんの同志、そして、自分とその同志達が持つあるものが彼女の自信となっていた。実際、この施設の大半を破壊したのは
ガモフ(頼むぞお前達…我らの勝利の為に…!)
ガモフの目の前にあるもの。それは、倒壊した施設を闊歩するジンやゲイツR、ザクウォーリアなどのザフト製モビルスーツの部隊であった。
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その半日後、アイオワが沈み、研究施設が研究員やデータもろとも失われたことが大本営を通じて各鎮守府に知らされた。つまり、再びアイオワを建造するには多大な時間がかかる事となった。その時唯一残された犯人の画像データが一緒に送られた。それを見たメネラオスは目を見開いた。
メネラオス「こいつは…人の姿だが間違いない!こいつはガモフだ!」
AA「ガモフ⁉︎なら、ヴェサリウスも…!」
野井「誰なんだ、それは?」
AA「…彼女達は、ザフト軍。私達が戦っていた軍です。」
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ある深海にてヴェサリウスと戦艦水鬼が話をしていた。
戦艦水鬼「…ヨカロウ。オ前達ト我々ハ利害ガ一致シテイル。協力シヨウ。」
ヴェサリウス「我々に協力してくれる事、感謝する。」
二人は握手を交わし、幾つかの話をした後、それぞれ根城へと戻って行った。
根城へ戻ったヴェサリウスを待っていたのはガモフ達五人だけではなく、たくさんの同志ーーザフト軍の軍艦達の姿もあった。
ネームシップのボズゴロフ、クストー、ニーラゴンゴ、セントヘレンズが率いるボズゴロフ級潜水空母。
同じくネームシップのピートリー、ヘンリー・カーター、バクリィーが率いるピートリー級陸上戦艦。
デズモンドが率いるレセップス級陸上戦艦。
その数は軽く百は超えていた。
彼女達を前にヴェサリウスは声高に叫ぶ。
ヴェサリウス「我々は今日、深海棲艦達と同盟を結ぶ事が出来た!これにより、我々はようやく地上への大規模侵攻作戦、オペレーション・ティターンを実行する事を決定する!」
ティターン、神話にてクロノスと共にゼウスに戦いを挑んだ神々を指す言葉。これから人間達に戦いを挑む彼女達にとってこの作戦名はふさわしいだろう。
ヴェサリウス「オペレーション・ティターン、第一段階の攻撃目標は、トラック泊地!今こそ我々の力、ナチュラルどもに見せつけようではないか‼︎」
その掛け声に全員が歓声と怒声の入り混じった声を上げる。
ヴェサリウス(そうだ…
そう思うヴェサリウスの目には狂気の光が宿っていた。
集まったザフト軍艦、それらと同盟を結んだ深海棲艦、始まったオペレーション・ティターン。
アークエンジェル達艦娘や人間達の運命は?
そしてアイオワ、及び西村艦隊の皆さんが好きな方、申し訳ございません。今後も皆様には耐えがたいシーンがあるのでご了承ください。
では次回をお楽しみに。